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インディーゲームの春の祭典「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」レポート。ゲームを軸に,異業種とのコラボも生まれる場へ発展中
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今回で3回目となる「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」は,“インディーゲームを中心としたさまざまなクリエイターの才能が一堂に会し,頂きを目指すきっかけとなる場”を目指したイベントだ。
前回と同じく,メイン会場は武蔵野公会堂と吉祥寺東急REIホテルの2か所。また,吉祥寺パルコ,吉祥寺マルイ,キラリナ京王吉祥寺,東急百貨店 吉祥寺店,コピス吉祥寺,ハモニカ横丁などにサブ会場が設けられ,ポップアップストアでのグッズ販売や,ゲームの展示などが行われた。
今回はサブ会場の様子ものぞいてきたので,まずはそちらからお伝えしよう。
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さまざまな才能を持つクリエイターが一堂に会した「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」をレポート

吉祥寺の武蔵野公会堂にて3月4日,「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」が開催された。“インディーゲームを中心としたさまざまなクリエイターの才能が一堂に会し,頂きを目指すきっかけとなる場”を目指して企画された本イベント。会場に出展されていた今後リリース予定の作品の中から,とくに印象に残ったものを紹介しよう。
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- Nintendo Switch
- ライター:高橋祐介
「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024」レポート。インディゲームが生む賑わいを核に,さまざまな可能性が育まれる場へ

「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024」が,2024年3月2日と3日に,東京にある武蔵野公会堂で開催された。“インディーゲームを中心としたさまざまなクリエイターの才能が一堂に会し,頂きを目指すきっかけとなる場”というコンセプトを掲げている本イベントの様子を紹介する。
「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」公式サイト
サブ会場の様子
●吉祥寺マルイ
吉祥寺マルイでは,店頭でTIGSオリジナルグッズの販売が行われたほか,4Fのイベントスペースでは「陰キャラブコメ」(PC / Switch)のポップアップストア“春先の悪夢”がオープンしていた。また5Fでは,プログラミングのワークショップも実施された。
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![]() 春先の悪夢フォトスポット。なにか違和感が……と思ってよく観察してみると,各キャラクターの服が交換されていた!(アイデアロール成功) |
●キラリナ京王吉祥寺
吉祥寺駅に直結するショッピングセンターのキラリナ京王吉祥寺では,“変わったコントローラーを使うゲーム”が展示されており,行き交う人が興味津々な様子でながめていたり,足を止めて遊ぶ姿が見られた。
![]() 展示場の様子。知っている人は知っている,とある人物が左端に映っている(後述) |
![]() お好み焼きをひっくり返すゲーム「お好み焼き体験ゲーム コテの名人」は,東京工芸大学の卒業制作 |
![]() 難度は3種類。使うコテが小さいほど高難度というアナログな方式だ |
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![]() 筆者は「コテ小」でもあっさり成功してしまった。だが,卒展での成功率は数パーセント台だったらしい。マジですか? |
![]() 内部には加速度センサーなどがあり,ここでひっくり返したか,形が崩れたかを判定している |
![]() ゲームについて説明してくれたのは,東京工芸大学芸術学部ゲーム学科教授の中村氏……って「ことばのパズル もじぴったん」シリーズを手がけた中村隆之氏じゃないですか! 話題となった「湯切りの頂」も展示されていた |
[CEDEC 2019]無数のアイデアをもとに,チーム全員が納得できるアイデアを生み出す手法とは。小規模チームのアイデア絞り込みメソッド
![[CEDEC 2019]無数のアイデアをもとに,チーム全員が納得できるアイデアを生み出す手法とは。小規模チームのアイデア絞り込みメソッド](/games/058/G005801/20190906062/TN/019.jpg)
小規模なチームで何かを作るには,チームの全員が納得できるアイデアを形にしていきたいことが多い。しかし,例えば作品のタイトル1つとっても「チーム全員が納得できるタイトル」を決めるのは難しい。CEDEC 2019では,神奈川工科大学の中村隆之准教授がこの困難を打破するメソッドを具体的に解説した。
●パルコ吉祥寺
こちらは時間の都合で取材できなかったのだが,名作インディーゲームとコラボしたオリジナルグッズの販売や,ゲームの試遊が行われていたようだ。
?TIGS2025 現地レポート
— TOKYO INDIE GAMES SUMMIT (@TOKYO_IGS) March 9, 2025
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吉祥寺PARCOの屋上ゲームフェス。かなり盛り上がってましたよ。
