レビュー
ダミーヘッドを用いた計測で明らかにする,ゲーマー向けヘッドセット46製品の音質(4)製品検証,ブランド名Ro〜T
ほかの2記事と同じく,ブランド名のアルファベット順,同一ブランドでは実勢価格の高い順で並べ,一気に評価を行っていく。本稿で対象となるのは,以下のとおり,ブランド名Rの途中からTまでの計16製品だ。
テスト対象としたヘッドセット
- ROCCAT Kave XTD Stereo
- ROCCAT Renga
- Sennheiser Communications PC 373D
- Sennheiser Communications GAME ZERO
- Sennheiser Communications GAME ONE
- SteelSeries Siberia 650
- SteelSeries Siberia 350
- SteelSeries Siberia 200
- SteelSeries Siberia 150
- TRITTON(Mad Catz) Kunai Streo Headset
- TRITTON(Mad Catz) Kama Stereo Headset
- Tt eSPORTS(Thermaltake Technology) LEVEL 10 M
- Tt eSPORTS(Thermaltake Technology) VERTO
- Tt eSPORTS(Thermaltake Technology) CRONOS AD
- Tt eSPORTS(Thermaltake Technology) CRONOS GO
- Tt eSPORTS(Thermaltake Technology) SHOCK
本インプレッションをチェックするにあたって気を付けてほしいのは,「シリーズ初回となる解説記事の内容が大前提」ということである。初回の解説記事を読んでいないと,そもそもグラフの見方からして分からないと思われるので,くれぐれもご注意を。リファレンスとなるピンクノイズの波形も先の記事にあるので,Webブラウザの別タブで開いておくことをお勧めする。
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製品評価(ブランド名Ro〜T)
■Kave XTD Stereo
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:115±2dB(@1kHz)
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2
波形評価と試聴印象
60Hzを頂点とした,低域から右肩下がりの周波数特性。400Hz周辺と,1.7〜4.5kHzあたりが凹んでいる一方で,500Hz〜1.6kHz付近はリファレンスに近いフラットで,5kHzくらいには小さな山がある。超高域では10kHz以上で大きな落ち込みを見せるものの,20kHzまで信号はゼロにはならないというグラフだ。グラフ形状は割とリファレンス準拠気味ではあるのだが,低域が相対的に弱いためか,5〜8kHzの高域が強く感じられ,バランスを欠く印象。すっきりした音質傾向ではあり,その意味で400Hz周辺の凹みには意味があるのだが,この凹みも高域が強く聞こえる原因の1つになっているのではなかろうか。
総じて,悪くはないのだが,褒めるほどでもない音質傾向である。
■Renga
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:110dB(@1kHz)
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2(4極3.5mmミニピン × 1への変換ケーブル付属)
波形評価と試聴印象
周波数特性的には「低域と高域のバランスがよい右肩下がり」といったところ。低域のピークは100Hzと少し高めで,そこから500Hz付近まで比較的なだらかに下がっていく。500Hz〜1.5kHzくらいはリファレンスに近い,ほぼフラットな波形だ。4kHz付近のプレゼンス帯域を下限として,2〜5kHz付近はやや暴れた感じになっているものの,8kHz以上の高域は14kHzくらいまでしっかり再生できている。14kHz以上も,急激に落ち込む一方で,完全にはいなくならない。密閉型エンクロージャを採用するゲーマー向けヘッドセットにしては珍しく,オープンエア型ヘッドフォンのような鳴り方に聞こえるのは面白いが,おそらくこれは,500Hz〜1.6kHzにあるフラットさのおかげで,中域のスムーズさのほうが印象に残るからだろう。価格を考えると,かなり上質な製品だと言える。
■PC 373D 7.1 Surround Sound gaming headset
- メーカー:Sennheiser Communications
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:3万2400円前後(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:オープンエア型
- スピーカードライバー径:未公開
- 公称周波数特性:15Hz〜28kHz
- インピーダンス:50Ω
- 出力音圧レベル:116dB
- 接続インタフェース:USB Type-A
× 1
波形評価と試聴印象
USB接続専用で,Dolby Laboratoriesの技術を用いてバーチャル7.1chサラウンドサウンド出力をサポートする製品。もちろんバーチャルサラウンドはオフにして計測・試聴を行っている。周波数特性グラフは,非常にクセの少ないカーブを描いているのが分かる。低域は100Hz付近を頂点としつつ,ほぼ同じレベルを60Hzくらいまで保つ山があって,そこから500Hzくらいまでなだらかに下がる。その上では凹凸がほとんどない500Hz〜2kHzを経由し,3.5kHzくらいまでほぼ同じペースで,より緩やかに下がっていく。さらに上の帯域では6kHz弱を頂点とする山があって,10kHzくらいから急激に落ちていくが,20kHzまで信号は存在し続けるという,分かりやすいドンシャリ型である。
