インタビュー
「ファイアーエムブレム」のこれまでとこれから。ファミコン時代の開発秘話から最新作「ファイアーエムブレムif」までを制作陣に聞く
「ファイアーエムブレムif」は,
ゲームを買う前から,ゲームが始まっている
さて,6月25日に発売予定のシリーズ最新作,「ファイアーエムブレムif 白夜王国」(以下,白夜王国)と「ファイアーエムブレムif 暗夜王国」(以下,暗夜王国)について,山上さんと樋口さんに引き続きお話をうかがいたいと思います。
まずは,2タイトルそれぞれの特徴について教えてください。
樋口氏:
白夜王国は,覚醒から入れられたファンの方や,もちろんこれから始める方にも安心してプレイしていただける作品を目指しました。覚醒におけるフリーマップと同様のシステムが搭載されており,思い入れのある味方をどんどん成長させていけるんです。
一方の暗夜王国は,白夜王国のような稼ぎプレイはできず,限られた軍資金と経験値で攻略を進めていくことになるため,難度も高めです。でもその分,攻略したときの達成感も大きなものになるはずです。クリア条件も,敵将軍撃破や敵全滅はもちろんですが,制圧,突破,拠点防衛やターン制限マップ等多彩です。
白夜王国,暗夜王国ともに前作のダブル,デュアルに相当する部分を含め,ルールを見直した部分も多いので,覚醒をプレイされた方にも新たな気持ちで遊んでいただけると思います。マップ全体の仕掛けも多いですよ。
4Gamer:
単にストーリーが違うだけ,というものではないんですね。
樋口氏:
そうですね。もちろんストーリーはガラッと変わりますが,そもそもマップやゲームの遊び方自体が大きく違っていますので。どちらか片方だけでも満足していただけるように作っていますが,両方を遊ぶとその違いに驚かれると思います。
山上氏:
白夜王国と暗夜王国は,一つの話を無理矢理に分割したようなものではありません。導入部こそ共通していますが,それ以外のほとんどの部分,つまり全体の5/6位はまったく異なる物語です。
我々がやりたかったのは分割することではなく,「どちらの側に味方するか」という選択から生まれる,プレイヤーさんそれぞれの「if」(もしも)の物語なんです。
4Gamer:
それはどういうことでしょう?
山上氏:
白夜王国では,自分が生まれた故郷に,暗夜王国では育ってきた国に,それぞれ味方することになります。同じ登場人物であっても,どちらに味方したかで異なる側面が見られます。片方では味方ですが,もう片方では違いますから,同じ話になるわけがないんです。……こう考えるとちょっとワクワクしてきませんか?
「ファイアーエムブレムif 白夜王国」 | |
「ファイアーエムブレムif 暗夜王国」 |
二つの勢力には,それぞれに魅力的なキャラクターがいますから,どう選ぶのかもだいご味の一つですね。
山上氏:
覚醒は,結婚をはじめとする“これまでの作中の仕様でもう一度やりたかったこと”をどんどん投入した集大成的な作品でした。その次の作品を作ることになって思い出したのが,初代作でアランとサムソンの2人を選択するときに困ったことだったんですよ。
そこで,どちらの勢力につくかを選択することにしてみたいなと思いました。その選択についてゲームを遊ぶ前から考えるということをやりたかったんです。情報に接して,どちらの勢力を選ぼうかな? と考えるところから,ゲームが始まっているという感覚を作りたかったんですね。
4Gamer:
実際に購入する前からゲームが始まっている,と。
山上氏:
ええ。このアイディアを樋口さんに持ち込んだら「それは面白い!」と言って下さって,「生まれ故郷につくか」「育ての国につくか」という選択に加え,三つめのルートまで考えてくださったんです。樋口さんに「なんでわざわざ自分の首を絞めるようなことをやるんですか?」と笑いながら聞いたら,「どっちの勢力にもつかないというのも面白いじゃないか!」と。
そして,三つのルートそれぞれが,FE1本分のボリュームになっています。
4Gamer:
ということは,新作3本を同時に作っているようなものなんですね。ずいぶん過酷そうですが……。
山上氏:
凄いことになっています(笑)。覚醒が出たあと,少し期間が空いてしまったのは,3本分のボリュームを作ろうとしていたからなんです。
4Gamer:
ちなみに,ダウンロード版については,5章までの共通部分を遊んだあとに,どちらの勢力につくかを選べるんですよね?
山上氏:
そうです。パッケージ版とダウンロード版で売り方が異なるというのは,シリーズで初の試みですね。厳密に言うと,ルートを選択したあとに,もう一度ダウンロードが必要になります。もちろん,すでにご購入いただいたあとですのでダウンロードは無料です。
樋口氏:
いわゆるアンロック形式ではないんですよ。さらにもう片方のルートを遊ばれるときには,追加コンテンツとしてあらためてご購入とダウンロードを行っていただく形になります。
山上氏:
パッケージ版をご購入いただいた方には,もう片方のルートを追加コンテンツとしてダウンロードでご購入いただけるようにしています。
4Gamer:
5章までは共通とのことですが,片方のルートで5章までプレイしたデータを,もう片方のルートを遊ぶときに使えるんですか?
