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[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
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印刷2008/03/10 19:25

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[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開

画像集#013のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
 一昨年あたりから「Second Life」をはじめとしたバーチャルワールドが話題になっており,日本国内でも多くのサービスが発表され,ちょっとしたブームになっている感がある。
 マイクロビジョンがβテスト中の「ViZiMO」もそういったサービスの一つとして取り上げられることが多いのだが,内容的にはかなり異なったものとなっている。コミュニティ部分はSNS,バーチャル空間はMOタイプで,ユーザーが作成する。ユーザー自身が作成するものは「ルーム」という名称になっているものの,実質的には3Dアプリそのものである。
 マイクロビジョンは,かねてよりゲームエンジンや物理エンジンを独自開発しており,ViZiMOはその総集編のようなサービスといえるかもしれない。
 OGCの範囲とは外れてサービス固有のテクニカルな質問が多くなってしまったが,「ゲームが作れる仮想空間」として独自の道を行く同社の今後とViZiMOの展開について,同社代表取締役青沼実氏と取締役開発部部長清水利幸氏に話を聞いてみた。


マイクロビジョン代表取締役青沼実氏
画像集#003のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。GDC 2008の会場でもお会いしましたが,GDCはいかがでしたか?

青沼実氏(以下青沼氏):
 GDCではJETRO(日本貿易振興機構)さんの用意してくれたブースに間借りしていただけなのですが,期間中ずっと打ち合わせがひっきりなしという状況でした。

4Gamer:
 忙しかったというのはすごくいいことですね。

青沼氏:
 各国企業の方とお話しして,ViZiMOはエキサイティングだと非常に興味を持っていただいて,どうやったら自分の国でサービスできるかなど,前向きに考えてくれるところが多かったです。

4Gamer:
 この手のものではほかのサービスとは明らかに違っているからでしょうか。このところSecond Lifeなどのバーチャルワールドが話題になっているので,なにかと比べられることもあるのではないかと思いますが,ああいったものは意識されてますか? 

清水利幸氏(以下清水氏):
 ViZiMOを作り始めたのは5年ほど前のことです。その頃はSecond Lifeなんてありませんでしたし,まったく意識していませんでした。昨年あたりから電通さんを中心に急にSecond Lifeが話題になってきたのですが……。

4Gamer:
 電通さんだけ妙に頑張ってましたねえ。

清水氏:
 ええ(笑)。機能的には,Second Lifeとかぶる部分はないと思っています。最近はバーチャルワールドビジネスが紹介されるたびに,ViZiMOも便乗して紹介されるようになってきましたので,我々にとってはチャンスだなと。バーチャルワールドや仮想空間の話の一環でViZiMOが取り上げられるのはうれしいことです。
 
青沼氏:
 今年あたりはダレットワールドとかmeet-meなどの国産バーチャルワールドがいろいろ出てきますが,ViZiMOは目指すところが少し違いますので。 

4Gamer:
 分かりました。清水さんがご多忙とのことですので,先に技術的なところをお聞きしたいのですが,よろしいでしょうか?

青沼氏:
 どうぞどうぞ。なんでも聞いてください。

4Gamer:
 では,詳しい者からいろいろ聞いてきましたので遠慮なく(笑)。まず,ViZiMOではスクリプトをまったく排除していますよね。スクリプトを使わないというのは方針なのですか?
 
マイクロビジョン取締役開発部部長清水利幸氏
画像集#006のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
清水氏:
 当初の方針として,なるべく簡単なものにしたいにというのがありました。確かにスクリプトって,いろいろと便利じゃないですか。ちょっと慣れてくると,コピペして使えたり,ユーザーさんが管理できる部分が多くて便利に使えます。そういう方向に流れたいという気持ちもあるにはあるのですが,「スクリプトがあるよ」というだけで「スクリプトができないとあのレベルのものは作れないんだ」と思ってしまうユーザーもいるわけです。
 そこであえてああいったGUIでイベントを設定していくといった方式を取っています。結局,やっていることはスクリプトと一緒なんですけど。