試聴してみると,低域と高域の出方がいずれも実にうまく制御されている印象。9kHz以上が他より落ち込みが激しくなっているので,カリカリに尖った高域が好きなプレーヤーだと,「高域がぬるい」と感じるか可能性もあるが,筆者はおそろしくよいバランスだと感じた。USB接続のヘッドセットのなかには,高域を無遠慮に強く再生する製品がけっこうあるに対し,本機ではアナログ接続型ヘッドセットを良質なヘッドフォンアンプと接続したときのような,スムーズな中域と,必要十分な高域を味わえるからだ。
ただし,USBヘッドフォンアンプの出力は少々足りない。大音量が好みのユーザーは同社のアナログヘッドセットと大音量ヘッドフォンアンプを組み合わせることをお勧めする。
■GAME ZERO
- メーカー:Sennheiser Communications
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:2万2000〜2万8000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:未公開
- 公称周波数特性:15Hz〜28kHz
- インピーダンス:50Ω
- 出力音圧レベル:108dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2,4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
周波数特性は一見右肩下がりながら,その実,低弱高強型のドンシャリ。60Hz付近を頂点とする低域の山があり,いったん200Hz付近で落ち込んでから,1kHzくらいまでリファレンスに準拠する見事なフラットが続き,1.8kHz付近にドンシャリの「シャリ」がある。2.4kHzくらいから上の周波数帯域はそれ以下の帯域と比べてやや弱く,なだらかに下がっていき,9kHz以上では高域がかなりの落ち込みとなっているのだが,9kHzより下の帯域に十分な信号量があるためか,試聴時の印象として,高域が足りないとまでは思わない。
ただ,「一見右型下がりの波形なのにドンシャリに聞こえる」というところから想像できる人もいると思うが,1.8kHzの山は,決して心地よく感じられるものではなく,やや耳に痛い。おそらくは高域に十分“すぎる”信号量があるのも,早退的なバランスが高域に寄ってしまっているのも,低弱高強な印象を補強しているのだろう。
なお,出力音量は低めなので,組み合わせるヘッドフォンアンプまたはサウンドデバイスによっては音量不足と感じる可能性がある。
■GAME ONE
- メーカー:Sennheiser Communications
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:2万1800〜2万4000円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:オープンエア型
- スピーカードライバー径:未公開
- 公称周波数特性:15Hz〜28kHz
- インピーダンス:50Ω
- 出力音圧レベル:116dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2,4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
非常に違和感の少ない,スムーズな周波数特性である。100Hz付近を頂点とした低域の山から500Hzまで下がっていき,500Hz〜4kHzくらいが異常なほど滑らかにゆったり下がる。6kHzくらいに高域の山があって,その上では9kHzくらいから急峻に落ち込み始めるものの,20kHz付近でもまだ信号はいなくならない,ドンシャリ型のグラフだ。試聴印象もそのままドンシャリ型で,低域と高域のバランスおよび中域のスムーズさは見事としか言いようがない。低域はピークが100Hzなので,重低音感はほぼ感じられず,ここがあえて言えば弱点だろうか。耳に痛くならないギリギリの線を維持している高域は,Sennheiserのオーディオ用ヘッドフォンに通じるレベル。全体的に「当たりのときのSennheiserサウンド」といった印象を受けた。
■Siberia 650
- メーカー:SteelSeries
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:2万800〜2万4300円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:16Hz〜28kHz
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:120dB
- 接続インタフェース:USB Type-A
× 1,3極3.5mmミニピン × 2(4極変換ケーブル付属)
波形評価と試聴印象
Dolby Laboratoriesの技術を用いて7.1chバーチャルサラウンドサウンド出力にも対応するUSB接続と,アナログ接続の両方に対応する。まずはUSB接続時,バーチャルサラウンドサウンド機能はもちろん無効化した状態からだが,グラフは低域と高域の差分が非常に少ない右肩下がりで,低域の頂点である60Hzと,ほぼフラット200〜750Hz付近との間は,音圧レベルにして10dBもない。1.3kHzと3.8kHz付近にそこそこ大きめの谷がある一方,4〜8kHz付近は2kHz付近とほぼ同じ信号量を維持していて,9kHz以上で落ち込み,20kHz手前で信号は完全になくなる。
