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町のゲーセンの今どき事情――「ゲームセンター富士見台ワイワイ」で見る,地元に根付きながら世界に広げる店舗運営
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印刷2025/03/27 07:30

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町のゲーセンの今どき事情――「ゲームセンター富士見台ワイワイ」で見る,地元に根付きながら世界に広げる店舗運営

 近年,“町のゲーセン”がその数を急速に減らしている。

 勢いづいているのはクレーンゲーム中心に転身した大手メーカーの直営店だが,今もなお地元に根付く店舗はどんな思いで続けているのか。

 今回は東京都・練馬区,西武池袋線の富士見台駅の近くにある,「ゲームセンター富士見台ワイワイ」で話を聞いてみた。

 同店舗は2021年3月,コロナ禍の終盤のこと。老舗ゲーセンが長らくあった跡地に,心機一転のリニューアルオープンを決めた。
 今ではもう,掛け値なしに立派な繁盛店だ。

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株式会社ワイワイ「ゲームセンター富士見台ワイワイ」代表の小澤禎史氏
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「自分の家で遊んでるみたいに」


4Gamer:
 雑な質問ですが,最近どうですか?

小澤禎史氏(以下,小澤氏):
 最近はそうですね。おかげさまで,いろんなゲームを目当てに来店してくださるお客さまの数が,少しずつ増えております。
 あとはフリープレイや対戦会といったイベントの開催数も増えていて,やりたかった店舗運営が徐々に形になってきた実感があります。

4Gamer:
 今は土曜日の夕方すぎですが,誇張なしにお客さんがめちゃくちゃ入ってますよね。都心の大型店ばりに。あるいはそれ以上に。

小澤氏:
 本当にありがたい限りです。

※もっと言うと,この日はカプコン「モンスターハンター ワイルズ」の発売翌日。ユーザー層が異なるとはいえ,大半の台が埋まる来客数

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4Gamer:
 この店は4年前,結果的にコロナ禍の終盤となった2021年3月に,地元のゲーセン跡地でリニューアルオープンしたとのことですが。

小澤氏:
 はい。ここには以前,富士見台の老舗「ゲームパーク富士見台」がありまして,その跡地で運営面を新たに営業させてもらっています。

4Gamer:
 前の店舗とはなにか縁があったのですか。

小澤氏:
 私自身,ゲームセンター関連のお仕事をしてきたので,以前の店舗さんとも知り合いでした。それで当時,お店をたたむと聞いたあと,この場所を使ってみないかとお話をいただいたんです。

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4Gamer:
 なぜ,この場所を選んだのでしょう。
 西武池袋線の富士見台駅というのは,池袋からだと各駅停車で約20分。中継の練馬駅からは2駅離れでも,乗り換えが求められがち。駅前は商店街が栄えているが,背の高い建物は少ない。
 有り体に言って,都心から離れたザ・住宅街なわけですけれど。

小澤氏:
 確かに,立地だけ見ればもっと都心寄りの選択肢はほかにありました。ただ,あえてローカルなこの場所でやっていきたかったんです。

4Gamer:
 しかし,当時はコロナ禍の大騒ぎ。あらゆる業種の店舗が進退を迫られました。開店の決意にも,恐怖が伴ったのでは?
 とくに近年のゲーセン事情は,2010年に約18000店だったのが,2023年に8000減少の約10000店になったほどの右肩下がりです。ゲーセン好きの民ならば誰もが肌で実感してきた,低調の時代が今なわけですが。


小澤氏:
 ええ。当時は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言ですとか,パブリックな場所でのまん延防止措置ですとかいろいろありましたので,正直なところオープン前後は不安を拭いきれませんでした。
 実際,オープン時期をずらすことも考えましたが,お店の引き継ぎタイミング的に難しく,2021年3月にしか賭けられなかったんです。