4Gamer:
 まあ,そうですよね。

清水氏:
 ちまちま作業を繰り返さなければならないなどの操作性の問題に関しては今後改善していく予定です。
 
4Gamer:
 見ていると,あれでも意外といろいろできるものだなあと感心しているのですが。
 
清水氏:
 いま私の目から見ましても,皆さんよく作っていただいてるなと思います。本当に面倒なことが多いと思うんですよ。ちょっとしたパズルを作ろうと思っても,イベントを200個分設定しなければならなかったりといった感じですよね。そういった部分につきましては,いくつか対策を考えています。
 まずは,いま実装している最中なのですが,繰り返し処理でイベントをたくさん発生させないようにする予定です。コードジェネリック的なものを導入して,イベントをずらっと並べなくても,イベント一つでまとめて処理ができるようなものを作っていきたいなと思っています。
 
4Gamer:
 いちいち指定しなくても,同じ指定でオブジェクトごとに適切な処置が行われるようになれば確かに楽になりそうですが,もう一つ上のレイヤーがほしい感じじゃないですか。例えばビヘイビアとかスタイルとか。
 
清水氏:
 ビヘイビアですか。例えば,戦車の動きとかがイベントセットで設定されていると,それを適用したオブジェクトで一連の戦車の動きができたりするようなものですね。
 
4Gamer:
 そうですね。個別の指定ではなくて,アクションをまとめて指定できるような仕組みが望まれていると思います。

清水氏:
 そういう方向も面白いので,今後検討してみたいと思います。

4Gamer:
 あと,グループに対しての処理が行えるというのが,現状ではとても便利に使える機能の一つになっているわけですが,あのグループ構造を複数持つというのは不可能でしょうか? 

清水氏:
 それはどのような場面で使うことを想定していますか?

4Gamer:
 例えば,移動はこの単位でやりたいけど,接触判定はこっちの区切りでやりたいとか……。

清水氏:
 なるほど。現在,イベントなどにはグループを指定できるようになっているのですが,これ以外に複数のオブジェクトを指定できるようにすれば,ある程度近いものはできるのではないかと思います。

4Gamer:
 そうですね。それに名前をつけて,別のグループとして指定できると楽そうなのですが。

清水氏:
 いろいろと参考になります(笑)。

オブジェクトの種類ごとに水平的なグループ化を行っている作例
画像集#012のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
 ちょっと解説しておく必要があるだろう。最近行われたアップデートで,オブジェクトの接着機能がサポートされた。接着機能実装以前は,形としてのまとまりでグループ化するのではなく,それぞれのオブジェクトの機能単位で横にグループ化することで複数のオブジェクトの処理を一律で行うなどのテクニックがあったそうなのだが(ミサイルが目の部分に当たると爆発するとか),接着機能でグループ化を形状をまとめるために使うようになると,横方向でのグループ化が使えず,個別処理を行わざるをえない状況となり,ゲーム作成環境からすると後退している面も出てきているという。
 物理的なグループ化以外に論理的なグループ化が行えればという主旨の質問である。
 
4Gamer:
 ViZiMOは,GUIを使ったプログラミングという意味では結構面白い試みが行われていると思います。あれで実際にいろいろとルームが作られていますし。ただ,現在,オブジェクトに対して部分的にプロパティの設定やメソッドの指定ができますが,どうも中途半端な気がします。どうせなら,ViZiMOを使っていると自然とオブジェクト指向が身につくくらいのものになってほしいと期待しているのですが。

清水氏:
 現状のViZiMOですと,イベントはイベントで一次元的にずらっと並んで,カウンタはカウンタでずらっと並んでいて……といった部分がそう感じられるのだと思います。開発側の考え方としては,あえてイベントやスコアボード,カウンタは独立させています。それに対して少し機能を加えたら,使い方の幅は狭い中でも,誰かの創意工夫でいろんな使い方ができる,そういったものを目指しているのですが。

4Gamer:
 分かりやすさ重視ですね。しかし,オブジェクトの移動などは普通にできてもよいと思うのですが?