低域と高域の差分が小さく,4〜8kHzの高さがあることも手伝って,試聴印象は低弱高強の音質傾向になった。2kHz付近より上の帯域がなだらかに下がらないどころか,谷を挟んでほぼ同じレベルに回復してしまうこともあって,このあたりの帯域がかなり耳に付く。
なお,USBサウンドデバイスのアンプ出力は,大音量派には少し足りないくらいで,決して大きくないものの,小さすぎるということもない。
対してアナログ接続は,500Hz以上だとUSB接続時と同じ形状ながら,500Hz以下が大きく盛り上がり,60Hz付近を頂点とした低域の山と高域の差分がはっきりする。とはいえ,2kHzや4〜8kHzはUSB接続時と同じくしっかり存在するので,試聴すると,低域のドンが強めのドンシャリとなった。むしろちょっと低域が強すぎて,高域に被り気味にも聞こえたりもするのだが,ただ,それでも明らかにバランスはUSB接続時よりよくなったと筆者は感じている。
なお,個体差かもしれないが,左右のバランスは±2dB程度でしかないにもかかわらず,アナログ接続時に音像の中心が結構左に寄って聞こえたことは付記しておきたい。
■Siberia 350
- メーカー:SteelSeries
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:1万1700〜1万3700円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型 スピーカードライバー径:50mm
公称周波数特性:10Hz〜28kHz
インピーダンス:未公開
出力音圧レベル:80dB
接続インタフェース:USB Type-A
波形評価と試聴印象
グラフを見ると,60Hz付近が低域の頂点,2.5kHzが高域の頂点とするドンシャリだが,初回の記事でお伝えしているとおり,リファレンス波形は350Hz〜3kHz付近がフラットな右肩下がりなので,「一見して低域と高域の音圧レベルが同じように見える」この波形は,低弱高強の周波数特性であると結論付けられる。1.3kHz付近は少し落ちているが,200Hz〜1kHzはほぼフラットでリファレンスに準拠する形状となっている。高域は10kHz以上で急峻に落ち込みはじめ,20kHzを超えたあたりで完全に信号が消える。
試聴時の印象もこのグラフの形状のとおりで,高域が強い。ただ,歪みっぽくはなく,低域が相対的に抑えめなのも相まって,全体的に上品な音質傾向に感じられる。高域が20kHz近くまできちんと再生され,低域でマスクされないので,もちろん定位移動とかは非常に分かりやすい。USBヘッドフォンアンプの音量も十分だ。
なお,本製品はDTS Headphone:X対応。テストにあたってはもちろん無効化している。
■Siberia 200
- メーカー:SteelSeries
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:7300〜8500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:50mm
- 公称周波数特性:10Hz〜28kHz
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:112dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2(4極 × 1変換ケーブル付属)
波形評価と試聴印象
「60Hz付近を頂点に,450Hz付近までなだらかに下がっていく。1kHz〜1.1kHくらい小さな山があるものの,その上ではまた浅い勾配で下がり続け,6〜10kHzくらいの範囲にはやや大きめの山がある。その後10kHz以上で急峻に落ち込み始めるが,20kHz付近でも弱いながらまだ信号は存在する」というグラフ形状。右肩下がりかつ60Hzと8kHz付近を頂点とする軽いドンシャリ型と言ってよいと思う。実勢価格を考えるとかなり優秀なグラフだが,試聴印象もそれを裏切っておらず,低域と高域のドンシャリのバランスがいい。1.2kHz付近の小さな山はあまり気にならず,極端な凹凸もないのが,「よい音」と感じさせる理由の1つであろう。
■Siberia 150
- メーカー:SteelSeries
- 問い合わせ先:ゲート(販売代理店) 03-5280-5285
- 実勢価格:6800〜7500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:USB接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:94dB
- 接続インタフェース:USB Type-A
波形評価と試聴印象
低域と高域の差分が極めて小さい。そのため,グラフの細かい形状がどうあれ,周波数特性は低弱高強の右肩上がり型ということになる。細かく見ていくと,60Hz付近が一応は低域の頂点で,非常に浅い勾配で350Hz付近まで落ち込み,650Hz付近を頂点とした本当に小さな山が1kHzまで続くが,その先に,ほぼ低域の頂点と同じ高さの山が1.8kHz付近に存在する。そのすぐ上,3.8kHzには非常に狭く,かつ20dBにもおよぶ深い谷があるのは,ある意味,見どころだ。高域以上は6〜8kHzを中心に11kHzくらいまでしっかり存在し,16kHzより上で一気に落ちていく。
試聴した印象も波形のとおりで,高域が強め。もともとが低弱高強の右肩上がりであるのに加え,1.8kHzのピークが強めなので,このあたりの帯域が少々耳に来る。
