カプコン 小野義徳氏
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ソニー・コンピュータエンタテインメントは,本日(2013年2月21日)新世代ゲーム機
「PlayStation 4」(以下,PS4)を発表した。発表の場となった
「PlayStation Meeting 2013」の会場では,カプコンの小野義徳氏が登壇し,PS4で動作する同社の新ゲームエンジン
「Panta Rhei」(コードネーム:読みはパンタレイ,万物流転の意)と同エンジンで開発中のタイトル
「deep down」の映像を公開した。
エンジンの詳細についてはなにも言及がなかったので推測に頼るしかないのだが,映像を見る限り,かなりハイレベルなスキンシェーダ,表面化散乱表現,Depth of Field,ボリューメトリックライト(?)などが実装されているようだ。
背面を見ると,ツールらしき画面が見える。流体表現やスモークのデモのようなものも
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deep downは「
Dragon's Dogma」を思わせる雰囲気の映像だ。シーンには炎や靄(もや)などが多用されており,Epic Gamesの「Elemental Demo」やFuturemarkの「Fire Strike」などと並んで,最近流行の表現内容が踏襲されているように思われた。
以下,MT Frameworkに代わるカプコンの次世代ゲームエンジンの表現力について,ムービーからシーンを切り出して検証してみよう。
冒頭のぼけ味を出しているシーン。単なる円ではなくぼけの円の輪郭部がやや濃くなっている
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表情なども含めて,かなりリアルな顔表現。額上部は,横から当たった光によって薄赤く色づいている。表面化散乱処理で血液色がつけられていることが分かる。ただ,この部分の皮膚直下に頭蓋骨があることを思えば,ちょっと広がりすぎな気もしないではない
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瞳の部分に注目すると,Agni's Philosophyで見られた瞳孔部の屈折処理までしているかは,やや疑問。ここまでリアルになってくると,睫毛がないことに少し違和感を感じるかも
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キャラクターでは,きっちりまとめた髪かスキンヘッドしか出ていないので,髪の毛の表現はあまり確認できない。異方性反射くらいだろうか
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揺れる松明の炎によって岩肌が照らされているシーンだが,Unreal Engine 4のようなダイナミックライティングをやっているかは不明だ。つららの部分では,下部は外部からの白色光,上部は松明の赤い光が反映されている
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光の筋が見えるゴッドレイ処理。シーン全体には均質な靄がかかっているものの,画面中央部やや右下には密度を持った埃を含む空気が移動している。Fourier Opacity Mappingなどが使用されている可能性がある
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モーションブラー処理。MT Frameworkでもお馴染みだろう
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ブレスを吐く直前のドラゴン。口の中に炎の照り返しが見える
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炎の処理は秀逸。リアルタイムでこのようなものは見たことがない
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自然に見えるので逆に気づきにくいのだが,揺れる炎などがかなりリアルに表現されている点は注目だろう。これはCG的にはけっこう難しい処理に属する。同様にチャレンジングなトピックである「煙表現」はあまり目立つ使われ方がしていなかったのだが,炎については全編で採用されており,かなり自信を持ってアピールしているように思われる。ゲーム内での表現にも期待が持てそうだ。
なお,映像の最後でストリートファイターIIのブランカ(小野氏のTwitterアイコンでもお馴染み)からメッセージが入っているのだが,これはソーシャル要素ないしマルチプレイに対応しているということであろう。
スクウェア・エニックス 橋本善久氏
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ちなみに,小野氏に続いて登壇したのはスクウェア・エニックスの橋本善久氏だった。氏は,PS4上で動く「Agni's Philosophy」(Luminous Studio)の映像を公開した。視聴したのがストリーミング映像なので細かい部分は不明だが,概ねPCによるデモと遜色ないものと思われる。先日のイベントでは,PlayStationの新機種については「全然知りませんけど」とうそぶいていたのだが……。
なお,Agni's Philosophyのリアルタイム実行環境として以前紹介されていたのはGeForce GTX 680によるハイエンド環境だったのだが,最新のGPUが搭載されていればノートPCでも動作するとの情報も確認している。最新世代のGPUを搭載しているとされるPS4であれば,PC版と同じものが動いてもまったく不思議ではない。
PS4上で展開される次世代ゲームエンジンは,PCゲームと比べても最先端の表現を目指していることが分かる。これまでコンシューマゲーム機のグラフィックス表現には限界があったのだが,PS4世代では「実写と見まがうようなゲーム映像」が展開されそうだ。もっとも,これはかつてPlayStation 2が登場したときに実現すると言われていたものではあるのだが……。ゲーム機のハードウェアとソフトウェア技術が,ようやくその理想に追いついてきたようだ。