ゲームに関連するアパレル、雑貨、体験、フードやドリンクなど、たくさんの出店があります。#TIGS2025 #TOKYOINDIEGAMESSUMMIT2025
#パルコTIGS2025 pic.twitter.com/7OlmLYFq7e
●ハモニカ横丁
メイン会場では,ハモニカ横丁で使える「ドリンク1枚無料券」が配布されていた。つまり閉会後は,サブ会場のひとつ,ハモニカ横丁でじっくりと交流を! という導線が引かれているわけだ。
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と,メイン会場以外も大きな盛り上がりを見せていたTIGS2025。3月8日と9日の2日間,吉祥寺の街はTIGS一色……というのはさすがに大げさだが,街側からも一緒にインディーゲームシーンを盛り上げていこうというムードが感じられた。
本イベントは回を重ねるうちに,吉祥寺の春の風物詩として定着していくのかもしれない。続いて,メイン会場で印象に残った作品を紹介していこう。
気になったインディーゲームを紹介
■Scheduler/噺の話/Verse of Birth
出展者:デンツウゲームセンター
大手広告代理店・電通の社内では,現在200人近くが通常業務とは別に,趣味で個人ゲーム開発や小規模ゲーム開発を行っているらしい(!)。なかなかに驚きの話だが,デンツウゲームセンターのブースでは,その中から選ばれた数本の作品が展示されていた。
そのひとつ,岩下 智氏(@i_Shuttle)が開発する「Scheduler」は,スケジュール帳での予定管理をモチーフにした落ち物パズルゲームだ。プレイヤーの課題は,上からどんどん降ってくるスケジュールのブロックをバッティングしないように配置していくこと。
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赤いブロックは何があっても動かせない用件,オレンジはカードを使ってずらせる用件,青は自由に動かせる用件,そして緑は自由に動かせ,ほかと被ってもOKな用件と,各ブロックには優先順位が決まっている。
用件をさばくのに失敗すると当然トラブルとなり,新たなスケジュールが上からドサッと積まれてしまう。
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さまざまな要件を滞りなくさばき,ビジネスパーソンとして高評価を得よう……といったゲームになる予定だが,実際にプレイできるバージョンの完成はまだ先になりそう。
コンセプトムービーから感じた魅力が,しっかり落としこめている作品となることに期待したい。「Scheduler」に限らず,デンツウゲームセンターは開発パートナーを募集しているそうだ。
![]() 言語AIを使ってプレイヤーの回答を判定する,水平思考ゲーム「噺の話」(@hanashino_info) |
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![]() やはりというか,ゲーム制作に使える時間が少ないのが悩みらしい |
■ウンコテクニカ
出展者:うどんぱ
第1回GYAAR Studioインディーゲームコンテストで入賞し,2月13日にはSwitch版も発売された注目作「スゴイツヨイトウフ」(PC/Switch)……の隣で,とんでもない存在感を放っていた「ウンコテクニカ」を紹介しよう。
![]() 「とうふなれます」「ウンコできます」が並んでいた…… |
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ゲーム内容は,スタート地点から排出され自動走行するウンコをジャンプさせて,ゴール地点のトイレへと導くというシンプルなもの。
何回ジャンプしてもゴールに着きさえすればOKだが,最小の手順で解くと「パーフェクトウンコ」達成となり,とても“スッキリ”する。
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作者のうどんぱ氏(@udonpa)によれば,本作は全160ステージ以上ものボリューミーなモノになるそうで,ゲーム内で獲得したコインでスキンを買えたりもするとのこと(ウンコのスキン?)。Steamにて今年中のリリースを目指しているそうだ。
![]() ビジュアルはレトロなデジタル8色調でどこかノスタルジック。小学生スピリットをくすぐるものがある |
■Electrogical
出展者:kinjo
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続いて,レトロな雰囲気でかわいいゲームをもう1本。ジグソーパズルのようなピースに描かれた数字を計算しつつ,ピースを回転させてはめこみ,スタートとゴールをつなぐパズル「Electrogical」だ。本作は,第1回GYAAR Studioインディーゲームコンテストでの受賞歴もある。
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ゲームのバックグラウンドは,「星間航行が可能になった未来,長期間の稼働により老朽化した動力炉の回路を修理する」というSFチックなもので,各種デザインやメッセージなどに反映されている。なお,メインキャラの「超電導生命体neko」もちょっといい感じだ。
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音楽や効果音にもこだわりを感じた。ピースをはめる音やクリア時のnekoの動きもよく,気分転換に1ステージだけ,なんて繰り返し遊んでしまいそうな魅力がある。現在はSteamでアーリーアクセスを実施しており,年内にはSwitch版の発売も予定しているそうだ。
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■IZON.
