インタビュー
「Wizardry Online」はアップデートとワールド再編でコミュニティを強化。待望の古代魔法と上級職の実装予定にも言及した運営/開発チームインタビュー
「Wizardry Online」公式サイト
大きな課題はコアゲームならではのバランス調整とプレイヤーの定着
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。Wizardry Onlineは正式サービス開始から5か月経ちましたが,振り返ってみていかがでしょうか?
このタイトルは,キャラクターがロストしたり首をはねられたり,あるいはランダム要素が多かったりと,今の一般的なオンラインRPGとは異なる,尖った部分をウリにしています。そこには当然賛否両論があるのですが,これまでのプレイヤー動向を見ると,かなり楽しんでいただけていると実感しています。
前田有希氏(以下,前田氏):
運営面では,最初のプロモーションが非常にうまくいったと捉えています。白組さん制作のプロモーションビデオや,DIR EN GREYさんに出演していただいたイベントなどで,Wizardry Onlineがコアプレイヤー向けであることを強く印象付けることができました。
時田健司氏(以下,時田氏):
開発チームとしては,クローズドβテストを5回重ねたことで,ゲームのさまざまな部分に手を入れられたことが幸いでした。バグや不具合が多くご迷惑をおかけしたりもしましたが,その期間に土台となる部分にいろいろと手を加えることができたので,そのあとの開発体制にも若干の余裕が生まれました。今はモンスターのAIを強化するといった部分にも,時間を多く割いて着手できるようになってきています。
4Gamer:
この5か月間で,明確になった課題もあると思うのですが,そちらについてはいかがでしょうか。
岩原氏:
そうですね。例えばオープンβテストでは,往年のWizardryファン,現役オンラインRPGプレイヤー,ファンタジーゲームファンとさまざまな層からテスターが集まりましたが,その結果,サーバーがパンクするという事態となったんです。そこで2ワールドだったところを急遽4ワールドに増やしたり,1ワールドあたりの収容人数を増やしたりといった調整が必要になりました。
また多くの人が集まったということは,それだけライト層も多いという意味でもあります。そうなると,ゲームを始めたけれどもハードすぎて離脱してしまう人もいらっしゃるわけです。もともとハードさをウリにしたタイトルですから,多少はそうした方々が出てくるのは承知の上ですが,それでもケアが足りなかったな,と。
運営チームとしても,新規プレイヤーの定着を大きな課題に掲げています。
岩原氏:
さらにもう一つ,ワールド増設と離脱者の増加が重なった結果,コアプレイヤーがそれぞれのワールドに分散してしまいました。これはのちほどお話しますが,2012年3月のアップデートと同時にワールド統合という形で対処します。
前田氏:
またインゲームイベントの企画/実施もまだまだ手探り状態です。このタイトルには岩原が指摘するように,さまざまな層のプレイヤーが集まっていますから,どういった内容が最も効果的なのか模索しています。現状は,毎回毛色の違うものを提供して反応を見ている段階ですね。
4Gamer:
なるほど。それではプレイヤーから寄せられる意見/要望への対処はどうなっていますか?