4Gamer:
 でも賭けたと。

小澤氏:
 はい。それにああした状況だったからこそ,ゲームセンターという場所の魅力を絶やさないために,いかにしてお客さまにお越しいただけるかを一生懸命考えられたんだと思っています。そうしてなんとか地道にやってきたからこそ,今のこの光景につながったんだろうなと。

4Gamer:
 控えめに言って,「すごい」部類の盛況ですしね。
 やはり前店舗のファンも引き継いでいるのでしょうか。

小澤氏:
 そうですね。昔なじみの方々にも足を運んでいただけています。

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4Gamer:
 スタッフは何人くらいでやっているのでしょう。

小澤氏:
 私を含めて,計4人です。

4Gamer:
 4人。けっこう大変なのでは?

小澤氏:
 私も頻繁に出勤して,なんとかシフトを回せています(笑)。

4Gamer:
 オープン時,筐体は前店舗から引き継いだのですか。

小澤氏:
 いえ,私どもですべて新調しました。

4Gamer:
 なら,タイトルラインナップはどう決めたのでしょう。
 「プロギアの嵐」があるだけで,なんだか往年のゲーセンによく漂っていた,分かってる感みたいなものがにじみ出ていますが。

※2001年4月稼働の“少年空士隊”を題材にした横スクロールシューティングゲーム「プロギアの嵐」。開発:ケイブ 発売:カプコン

小澤氏:
 タイトルは最新作を抑えつつ,対戦格闘やシューティングのレトロ系を取りそろえていきました。お客さまからのリクエストでもよく,いろいろなレトロゲームの名前が挙がってきますので。
 店舗の特色としては,例えばあのガンダムのゲーム。あれは基本的にオンライン対戦がメインなんですが。

4Gamer:
 エクバですね。私もプレイヤーです。今やオールドタイプですが。

※2on2チーム対戦アクション「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト」。発売:バンダイナムコアミューズメント

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小澤氏:
 そうなんですね。エクストリームバーサスはうちの主力の1つなのですが,オンラインマッチングがあるため,1人でプレイできるゲームなんです。ただ,同じゲームを遊ぶ人同士で交流したいという方々が多く,来店してくださるプレイヤーさんの数がどんどん増えています。
 最近は九州や四国,東北からのお客さままでいました。

4Gamer:
 とはいえです。ゲーセンの救世主と化したエクバ旋風も,やはり年を重ねるごとに減速傾向にあるかと思います。
 実際,一昔前はあらゆる店舗がエクバを導入し,活性化につなげていましたが,コンシューマ版でオンライン対戦機能が完備され,ついでに家庭用ゲーム機もオンライン機能の多様化により,格ゲーの類いがゲーセンで遊ばれることが確実に減っていきました。この10年の傾向で進退を見極めた店舗は事実,かなり多かったかと思います。
 なのに,このお店にはワンカサと客がいる。これいかに?

小澤氏:
 当店の場合,お客さまの1人であるネンさんの影響が強いです。
 ネンさんはガンダムVSシリーズの初代大会の優勝者の1人で,彼が店内でイベントを開いてくれたり,実況配信をしてくれたりするおかげで,コミュニティがどんどん広がっていきました。2月に実施されたネンさんの誕生日会でも,50人以上の人が集まってくださいましたし。

※ネン氏:2005年開催の大会「機動戦士ガンダムSEED 連合VS.Z.A.F.T. Premium Dogfight 2005 BANPRESTO CUP」の王者

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4Gamer:
 ある意味,インフルエンサーの存在が原動力になったと。
 今もにぎやかですが,あれは大会ですかね?

小澤氏:
 あれはお客さん主催のイベントですね。我々は筐体や配信機材のレンタル,もっと言えば“スペースを提供しているだけ”です。
 お店としては当初から,有名人に来てもらおうだとかの考えではなく,ゲームセンターが好きな方々に,よりアットホームに利用してもらうにはどうすればいいかを考えて,試行錯誤してきました。
 昔のゲームセンターではよく「行くと誰かしら友だちがいる」なんて言われていましたが,それの再現のためにですね。

4Gamer:
 レンタル台やフリープレイのサービス提供は,今では当たり前の施策になりましたが,やったところでちゃんと活用してもらえるとは限らない。その点,この店はパッと見でも成功しているのが分かります。
 ただ,スペースを提供しているだけ,とおっしゃいますが,ああした催しのスケジュールや機材の管理にも手間がかかるのでは?

