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TIGS2025「インディーゲームパブリッシングを語る」レポート。元SIEの吉田修平氏を聞き手に,PLAYISMの水谷俊次氏とPhoenixxの坂本和則氏が語り合った
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印刷2025/03/12 16:28

イベント

TIGS2025「インディーゲームパブリッシングを語る」レポート。元SIEの吉田修平氏を聞き手に,PLAYISMの水谷俊次氏とPhoenixxの坂本和則氏が語り合った

 インディーゲームの春の祭典「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」(以下,TIGS2025)が,2025年3月8日と9日に東京にある武蔵野公会堂で開催された。
 
 「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」は,“インディーゲームを中心としたさまざまなクリエイターの才能が一堂に会し,頂きを目指すきっかけとなる場”というコンセプトを掲げており,今年で3回目の開催となる。

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 会場の様子は後日お伝えするとして,本稿では1日目に行われたトークステージ「インディーゲームパブリッシングを語る」のレポートをお届けする。

 本ステージイベントでは,パブリッシャ側の視点から,クリエイターにどんな支援をしているのか,クリエイターとどのように関わっているのかなど,多くのインディーゲーム制作者にとって気になるであろうテーマでクロストークが行われた。

 語り手は,アクティブゲーミングメディアでインディーゲームのパブリッシングブランド「PLAYISM」を担当している水谷俊次氏と,ソニー・ミュージックのパブリッシングブランド「UNTIES」を立ち上げ,そのメンバーを引き継いだ「Phoenixx」を設立した坂本和則氏のおふたり。
 聞き手を務めたのは,元ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE),インディーズイニシアチブ代表で,さらに遡ればSIEワールドワイド・スタジオのプレジデントとして活躍してきた吉田修平氏だ。

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水谷俊次氏
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坂本和則氏
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吉田修平氏

「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」公式サイト


パブリッシャはどんな支援をしている?


 多くの個人開発者や小規模チーム開発にとって,少し謎めいた存在かもしれないインディーパブリッシャだが,その役割や仕事とはどんなものなのだろうか。

 この問いに対して水谷氏は,「(デベロッパに対して)あなたはゲームを作るだけでいいですよ」という形にもっていくのがパブリッシャの仕事だと答える。
 開発資金の提供,マーケティング,各言語へのローカライズ,デバッグ,各プラットフォームへの対応や移植,パッケージのデザインなど,ゲームのリリースに際して必要になる数多くの仕事をパブリッシャは担ってくれる。
 さらに,パブリッシャ側がゲームの仕様の一部を決めたりと,手の回らない部分をお手伝いをすることも“なくはない”そうだ。

 坂本氏も,「まさにPhoenixxでも形は違えどそうしたことを行っている」とし,各パブリッシャとも大同小異でそれらの仕事に取り組んでいる現況を伝えた。これらの話から,「個人や小規模開発では手が回りにくい領域を手助けしてくれる存在」と捉えてかまわないだろう。

 ちなみに両社とも,年間にリリースしているタイトルは10本から十数本だという。各作品をしっかりとフォローしていくことを考えるとそのくらいの本数になるらしく,これは人員の規模を大きくしても増やせるものでもないため,大半のパブリッシャはそれくらいの数に落ち着くそうだ。

 デベロッパ側が想像するよりも,デバッグ,QA,各プラットフォームとの折衝などは大変な作業になる。また,世界各国からの問い合わせに対するコミュニケーションも負荷が高いもののひとつ。
 個人開発の場合,メールすら確認できないという状態にもなりがちなので,ある程度の規模感でビジネスをしようと考える場合,やはりサポートがあった方が安心なのかもしれない。

 水谷氏は,「Steamのページを作るにしても,1か月はくらいかかる。リリースまでどんなタイムスケジュールで動くかの経験値がパブリッシャにはあるので,そこは頼ってほしい」と伝えていた。
 また坂本氏は,Steamや各種ゲーム機など,プラットフォーム(ストア)ごとの“文化の違い”を指摘した。「この表現は通る,これは通らないといった違いがかなりある」そうなので,そこに対するセンスやカンが働くことも実は重要であるようだ。

 なお,パブリッシャとしてのPLAYISMの強みを聞かれた水谷氏は,「たまたまだが,熱烈なファンのいる個性的なゲームを出すことができ,そうしたブランドと見られていること」と回答した。
 たとえば世界的に見た場合,Devolver Digitalはほかが追随できないインディーゲームブランドではあるが,彼らが日本的なテイストや,萌え的なテイストを含んだゲームを効果的に売ることができるかといえば疑問が残る。