岩原氏:
数多くいただいているものは,ゲームバランスの調整についてです。とくにサービス開始当初は,モンスターの強さと配置,報酬,そして対人戦闘と,ゲーム全般のバランス調整が不十分でした。以降,調整を重ねてようやく整いつつあるという感じですが,これはオンラインゲームのサービスを続けていく中で常に付きまとう課題ですから,今後も継続して調整する必要があります。
前田氏:
ゲームバランスに関しては,これまでの運営チームからの要請で,開発チームが当初考えていたものとはかなり変わっているんですよね。ようやく,そのあたりも見直しを図る余裕が出てきました。
往年のWizardryシリーズというより
現代のオンラインゲームとして評価されている
4Gamer:
前回のインタビューでは,運営/開発ともバタバタでいっぱいいっぱいというお話でしたが,今回は“余裕”というワードが結構出てきますね。
ええ,ようやく運営/開発のサイクルが安定してきたところです。
そもそもWizardry Onlineは,一般的なオンラインゲームとは運営/開発の手順が違うんです。まず,私はWizardryというIPの総合プロデューサーですから,Wizardryを理解する人間として意見を出します。それに対して前田がオンラインゲームを運営する立場から,そして時田さんが開発の立場から工数や実現の可能性についてそれぞれ意見を述べます。誰かの発言がそのままゲームに反映されることはなく,三者が喧々諤々の議論をしているのですが,そのスタイルも定着してきました。
4Gamer:
アクション性のあるオンラインゲームと,Wizardryらしさを両立させるための議論は相当難しいんじゃないでしょうか。
岩原氏:
そうですね。実際,今のWizardry Onlineは,プレイヤーに「これはWizardryじゃない」と言われてしまうこともあります。
とはいえ,従来のWizardryシリーズは素晴らしいゲームである反面,そのままのコンセプトで続けていっては将来的にどうだろう……という疑問が残ります。当初からお話ししているとおり,Wizardry Onlineは“新しいWizardry”を目指していますし,そういう意味ではいい結果を出せていると捉えています。
4Gamer:
往年のWizardryファンで,今,Wizardry Onlineをプレイしている人はどのくらいいるんですか?
岩原氏:
データを取ったわけではないので,Twitterなどを介した私個人の肌感覚からの意見になってしまいますが,決して多くはないです。とくにWizardry I〜Vのファンにとって,本作はなかなか受け入れがたいものになっているかもしれません。
前田氏:
運営チームに寄せられる意見/要望を見ても,往年のWizardryとしてではなく,今のオンラインゲームとしてどうなのかという内容が多いですね。もちろん「そもそもWizardryとは〜」みたいな意見もいただくのですが,それをすべてオンラインゲームに適用できるわけではないという現実があります。
岩原氏:
それでも,最初のボーナスポイントがランダムで決まったり,レベルが上がるとパラメータが下がったりというWizardryならではの要素は,一般的なオンラインゲームと比較するとかなり異質ですけれど(笑)。
あとは往年のWizardryを知っている方というと,もう年齢的にゲームから離れた生活を送っているケースも多いですから,Wizardry Onlineの存在を知らない可能性があります。そういった方に対して,いかに訴求していくかというのも課題の一つですね。
4Gamer:
ちなみに開発チームでは,どのくらいWizardryファンを意識しているんですか?
時田氏:
最初の企画の段階で,ゲームポットさんと,まずオンラインゲームとして成立するものを作ろうと決めました。そこにWizardryの要素をどうやって乗せていくか,運営/開発チームで意見をすり合わせた結果が,今のWizardry Onlineというわけです。
ついに登場する「賞金首」システムで
善悪のロールプレイがさらに加速
4Gamer:
それでは,2012年3月から実施される一連のアップデートについて教えてください。
岩原氏:
以前発表したロードマップの2012年前期予定分の大半を,3月下旬から約1か月かけて実装していく予定です。その前哨戦ともいえる3月13日には,ソウルランクの上限が現在の12から20まで上がります。また,ソウルランク13から20までのボーナス要素も同時に発表します。
4Gamer:
プレイヤーのモチベーションも上がりそうですね。
岩原氏:
ソウルランクを20にするのは厳しい道のりです。1か月プレイした程度では,まず達成できないはずですから,やりがいがありますよ。またボーナス要素に関しては,発表後,さらに追加する可能性があります。
4Gamer:
苦労に見合うボーナスを期待できそうですね。
岩原氏:
また,可能であれば今回の大型アップデート期間内に実装できればと思っていますが,「好感度NPC」を実装する予定です。これは今よりも世界観を踏まえたロールプレイを楽しんでいただくための施策で,このNPCにアイテムなどを貢いでいくと,好感度に応じてセリフが変化したりします。将来的にはキャラ数を増やしたいとも考えています。
4Gamer:
プレイヤーの意見/要望を反映した改善などはどうですか?