山上氏:
可能です。5章まで遊んだというセーブデータを3DS本体にも保存しますので,両方のルートをご購入いただいたとしても,最初からやり直す必要はありません。もちろん,やり直していただいても構いませんが。
4Gamer:
それにしても,どちらを選ぶかによって,登場キャラクターに対する印象が大きく変わりそうですね。
山上氏:
変わると思います。でも,片方のルートだけでも充分ご満足いただけますから,興味の湧いたものを遊んでみてください。そのうえで,もう片方を見てみたくなったら,そのときはぜひ遊んでほしいですね。片方のルートを知っているからこそ,もう一方が深くなりますから。
4Gamer:
最初に情報を聞いたときには,DLCなどの形でコンテンツの追加がしやすくなったからこその企画じゃないかという印象を受けていたんですが,実はパッケージを2本出すという構想が先にあったんですね。
山上氏:
そうなんです。両方の内容を一つにまとめるとなると,どうしても2本分の価格設定にせざるを得なくなってしまうんですが,それだと片方しか遊ばない方にはつらいですよね。
4Gamer:
1本分でお腹いっぱいになってしまう人も少なくないでしょうし。
もっとライトなアナザールート的なものを想像していたんですが,そこまで違うとは……。
山上氏:
なんといってもFEですから(笑)。それぞれのシーンにもきちんとムービーが入っているなど,ちゃんと作ってありますよ。
4Gamer:
第3のルートは,パッケージ版は存在せず,ダウンロード購入だけなんでしょうか?
樋口氏:
はい,追加コンテンツとしてダウンロード購入していただくことになります。
4Gamer:
難度はどれぐらいをイメージすれば良いでしょう?
樋口氏:
一概に言いにくいのですが,感覚的には白夜王国と暗夜王国の中間ぐらいとなります。あくまで,一番難しいのは暗夜王国ですので,白夜王国から入られた方が第3のルートを遊んでも大丈夫です。
4Gamer:
暗夜王国がそこまで難しいとなると,ストーリーに興味はあるのに手を出しづらいという方も出てきてしまいそうですが。
樋口氏:
難しいと感じられた場合は,ゲームの途中であっても難度を下げることができます。
山上氏:
繰り返しになりますが,両方のルートを遊ばないと楽しめないというものではありません。1本プレイしてみて,「もっと遊びたい!」と思われたらもう1本を遊んでみてください。どのルートも一つの物語としてキッチリと完結しています。
4Gamer:
ちなみに,白夜王国と暗夜王国の間ですれちがい通信をすることは可能なんでしょうか。
樋口氏:
はい。ファイアーエムブレムifを遊んでいる方であれば,誰とでもすれちがい通信が発生します。いろいろと仕掛けを考えていますのでお楽しみに。
4Gamer:
先ほどからのお話と合わせて考えると,とても興味深いですね。シリーズの根幹は変わらないながらも,時代と共に見せ方が変わってきているという印象を受けました。
僕自身は,お話もシステム的に考えたいというところがあります。商品をただ買うだけではなく,どちらのテーマが面白いかを考えるのも,シミュレーション的で面白いですよね。
どんなゲームでも「もっとたくさん遊びたい!」と思われる方がいらっしゃいますが,今まではそうしたニーズに対応する方法がありませんでした。覚醒で初めて追加コンテンツを導入し,ご好評をいただいたんですが,あくまで限定的なことしかできなかったんです。
今回は,より物語的な部分で「もっとたくさん遊びたい!」というご要望に応えられればいいのにな,というところから生まれたものでもありますね。
4Gamer:
では,最後にファイアーエムブレムifの発売を楽しみにしている読者に向けて,メッセージをお願いします。
樋口氏:
今までのFEは“手応えあるシミュレーション”を強く意識して作ってきましたが,覚醒以降は“できるだけ間口を広く”をより強く意識する方向へと転換を行いました。今回もいろんな遊び方をふんだんに盛り込み,手応えがありつつ,さまざまな方にプレイしていただけるような作りにしましたので,ぜひ楽しんでいただければと思います。
山上氏:
FEを初めて遊ばれるのであれば,シミュレーション的な部分をあまり気にせず,“参加できるアニメ”として見てください。綺麗な映像が流れ,興味深い物語になっていますので,アニメが好きな方なら何の抵抗もなく世界へ入れると思います。
もちろん,ただ見るだけでなく,物語に参加できます。ターン制シミュレーションは,自分のペースでゆっくり考え,ゲームを確実に進めることができるので,実はゲームに慣れていない方にも向いたシステムなんです。
難しそうだと敬遠している方も,実際にプレイしてみたら,イメージと違った優しい仕組みであると感じていただけると思います。もし世界観や物語に興味を惹かれましたら,遊んでみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
最新作となるファイアーエムブレムifは,白夜王国と暗夜王国,そして第3のルートのそれぞれが,覚醒1本分ほどのボリュームを持っているという。果たしてプレイヤーの多くが選ぶのはどの道なのか? そして,三つの物語が提示されたとき,プレイヤー間のコミュニケーションはどういったものになっていくのか?
これはまさしく,シミュレーションとRPGを組み合わせたFEシリーズが,25周年という節目で挑む新たなチャレンジといえるだろう。それがどのように受け止められることになるのかも含め,注目していきたい。
「ファイアーエムブレムif 白夜王国 / 暗夜王国」公式サイト
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