 一方で坂本氏は,Phoenixxの強みは「作品単体でなく,クリエイターの人間性もコミで見ているところ」だとアピール。さらにファングッズやメディア展開などの可能性も見て,トータルでビジネスなるかどうかを判断するそうだ。

 続いて契約書に関する話になった。これに関して水谷氏は,「とにかくちゃんと読んでおくことが大事」と語る。

 よくある失敗としては,お互いの取り分のパーセンテージばかり見ていて,そのほかの条件を見落とすパターン。特に著作権に関する取り決めはしっかり把握しておかないと,ほかのプラットフォームへの移植や別言語へのローカライズ,続編の制作を自由にできない事態になりがちだ。
 「よくわからない部分」「懸念される条件」があるときは,そもそも契約すべきではないとも言える。

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 インディゲーム開発者向けのカンファレンス「Indie Developers Conference 2023」から,「インディーゲーム開発者が知っておくべき契約の落とし穴」と題されたセッションのレポートをお届けしよう。IDC主催のひとりでもあるPLAYISMの水谷俊次氏が,パブリッシャとの契約時に注意すべきこと,覚えておくべきことを解説した。

[2023/12/23 13:00]

 そして坂本氏は,「仮に一時的に権利を渡す場合でも,2年などと期間を決めておくことが大切」と付け加えた。たとえば大々的なプロモーション支援が受けられ,作品やクリエイターの知名度が高まるなど,得られるものが見合うと判断すれば,取引としては悪くないのかもしれない。
 パブリッシャとの契約は,作品が成功しなかった場合のリスクもよく考えに入れ,結ぶかどうか決断する必要があるだろう。


マーケティングやプロモーションについては?


 続いて,2023年末から2024年にかけてもっともバズったインディーゲーム「8番出口」のマーケティングに話が及んだ。
 水谷氏によると,「僕らのところに話が来たときにはすでにヒットしていた」そうで,Steam版がヒットする段階ではPLAYISMは関与していないとのこと。

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 しかし,Nintendo Switchへの移植に関しては,PLAYISM側が主導的な役割を果たしたという。というのも,オリジナルの「8番出口」はUnreal Engine 5で開発されたため,Switchへの移植の難度が高かったからだ。

 移植にあたっては,YouTubeなどの動画配信で子どもたちにまで知名度が広がっていたこともあり,「だからこそ売れる」「内容が知れ渡りすぎて売れない」と意見が割れたという。
 だがフタを開けてみれば,Switchも含めた全機種で140万本を超えるセールス(2025年1月時点)となるなど,対応プラットフォームを増やしたことは「吉と出た」形だ。

 オリジナル作品をヒットさせるのに必ずしもパブリッシャの関与は必要ではないが,さまざまなプラットフォームに展開しビジネスを広げていくなど,パブリッシャの力が活きるシチュエーションは多い。「8番出口」はその好例と言えそうだ。

 一方で,これから売り出していくゲームをパブリッシングしていく場合はどうなのか。
 この質問には坂本氏が答えた。氏は「大前提として,正解はわからない」と前置きした上で,それでも失敗する可能性が高い施策を「避ける」ことを意識しているとのこと。
 作品がどこにリーチするかを見定めつつ,ストリーマーに実況してもらう,深夜帯のアニメ番組などにCMを打つなど,作品やターゲットに合わせ,届け方をいろいろと変えていくという。
 またそれら施策のタイミングも重要で,リリース前後の半年くらいのロードマップを作成し,情報の露出が途切れないよう「ロードマップを埋めていく」ことも大事にしているらしい。

 なおPhoenixxは,自身がTIGS運営の主導的な役割を果たしているのをはじめ,世界で盛んに開催されているインディーゲームイベントへの出展にも力を入れている。
 それらの意図を問われた坂本氏は,「Phoenixxは,作品の出口(ビジネスとして成功する筋道)の可能性を広げることで,クリエイターの選択肢を増やすことが大事だと考えている」と述べていた。
 また,イベントに集まる人たちのゲームに対する熱量は高く,Steamのウィッシュリストの数にも繋がりやすいそうでもある。

 一方,INDIE Live Expoへの協力など,オンラインイベントに注力しているイメージのあるPLAYISMは,フィジカルとオンラインのイベントの違いをどう考えているのか。

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 INDIE Live Expo実行委員会は本日(2025年1月22日),次回の「INDIE Live Expo」2025年4月13日に,YouTubeやTwitchなどのプラットフォームで実施すると発表した。また,出展作品の募集もスタートしている。締切は2月12日11:59だ。