岩原氏:
装備プレビュー画面の拡大や,称号の並べ替えなど,主にUIを改良しています。あとはポイント「生命のマテリアル」で交換できるアイテムとして,各種族のキャラクター設定時の装備をアバター化します。前哨戦はこんなところですね。
4Gamer:
では続いて,ぜひ本番のアップデートについて教えてください。
岩原氏:
目玉となる要素は3つあって,まず1つ目は3月末に行うユニオン機能の拡張です。
ザックリ説明すると,一般的なオンラインRPGにあるギルドシステムの機能を実装します。具体的には,まずユニオンにレベルの概念が追加されて,レベルの上昇に応じて最大所属人数が増えていきます。またユニオン用の倉庫も登場しますので,ユニオンメンバー間のアイテム共有も可能になります。
4Gamer:
ユニオン内コミュニケーションの強化というわけですね。
時田氏:
さらにユニオンメンバーがお揃いのマントを装着できる「ユニオンマント」も実装します。これはユニオンごとにマントの色とロゴマークを選択できます。ロゴのデザインは結構力を入れていて,20パターンくらい用意しています。
岩原氏:
私が発注した段階では,シンプルなロゴを想定していたんですが,かなり描き込まれた仕上がりになっていてびっくりしました。また実装時点では,ロゴは20種類くらいですが,随時追加していきます。将来的には,プレイヤーからデザインを公募したいですね。
時田氏:
そして「ユニオンルーム」機能が登場します。
4Gamer:
ギルドハウスとかアジト的なものですか?
岩原氏:
いえ,そうではなく,宿屋の1室を時間借りするようなイメージですね。やはり皆で顔を合わせて打ち合わせをするような空間がほしいだろう,と。まあ,すでにユニオンチャットがあるんですけれども(笑)。
4Gamer:
ロールプレイ的には重要ですよね。
岩原氏:
2つ目の目玉が「賞金首」システムです。ただ,名称は変更するかもしれません。
時田氏:
これは,特定のプレイヤーに賞金をかけて,そのプレイヤーを倒したプレイヤーに報酬が与えられるというシステムです。賞金をかける側はゲーム内通貨をNPCに支払う形式で,賞金額が高くなると賞金首のランクも上がっていきます。また一人のプレイヤーに対して複数プレイヤーが賞金をかけることも可能です。
4Gamer:
早い段階から挙がっていたアイディアが,ようやく実現しますね。賞金首になったプレイヤーを倒すと,報酬として賞金全額がもらえるんですか?
いえ,報酬は賞金総額に応じた専用ポイントになります。このポイントを貯めていくことで,賞金首関連の称号を得ることができます。
前田氏:
事実上いくらでもアカウントを取得できてしまうシステム上,どうしても賞金首の自作自演を防げないんですよ。そこで報酬はゲーム内通貨ではなく,違った形のメリットにしようと考えました。
時田氏:
誰がどれだけ賞金をかけられているかは,ゲーム内の専用掲示板で確認できます。キャラクターネームだけでなく,顔も手配書っぽく加工して表示しますよ。
岩原氏:
倒される賞金首の側にも,面白いシステムが用意されるんですよね。
時田氏:
倒されると牢獄に入れられますが,この場合は今ままでの脱獄方法では出られません。この牢獄から出るためには,賞金額の倍額相当のゲーム内通貨を支払うか,もしくは賞金額をゼロにする必要があります。
4Gamer:
賞金額をゼロにするとは?
