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東京レトロゲームショウ2015:第30回 「F.E.A.R.」で,色褪せないグラフィックスに感心したり赤い服の少女に戦慄したりする
寒い冬こそホラー! なぜなら,今週の「東京レトロゲームショウ2015」は,今からちょうど10年前の2005年にリリースされたホラーFPS,「F.E.A.R.」を取り上げちゃうからだ。ああ,なんか怖い。
Steam「F.E.A.R.」紹介ページ
本作を開発したのは北米のMonolith Productionsで,1994年の創業以来,さまざまなタイトルを手がけてきた中堅デベロッパだ。同社の作品としては,「Shogo: Mobile Armor Division」(1998年)を知っている人も多い(個人的には2人ほど)はずだ。日本のアニメテイストを前面に押し出した,開発者の趣味が感じられまくるロボットアクションで,“Shogo”とは登場するロボットの名前だ。漢字だと「昇剛」になる。主人公の名前はSanjuro Makabe(マカベ・サンジュウロウ)で,ゲームには,昇剛を降りて自分の足で戦うFPSパートもある。
同社がブレイクしたのは,たぶん2000年に発売された「The Operative: No One Lives Forever」だろう。“NOLF”の略称で知られる同作は,1960年代に量産されたB級スパイアクションの雰囲気を再現した世界観の中で,女スパイであるケイト・アーチャーが大活躍するFPSだ。発売と同時に大評判になり,数々のゲーム賞を受賞した。
ちなみに筆者はケイトの大ファンで,続編の「No One Lives Forever 2: A Spy in H.A.R.M.'s Way」(2002年)では,彼女のポリゴン数もさらに増えて美人になったので,この連載でもぜひ取り上げたいと思っていた。ところが現在,シリーズの版権は相当ややこしいことになっているようで,オンラインゲーム配信サイトでも,買えない状況が続いている(関連記事)。誰か,売っているところを知りませんか? まあ,パッケージ版を持っているからいいけど,シリーズの最新作ついてはかれこれ13年ぐらい待っている。もうケイトには会えないのだろうか。
そんな折,大手兵器産業のArmacham Technology Corporation(ATC)で大事件が発生する。ATCでは,アメリカ軍と契約してクローンスーパーソルジャー部隊を開発中だったが,彼らをテレパシーで指揮するために生み出された男,Paxton Fettelが突如反乱を起こして,ATCの警備員らを次々に殺害していったのだ。えらいこっちゃ。かくして,わずか1週間前にF.E.A.R.に配属されたばかりの主人公(プレイヤー)は,逃走したFettelとスーパーソルジャー軍団を追っていく……という感じの設定だ。
この記事のために,久々にプレイしてみたが,まず驚いたのはそのグラフィックスだった。すでに10年が経過しているというのに,ほとんど古びた感じがしない。ゲームエンジンは,Monolithが独自に開発した「LithTech」シリーズの(そのときの最新版だった)「LithTech Jupiter EX」が使われている。前年(2004年)にリリースされた「Half-Life 2」と「DOOM 3」によって,FPSのグラフィックスは新たな次元に突入していたが,それらにも負けないほどの優秀なエンジンだったと思う。発売当時,設定をすべて最高にするとプレイできないほどのフレームレートになってしまったが,今なら問題なしでサクサク動くので,よく分からないけど,10年ぶりに勝った気がしている。
F.E.A.R.の特徴は,冒頭にも書いたようにホラー要素がやたらと強いことだ。それも,アメリカンなショッカーというより雰囲気重視のウェットなもので,それを象徴するのが赤い服の謎の少女,Almaだ。
主人公の行く先々で突然幻のように現れ,我々をビクッとさせてくれる彼女は,実体はないようだが,人間を一瞬で骨に変えたり,あたりを炎に包んだり,悪霊みたいなものを呼び出したりなど,かなり恐ろしい。視線の端で何かが動いたり,何の脈絡もなくちょいグロな映像がいきなり表示されたりと,演出はかなり凝っている。また,スプラッター要素も割と濃厚で,主人公の行く先々で血の海が広がる。出血量は多く,ゴア表現もかなりきつめだ。
果たして彼女は何者なのだろうか? そして,Fettelの目的は? とっくのとうに知っている人も少なくないと思うが,ぜひ筆者と一緒に疑問に思ってほしい。あ,そこの人,言っちゃダメ。
FPSの開発に経験が豊富なMonolithだけに,銃撃戦の爽快感は非常に高い。曳光弾が飛び交い,撃たれた敵が血を噴き上げつつ吹き飛び,壁に穴が開き,あたりに粉塵が立ちこめて視界が悪くなる,といった感じで迫力満点だ。遮蔽物の影に隠れたり,仲間と協調して攻めてきたりと,敵のAIは優秀で,緊張感が高い。最低難度でも結構やられるオレ。
Fettelを追う中,赤い服の少女の正体や,ATCだけでなく政府までも関係しているらしい「Origin計画」の全貌が次第に浮かんでくる。クライマックスは畳み込むような展開で,最後に出てくるAlmaの姿はかなりショッキングだ。うわー,怖い。
というわけで,そんなF.E.A.R.は現在,「Steam」などのオンラインゲーム配信サイトで購入が可能になっている。ただし,参加者全員がSlow-Moを使えるというユニークなマルチプレイは,残念ながらすでに終了している。原稿執筆時点で,「Steam」での価格は980円で,しかも,拡張パックの「F.E.A.R. Extraction Point」と「F.E.A.R. Perseus Mandate」まで付いてくるっぽいので,まあ奥様,お得ね。1回夕食を抜くぐらいで買えてしまうので,未プレイという人はぜひ試してみよう。
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