[2025/01/22 12:53]

 水谷氏は,「そこは悩ましいところで,日々考えている最中」とのこと。コロナ禍ではそもそもオンラインイベントしか選択肢がなかったが,その効果自体は「圧倒的に高かった」そうだ。懸念されていたイベントとしての盛り上がりも,チャットベースではあるが確かに感じられ,当時は「世の中はこちらに動いていくだろう」と見ていたという。

 だが,2022年以降はリアルイベントも順次復活していき,特にインディーゲームイベントは規模も数も増えているのを見て,やはり「人間は人と会いたいもの」と再確認できたという。
 とはいえ,それらにPLAYISMとして出展するかどうかはシビアに見ているそうだ。というのも,PLAYISMはイベントに来てくれる人も大切な一方で,「イベントまで足を運ばない,普通のゲーム好きにいかにリーチしていくかが重要」と考えているためである。
 ただ,クリエイターにとって作品がイベント出展されるのは単純に喜ばしいことだし,イベントで刺激を受けた新たな才能がゲーム作りを始める効果などもあるとして,こうしたイベントを「一概にプロモーションとしての効果だけでは見ていない」としていた。

 ちなみに両氏が成功したと考えているプロモーションを聞かれると,水谷氏は秋葉原で行った「VA-11 Hall-A ヴァルハラ」のコラボバーを挙げた。今だにそのときのカクテルを飲めるお店もあるらしい(関連記事)。

 一方で坂本氏は,パブリッシャが行うプロモーションとは,クリエイターがつけた種火を10から100,100から1000と勢いを増していくものと捉えている。
 そうした取り組みの中で印象に残っているのは,「Nyaaaanvy(ニャンビー)」のアニメ化だ。これは「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」などの制作を手掛ける,老舗のシンエイ動画に制作を依頼している。

 その結果,「それまで届かなかった層にもゲームが届けられた」そうで,面白い経験になったという。ちなみに,坂本氏はSIEに出向していた際に「キッズの星」の各種プロジェクトを立ち上げている。その一環としてアニメも制作しているので,そのときの経験も活きているのだろう。

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 Phoenixxは本日,大乱闘アクションゲーム「Nyaaaanvy」TVアニメを,5月25日からテレビ東京で放送すると発表した。本作は,2022年4月に早期アクセスを開始したPC(Steam)向けアクションゲームのアニメ化作品だ。キャストとして,花江夏樹さん,竹内順子さん,井澤詩織さんなどが出演する。

[2024/05/17 18:00]


リリースするタイトルはどう選んでいる?


 これもまたデベロッパにとって大いに気になる,「パブリッシャが扱うタイトルの基準」に話題が移った。いったいどんな条件を満たしたものがパブリッシングされるのだろうか。この問いには,まず水谷氏が答える。

 氏いわく,一番大切なのは「ほかとの差別化」とのこと。
 水谷氏自身は「Marvel's Spider-Man」などのAAA予算のゲームが大好きで,ホリデーシーズンのセール時にはまずそれらを買い,その次にインディーゲームの購入を考えるという。その際,どこかで見た印象のゲームではなく,“そのゲームでしか体験できない楽しさ”があるタイトルを選ぶらしい。

 水谷氏は,世の人々がインディーに求めるものも同じだろうと捉えており,PLAYISMでは前例のないゲームを届けていきたいと考えていると述べた。
 また,「唯一無二のものはマーケティングコストも激減する」らしく,そのようなゲームに興味を持った場合,その作品を買うしかないことが強みとなる。確かに,ジャンルとして盛り上がっているものは市場から好まれるかもしれないが,その数は多いため,並みいるライバルの中から選ばれる難しさもあるわけだ。

 これには聞き手の吉田氏も深く感じるところがあったようで,「(マーケティングを気にしていないようで)真の意味でのマーケティングの視点が入っていますね」とコメントしていた。

 Phoenixxは,扱うタイトルを坂本氏が決めているわけではなく,各担当者が“推せる作品”を出すことが大事だと考えている。またPVなどでは判断せず,あくまで実際のゲームの手触りを大事にしている。
 さらに,作り手が「クリエイターとして魅力があるか」も大切で,まさにソニー・ミュージック出身らしいというか,プロデューサーがアーティストを見るのに近い感覚で接している。

 ヒット作を生み出すにしても「個性や我がある人が,世にどうやって訴えていくかが重要」で,ポップでキャッチーであることが大切なのではなく,コアがあることが先だという。だから契約に至るまで,坂本氏も「必ずゲームをプレイするし,本人にも何回かお会いする」らしい。