ボーナスポイントの抽選時のように,数字がランダムで表示されて,ストップさせたときの数字だけ賞金額が減っていくんです。
岩原氏:
例えば賞金額1万のときに5とか6ばかりが続くと,何時間も同じことを繰り返さなければならないわけです。時間的なものか,金銭的なものか,いずれにしても倒されて捕まった賞金首は,かなりの負担を強いられることとなりますね。また賞金額などにに応じて得られる称号もあります。
4Gamer:
悪人プレイも面白くなりそうですね。
時田氏:
これまでは,あるプレイヤーがどのくらいPKをしているのかまでは判別できなかったんですよ。しかし賞金首として多数のプレイヤーから賞金を掛けられるようになると,それも分かりやすくなります。ゲーム内がいろいろ活性化すると期待しています。
岩原氏:
賞金首は,最初から掲げている“喜怒哀楽に訴えかける”というコンセプトに基づくものです。
そして3つ目の目玉が,4月中旬実装予定のオークションシステムです。これは従来の露店だけでは不便だという意見に応えたもので,具体的な機能は一般的な競売と同じです。露店ではすぐに換金したいものを,オークションでは時間を掛けても高く売りたいものを売るというような使い分けができるようになります。
既存ワールド統合でコアプレイヤーを活性化し
新ワールド追加で新規プレイヤーを獲得
4Gamer:
それでは,最初のほうで岩原さんがお話ししていたワールドの統合についても教えてください。これもアップデートと同時に行うんですよね?
岩原氏:
今回のアップデートで追加されるユニオン機能,賞金首,オークションシステムのいずれも,コミュニティ関連のアップデートであり,プレイヤー数が多ければ多いほど面白くなっていくコンテンツです。そこでこのタイミングでワールドを統合し,コミュニティを活性化する必要があるわけです。具体的には,現在4つあるワールドを2つに圧縮します。
また同時に新規ワールドを1つ開設し,新規プレイヤーの開拓を図ります。
4Gamer:
ワールド統合というと,プレイヤー数の減少などネガティブな印象がありますが,そういうわけではないんですね。
ええ。1つには既存のコアプレイヤーの活性化,そしてもう1つは新規プレイヤーの獲得が目的です。やっぱりオンラインゲームは,皆が横並びでスタートするタイミングが一番盛り上がりますから,新規のプレイヤーさんにゲームを楽しんでもらうためには,新規ワールドの追加が一番効果的です。
4Gamer:
ちなみにワールドを統合するにあたり,考慮する要素はありますか? 例えば現在,PKが活発なワールドと,そうでないワールドに何となく分かれていますよね。
前田氏:
実のところ,あまりPKは意識していないんですよ。むしろ,アクティブプレイヤーの数や,プレイ開始時期,ソウルランクなどが統合のポイントになっています。
岩原氏:
正直な話,PKはいつでも発生し得るんです。最初はPKなんてしないと考えていた人でも,腹に据えかねることが起きたらPKをする可能性があります。したがって,このゲームではPK基準で何かを決めることはないでしょうね。
前田氏:
基本的にPKをよく思わない人が多いですから,PK基準で物事を決めてしまうと,大多数の人にとって思わしくない結果になってしまうんです。
4Gamer:
実際,PKの発生率はどうなっていますか?
前田氏:
βテストからサービス開始直後と比較すると,かなり減っています。とくにスキルのバランス調整を重ねたことで,一撃で倒す/倒されるというケースが少なくなりました。今後も引き続き調整を重ねて,「通り魔にやられる」的なケースは可能な限り少なくしたいです。攻撃を受けて,逃げるか戦うかという選択肢があった上で倒されるなら仕方ないと思いますが,訳も分からないまま一方的にやられるのは面白くないですから。
岩原氏:
また統合に伴い,1アカウントにつき2ソウルまで所持できるようにします。これは,統合されるワールドのどちらにもソウルを作っている場合に,面倒な手続きを踏まなくてもいいようにするためです。またデフォルトで使用するソウルをオプションで設定できるような仕組みの導入も考えています。
4Gamer:
今の1アカウント1ソウルだと,キャラクターが異なっていても同一ソウル内で犯罪歴が共有されますよね。1アカウント2ソウルになるとどうなりますか?
犯罪歴やアイテムは,今までどおりソウルごとに管理されます。つまり,片方のソウルが犯罪者扱いでも,もう一方のソウルには影響がありません。
4Gamer:
そこに問題は生じないんですか?
