インタビュー
ついに明かされるWizardry Onlineの方向性。そればかりか,なんとアノ作品の流れを引く新作までもが登場する2010年のゲームポットについて,社長の植田氏に聞いてみた
コンソール進出の線はない
――プラットフォームとして成立しててメリットがあればいいんですけどね
4Gamer:
ところで植田さんって,何が面白くてパブリッシャをやってるんですか。
植田氏:
難しい問いですね。うーん……ユーザーの感覚と時流の流れをキチッと捉えたうえでサービスして,ばっちりハマったときの感覚が楽しいですね。
言い換えると,海外から持ってきたタイトルでも,いかに日本向けにアレンジしてやってくかということ,とか。アレンジもそうですが,どういうユーザーにアピールしていきたいのかとかも含め。
打ち出し方変えるだけでも変わりますしね。古くは「レッドストーン」のイラストなんかもそうですが。考えるべきことはいっぱいありますよね。
植田氏:
みんながみんな同じことやって似たようなタイトルが増えて,サービスそのものが単純になるのは,業界としてはよくないと思いますし。
4Gamer:
もしそうなったら,かつてのファミコンのように,淘汰の時期は一回迎えたほうがいいんじゃないですかね。
ところでコンソールは?
植田氏:
まだ早いかなという気はします。
4Gamer:
ということはやる気はあるんですか?
植田氏:
まぁチャンスがあれば(笑)。今の状態ではやらないですけどね。
4Gamer:
状態といいますと。
植田氏:
売れないですもん。
4Gamer:
とくにここ最近はキツい感じがありますしね。
プラットフォームとして成立しててメリットがあるなら面白いかなぁとは思いますが,ただやっぱりオンラインゲームの良さって自由度があるっていうところじゃないですか,サービス形態やビジネスモデルを含め。どこの国でもできますし。
4Gamer:
自主規制以外の規制が実質ないですしね。
植田氏:
すごくビジネスのやりやすさがありますよね。
4Gamer:
それ考えると,コンソールはちょっと,ね。オンラインゲーム絡みの話なら,パッチが当てられないとか,プラットフォーマーのQAが大変とか,釣りコントローラーでも動くようにしなきゃいけないとか(笑)。
植田氏:
ですよね(笑)。あとコンソールだと,売れなかった良作ってあるじゃないですか。でもオンラインゲームの場合そういうのが事実上ないと思うんですよ。良作と呼ばれるゲームは,仮に始めは,何万人という数に届かないプレイヤー数だったとしても,ジワジワと上がっていくんですよ。最後にはビジネス的に成功する。
そういう口コミとかを含めた誘導が無料で最初にできるので,コンソールゲームよりはとっかかりがつきやすいというのはあるのかもしれません。
4Gamer:
確かに。
植田氏:
まぁいくらオンラインといえど,中止になったときは固定ファンのみなさんを悲しませてしまうんですが。
4Gamer:
ずいぶん前だとタクティカルコマンダーとかそうかもしれませんね。新しいところではジャンクメタルとか。運営でどうにかなるのか,と問われると非常に難しいですが。
植田氏:
まぁ確かにそうですね。タイトルのパワーだけではないとはいえ,ね。
オンラインゲームは,取り巻く環境すべてを含んで「ゲーム」である
――遊んでくれる人に日々新しい発見なり楽しみなり期待感なりを常に生み出せるのがいい運営
4Gamer:
いい運営ってどんな運営だと思います?
今日は難しい質問が多いですね(笑)。
たぶんユーザーさんから見ると,いい運営っていうのはシステム的にすごく安定しているとか,ゲームの中のコミュニティが荒れてないとか。そういうことを言うのかな,と思ってます。
で,それは当然のことなので,基本としてキチッとやります。その上で,遊んでくれる人に日々新しい発見なり楽しみなり期待感なりを常に生み出せる運営というものが「いい運営」かなと思います。
4Gamer:
広義の意味ですね。
植田氏:
狭義だと,問い合わせのレスポンスが早いとか対応がいいとかですかね。
4Gamer:
BOTをちゃんと消すとか。
植田氏:
もちろんそれはそれで当たり前ですね。それ以外に,ユーザーさんに楽しみをキチッと教えてあげる。この部分はこれがすごく面白いから,楽しみましょう/遊びましょうというのを導くのがいい運営なのかと思います。
4Gamer:
なるほど。
では,いい運営というのは,オンラインゲームにとって大事なものだと思います?