小澤氏:
 いえ,こちらとしては管理しているという感覚はまったくないです。我々は気軽に場を提供して,最低限の部分で協力しているだけで,ああした雰囲気を生み出しているのも,すべてお客さま自身です。
 皆さんには自分の家で遊んでいるような感覚を持ってもらいたかったので,うまく遊び場にしていただけてうれしいです。
 そもそも店名の“ワイワイ”も,みんなでゲームをワイワイ楽しんでほしいという願いから付けたものですから。

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4Gamer:
 でもです。そうした自由さはいろいろな問題……とくにエクバ勢は(この店舗の来店者たちがどうとかという話ではなく)過去の風評的なイメージにおいて,ひときわ“やんちゃ”に見られていた界隈です。
 これまで,自由に使わせることで問題は起きませんでしたか?

小澤氏:
 とくに問題はなかったですね。お客さまもワイワイの空気を分かってくれていて,だからこそこの雰囲気を求めてくれているかと思いますので。端的に言って,うまくいっている実感があります。

4Gamer:
 人も店も,最良の協調関係を作れているわけですね。
 今どきはやはり,配信環境も必須でしたか?

小澤氏:
 そうですね。お客さまの自己発信の需要に応える意味でも,店内を飛び出して世界に発信する意味でも,絶対にやるべきでした。

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4Gamer:
 ほかに,この店で強いタイトルはなんでしょう。

小澤氏:
 対戦格闘については古き良きタイトルが強いです。一番人気は30年選手のストIIXで,ストIIIやカプエス2あたりも人気でしょうか。

※「スーパーストリートファイターII X」
※「ストリートファイターIII 3rd STRIKE fight for the future」
※「Capcom vs. SNK 2: Millionaire Fighting 2001」


4Gamer:
 カプエス2は直近でリバイバルも話題ですし(2025年発売の「カプコン ファイティング コレクション2」に収録),なにより一部の仕様から目をそらせば,格ゲーとしては傑作の部類ですもんね。

小澤氏:
 あとはシューティングに関しても,往年と比べるとコミュニティは縮小していますが,昔ながらのファンはずっと残っていますし,最近はSTG目当ての若い世代の方々も増えてきていますね。

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4Gamer:
 地域に根差すという側面では,あっち側の麻雀ゲーム系の大型筐体や,ゲーセンパチスロに年齢層が高めの人たちが座っていますよね?
 あのコーナーもこの店には必須ですか。

小澤氏:
 そうですね。ビデオゲーム側とはまた違い,あちらはユーザー層が異なる方々に利用していただけているので,定番の一角です。

4Gamer:
 ゲーセンのパチスロ台って,ニッチではあるし,今はかなり減ってしまったものの,一極集中の需要はかなりのものですからねえ。

小澤氏:
 そうなんですよねえ。

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4Gamer:
 昨今の課題でいうと,アーケード界隈はメーカー側の動きも鈍くなり,次々と新作が出ているとは言いがたい状況にあります。
 このあたり,タイトルの新陳代謝は気にしていませんか。

小澤氏:
 正直,最新ゲームをもっと取り入れたい気持ちもありますが,今のゲームセンターは地域ごとのニーズが重要で,新作をそろえたからといって人が増えるわけではありませんので,そこが難しいです。
 なので基本的にはこれまでと変わらず,エクストリームバーサスの最新環境を用意しつつ,年代問わずの定番のラインナップを抑えて,お客さまのリクエストでレトロゲームを循環させていくことになるかと思います。やはり,古いゲームをずっと持ち続けて回す感じですね。