岩原氏:
今までも1人のプレイヤーが複数アカウントを所有できましたから,とくに問題はないですよ。
4Gamer:
なるほど。基本的には今までどおりである,と。
岩原氏:
そのほか具体的な時期は未定ですが,4月末までにいくつかアップデートを実施します。まずはマクロ機能の追加です。これは主にスキルや装備のコマンド化,チャットの自動化に使えます。戦闘中に「もっとやれ」「逃げろ」といった意思表示をボタン一つで実行するためのものです。それほど複雑なものにはせず,ある程度簡単に設定できて使いやすいものにする予定です。
4Gamer:
戦闘中は操作が忙しいですから,喜ぶプレイヤーが多そうです。
岩原氏:
さらにストーリーとは関係なく,誰でも入れるダンジョンを導入します。ベースとなっているのは,これまでに登場したダンジョンなんですが,ちょっとびっくりするようなアレンジが施されていて面白いですよ。
4Gamer:
ダンジョンに追加されるデプスゲートとも異なる感じですか。
岩原氏:
ええ。いわば,“精神と時の部屋”とでもいうか,そんな仕上がりです。誰でも入れるので,修行場みたいな使われ方をすると想定しています。
あとはキャラクタースロットが1ソウルあたり5人分に増えますし,UIのさらなるブラッシュアップと,クライアントのエラー送信機能といった,システム周りの改善を行います。ともあれ,βテストやサービス開始前後と比較すると,ずいぶん遊びの幅も広がりましたし,プレイしやすくなりますから,一度やって離脱した人もぜひもう一度試してほしいです。
2012年は「エンシェントマジック」
最大級のダンジョン,上級職が相次いで登場!
4Gamer:
それでは,そのあとの展開についても教えてください。プレイヤーが気になるポイントとして,「エンシェントマジック」や上級職の実装がありますけれども。
エンシェントマジックは,2012年6月までに第1弾を実装できる見込みです。封印されたスキルなので,従来のスキルよりも強力という設定があるので,例えばHALITOやDIOSといった旧作では初期魔法であったものも,Wizardry Onlineでは相当高い効果を得られます。
またエンシェントマジックには,それらとは別に種族別のスキルも用意しました。これはダンジョン内で専用アイテムを入手して習得するものです。
4Gamer:
例えば,敵の集団を窒息させるMAKANITOのような呪文はどうなるのでしょう? そのままの効果だと,いろいろ問題がある気もしますが。
岩原氏:
世界観的に復活させるとまずいものに関しては,禁呪のような扱いになります。またエンシェントマジック自体,まとめて全部実装するのではなく,段階的に追加していきます。当然,最強の呪文だったTILTOWAITは現状のニュークリアブラストを上回る破壊力を持ちますが,それをどう表現していくかといったことも検討していかなければなりません。
4Gamer:
分かりました。それでは,上級職はどうでしょう?
岩原氏:
上級職はエンシェントマジック登場のあと,2012年内の実装を目指しています。実装するのはロード,侍,忍者,ビショップの4職業で,今のところレベル40〜50で転職することが望ましい仕様を考えています。また上級職に転職するための条件も,かなり厳しいです。
4Gamer:
上級職転職の条件に,現在の職業は含まれますか? 例えばメイジでないと侍やビショップに転職できないとか。
岩原氏:
それはないです。戦士でレベルを上げて,忍者やビショップに転職することもできます。
4Gamer:
上級職の役割はどうでしょう。Wizardryシリーズのイメージを踏襲するのでしょうか?
岩原氏:
そこはオンラインゲーム的なアレンジが加えられて,ロードはタンク型,侍は攻撃特化,忍者はトリッキーな動きとクリティカルヒットが特徴です。
そして最もアレンジが強いのがビショップですね。メイジとプリーストの特徴を一部継承しつつ,ビショップならではの特徴を持たせています。これは,ビショップがいればメイジもプリーストもいらないという状況を避けたかったからです。
4Gamer:
そのほか,今お話ししてもらえることはありますか?