出展者:Yoshi. and Creek & RIVER Co.,Ltd.
![]() 展示されていた虚人と智人のフィギュア |
出会うはずのない二人が出会い,ともに歩むことで止まっていた世界が動き出し,ゆるやかに滅びの物語が紡がれていく――
本作は,「NieR:Automata」「ASTRAL CHAIN」「ベヨネッタ3」などの制作にも関わった,造形作家Yoshi.氏(@Yoshi6054)らが制作する“共依存アドベンチャーゲーム”だ。カプセルトイなどで展開している「紡ギ箱」シリーズと共通の世界観を持っている。
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登場人物は,創造の力を持つ異形の少女“智人(ちびと)”と,あらゆるものを破壊する兵器“虚人(きょじん)”。相反する力を持つふたりは,様々な障害を克服していく中で心を通わせ合い,そして依存しあっていく……。
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プレイヤーは虚人を操作し,智人を守りつつ迷宮内を進んでいくことになる。虚人は頑強かつ怪力で,ほぼ無敵とも言える存在だが,智人はダメージを受けるとすぐに倒れてしまうほどか弱い。
そのため,彼女を守るためにバリアを発生させたり,抱えて移動したりするといった,虚人の能力を駆使しなくてはならない。
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ただ,ときには智人が単独行動し,せまい隙間の先で仕掛けを操作したり,「創造の力」でモノを生み出したりと,互いに依存し合うことで状況が進展していく。
パッと見は三人称視点のアクションであり,また状況に合わせた武器の使い分けなどもできるのだが,全体としてはストーリーテリングと謎解きに力を入れた作品となるようだ。
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■欠損失愛
出展者:ザクロ弁当屋
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巨大なポップが目立つブースに展示されていた「欠損失愛」は,作者のザクロスケ氏(@zakurobento)が「四肢も倫理観も欠損してます」と語る作品だ。
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ゲームは,「四肢削ぎ魔」に監禁された主人公となり,両手両足を失った状況下で生存を目指すというもの。システムのほうは,気になったところをクリックして進めていくタイプのアドベンチャーだ。
主人公が部屋の中を見回す動きや,キャラクターのモーションがLive2Dで描かれているのだが,これが本当に細かいところまで動く,動く!
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スティーヴン・キングの「ミザリー」や,映画「ボクシング・ヘレナ」(手足を切断された女性が箱詰めの状態で監禁される話)など,監禁を題材にしたサイコスリラー的なシチュエーションだが,本作は単に生存や脱出を目指すといった話ではない。
四肢削ぎ魔は基本的にはこちらを愛でつつ「幸せに暮らしたい」ので,こちらの暴言などもある程度は許容してくれる。
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もちろん主人公の四肢を削ぐような悪い奴なので,罵ったりすることに罪悪感を抱く必要はない。ふたりきりで,お互いに,存分にいじめ合うことができるという,作者の“癖”と“愛”が詰まったお話なのだという。
それでも生殺与奪の権を持つのは監禁している彼のほうで,食事などはもちろん,何かものを調べるのにもいちいち頼らなければいけないのだが,彼の許容範囲を超えるとあっさりと殺されてしまう。そんな風にゲームオーバーを繰り返しながら,彼がなぜこんな行為に及んだのかを探っていく要素もあるらしい。
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なお,手足が欠損しているショッキングな表現はあるものの,さらなるゴア表現などはないそうなので,流血沙汰が苦手な人も大丈夫(?)だという。保証の限りではないが……。
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■太ももうさぎのスパチャくれなきゃ突撃ダイッ!!