4Gamer:
 あと近年は「電気代が高い」など,インカムの流れも含めて維持費が厳しいという話もよく聞きましたが,このへんはどうでしょう。

小澤氏:
 そこはもう,ゲームセンターが避けられない課題ですね。私も東京電力さんの発表ですとかはよく気にしていますし,電気代が徐々に上がってきていることも身に染みて分かっています。それのみならず,お店の備品とかの値段もだいぶ上がってきていますし。
 それでも変わらず,これからもこの環境をすべてのお客さまに提供できるよう,盛り立ててがんばっていきたいところです。

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4Gamer:
 お店の特色としてはもう1つ,なんでも“国際色が豊か”とのことで。実際,店内でも英語の会話がチラホラ聞こえてきますが。

小澤氏:
 そうなんです。基本的には男女問わずの日本人の方々が多いのですが,SNSや配信に力を入れたことで,海外の方々にも来店していただけるようになりました。欧米や北米のほか,メキシコやブラジルなど(日本から見て)地球の反対側の南米からお越しくださる人も多いです。
 例えば,ブラジルでは認知度が高まり,最近も何名かお客さまにご来店いただいております。さらに,ニューヨークからもわざわざ足を運んでくださるお客さまが増えてきました。
 彼らは「国に帰ったらみんなに紹介するね」と言ってくださり,徐々に輪が広げてくれて,そういう支えがあって今のワイワイがあります。

4Gamer:
 そこがすごいですよね。昨今はもう,都心で愛されてきたゲーセンも,ビデオゲームからは撤退傾向という追い風はあるとしてもです。
 私が生まれも育ちも西武池袋線民なので何度でも言いますが,ブラジルから来て,羽田や成田から山手線などを経由して,西武池袋線や有楽町線に乗り換えて,体感6割以上の確率で各駅停車への乗り換えを要求され,間違えたら石神井公園まで運ばれるハメになる,昨今のインバウンド需要ではまず紹介されていない,富士見台にやって来るわけですから。

小澤氏:
 本当に,新宿や池袋,秋葉原と比べるとアクセスがいいとは言えないなか,わざわざ足を運んでくださる方々には感謝の気持ちでいっぱいです。だからこそ,皆さんには喜んで帰ってもらいたいんです。
 外壁や筐体に,記念の色紙や写真を展示しているのもその一環です。

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4Gamer:
 そもそも「海外勢を呼び込む」という戦略があったのでしょうか。
 あるいは偶発的にそうなったのか。

小澤氏:
 もともとは,従業員の1人が「ストリートファイター」シリーズの自主大会を長らく開催していたことで,彼がきっかけになりました。
 海外の対戦格闘ゲーム好きって,いわゆる聖地や歴史に触れてみたい欲求が強いんです。だから古くからの大会に出てみたいという人たちが出てきて,その輪が次第に広がっていったという流れです。
 2024年10月に開催したストIIXの大会も,海外での知名度が毎年高まっていて,最終的に8か国の海外勢を加えた100人以上の参加者が集まってくれました。なかにはEVOのチャンピオンもいたくらいです

4Gamer:
 それはすごい。当然,今のご時世ですから,歴史があるとか有名人が来るとか,それだけで勝てたという安易な道ではなかったでしょうし。
 小澤さんはやはり,こうしたにぎにぎしい光景が見たいから,長らくゲーセンのお仕事をされているんですかね。

小澤氏:
 そうですね。私は日本が生んだゲームセンターという娯楽の,昔ながらの文化を残していけたらなと思っていますので。
 今の世の中,ゲームをやるとなったら家でも外でもオンラインでつながれてしまいます。それをドライとは言いませんが,やっぱりこういう店内を見ていると,お互いの顔を見合ってゲームをする楽しさって特別だと思うんです。実際,人と人とのつながりを感じてゲームをしたいっていう人たちは,世間にはまだまだたくさんいると思いますしね。

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4Gamer:
 なるほど。
 では最後に,今後の抱負はなんでしょう。