2012年夏実装を目指して,現在の章の最後の舞台となる超大型ダンジョン「サンジェント遺跡」を開発中です。ここにはドラグーン遺跡のカーリーに次ぐ,2番目のボスモンスターが登場します。またサンジェント遺跡は,Wizardry Onlineの中でも今のところ最大級のダンジョンとなる規模です。
4Gamer:
それは階層が多いという意味ですか?
岩原氏:
階層もそうですが,1フロアの広さも最大級です。
そしてそのあと,新章に入っていくわけですが,そのあたりから6人パーティ用のダンジョンが登場します。以降は,4人用と6人用を混在させる形でダンジョンを実装していきます。
また,まだ企画段階なのですが,Wizardryシリーズに登場したダンジョンをアレンジして実装するアイデアもあります。
4Gamer:
おお,「狂王の試練場」とかですか。
岩原氏:
さすがにそのまま再現すると,今のWizardry Onlineでは狭くなってしまいますから,このフロアとこのフロアをくっつけて……みたいな感じになるかと思います。再現というよりも,Wizardryシリーズを知っているとより楽しめるような内容を目指しています。「ブルーリボンって,こんなものだったんだ」などと思っていただけるような。
4Gamer:
というと,グラフィックス的にも面白くなりそうですね。カエルの彫像とか。
岩原氏:
まさに企画中ですので,詳細についてはもう少し待ってください。個人的には,モンスターアロケーションセンターは外せないと思っていますが。
2013年実装に向けたコンテンツも順調に企画・開発中
海外展開や新たなコラボも視野に
4Gamer:
さらにその先,2012年後半から2013年以降の予定はどうでしょう?
岩原氏:
今は3つくらいの企画が動いています。まずは以前からお話している「バトルランナー」企画です。
4Gamer:
確か前回のインタビューでは,捕まった犯罪者が処刑人のいるダンジョンに入れられて,うまく逃げ切ったら解放されるというような内容でしたよね。
岩原氏:
さらに,そこにお金を賭けられるようにしようかどうか考えています。全体のイメージとしては,旗取り合戦みたいな感じでしょうか。
次に,プレイヤーから要望の多い,ペナルティのないPvPコンテンツです。闘技場のような場所を用意するだけなので実現は難しくないのですが,ただ戦うだけではそれほど面白くならないので,どう盛り上げるか考えているところです。
4Gamer:
例えば,どうすれば盛り上がるとお考えですか?
岩原氏:
どこまでできるか分からないのですが,観戦できるようにするとか,罠のようなギミックを用意するとかですね。
4Gamer:
なるほど。3つ目はどんなコンテンツでしょう?
岩原氏:
カジノです。これは複雑なことをせずに,Flashを使ってさまざまなタイプの賭け事を再現しようかと。
ほかにもいろいろアイデアはあるのですが,優先度を付けながら随時実現していきます。
前田氏:
私個人は銀行を実現したいんですよねえ。
岩原氏:
所持金を預けると,利子が付くというメリットがあるんです。ドーンと大きな額を預けると,それだけ見返りも大きいという感じですね。その反面,銀行が強盗に押し入られると全部持っていかれる可能性もあるという内容です。
4Gamer:
プレイヤーが強盗になれるんですか?,
岩原氏:
そうです。逆にお金を預けている側は,別途お金を払って衛兵を雇い,防衛できます。
4Gamer:
なるほど。ちょっと規模の小さい攻城戦みたいになりそうですね。
前田氏:
かなり早い段階からアイデアだけはあって,実は宿屋の横にそれらしき物件も用意されているんです。ところが優先順位の問題で,ずっと先送りになったままという……。
岩原氏:
とはいえ,誰かがやりたいと言い続けている企画は,これまでかなり実現しているんです。だから銀行もいつかは実現すると思いますよ。
4Gamer:
それではコラボレーションはどうでしょう?
