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[GDC 2015]Crytekの2015年は仮想現実とAndroid TVにフォーカス。ブースでCEOに話を聞きつつ,恐竜と戯れてきた
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印刷2015/03/07 12:23

インタビュー

[GDC 2015]Crytekの2015年は仮想現実とAndroid TVにフォーカス。ブースでCEOに話を聞きつつ,恐竜と戯れてきた

Crytekブース。例年どおりの大きさだった
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 リアルタイムグラフィックス技術の最先端を行く独Crytek。一時は経営危機が囁かれ(関連記事),「Homefront」に関する知的財産をDeep Silverへ売却するなどの経営健全化策もとっていた同社だが,Game Developers Conference 2015(以下,GDC 2015)では例年どおりの巨大なブースを展示会場に構え,新作の仮想現実(以下,VR)デモや,ゲームエンジン「CRYENGINE」採用タイトルのプレイアブル展示を行っていた。
 今回4Gamerでは,そんなCrytekのCEOであるCevat Yerli氏に単独インタビューすることができたので,ブースレポートと合わせてお届けしてみたい。


2015年,CrytekはVRとAndroid TVに比重を置く


 というわけで,まずはインタビューからだ。

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。最初に,Crytekにおける今年の戦略を聞かせてください。

Cevat Yerli氏(CEO, Crytek)
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Cevat Yerli氏:
 私達はこれまでどおり,最も優れたゲームエンジンを提供していきますが,それとは別に,2つ,新しい活動にも力を入れていきたいと考えています。1つはVR,そしてもう1つは「Android TV」向けのゲーム事業です。

4Gamer:
 Android TVは,これまでのCrytekの活動とはずいぶんと毛色が異なるような気がしますが,順番に聞いていきますね。
 VRというのは具体的に何をするのでしょうか。「VR対応のヘッドマウントディスプレイをCrytekが出す」というわけではありませんよね。

GDC 2015の会場でデモ展示されていたBack to Dinosaur Island。多くの来場者が,ティラノサウルスの大迫力に驚いていた
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Cevat Yerli氏:
 ええ。
 VRをリアルタイム,かつ,説得力の高い形で実現するためには,高品位なグラフィックスをハイフレームレートで提供しなければなりません。また,VRではすべてがリアルタイム動作することが望ましいわけです。しかも,ただ「映像がリアルタイムで描画される」だけではなく,ユーザーのアクションが仮想世界に影響を及ぼし,逆に,仮想世界側のキャラクターがユーザーの感情を揺さぶるような相互干渉要素が重要になると考えています。

 GDC 2015で私達が公開したデモ「Back to Dinosaur Island」は,私達がVRに盛り込みたい要素を一通り投入して作ったものですね。

Back to Dinosaur Islandの公式イメージショット
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4Gamer:
 当然,これはCRYENGINEベースですよね。

Cevat Yerli氏:
 もちろんです。VRを実現するには,CRYENGINEのような,アーティストが使いやすく,かつ高機能なゲームエンジンが適していると考えています。

4Gamer:
 それを踏まえて伺いますが,CRYENGINEに「VR専用機能」のようなものは盛り込まれるのでしょうか。CRYENGINEは,3D立体視が業界全体でプッシュされたときにも,いち早く専用機能を実装していた記憶があるのですが。

Cevat Yerli氏:
 その答えは「Yes」です。今回も,VRに向けた最適化や強化を行っています。イメージとしては,「新機能を追加した」というよりも,「すでに用意されている機能をVRに対応させた」と理解していただくといいかもしれません。
 アンチエイリアシングやモーションブラー,被写界深度,カラーコレクション(色補正)などで,VR対策を行っています。

4Gamer:
 もう少し具体的に聞かせていただけますか。

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Cevat Yerli氏:
 では,モーションブラーを例に挙げてみましょう。
 一人称視点のゲームでは,照準合わせも兼ねる視点操作が常に行われます。そしてそのとき,映像をダイナミックに見せるため,ポストプロセスとしてのモーションブラーが常に介入されます。
 ただ,この「ポストプロセスでのモーションブラー」は物理的に正しくないので,両眼で見るVRではおかしな見え方になるのです。

