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連載
【ヒャダイン】“知らなきゃクリアできない≠糞ゲー”であるぞ
ヒャダイン / 音楽クリエイター
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ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第30回「“知らなきゃクリアできない≠糞ゲー”であるぞ」
どもども。
この連載でもたびたび危惧してきたことがありまして。それが何かっていうと,最近のゲームのホスピタリティの良さと申しますか,親切設計と申しますか,そのあたりについてでございます。もちろん良い点もたっくさんあります。まずは「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」のニンテンドーDS版を例に,その辺のことを考えてみますね。
まず主人公が一歩進んだときの移動距離が大幅に変化しました。要するにリメイク版は,一歩の歩幅が広がっているのです。したがってフィールドもダンジョンも,あっという間に目的地に到着することができます。オリジナルのファミコン版だと,歩幅が狭いので,すぐにフィールドが夜になったり,ダンジョンで迷うと戻るまでに敵が出まくってMPが底をついて全滅……。などということもなく,快適に冒険を進められるよううになっていました。
そうそう,MPに関してもずいぶん変わっていましたね。例えばルーラ。そう。街から街にワープする使用頻度の高い呪文。オリジナル版で必要なMPは8だったので頻発できなかったのですが,リメイク版では4。なんと半分です。さらにほかの呪文も軒並み必要なMPが下げられ,さらにさらにマーニャやブライの最大MPはファミコン版に比べてアップ。
すなわち強力な攻撃呪文をバカスカ打てるのです。崩壊のリスクに不安を抱きながらいのりのゆびわを使う必要がなくなっていたのです。MPガス欠で戦力外となったメンバーを,肉の盾にしなくても済むのです。
あと,トルネコが呪文めいた特殊技を覚えるのもポイントですよね。とくに「しのびあし」。「ドラゴンクエストVI 幻の大地」で初めてしのびあしが出てきたとき,僕はびっくりしました。昔「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」の裏ワザで,「初期出荷分だけ,2Pコントローラーのボタンを押していたら敵エンカウントがなくなる」みたいな噂があって,それはそれはときめいたものです。あの無敵感ね。
それが公式にDQVIで登場したわけですよ。それまで聖水やトヘロスのようなエンカウント減らしの方法はありましたが,アイテムを使うこともMPを減らすこともなく,しのびあしは無制限でどこでも使える! 船でしのびあし,というよく分からないシチュエーションでも効果発揮。敵が出ないのよ。
やりごたえが減るっちゃ減りますが,小さなお子様から大きなお友達までもが同じゲームを楽しむご時世でございます。「面倒が多い」と判断されるような要素は,なるべく排除するのが主流の考え方になったのかもしれません。
しかし,昔のゲームは容赦なかったー。普通にクリアしてもダメ,というのが多かったです。今みたいにインターネットもない時代。各種攻略本やゲーム雑誌,それこそ高橋名人や毛利名人のようなゲームマスターによる解説がないと,本当のクリアが出来ないものだらけでした。
例えばナムコの名作「妖怪道中記」。たろすけという子供の主人公が悪行のため地獄に落とされて,閻魔様のところまで冒険するという横スクロールアクションなのですが,マルチエンディングなんですよ。当時は斬新だったのですが,ベストなエンディングを迎えるためには敵を倒さず,途中の金も全く取ってはいけないという鬼畜縛りをこなさねばなりません。
偶然お金を取ってしまったら,はいリセットボタン。今までの数時間がおじゃん。まさに地獄のよう。しかもね。そのエンディング条件だって,ネットで公開されていたわけでもないから手探りで見つけなければならなかったという。
KONAMIの「グーニーズ」と「グーニーズ2」も,知らなきゃクリアできない名作の一つだったのではないでしょうか。映画版と同じく主人公マイキーが仲間を助けながらボスを倒していくというアクションものですが,隠し要素が多すぎ!
ここの天井をハンマーで殴ったら穴が空いてハシゴで登ったら次の面,とか,ここでメガネを使うと金庫が見えてアイテムゲット,とか,この扉の右端をグーで殴るとアイテムが出てくる,とか,もう,たいへんです。試してみたことをいちいちノートにメモしつつ,トライ&エラーを繰り返さないと分からないことだらけ!
ハドソン「ミッキーマウス 不思議の国の大冒険」。こちらもド名作でしたが,これまた知らなきゃなかなか前に進めない。ディズニーのゲームなだけに,低年齢層をターゲットにしていたんだとは思うんですが,その割にやりごたえ感満載なんです。
五つのワールドに分かれていて,毛色の違ったステージをクリアしていくのですが,武器である消しゴムで一定の場所を連打して隠れアイテムをゲットしたり,樹木を連打してほら穴を見つけ出し入って次のステージにいかなきゃいけないんだけど,間違った穴に入ったら最初のステージからやり直しだったり,2ループしなきゃ正しいルートに行けなかったりとか,鬼っぷりは相当です。
あとは「カトちゃんケンちゃん」だ! これは大変だった。ほぼほぼすべてが隠し要素。どこに何が隠れているか分かんないから,ひたすらフィールドを蹴りまくる必要がありました。
「ここは蹴れないだろー」っていうところに次のステージへの道が隠されていたりして,一時も油断ができません。おっかないったらありゃしない。ワープのバネがあって,乗ってみたらいきなりステージ1へと強制送還という鬼畜っぷりも。
言っておきますけど,今のゲームと違って途中でセーブとか出来ないんですよ? ということは,何時間もかけてたどり着いたステージなのに,その頑張りがドンガラガッシャン。はい最初からー。今ならクレームものだよ。
でも,思うんです。そうやって“知らなきゃクリアできない=糞ゲーではない”のでは? って。確かに現在のスイスイクリアな風潮からすると,このようなゲームは無理ゲー糞ゲー認定されるのかもしれません。しかし。一個一個謎解きをして,気をつけるべきところを心に留めたりノートに記したりしながら,何日もかけて一つのゲームをクリアするなんて,素敵なことじゃあありませんか。
一つのゲームをスルメのように何度も何度も噛んで味をしゃぶりつくす。もうクリアだ! だと思ったら鬼畜の2ループ目に入る「魔界村」のような厳しさ。何事もインスタントになっている昨今,攻略サイトで簡単にチャートを調べられる昨今,昔のように鬼設定のゲームを何のヒントもなしにノート片手にチャレンジするのも一つの楽しみ方じゃないでしょうか。
と思って,最近レトロゲームをインターネットなしでプレイしてみたのですが,無理でした。こらえ性がなくなってる。ああ。現代人よ。ネット社会の操り人形よ。
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ ヒャダイン氏が音楽を担当した「拡散性ミリオンアーサー」(iOS / Android / PlayStation Vita)のサウンドトラックが,2014年9月10日にスクウェア・エニックスより発売されます(関連記事)。「ヒャダインのCDがスクウェア・エニックスから発売される!」と考えると,何だかごく当たり前のような,しかしとても不思議なことのような。こうした音楽活動の一方で,テレビ出演なども継続中。7月9日21:00〜22:54には,日本テレビ「世界仰天ニュース」に出演予定ですので,お楽しみに。 |
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