画像集 No.006のサムネイル画像 / TIGS2025「インディーゲームパブリッシングを語る」レポート。元SIEの吉田修平氏を聞き手に,PLAYISMの水谷俊次氏とPhoenixxの坂本和則氏が語り合った

 この場合,作品を推す担当者選びが大切になってくるが,坂本氏が人を見るときに最も重視しているのは「とにかく逃げないこと」だという。逃げずにやってきた人は,何かトラブルがあったときにも信頼できるし,クリエイターからの信頼も損なわないからだ。
 その結果,Phoenixxの扱うタイトルはノベル,アドベンチャー,シューティング,なんでもござれの「百貨店状態」になっていると語っていた。

 なお作品として魅力を感じても,契約には至らない場合ももちろんあるそうで,Phoenixxはローカライズコストが大変になりがちな,選択肢が多いRPGは避ける傾向があるらしい。
 また両社とも,海外のパブリッシャと金銭面での競り合いになった場合は勝つのは難しいと語る。海外では予算規模が過去2年で数倍にアップしているそうで,水谷氏は「インディーゲームって……なんだっけ?」と思う機会も増えたそうだ。

 続いてパブリッシャとして,デベロッパとの望ましい関係を聞かれた水谷氏は「綺麗事かもしれないけど,やはり互いに信頼しあえることが最も大切」とした。

 そうした関係性であれば,いろいろあってもプロジェクトは成功することが多いという。契約は大切なのだが,「お互いに契約にない部分を預けられるかが案外大事で,ビジネス的な数字よりも,この人の作品を世に出さねばと思えるか」も大きいと話す。
 またその逆に,「才能は認めるけど,付き合うかどうかは考える」パターンもあるという。坂本氏も同様に「クリエイターが作品をより良くしてくれたことに対し,こちらも予定していた以上の予算をプロモーションに投入して応えたりと,自然にやっていける関係が理想」と語っていた。

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 実際には,クリエイターとパブリッシャは互いの領域を越えて協力することも多く,パブリッシャが作品作りの一部を手伝ったり,クリエイターがプロモーションに協力したりもすることもよくあるとのこと。
 最初のうちはすれ違っていてもかまわないが,相互にコミュニケ―ションを続けて折り合いをつけたり,信頼を築けるかが大切というわけだ。


インディーゲームの未来は?


 インディーゲームに関するファンディングやメンターシップなども増え,今年もさらなる盛り上がりが感じられるインディーゲーム周辺。両氏は今後についてどう捉えているのだろうか。

 坂本氏は,「関われる作品の数は限られているので,僕らパブリッシャ同士はライバルではなく,どちらかと言えば仲間だと捉えています。生成AIも便利になり,インディークリエイターにとってはいい世界,いい今後10年になるのではないかと見ています」と,明るい未来像を語った。

 一方で水谷氏は,少し悲観的なトーンだった。
 氏は,「プレイステーションの登場以降,ゲームの開発費が高騰し,より数が売れるものを作る必要がでてきて,メーカーが合併したり消えたりしました。それを僕は1ユーザーとして見てきたので,インディーゲームもそうならないことを望んでいます」と話す。
 そして,「個人でゲームを作っている人には良い世界が来るかもしれないけど,業界としては右肩上がりではなくなるタイミングは来ると思っていて。それでも我々は今の状態からブレず,個性的な作品を世に出し続けたいです」と,強い決意を表していた。

 セッションの締めくくりに,インディーゲームを作っている人たちに向けたメッセージが送られた。
 水谷氏は,「ウィッシュリストとかそこまで関係ないですよ。相関はあるけど,ウィッシュリストが1万だろうと何十万本も売れたゲームもあるので。ゲームはほぼ完成度がすべて。マーケは横に置いて,まず完成させてください」と強く発し,「じゃないとバッドレビューつきますよ。いいゲームは誰かが広めてくれますし,我々が協力します!」とまとめた。

 坂本氏は,「付け加えるなら,ずっと作り続けないで世に出しましょうとも伝えたいです。作ること自体が好きで完成度を高めたいのもわかるけど,ちゃんと完成させて,次の作品を作りましょう」と,完璧主義の罠に陥らない大切さを伝えていた。

 デベロッパだけでなく,パブリッシャやそこに属するプロデューサーにとっても役立つ内容が含まれていた本セッション。良心的なパブリッシャは,自身の利益を追求するだけでなく,デベロッパとの共存共栄を願っているもの。デベロッパ側としては,そうした姿勢を感じられる会社や人物を見定めることが肝心と言えそうだ。

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「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」公式サイト

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