清水氏:
 現在だと,磁石で引っ張ったりいろいろ大変ですよね。

扇風機をくっつけたオブジェクト例。現実の物理では,両者がくっついていれば動くわけはないのだが,ViZiMOでは扇風機の風でまとめて吹き飛んでいく
画像集#009のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
4Gamer:
 ええ,それにしても扇風機には驚きました(※)。

清水氏:
 大砲に扇風機を取り付けて角度を変えているようなものもあったり,アイデア賞ものですよね。

青沼氏:
 扇風機をつけるとなんでも動かせちゃいますから(笑)。ほかにも,ゾンビに磁石をつけて,人が近づくと襲ってきたりとか,皆さんあの手この手で考えて開発してくださってます。

※ 扇風機は,風を発生させて,特定方向に力(圧力?)を発生させることができるオブジェクトだったのだが,強い風を発生させても扇風機自体が吹っ飛んだりすることはなかった(反作用はない)。これをオブジェクトに取り付けるとどうなるだろうか。
 普通に考えると,オブジェクトの下につけて下向きに力を発生させると,ヘリコプターのように浮き上がる……ようにも思えるのだが,前述のように反作用はないので,この方式ではうまくいかない。しかし扇風機を逆向きに取り付けると,扇風機に押されてそのオブジェクト自体が浮き上がるという現象が発生する。扇風機はオブジェクトに固定されているので,一緒にどんどん浮き上がっていく。前述のように反作用はないので,「自分を吹き飛ばして進む」という物理現象が発生しているのだ。
 最近のバージョンアップで指向性を持たない重力や磁力が導入されてたのだが,指向性がないだけに周りに影響が大きく扱いにくい。現状では,指向性のある扇風機が動力としていちばん使いやすいものとなっているようだ。
 
清水氏:
 移動や回転など,基本的な動作についてはサポートしていく予定です。

4Gamer:
 あとは変数あたりの強化はいかがですか?

清水氏:
 変数の処理ですね。掛けたり割ったりとか? 

4Gamer:
 それもありますが,まず代入処理ですね。かなり面倒な処理が必要ですし,代入くらいはできないとマズい気もします。
 
清水氏:
 いま変数関係でできるのは,即値の足し算,引き算,即値の代入だけですよね。現在,イベント関係を強化しようというフェイズにあります。いまはイベントのトリガーが全部ANDで,アクションがORじゃないですか。これも自由に設定するようにしたりということを考えています。ここで値自体に数式を使うとか四則演算くらいは用意したいところですが,そうなると数式で括弧くらいは使いたくなってきますよね。そういうところも含めて総合的に強化していく予定です。
 いま近々でやっているのが,イベントやスコアボードをグループ化処理です。すでにグループ化はできるようにしているのですが,現状ではグループ単位の指定ができません。これをグループ一括で初期化したりできるようにしています。これはもうすぐ完成という状態ですね(注:インタビューの数日後に実装された)。

4Gamer:
 なるほど。あとは,なにかユーザーから要望が多いものとかありますか?

清水氏:
 やはり要望自体はすごく多いですし,社内から出てくるものも多いんですよ。VIZiMOのサービスが「なんでもできますよ」といっている割には,仕様を押し付けている部分も多いので,そういったものを少しずつ改善していきたいところです。
 接着機能にしても,現在のように全体を固めるものではなくて,蝶番のような接続法や関節を入れたいよねというのは当初から出ていました。

4Gamer:
 現状の接着機能は,オブジェクトの接着というよりグループの固定化ですよね。やはり,ポイントtoポイントでくっつけたいという要望も多いでしょう。ところで,接着機能でいろんなものをくっつけることができるようになったわけですが,扱えるオブジェクト数自体には変更はあったのでしょうか? 