 あと,VRでは,FPSのように「常に視点が動いている」ことはありません。VRでそんなことをやるとすぐに3D酔いしてしまうからですが,ともあれVRでは,「見たい方向に素早く向きを変えて静止」という,「動作と静止の繰り返し」で視点操作が行われることになります。なので,仮にモーションブラーを実装する場合には,こうしたVRならではの動きにあわせる必要があるわけです。
 いずれ,いまお話ししたようなテクニックやノウハウについて具体的にお話できる機会があるでしょう。

4Gamer:
 期待しています。で,ここまでのお話を整理すると,今後Crytekでは,「VRコンテンツ開発」に重きをおいていくという理解でいいのでしょうか。自社コンテンツとしてのVR対応タイトル,というか。

Cevat Yerli氏:
 いまはまだ何もお話できませんが,6月のE3 2015では,ある企業とコラボレートしたうえで,VR対応コンテンツに関する大きな発表を行えるはずです。あるプラットフォームに関するものになるので,楽しみにしていてください。
 ただ,ここで1つ注意していただきたいのは,私達の技術が,どのVRプラットフォームにも適合するということですね。CRYENGINEのVR向け最適化要素は,Occulus VRの「Rift」にも,ソニー・コンピュータエンタテインメントの「Project Morpheus」にも対応します。

X-Isle: Dinosaur Islandデモより
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4Gamer:
 ところで,今回のVRデモはなぜ恐竜なのでしょう。恐竜といえば,初代「Far Cry」の原型となったデモ「X-Isle: Dinosaur Island」にも恐竜が出ていましたが。

Cevat Yerli氏:
 私が最も好きな映画に「ジュラシックパーク」があるので,今回のデモも,その影響を受けていると言っていいかもしれません(笑)。

4Gamer:
 もう1つの,Android TV向けゲーム事業ですが,こちらはどういったビジネスになるのでしょうか。

Cevat Yerli氏:
 これは,GDC 2015でNVIDIAが発表した新型「SHIELD」に関係が深いビジネスです。CRYENGINEベースのゲームをAndroid TVプラットフォームへ提供しようというもので,新型SHIELDは,その足がかりになるでしょう。

 今回,ブースで展示した新型SHIELD版「Crysis 3」は,完全に移植が済んだバージョンではありませんが,わずかな開発期間でここまでのものができました。これまでCRYENGINEベースのゲームに触れてこなかったようなユーザー層に,私達の技術が生きたタイトルを提供できるようになることを期待しています。



RiftでBack to Dinosaur Islandを体験してみた


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 ここからは,ブースレポートになる。今回はRift対応のVRデモである「Back to Dinosaur Island」を体験できたので,そのインプレッションをお届けしたいと思う。
 筆者はRiftの2014年型試作機である「Development Kit 2」(以下,DK2)版と,最新型試作機である「Crescent Bay」版の両方を体験してきたので,両者の比較も行っておこう。

 さて,Back to Dinosaur Islandのデモを始めると,ユーザーは,数個の巨大なタマゴが立ち並んだ窪地に出現することになる。周りを見渡すと,前方にはCRYENGINEの代名詞的な存在でもあるジャングルが広がっていた。背後には暗い岩場が広がっており,よく見るとCrytekの刻印が岩肌に彫り込まれているが,全体としては恐竜の巣といったイメージだ。

 そうこうしているうちに巨大なトンボが襲来。トンボはユーザーの頭部の周りをくるくると回りながら様子をうかがいつつ,こちらの頭部に喰らいつこうと襲ってくる。ユーザーの周囲を飛び回るのは,360度全周で音源が動き回るサラウンドサウンド効果デモという意味合いもあるのだろう。実際,音のする方向を向くと,そこには巨大トンボがちゃんといる。
 ちなみに,このトンボの攻撃はタイミング良く首を傾けることで回避できるようになっていた。実質的なミニゲーム的要素が盛り込まれているようだ。

