北米時間2018年5月14日,AMDは,ビジネスPC向けプロセッサ「
Ryzen PRO」初のAPU製品を発表した。ラインナップはデスクトップPC向けの「
Ryzen PRO desktop processors with Radeon Vega Graphics」(以下,
Ryzen
PRO
desktop
APU)が4製品と,ノートPC向けの「
Ryzen PRO mobile processors with Radeon Vega Graphics」(以下,
Ryzen
PRO
mobile
APU)が3製品。計7製品の主なスペックは
表1,2のとおりとなる。
表1 Ryzen PRO desktop APUの主なスペック
|
Ryzen 5 PRO 2400G with Vega 11 Graphics |
Ryzen 5 PRO 2400GE with Vega 11 Graphics |
Ryzen 3 PRO 2200G with Vega 8 Graphics |
Ryzen 3 PRO 2200GE with Vega 8 Graphics |
製造 プロセス |
14nm |
14nm |
14nm |
14nm |
コア数, スレッド数 |
4C8T |
4C8T |
4C4T |
4C4T |
ベースクロック |
3.6GHz |
3.2GHz |
3.5GHz |
3.2GHz |
ブースト最大クロック |
3.9GHz |
3.8GHz |
3.7GHz |
3.6GHz |
L2+L3キャッシュ容量 |
6MB |
6MB |
6MB |
6MB |
Compute Unit数 |
11 |
11 |
8 |
8 |
GPU最大クロック |
1250MHz |
1250MHz |
1100MHz |
1100MHz |
TDP |
65W |
35W |
65W |
35W |
表2 Ryzen PRO mobile APUの主なスペック
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Ryzen 7 PRO 2700U with Vega 10 Graphics |
Ryzen 5 PRO 2500U with Vega 8 Graphics |
Ryzen 3 PRO 2300U with Vega 6 Graphics |
製造 プロセス |
14nm |
14nm |
14nm |
コア数, スレッド数 |
4C8T |
4C8T |
4C4T |
ベースクロック |
2.2GHz |
2.0GHz |
2.0GHz |
ブースト最大クロック |
3.8GHz |
3.6GHz |
3.4GHz |
L2+L3キャッシュ容量 |
6MB |
6MB |
6MB |
Compute Unit数 |
10 |
8 |
6 |
GPU最大クロック |
1300MHz |
1100MHz |
1100MHz |
cTDP |
15W |
15W |
15W |
今回発表となったRyzen PRO desktop APUとRyzen PRO mobile APUはいずれも,開発コードネーム「Raven Ridge」と呼ばれていたAPUをベースに,ハードウェアベースのセキュリティ機能「GuardMI」を統合した製品だ。AMDによると,新世代ビジネスAPUを搭載するPCは,DellとHP,Lenovoから登場予定とのことである。
Lenovoは超小型デスクトップPC「ThinkCentre M715q Tiny」の新モデルでRyzen PRO desktop APUを採用(左)。Dellはビジネス向けノートPC「Latitude 5495F」でRyzen PRO mobile APUを採用している(右)
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AMDの示した資料によると,Ryzen PRO desktop APUの場合,Ryzen PRO 55は「Core i5-8400」に対して画像編集ソフトで最大37%,レイトレーシングソフトウェアによる3Dレンダリングで最大54%,3D CADソフトを想定したベンチマークでは最大180%(※2.8倍)高いスコアを記録したそうだ。Ryzen PRO 3も「Core i3-8100」に対して順に最大24%,36%,100%高いスコアを記録したという。
Ryzen PRO desktop APUとCoffee Lake世代のデスクトップPC向けCPUとで性能をベンチマークスコアを比較したスライド。GPUアクセラレーションの有効なところでスコア差を広げているのが分かる
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同様にRyzen PRO mobile APUの場合,Ryzen PRO 7は「Core i7-8550U」に対して画像編集ソフトで最大6%,レイトレーシングソフトウェアによる3Dレンダリングで最大22%,3D CADソフトを想定したベンチマークでは最大170%(※2.7倍)高いスコアを記録したそうだ。Ryzen PRO 5も「Core i5-8250U」に対して順に最大12%,6%,55%高いスコアを記録したとのことである。
Ryzen PRO mobile APUはCoffee Lake世代の競合CPUを圧倒するというスライド。GPUアクセラレーションの有効なテストでスコア差を広げているのが分かる
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こちらは,IntelのビジネスPC向けセキュリティおよび管理機能「Intel vPro Technology」対応のノートPC向けCPUとの性能比較グラフ。古いベンチマークソフトである「3DMark 11」での比較だが,競合に対して76〜85%程度の性能差を付けている
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「秘密ですけど,ゲームも動くんですよ」というスライド
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ちょっと面白いのは,AMDが今回のRyzen PRO APUで「ゲームもできますよ」というアピールをしているところだ。「Coffee Lake世代のノートPC向けCPUにエントリー〜ミドルクラスのノートPC向けGeForceを組み合わせるよりも,Ryzen PRO mobile APU単独のほうが高性能である」という,
デスクトップPC向けPinnacle Ridge発表時のアピールとほぼ同じ謳い文句を繰り返していたりする。仕事に疲れたらゲームでもどうぞ,といったところか。
3DMarkの「Time Spy」による性能比較。Ryzen 7 PRO 2700Uは,Core i7-8550Uに「GeForce GTX 950M」を組み合わせた環境と同等以上のスコアを記録するとのことだ
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こちらは実際のゲームにおけるフレームレートを比較したグラフ。Ryzen PRO 2500UとCore i7-8550U+「GeForce 940MX」の環境を比較したもので,いずれも競合を上回るとしている。ただ,「Dota 2」はともかく,「Overwatch」と「Rocket League」は,Ryzen PRO側も快適と言えるほどのスコアではないように思う
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Ryzen PRO APUを搭載するビジネス向けPCが日本でも出てくるか否かは何とも言えないが,「ゲームも動いてしまうビジネス向けプロセッサ」というのは,存外にニーズがあるのではないかという気がしている。今後の展開に期待したい。