画像集#002のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
清水氏:
 いえ,現状では扱えるオブジェクト数は以前と同じです。この部分は,その気になればいくらでも増やすことができるのですが,ViZiMOのユーザー層はバリバリ作っていくコア層ともっぱら遊ぶだけのライト層に二分されると予想されていますので,コア層にあわせてルームの仕様を上げてしまうと,ライト層のPCではかなり重くなることが予想されます。現状でオブジェクト数の上限を増やすのはちょっと怖いですね。今後状況を見て,要望があれば検討したいと思います。

4Gamer:
 PCゲームをやっているような人ばかりなら問題ないのでしょうが,ライト層の人はどの程度のPCを使っているのかがいま一つ分かりづらいですから,難しいところですね。

清水氏:
 現状では,接着機能でオブジェクトをくっつけて造形していくしかありませんので,いろんなディテールをすべてオブジェクトで表現しなくてはなりません。下手をすると,どうということのない造形なのに,FF並のポリゴン数ということもありえます。仮に,テクスチャを自由に使えるようにしたら,軽いポリゴン数で表現力を上げることができるので,こういった問題を解決できるかもしれません。

4Gamer:
 ちょっと微妙かもしれませんね。テクスチャについては,当面は現状のもののパターン数を増やす程度でよいのではないでしょうか。機能的には非常に強力なものですし,導入できれば作品のレベルや雰囲気もかなり変わってくると思います。
 ただ,接着機能もそうですが,以前は適当にオブジェクトを並べて,ひょいとルーム公開できていたものが,最近だと作り込まなければならないレベルが上がっているようにも思われます。テクスチャを自分で用意できると表現力はものすごく広がるんですが,またハードルまで上がってしまう気もします。
 
清水氏:
 なるほど,現状でもかなり作り込んでいる人はいますよね。

4Gamer:
 もの凄い人いますね。

清水氏:
 ええ,どうやったらあんなもの作れるのかと(笑)。

ViZiMOの基本オブジェクトとインタフェース例。指定したオブジェクトから出ている座標軸風のガイドを使って操作する。引っ張ると移動し,なにかに接触すると接触部から土煙が上がる(衝突判定ONの場合)。そのまま動かすと,ぶつかった物体の上にひょいと移動する。かなり感覚的なインタフェースとなっている
画像集#010のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
4Gamer:
 見ていて感じるのが,コアで作っている人と興味は持っているんだけどうまくツールを使いこなせていない人の差がかなりあるということですね。意外と難しいのかなという印象ですが。

清水氏:
 挫折してしまう人も結構多いみたいですね。現状で,コアになってルームを作っていただいているユーザーさんの頑張り具合は当初の予想を大きく上回っています。しかし,ゲームを作る人だけでなく,それを遊ぶ人ももっともっと集めなければなりません。そういったライトユーザーのほうは,想定を下回っている状況です。
 我々としては,現在のコアユーザーが一番大切なユーザーだと思っています。現在はできるだけコアユーザーの声を吸い上げて,一緒にViZiMOをよりよいものにしていくという段階ですね。最終的に作られるもののクオリティが上がれば,遊ぶだけの人にもメリットになりますので。

4Gamer:
 ViZiKitのツール自体は,非常に分かりやすくできていると思います。ほかの3Dツールのほとんどと比べても簡単に扱えますし(概して3Dツールは使いにくいものが多い)。

清水氏:
 ある程度3Dツールに触ったことがある人だと,大丈夫なようなのですが,そういった経験がない人には,3軸でモノを移動したり回転したりという感覚自体が難しいようです。

青沼氏:
 それに物理エンジンなどがついていますので,社内でもインタフェースについては喧々諤々の議論をしました。どうやって操作させようかということで,最終的にずりずり引きずってくっつけたりというインタフェースになっています。