植田氏:
思います。弊社は元々のスタートがライセンスものから始めたという経緯があるじゃないですか。そのころから日々心がけているのは,ウチだから出来ることって何だろうか,ウチらしさってどう表現しようか,と。Webサイトの見せ方とか,Webサイトにどう注目を向けてどうやってそこで遊んでもらうか,興味を持ってもらうか。もちろんゲーム内のイベントなんかも含めて,そこでゲームの色が出ると思うんですよね。
実際に今ユーザーさんにどう思われてるのか分かりませんが,イメージとしては「なんとなくフレンドリーっぽい」会社に見えてるといいなぁ,と思ってます。……なんでこんな質問が?
4Gamer:
いや,そういう部分をどうお考えなのか,ちゃんとお聞きしたことがない気がして。そういうものが「目指すところ」なんですね。
そういうのって,各社で違いがあってもいいと思うんですよね。
4Gamer:
フレンドリーっていうのは,社長の口から明確に出るのはあまりないですね。
植田氏:
GMがどうユーザーさんに接するかとかもそうですし,Webサイトやプレスリリースなんかの表現もそうですね。そういう諸々を含めて,やっぱり運営の手腕だと思うんですよね。
4Gamer:
ゲームそのものの出来とは違う部分で評価されることがあるのも,オンラインゲームのややこしいところであり魅力でもある部分ですね。
植田氏:
むろんゲームの出来も大事ですし,運営がそういう具合に動いていって,今後のアップデート方針をどうしていこうとか,ゲームバランスはどうしていこうとか,そういうところをユーザーさんとの対話のなかで見つけていくとか。
4Gamer:
ユーザーとの対話ってどういうことを指してます?
植田氏:
いや,もちろん直接的な対話じゃないですよ。常にユーザー動向を気にしてるっていうか。細かい話にするならば,どういうレベル帯にユーザーが分布しているのかな,とか。
4Gamer:
なるほど。サイレントな対話ですね。
植田氏:
ゲーム内に通貨価値のあるようなゲームであれば,ゲームの中の経済状況はどうなっているかとか,どこかで極端にバランスが悪くなってないかとか。もちろんユーザーさんの声を全部受け入れられるわけじゃないですけど,ピックアップしていく中での方向付けという意味でも,とても大事に思っています。
4Gamer:
解釈次第ではありますけど,数字は嘘付かないですからね。
FEZやペーパーマンなんかはアンケートとったりしてます。新しいシステムを入れるときに,テストサーバーでやって感想を聞いてみたり。
それをユーザーさんに公開しようかな,とも思ってるんですよね。現在こういう状況です,と。それで,私たちがどれくらいユーザーさんの声を反映させるつもりなのかを公開して,ユーザーさんに向けて提案してみてはどうだろう,とかね。
4Gamer:
曲解されるリスクはありますけど面白そうです。
植田氏:
韓国から来る作品とかだと,かなりの程度向こうでバランス調整されていることが多いんですけど。
4Gamer:
4Gamerにも,ユーザーさんからたくさんのクレームが毎日来ます。「あの会社は運営がなってない」「あの会社の方針はおかしい」「あの会社の課金は高すぎる」など。
普通に考えて,メーカーさんに直接メールしたほうが良さそうなものなんですけど,要するにパブリッシャとかデベロッパに対して「どうせメールなんか出しても読んでくれない」「読んでもアクションが起こらないので意味がない」とか,そういう思いが強くて我々に送ってくるんじゃないかな,と思うんですよ。
植田氏:
ご迷惑をかけてるとは……。
4Gamer:
いえ,別に迷惑なことじゃないんです。
でもオンラインゲームというものは,サービスまでも含めて「ゲーム」であり,やはりそこは既存のパッケージコンソールとは一線を画する部分ですよね。なので「どうせ言っても聞いてくれない」という認識があるなら,それは早めにどうにかするべきだと思うんですよ。
もちろん,先ほどおっしゃったように全部聞いてられないのが当たり前だし,「そんなこと言われたって技術的に無理です」ということも多いわけですよね。でもそもそも「シカトされると思っている」という状況からは何らかの形で脱却しないと,結局はこの先行き詰まるような気がして。
植田氏:
確かに「聞いて欲しい」という思いが一番大きい気はします。こちらとしては,まずは聞くべきを聞いて,もちろんそれが反映できるのかどうかっていう判断や,この先のプランニングとかも考慮したうえでアクションを起こす。
ドライに言うなら,多くのことはアクションが起こせない気はしますけどね。でもやっぱり聞いてほしい。
……と,そろそろ時間も尽きてしまいました。最後に,4Gamer読者に一言お願いします。
植田氏:
今年のゲームポットは,いろんなニュースが満載になると思います。非常に本気のタイトルもたくさん登場しますので,ぜひ期待してください。
4Gamer:
「たくさん」出るんですね。
植田氏:
ちゃんと計画通りいくか自信がないし「いくつか」にしておいてください(笑)。
まぁでも骨太のゲームが出るのは間違いないですよ!