今のところ,実現したのがDIR EN GREYさんとのコラボだけですから,何かできないかとは常々考えています。基準はメジャーかどうかよりも,確固たる世界観やスタイルを持っていることですね。2012年内に一つくらいコラボを実現したいところです。
4Gamer:
海外展開はどうですか? 2011年はE3でカンファレンスを開催したり,韓国G-Starのビジネスブースに出展したりしていましたよね。
前田氏:
非常に関心が高くて,いい感触を得ています。
岩原氏:
とくに欧米からの反応がいいですね。「ロスト? 首が落ちる? いいねえ!」みたいな感じで(笑)。実際,私も渉外担当には,欧米から攻めるようリクエストしているんですよ。逆輸入じゃないですけれど,北米発祥のWizardryが日本でこんな形になったというところを見せたいですから。ただ現時点では,まだ契約云々という段階ではないです。
4Gamer:
なるほど。それではWizardryの総合プロデューサーとしての岩原さんにお聞きしますが,Wizardry Onlineに限らず,シリーズ全体で何か動きはありますか?
岩原氏:
コンシューマタイトルのプロジェクトなど,水面下ではいろいろ動いています。こちらは,時期が来ればお話しできるかと思います。
4Gamer:
分かりました。では最後に,Wizardry Onlineの今後に期待する人に向けて,メッセージをお願いします。
現状のWizardry Onlineではプレイヤー間の格差が生じていますが,それを解消するのはもちろんのこと,新規で始めた方も存分に楽しめるような調整を施していきます。また,これまでは上位コンテンツを増やすことを優先してきましたが,これからはさまざまレベル帯のコンテンツに厚みを出していくような展開にも注力していきます。
その先駆けとなるのが,2012年3月から4月に掛けてのアップデートです。ぜひ期待してください。
時田氏:
開発チームでは,現在,装備アイテムを用意していますので,これから徐々にお披露目できると思います。またダンジョンもペースを落とさず続々と実装する予定ですし,システムの拡張もいろいろ考えています。
その一方では私達が想像しなかったような新しい遊び方も,プレイヤーの皆さんにどんどん発見していただいていますから,そのための土台作りを引き続きやっていきます。
岩原氏:
Wizardry Onlineで最初に目指したのは,ロールプレイをするための箱庭です。そのため,システムやルールをがんじがらめにはせず,PKや犯罪行為も可能にしました。そこに賛否が集まりがちなのですが,その根底にあるのは,プレイヤーに世界を作ってほしいという考え方です。時田さんがおっしゃるような,プレイヤー自身が遊び方を考えることは,まさに世界を作り出すことです。そして私達は,世界のベースとなる箱庭をしっかり作っていきます。
またTwitterや公式サイトで寄せられた意見/要望で,実現可能なものは極力採用しています。今後,もう少し運営/開発が安定したら,そういった意見や要望を皆さんと議論できる場も用意しようと考えています。ゲームを作るのは我々ですが,育てるのはプレイヤーの皆さんですから,ぜひご協力ください。皆でWizardry Onlineを育てていきましょう。
4Gamer:
ありがとうございました。
ちなみにプレイヤーからのリクエストの多くは,相変わらず岩原氏のTwitterアカウントに寄せられているそうだが,氏は可能であれば公式サイトのサポートからお問い合わせいただきたいと話していた。ここからであれば運営/開発チームの全スタッフが見落とす可能性がないという理由もあるのだろう。
また今回のアップデートおよびワールド再編に合わせ,既存/新規それぞれのプレイヤーに向けたキャンペーンも行われる。詳細は別途発表になるが,Wizardry Onlineに興味がある人は,ぜひこの機会にプレイしてみてほしい。あるいはβテストで肌に合わないと感じた人も,これまでに増えたコンテンツや調整されたゲームバランスを確認する意味で,再度プレイしてみてはいかがだろうか。
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