画像集#008のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
清水氏:
 物理エンジンのオーサリングの場合,3Dでは極端に難易度が上がってしまうんですよ。ほかの物理エンジン系オーサリングツールでは,エディットを2Dでやっているものがいくつかあります。PLAYSTATION 3で出ていた「LittleBigPlanet」なども,横から見た2Dのオーサリングですよね。2Dだと,オーサリングが簡単で,物理的拘束も1軸ですむんです。しかし,ViZiMOの場合は,どうしても3Dにしたいということでこだわってみました。

4Gamer:
 ViZiKitは本当によくできていると思いますよ。最近,私は3Dの図をViZiKitで作っています(笑)。

清水氏:
 社内にはViZiKitよりも高機能なツールがありまして,それを使えばポイントtoポイントでの接着ほかいろんなことができるのですが,ViZiKitはそれからいろいろなものを省略して作っている感じになっています。「これはちょっと難しい」「これも難しい」といった具合に機能を削っています。今後は調整しながら,いろいろな機能を追加していければと思っています。

4Gamer:
 デフォルトで用意されているようなオブジェクトが作れるようになれば,ものすごいものができそうですね。

清水氏:
 昨年は,とにかくサービス公開を急いでいましたので,ViZiKit自体にいろいろ不備が残ってしまいました。昨年内はその修整に集中して機能追加などは封印していた状況です。今年になってから,機能拡張も行う方向性も加えていますので,これからどんどん改善していきますよ。

ViZiMOのビジネスプラン


画像集#005のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
4Gamer:
 予定では,この夏から正式サービスということになっていますね。課金アイテムというのは,有料のオブジェクトパーツやアバターアイテムといったものになるのでしょうか?

青沼氏:
 そうですね。そういった課金アイテムを夏から発売していく予定です。それ以外に,広告コンテンツでいくつか話がありますので,それは決まり次第テスト的に始めていくことになると思います。

4Gamer:
 それは宣伝用のルームのようなものですか?

青沼氏:
 万博のパビリオンみたいに,各社の広告コンテンツを入れていきます。例えば,ロボットを持っている会社さんですと,ルーム内でロボットと遊ばせたりといった感じですね。

4Gamer:
 なるほど。

青沼氏:
 これは,いろいろなところから新しい広告として結構興味を持ってもらっているようです。これら以外にも,ViZiMOではキャラクターの置き換えが可能ですので,どこかのキャラクターと世界観に置き換えたViZiMOの別ワールドのようなものを出していくことも検討しています。最後に,ユーザーが作ったものを流通させていきたいというのが主なビジネスプランになります。

4Gaemr:
 ユーザーが作ったオブジェクトの販売ですか?

清水氏:
 はい。そうなると,現状のViZiKitで作ったデータでは無駄が多いですので,社内で使っているモデリングツールや音楽ツールなども公開していくことになるでしょう。また,ここまでくるとデザインのできる人,イベントを組める人,音楽を作る人などどうしても分業が必要になると思われます。

4Gamer:
 そうなるとプレイヤー間でデータを共有できないのは大きなマイナスだと思うのですが。

青沼氏:
 現状ではルームを作った人にしかデータファイルは開けないようにしています。

4Gamer:
 将来的なライセンス管理を見越しているのは分かりますが,現段階ではちょっとどうかと思うのですが。

青沼氏:
 これについては,検討中でして,共同作業ができる場所を用意することなどを考えています。

4Gamer:
 それは,ルームを共有する感じでしょうか?

青沼氏:
 むしろコミュニティ単位で共有という形ですね。なにか一緒に作ろうということでコミュニティを作っていただいて,そのメンバーであれば共同作業ができるという感じです。

4Gamer:
 その場合,ユーザーの誰かが課金アイテムを持っていて,それを使った場合,そのアイテムを買っていない人はどうなるのでしょうか?

青沼氏:
 それは考えなければいけない問題ですね。ただ,それは要するにアイテムの個数だけの問題ですので,持っている人が自分の分を1個コミュニティに提供することでみんなで使えるようにすることにするのではないかと思います。
 
4Gamer:
 こういったオーサリングシステムを持っていないバーチャルワールドもありますので,そういうところにオーサリングの仕組み自体を売り込むという手もあるんじゃないですか?
 