■TRITTON Kunai Stereo Headset
- メーカー:TRITTON(Mad Catz Interactive)
- 問い合わせ先:マッドキャッツ [email protected]
- 実勢価格:6500円前後(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:16Ω
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:4極3.5mmミニピン
× 1,アナログRCA × 2(※アナログ出力対応ゲーム機のサウンド出力インターセプト用)
波形評価と試聴印象
グラフはかなりの右肩下がり。60Hzを頂点に30Hzくらいから100Hzくらいまで近い音量の山があり,100Hz以上で緩やかに下がり続ける。250Hz〜1kHzくらいは400Hzを中心に少しだけ凹んでいるが,総じてフラットに近い,と考えてよい。そして1kHzから1.5kHzで大きく10dB近く下がり,4kHz近くまでそのままフラット,5kHz付近でまた多少強くなるが,それより高い周波数になると,徐々に落ち込んでいき,最終的に16kHz付近から急峻に落ち込み始めるが,信号が完全にいなくなるわけではない。試聴してみると,低域の山の高い範囲が広いため,低域が高域に被ったように聞こえ,さらに1.5〜4kHzが大きく凹んでいるためプレゼンス帯域が乏しく,せっかく5kHz付近を強くしても被りを相殺できていない。結果,筆者には籠もった音に聞こえる。
ただ,こういう耳に痛くない音質傾向を好む人もいるので,そういう人にはよいと思う。
モバイル用途を意識しているのか,エンクロージャーも小型だが,頭頂部分のヘッドバンドがあまり安定しないことを除けば,装着感は悪くない。
■TRITTON Kama Stereo Headset
- メーカー:TRITTON(Mad Catz Interactive)
- 問い合わせ先:マッドキャッツ [email protected]
- 実勢価格:4000〜4200円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜20kHz
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:4極3.5mmミニピン
× 1
波形評価と試聴印象
今回取り上げた中で,最も低価格の部類に属する製品なのだが,グラフだけ見ると高級機のような右肩下がり周波数特性が得られた。これはかなり驚きの結果だ。詳細に見ていくと,60Hzを低域の頂点とし,ひたすら似た勾配角度で下がり続け,凹凸も少ない。3.8〜6kHzくらいの帯域に5kHzくらいを頂点とした山が存在し,6kHzくらいからより大きな勾配角度で下がり始め,16kHz以上で急峻に落ち込み,18kHzくらいでほぼ信号はいなくなる。
低価格帯の製品は一般論として,中域の周波数特性が荒れるのが定番だが,本機には,荒れた感じがまったくない。ただ,低域が高域を少しマスクするくらい強く,低域と高域のバランスも完璧とまではいかない。明るめの音が好みの人は「籠もっている」と感じる可能性もあるだろう。
逆に,低強高弱で高域が耳に痛くない音が好みの人には,低域が強くその分全体としてスムーズに聞こえるので,低価格帯の中では最初に検討する価値のある製品の1つになるはずだ。16kHzまで信号は存在するので,マスクされて籠もったように聞こえるとはいえ,意外と定位も分かりやすい。
■LEVEL 10 M
- メーカー:Thermaltake Technology
- 問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected]
- 実勢価格:8500〜9500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:10Hz〜22kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2,4極3.5mmミニピン × 1
波形評価と試聴印象
一番強い帯域は4kHz付近で,次が850Hz〜1.3kHz付近の山だ。500Hz付近と2kHz付近は谷になっているが,グラフ全体としては,重低域から5kHz超くらいまで見かけ上はほぼフラットと述べて差し支えない。8kHz以上も,それほど落ち込んでいない。つまり,リファレンスとなるテスト信号の周波数特性が右肩下がりなわけだから,実際の聞こえ方としては逆に右肩上がりの低弱高強型になる。試聴してみるとまさにこのような感じで,高域は非常に強い。幸いにして高域の歪みは少ないので,きらびやかでクリーンな音質傾向に感じられる。そのため,確かに低域は少ないのだが,印象は決して悪くないのである。低域が弱いのを納得できるならアリだろう。
■Tt eSPORTS VERTO
- メーカー:Thermaltake Technology
- 問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected]
- 実勢価格:8000〜9500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:10Hz〜22kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2
波形評価と試聴印象
グラフは右肩下がりのドンシャリ型だが,中域と高域にかなりクセがある周波数特性だ。何と言っても目立つのは,1.3〜1.5kHzを中心とする小高い山と,6〜7kHz付近に存在するその次に高い山で,その上の帯域では15kHzくらいまで踏ん張るものの,さらにその上の帯域では一気に落ちていく。試聴印象は低域が強くて高域が冴えず,籠もる一歩手前,ギリギリの音質傾向になっている。加えて1.3〜1.5kHz付近にある,高くて幅の広い山が,変調感を生んでしまっているのも気になった。