出展者:SKOOTA GAMES
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ふとももで魂を挟んで癒すリズムアクションゲーム「ももっとクラッシュ」など,ブッ飛んだコンセプトの作品で話題をさらうSKOOTA GAMES(@SKOOTAGAMES)。アニメスタジオを母体とするこのインディレーベルは,新作「太ももうさぎのスパチャくれなきゃ突撃ダイッ!!」を出展していた。
![]() かわいさとキモさがまったく調和していないデザインがステキ! |
ゲーム自体は意外とまじめ(?)なベルトスクロールアクションで,太ももうさぎを操作してヘビなどの敵を倒しつつ,消化されかかっていた仲間を集めて右側へと進んでいく。敵の大群が現れたらコマンド技を使って排除といった感じで,なんだかんだで楽しい。
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ただ,コマンド技を使うと周囲にいる仲間の人数(匹数?)を“消費”してしまう。仲間はスパチャを投げてくれるリスナー的な存在でもあるので,あまり減らしてしまうと具合がよろしくない。
![]() 技もちょっとキモちわるい |
スパチャの量によっては「スーパーテンションモード」に突入するそうなので,仲間を消費して戦いつつ,減らしすぎないようなバランス感覚が求められるわけだ。
「ももっとクラッシュ」といい,なんだか気になる作品を発表し続けているSKOOTA GAMESだが,その動向からは今後も目が離せない。
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■ThumbyLina
出展者:Leona Software
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「親指サイズのハードウェア?」。インパクトのある展示を見て,思わず足が止まったLeona Softwareのブース。そんな筆者を,画面の中の親指姫たちが出迎えてくれた。
![]() ち,ちっちぇ! まさにサムネイル(親指の爪)サイズ |
しかもこれ,ちゃんと十字キーと2つのボタンで操作が可能なゲームだったりする。
時間経過でコインを入手し,そのコインを使ってガチャを回し,手に入ったアイテムを使って女の子を着せ替えするというシンプルな遊びとなっているが,シンプルなだけに休憩時間などにポチポチとやってしまいそう。しかも小さいので持ち運びも苦にならない。
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試遊機の外装カバーは,3Dプリンター製(基板は中国で生産している)で半透明だったが,透明なパーツを使った試作品も作っており商品化を準備しているそうだ。
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制作者の高橋玲央奈氏は国内と中国のゲームビジネスに詳しく,マーベラス主催のiGi(indie Game incubator)のメンターなどもつとめる人物だ。
「デジタルやオンラインでの商売に疲れ,リアル空間でアイテムを売ることに回帰した」などと冗談めかしつつ,作品について語ってくれた。
「grateek」公式サイト
https://www.grateek.com/
……と,TIGS2025という場のお祭り感に影響されたらしく(?),どちらかといえばポップ寄りというか,風変わりな作品を中心に紹介させていただいた。もちろん当日は多種多様な作品に触れることができたので,どれを紹介するかは,非常に悩んだ。
![]() 筆者が大好きな「Merge & Blade」(PC/Xbox Series X|S/Xbox One)がSwitchの実機上で動いていた。本作は,落ちものパズルのような仕組みでユニットをマージ(合体)し,敵軍と戦わせるゲーム。遊んだことがない人はSwitch版が出たタイミングでぜひ |
![]() 「キメキャワ♥限界ビートちゃん!!」「Pastel☆Parade」も仲良く並んで展示。陰と陽,光と影,北斗と南斗的な対比がいい |
![]() 「BatteryNote」(Steamストアページ)は,高圧電流スイッチを実際に用意して展示していた。正式リリースへの電圧……もとい期待も高まる |
ちなみに,今年の東急REIホテル側の会場では「TIGSアワード」選定のために,出展タイトルから“推しゲー”を選ぶ投票が行われていた。
今までに触れたことがある作品が多数の票を集めているとこちらまでうれしくなるし,そこそこの集まり具合だと「がんばれ!」とより応援したくなってしまう。どのタイトルかは秘密だが,筆者も投票させていたいだきました。
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TIGS2025は,会場が吉祥寺という場所柄もあってか,ある出展者からは「アパレル会社の人が作品を見てくれました」といった声も聞かれた。また作品を楽しんでいる人たちを見るに,実際に他業種からも注目を集めはじめているような感じもした。
まさに“インディーゲームを中心としたさまざまなクリエイターの才能が一堂に会し,頂きを目指すきっかけとなる場”として発展しつつあるようで,次回以降の開催も楽しみになった次第だ。
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TIGS2025「インディーゲームパブリッシングを語る」レポート。元SIEの吉田修平氏を聞き手に,PLAYISMの水谷俊次氏とPhoenixxの坂本和則氏が語り合った

インディーゲームの春の祭典「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」が,2025年3月8日と9日に東京にある武蔵野公会堂で開催された。初日のビジネスデイには,ステージで「TIGS2025 ビジネスデイスペシャルセッション インディーゲームパブリッシングを語る」が行われたので,その様子を紹介する。
「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」公式サイト
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