奇しくも,ガマニアに続いてゲームポット植田氏のインタビューを掲載することになった。
4Gamerの読者であれば,その2社を知らない人はいないと思うが,「2009年は静かな1年だった」「2010年は自社IPというものを強く意識して動く」という似たような方向性を打ち出しているのが,あたかも今年のムーブメントを先取りで占っているような印象を受ける。
国内コンソールのIPを使って,よりプレイしやすい方向(=ブラウザゲーム)にもその手を伸ばすガマニアと,あくまでも(良い意味での)コア系のオンラインゲームの道を突き進むゲームポット。とりわけ注目は,世界に通用するブランド「Wizardry」を擁するところだろうか。
単なるオンライン化ばかりでなく,Wizに関するありとあらゆる版権を持ち,メディアミックスや果ては世界展開までも見据えているであろうあたりが,非常に興味深い。ちょうど先頃4Gamerの徳岡氏の連載でも扱い,かつてのマニア達にその「コアっぷり」を思い出させたWizardryのあの“空気”が,どこまで再現されているのか。数年をかけたプロジェクトの産物は,いまから気になって仕方がない。
植田氏はもともとゲームの「開発屋さん」でも「プランナー」でもない。ゲーム業界にこそいたが,いわゆる普通のビジネスマンからオンラインゲームパブリッシャの社長へと転身を遂げた人物だ。その経験が良い方向に働き,既存のゲーム業界の動き方には捕らわれない視点で様々な展開をしてくれるだろう。なにせ1社であれほどの規模の「フェスタ」ができるパブリッシャが,じっと静かに1年間押し黙っていたのだから,その間に仕込んでいたものは相当なものであるはずだ。
最後に,ゲームポットフェスタでひっそり公開された謎の新作の「テキスト」を丸々掲載しておこう。見る人が見れば,なんの作品のことなのかすぐ分かるはず!
我々は、この星に帰って来た・・・
・・・再び、戦い続けるために。
巨大なロボットを駆り、終わる事のない戦場へ!!
プレイヤーは協力し、また互いに争いながらこの星の存亡をかけて戦う。
MMOでしか表現する事の出来ない無限に広がる世界!
アクションシューティングによるリアルタイムの戦い!
そして、クエストを通じて展開するシナリオは刻々と変化し続ける・・・
GAMEPOTが挑む純国産MMOプロジェクト
強力スタッフ陣を迎え、鋭意開発中!!
生き残れ!!その手段は自由だ!!
私がオンラインゲームを初めてプレイしたのは10年ほど前のことになります。以来さまざまなオンラインゲームにプレイヤーとして参加したり、関係者として開発や運営に携わる機会がありました。
この10年で様々な技術が進歩し、ゲーム表現も当時からは想像もつかないような発展を遂げています。インターネットの普及とともに、かつてはニッチだったオンラインゲームもかなり裾野が広がってきた印象があります。
その一方、オンラインゲーム全体的になんとなく保守的な方向に向かっていると感じることがあります。懐古主義と指摘されることもありますが、かつて味わった自由度、それと表裏一体にある混沌とした感じを再現し、楽しんでもらいたい。自由と混沌の中で生まれ得る、言葉以外でも成立する幅広い意味でのコミュニケーションの喜びを、MMO+FPSという組み合わせから生まれるゲーム性を通じて体験してもらいたい。そういう想いからこのプロジェクトは発進しました。
開発と運営において多くの経験を積んで来たスタッフ陣で「メイド・イン・ジャパン」の旗を掲げ、新しいチャレンジをお届けします。
株式会社ゲームポット
プロジェクト推進室
谷内義人
working with
開発プロデューサー”G”
- 関連タイトル:
Wizardry Online
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