青沼氏:
 そうですね。ただ,他社のサービスの概要を見ると,ユーザーに勝手にはものを作らせないというのがほとんどのようです。

4Gamer:
 そうですね。著作権問題など難しいものも出てきますから,ほとんどがそうだと思います。ViZiMOでも接着機能でいろいろ作りこめるようになったわけですが,危ないモノが出てきたときはどうするのでしょうか?

青沼氏:
 現在でもちょっと危なそうなものはありますね。基本的には,問題がある場合はユーザーに伝えて削除してもらうことになります。あくまでもユーザーさんの管理権限に委ねますが,最終的には弊社に削除権限があります。18禁で危ないものが出てきたら,即削除にはなるでしょうが……。

4Gamer:
 あれで18禁モノを作るのは相当難しいと思います(笑)。

青沼氏:
 はい(笑)。いずれにしてもそういう方針でやっていますので,ルームの公開はユーザーの責任で行い,当社はクレームを仲介するという形になります。

4Gamer:
 現状で登録者数が4000人ちょっと,アクティブなユーザーとなるとさらに少ないわけですが,正式サービスを開始して大丈夫なのでしょうか?

青沼氏:
 ビジネスとしては,ライトユーザーをもっと呼び込むようにする必要がありますので,いろいろと対応を考えています。

4Gamer:
 どのようなものでしょうか?

青沼氏:
 例えば,もっと多くの人に知ってもらえるように,自分が作ったViZiルームへの入り口を,ブログパーツのように個人のWebページに持たせるようなものを考えています。

4Gamer:
 ルームへのリンクですか?

青沼氏:
 そうですね。置いてあるのはルームの画像だけですが,そこからViZiルームに入れるような仕組みを検討しています。

ViZiMOはソフトウェアのプラットフォームだ


4Gamer:
 ViZiMOで使われている3Dエンジンや物理エンジンは自社製ですよね。

青沼氏:
 そうです。3Dエンジン,物理エンジン,すべて自社製です。20年ほど前からゲーム会社をやっていますが,私もプログラマ出身で,エンジン大好きですし,こちらの清水が現在の3Dエンジン,物理エンジン,ネットワークエンジンを担当しています。

清水氏:
 一人でやっているわけではありませんよ(笑)。自社ですべて抱えるのがよいかというと一長一短ですが,全体のつなぎ込みは自社製のほうが楽ですね。

4Gamer:
 ViZiMOのシステムのまま,MMO空間に展開するようなことは不可能ですか?

清水氏:
 技術的には難しい問題はたくさんあります。しかし,技術面で話をしてもしかたないですね。不可能ではありませんが,現状のViZiMOはMOの空間を複数横につなげていく方向で考えられています。現状では,ViZiルームからViZiルームへ移動するようなことはできないのですが,今後はそういう展開を考えています。

4Gamer:
 最近のゲームなどでは,ロビー部分だけMMO空間でゲーム部分はMO空間という形式のものもありますよね。そういったつなぎ込みのほうが自然に思えるのですが。

清水氏:
 そうですね。「モンスターハンター フロンティア」などもそんな感じですね。ViZiMOもそういった考え方のほうがあっているかもしれません。

4Gamer:
 もう少し将来のことについてお聞きします。コンシューマゲーム機への対応などはどうでしょうか? 

青沼氏:
 将来的には「やりたいな」というところです。ユーザーが作ったコンテンツで優秀なものをいくつか集めてパッケージにしたりといった方向で考えています。よくできたルームをもとにして,単体ゲームを作ったりなどもいいかもしれません。コンシューマゲーム機と携帯電話での展開も予定には入っています。

4Gamer:
 携帯電話で動きそうですか?

清水氏:
 3Dは問題ないでしょう。物理エンジン関係でCPUがどこまでいけるか次第ですね。

青沼氏:
 GDCでNOKIAの携帯はご覧になりましたか?

