テストレポート
「SteelSeries Kinzu Optical」ファーストインプレッション。形状と軽さは魅力だが……
同時発表された「SteelSeries Xai Laser」がハイエンドクラスの製品として位置づけられているのに対し,Kinzuは突出したスペックや目新しい機能こそ持たず,ゲームプレイに必要なものだけを実装することでコンパクトにまとめられた製品と謳われている。
本稿のタイトルを見て,「発売後2か月以上も経過しているのに,今さらファーストインプレッションなの?」と疑問を持った人もいると思う。結論から先に述べると,その理由は,2009年11月末日時点におけるKinzuの完成度では,踏み込んだレビューを行えないためなのだが,今回はそのあたりも踏まえつつ,現時点における使い勝手をお伝えしたいと思う。
本体重量はケーブル抜きで約73〜77g
クセのない形状も,やや「つまみ持ち」向け
さて,Kinzuの主なスペックは下記のとおりだ。
- 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
- ボタン数:3(左右メイン,センタークリックボタン機能付きスクロールホイール)
- トラッキング解像度:400/800/1600/3200CPI
- フレームレート:9375fps
- トラッキングスピード:50IPS※
- レポートレート(ポーリングレート):125/500/1000Hz
- 最大加速度:20G
- 画像処理能力:3.75Mpixel
- リフトオフディスタンス:〜2.0mm(自動設定)
- 本体サイズ:64(W)×117(D)×36(H)mm
- 重量:実測約115g(ケーブル含む。ケーブルを秤からどかした参考値で同73〜77g)
※2009年11月30日時点で,日本語公式サイト「SteelSeries.jp」の製品情報ページには75IPSとあるが,本社の製品情報ページ,そして製品ボックスに50IPSとあったため,今回は50IPSと判断している。
おそらくこの違いは,Salmosaだと,本体両サイドが若干膨らんだような形状のところが,Kinzuだと逆に凹んだような曲線になっていて,指がぴったりと貼り付くようになっているという差が生んだものだろう。この凹みのおかげで,「指先に力を込めると持ちやすさが変わる」といったこともない。
緩やかな凹み方をしているサイド形状。初代「SideWinder Mouse」のような感じ,と説明したら伝わるだろうか? 表面の質感はマットな感じで,多少汗をかいても指は滑らない |
少なくとも硬くはない布巻ケーブルを採用する |
「かぶせ持ち」でも使えるが,背が低いため,手のひらにフィットする感じはまったくない。手のひらのうち,手首に近い部分だけがマウス本体に触れるような持ち方で操作することになる。
採用されるケーブルは布巻状。ゲーマー向けマウスで,布巻ケーブルというと,最近ではDHARMAPOINTのDRTCMシリーズを思い浮かべる人が多いと思うが,DRTCMシリーズの非常に柔らかく,取り回しが快適な――ただし,使い方によっては強度面で若干の不安を抱える――ケーブルと比べると,Kinzuのそれは若干硬い印象を受けた。
もっとも,2,3回折り曲げてやれば必要十分なクセをつけることができるので,取り回し面での不便は感じない。少なくとも,布巻状ながら硬いケーブルを採用しているLogitechの「G9x Laser Mouse」や「Gaming Mouse G500」あたりと比べれば,ずっと柔らかだ。
3ボタン+ホイールのシンプル構成
やや重い左右のメインボタンが難か
先ほど述べたとおり,Kinzuで操作に利用できるボタンは,左右メインとスクロールホイールのみだ。このボタン数の少なさを受け入れられるかどうかは,使う人によるだろう。
筆者の場合,「マウスのコントロールがしづらくなる」という理由から,サイドボタンやチルトホイールにゲームで使うコマンドを割り当てることはないので,Kinzuの思い切った仕様を自然に受け入れられるが,キーボードを使う左手の負担を減らすべく,右手になるべく多くの操作を割り当てたいという意見もあるので,この点の評価は難しいところだ。
なお,ホイールのすぐ隣(というか上側)に用意されているボタンは,動作モードを切り替えるためのものである。
Kinzuは,本体内蔵のフラッシュメモリに,最大で三つのプロファイルを保存でき,さらにプロファイル一つ当たり,2種類のCPI設定を登録できるようになっている。長押しすればプロファイルを1→2→3→1……といった順番で,短く押したときは当該プロファイルへ登録しておいた2種類のCPI設定を交互に,それぞれ切り替え可能だ。
右に示した写真でも分かるように,光学センサー搭載モデルゆえ,動作中は,常時LEDが点灯する仕様だが,本体のプロファイルと切り替えると,LEDが点滅する回数で,「現在のプロファイル番号」を通知してくれるようになっている。いちいち持ち上げたりひっくり返したりしないと確認できないのは少し手間だが,何も通知してくれないよりはマシといったところか。
なお,デフォルトで貼り付けられているポリエチレン製のソールだが,この滑り心地はあまりよくない。貼り替えるのが前提だと思っておくべきである。
形状は悪くないがセンサー周りの挙動には疑問も
ファームウェアアップデートによる改善を期待
ゲーマー向けを標榜する最近のマウスは,「ゲーマー向け」の一言を免罪符代わりに,誰が使うのか疑問すら感じるようなものも含め,多くの機能を搭載していたりするが,それらをまったく使わないという人が一定数以上存在するのも事実だ。機能はどうでもよく,ただ純粋に使いやすいマウスが欲しい人に向けて,“ムダ”となり得る要素をごっそり切り捨ててきた,その設計思想は大いに賞賛されてしかるべきだろう。
いろいろと切り捨てた結果,軽さというメリットが生まれ,激しい操作を続けても疲れにくくなっているのは好感が持てるし,(万人向けというよりは「つまみ持ち」寄りな部分はあるものの)形状面でのクセも少なく,取っつきやすいマウスであるともいえる。
ただ,現時点では,センサー周りに不審な挙動が多いと言わざるを得ない。これが,冒頭で「踏み込んだレビューを行えない」とした理由である。
今回筆者は,量産サンプルをSteelSeriesから入手しただけでなく,実際に秋葉原の店頭で購入した個体も含め,都合3台を手に入れたのだが,いずれの個体でも,
- 専用の設定ツールから加速をオフにしても,加速が有効のままになる
- CPI設定を問わず,一定以上の速度でマウスを振ったとき,加速を打ち消すほどのネガティブアクセラレーションが発生する
- 3200CPI設定時にマウスを素早く振ると,マウスを動かし終えてからポインタが停止するまでにラグを感じることがある
という問題が発生した。
少し補足しておくと,Kinzuでは,設定ツールに用意された「Options」メニューから「Software」「Firmware」のバージョンを確認可能。そして,筆者が入手した3個のKinzuは,いずれも入手時点のバージョンが順に1.0.5,2.9.20で,30日時点の最新版では,前者のみが1.0.9へとアップデートされているのだが,どちらでも挙動に変化はなかった。断言まではできないが,製品としての善し悪しを語るためには,最低でもファームウェアの更新を待つ必要があるように思われる。
問題が解決したら,あらためてレビューをお届けしたいと考えているが,これから年末にかけて購入を考えているなら,SteelSeriesから何らかの発表が行われるのを待っても,遅くはないのではないだろうか。
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