小澤氏:
 お店の知名度も徐々に高まってきた気はしていますが,とりあえずは昨年に引き続き,店舗としての魅力を深めて,そして広めていくことに努めていければと思っています。それと1人でも多くの新規の方々にご来店いただけるよう,今までにないイベントも模索したいですね。

4Gamer:
 ちなみに,学生はよく来ますか?
 ここは富士見台の名物高校の帰り道とドンピシャですけれども。

小澤氏:
 学生さんは最近見なくなってしまいました。以前はよく来たんですが。これはやはり,今どきの若い方々はゲームセンターの好き嫌い以前に,ゲームセンターという場をそもそも知らないからだと思います。
 そのため,若い人向けにはタイトルがどうこう以前に,「ゲームセンターという場所がどういうところなのか」を認知してもらい,そこから足を運んでいだけるような働きを思索していきたいところです。

4Gamer:
 今の10代も今後の新世代も,ゲーム体験はスマホでスタートして,家庭用ゲーム機ないしPCでゴールする子が多いでしょうしねえ。

小澤氏:
 そうですね。我々とはどうしても育った環境が違いますもんね。

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 なんて悲しい話でインタビューを終えるわけにはいかないので,小澤さんには最後に,ちょっとした思い出話を語らせてもらった。

 当時は確か,エウティタ(機動戦士Zガンダム エゥーゴvs.ティターンズ)やGGXXAC(GUILTY GEAR XX ΛCORE)の時代だったか。

 それくらい昔の話だが,私は富士見台の名物高校に通っていた。とはいえ,当時は「商店街の2階のゲーセン」を認識していても,それが富士見台ゲームパークという店名であることすら知らなかった。なにせ,私がここにあった店に入ったのは2回あったかどうかだからだ。
 それも友人との待ち合わせの時間つぶしに入店しただけ。目当てのゲームがあっても遊んだ覚えはない。やるなら地元の店だった。

 けれど,学校をやめる日のことだ。卒業ではない。怠惰の末の自主退学である。最終登校日の午後,帰りの会でなにか殊勝なあいさつでもさせられたらたまんないと,(バカな男子高校生たちの自虐的なノリの)退学祝勝会を開く予定だったクラスメイトたちに,「先出てるわ」と先んじて別れを告げ,担任の顔を見ないよう教室の窓からバックれた。
 そのあと少々,時間をつぶす必要が出てきた。そこでふと,ここにゲーセンがあったことを思い出して,入っていった。

 このときも筐体を眺めていただけだ。友人たちもすぐに追ってきたので,プレイする時間なんてなかった。店を出ながら,彼らから聞いた「担任キレてたぜ」なんて土産話でバカ笑いし,最後にご飯を食べて騒いで解散した――なんて頭の悪い思い出があるのだが。

 不思議なもので,私は以降,富士見台とはいっさい縁がなかったのに,どれだけ時間が経とうと,商店街の2階のゲーセンを忘れなかった。なんなら高校の校舎や当時の友人の名を忘れても,「富士見台には2階にあるゲーセンがあった」と最初に連想するくらい根強く覚えていた。

 この店ではゲームをワンプレイもしなかった。内装すら覚えていないくらい印象も希薄だ。最後の待ち合わせ中にセンチメンタルを感じるような感性も宿していなかった。町のゲーセンの思い出なら,すべて潰れた地元の店舗たちや,外征先の店舗のほうがよっぽど思い出深い。
 なのに,あのときアホな人生で一瞬だけ交差したこの場所のことをまだ忘れていなくて,取材にかこつけて訪ねたのがこの日だった。

 という個人的な理由があったことを,小澤さんに伝えると。

「そういう,〇〇さんの思い出みたいに,ここにゲーセンがあったって覚えていてくれる人がいるだけで,本望だなって思えます(笑)」

 たぶん,今でもゲーセンを運営している人たちは,そういうものなんだろう。なんて話を,これからも各地で聞ければと思っている。

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「ゲームセンター富士見台ワイワイ」YouTubeチャンネル

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