4Gamer:
 いえ,残念ながら。

青沼氏:
 ハイクオリティな3Dゲームが滑らかに動いていました。もはやプレイステーション2以上のものが携帯電話でできるようになってきていますね。
(注:実はプレイステーション2のエミュレータがサクサク動く代物らしい)

4Gamer:
 なるほど。数年後あたりには凄いことになってくるかもしれませんね。では,最後に一言ずつお願いします。

清水氏:
 今年はViZiMOにとって飛躍の年にしたいですね。

画像集#007のサムネイル/[OGC2008#07]ソフトウェアプラットフォームとしての「ViZiMO」の展開
青沼氏:
 ViZiMOは,いずれはクリエイターさんの登竜門のような存在になればと思っています。例えば,キャラクターを持っているクリエイターさんは,自分のキャラをポリゴンデータで持っていて,あちこちに売り込みをしているわけです。そういった人に利用してもらったり,ゲームを作りたい人に利用してもらえるものにしたいですね。
 バーチャルワールドといわれることが多いのですが,たまに説明をしていると「これはソフトウェアプラットフォームじゃないか」という人がいて,そうなんだそうなんだと感激しています。ハードウェアのプラットフォームじゃなくて,ソフトウェアのプラットフォームです。20年やってきてよかったという感じです。
 今後,ViZiMOはバージョンアップしたり,もしかしたら「ViZiMO2」とかに名前を変えたりするかもしれませんが,ずっとずっと続けていきますので期待してください。

4Gamer:
 頑張ってください。本日はありがとうございました。

 
 「いろいろできなくもないけど,できることはあまり多くない」という印象があったViZiMOも,2月14日のβ2テスト以降は接着機能の搭載などでかなり変化してきた。その後も毎週のように新機能が搭載されており,できることの幅が急速に広がりつつある。
 もともと3Dエンジン,物理エンジンについては,一通りのことは押さえてあり,土台としては悪くないものである。オーサリングツールでは,3Dエディタはかなり使いやすくまとまっているものの,プログラミング部分が低機能で,ここが全体のボトルネックになっていたように思われる。
 積み木感覚でのモデリングは,多少の慣れは必要というものの一般の3Dツールよりも格段にハードルが低いものに仕上がっている。これに対して,イベントの対応を一つ一つ指定していく方針のプログラミング部分は,行う処理そのままの手数がかかり,多くのプログラミング言語がデータ構造や構文で提供している「楽をできる仕組み」というものがほとんどない。積み木感覚のモデリングには,積み木感覚でのプログラミングが必要ではないだろうか。ViZiMOの目指す道には課題も山積みである。
 それでも,「3Dゲームが作れる」という意味では,これ以上に手軽なものはない。この手軽さと機能の追求,そして分かりやすさ,処理の軽さなど,多くの部分でのバランス取りが難しいのはよく分かる。スクリプトを使わずにこれだけのことをさせようとしていること自体,かなりチャレンジングである。

 率直にいって,ViZiMOがやっていること自体はかなり面白い。問題は誰でも使える完成度に到達するか,そしてマーケットに受け入れられるかどうかだ。以前発表したアンケート解析結果から見ても,業界のViZiMOへの注目度はなかなか高いものがある。どのように進展していくのか興味深く見守っているといったところであろう。
 ViZiルームを作るということが第一目的になっているため,現状では興味を持ってもイノベータしか残らないコミュニティになってしまっている感はある。アーリーアダプタ勢は遠巻きに見ているだけといった雰囲気だ。プラットフォームとしての完成度が上がれば,業界関係者を中心にアーリーアダプタが広がり,やがてブレイクする日もくるのかもしれない。
 なお,インタビュー中では多くの構想を語ってくれたが,多くは確約されたものではないのでくれぐれも誤解なきよう。とりあえず,ここ1か月で急激に変貌しつつあるViZiMOが,正式サービスまでにどれくらい進化していくのかに注目しておきたい。
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