左右の音量差は2dB強。低域重視の音質特性であるためか,はたまた個体差か,音源の中心が左に寄って聞こえたのは気になった。
■Tt eSPORTS CRONOS AD
- メーカー:Thermaltake Technology
- 問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected]
- 実勢価格:6500〜7600円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ(※USB接続によるLEDイルミネーション利用可能)
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜22kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:98±3dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2,USB × 1(※USBはLEDイルミネーション用)
波形評価と試聴印象
見事な低強高弱,右肩下がりの周波数特性だ。60Hzを頂点とした低域の山から,極端な凹凸なしに延々と下がり続けて5kHz付近にまで到達する。その上では7kHz付近に山があるものの小さく,そこからまた下がりながら20kHz付近まで信号自体は維持し続けるという波形になっている。得られる音は低域が強すぎて,高域が相対的に落ち込んだもの。7kHz付近の山は低すぎ,ドンシャリのシャリを生むには至っていない。また,低域が高域をマスクしてしまい,高域が不足しているようにも聞こえてしまう。
低域から中域にかけてのスムーズな音が好きなら選択肢として検討に値するだろうが,これを「籠もった音だ」と感じる人も多いだろう。
■Tt eSPORTS CRONOS GO
- メーカー:Thermaltake Technology
- 問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected]
- 実勢価格:4500〜6500円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ(※USB接続によるLEDイルミネーション利用可能)
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:38mm
- 公称周波数特性:20Hz〜22kHz
- インピーダンス:32Ω
- 出力音圧レベル:97±3dB
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2,USB × 1(※USBはLEDイルミネーション用)
波形評価と試聴印象
60Hzを頂点とした山が125Hzくらいまでほぼ同じ高さを維持し,そこから緩やかに下がっていく途中,125〜650Hzくらいに広範な凹みと,4kHz付近を中心とした1.8〜6kHzくらいにやはり広い範囲の凹みがあるというグラフだ。10kHz以上で割と急峻に落ち込むものの,20kHz付近でもまだ信号は存在する。「軽い右肩下がりで,中低域とプレゼンスが凹んでいる周波数特性」といったところだが,(そもそもそれほど低域と高域の差分が大きいわけでもない)リファレンスのテスト信号と比べて,さらに低域と高域の差分が小さいため,実際の聞こえ方としては,高域の華やかな低弱高強型に近い右肩上がりとなる。高域は歪みが少なく,耳に痛くもないので,印象は悪くない。ただ,波形とも音質とも関係ないのだが,ヘッドセット自体の装着感がよろしくないのは,とても気になった。ケーブルが右耳用エンクロージャから“生えて”いるのも,右手でマウスを持つ大多数のユーザーには使いづらいだろう。
■Tt eSPORTS SHOCK
- メーカー:Thermaltake Technology
- 問い合わせ先:アスク(販売代理店) [email protected]
- 実勢価格:4500〜5700円程度(※2016年10月7日現在)
出力周りの主なスペック
- 基本仕様:アナログ接続型ワイヤードタイプ
- エンクロージャ:密閉型
- スピーカードライバー径:40mm
- 公称周波数特性:20Hz〜22kHz
- インピーダンス:未公開
- 出力音圧レベル:未公開
- 接続インタフェース:3極3.5mmミニピン
× 2
波形評価と試聴印象
100Hz付近を頂点とした低域の山から下がって,500Hzくらいで一度フラットになり,1.3〜1.7kHz付近が小さな山となって,そこから4kHzに向かって20dBも落ち込むという不思議な傾向の後,急にリファレンスの音圧レベルに近い状態に戻り,17kHzくらいまで凹凸あれどほぼ同じレベルを維持し,18kHzくらいから急峻に落ち込み始めるも20kHzでもまだ信号が存在する,というグラフだ。右肩下がりなのは間違いなく,一方500Hzから1kHzくらいまっでフラットなせいか,低域が高域に被った感じはしない。また,グラフ上の大きな4kHz付近の落ち込みの割には4〜8kHzが十分だからか,籠もった印象はなく,高域が不足したようには聞こえない。
ただ,4kHzの大きな落ち込みのせいだと思うのだが,プレゼンスの帯域で強い変調を感じる。
※お詫びと訂正
初出時,GAME ZEROを「オープンエア型」,GAME ONEを「密閉型」と,スペック紹介の部分のみ,逆に記載しておりました。お詫びして訂正いたします。
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