鬱陶しい巨大トンボを追う筆者
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 そして,シーンの最後にはYerli氏の話にも出てきたティラノサウルスが来襲。タマゴはこのティラノサウルスのものらしく,筆者をタマゴ泥棒と判断したティラノサウルスはこちらに向けて大口をあけて威嚇をしてくる。この威嚇に驚いて首を傾けると,その動きに呼応してティラノサウルスも首の角度を変える。

ティラノサウルスの威嚇攻撃に震える筆者
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 しばらくして,こちらを敵でないと判断したティラノサウルスは離れていくが,今度は360度全方位から,タマゴの殻が割れ出す音が。もしや,親ティラノサウルスの餌食にはならずに済んだものの,子ティラノサウルスの餌食になってしまうのか……というところでデモは終了した。

 DK2でもCrescent Bayでもデモの内容は同じだが,DK2では首が傾けられるだけなのに対して,Crescent Bayでは自分の体を動かせるのがポイントになっていた。なので,トンボの攻撃はCrescent Bayのほうが圧倒的に避けやすい。Crescent Bayでは,ユーザーの頭部の向きだけでなく,ユーザーの身体の位置まで検出できるため,タマゴの陰に隠れたりすることも可能だった。
 タマゴの陰に隠れてもティラノサウルスには見つかってしまうので意味はないのだが,タマゴ越しに見るティラノサウルスは,直視するよりもスケール感が強調され,迫力を増している感じがある。

恐竜と戯れる筆者
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 Crytekによると,DK2が両眼で1920×1080ドット解像度のフレームレート75fps,対するCrescent Bayが両眼で2560×1440ドット,90fpsだそうだ。DK2はペンタイル式の画素配列で,いわば疑似1920×1080ドット表示ということもあり,一目瞭然でCrescent Bayのほうが画面の精細感は高い。
 フレームレートは,数字からイメージするほどの違いを感じなかったものの,Crescent Bayで,速い動きの映像がクリアに見えるのは十分に体感できた。
 Crytekの手による一般向けVRコンテンツとしては最初の作品となったBack to Dinosaur Islandは,予想外に完成度が高かった。それだけに,Yerli氏が予告する「E3 2015で実施予定の大きな発表」が今から楽しみである。


新型SHIELD向けのCrysis 3はXbox 360版がベース


新型SHIELD向けCrysis 3がプレイアブル出展されていた
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 Yerli氏の発言にもあったとおり,GDC 2015のCrytekブースでは,来場者が実際に新型SHIELD版Crysis 3をプレイできるようにもなっていた。

 さっそく試してみたが,解像度はフルHD。フレームレートは30fpsながら,操作レスポンスは悪くない。プレイ感はXbox 360版(やPlayStation 3版)と比べても遜色ない印象だ。
 ブースには移植を担当した技術スタッフがいたため,この新型SHIELD版Crysis 3の仕様についてさらに突っ込んで聞いてみたのだが,エンジンは最新ビルド上で動作しているとのことだった。採用するグラフィックスAPIはOpenGL ES 3.1ではなく,デスクトップおよびワークステーション版となるOpenGL 4.4を採用。「基本的にはXbox 360版『Crysis 3』を移植したような格好」(技術スタッフ)だそうだ。

 新型SHIELDは,クラウドゲーム向け端末であると同時に,Xbox 360比で2倍近い3D性能を活かした“ネイティブな据え置き型ゲーム機”としても訴求されている。NVIDIAは発表会で,PlayStation 3&Xbox 360世代のゲームが妥協なしにそのまま動くとアピールしていたが,それを地でいくのがこの新型SHIELD版Crysis 3というわけである。

Crytek公式Webサイト

GDC公式Webサイト

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