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“推し活”道 第5回:「死ぬまで歌い続ける」――小林正典さんが語る,音楽への信念とエンタメへの情熱,そして挑戦し続ける理由

 4Gamer(仮)の企画「“推し”道」,略して“じょぶかつ”では,女性向けコンテンツなどで活躍する人物に注目し,インタビューをとおしてパーソナルな魅力をお伝えしていきます(不定期掲載)。

 第5回のゲストは,「バンドやろうぜ!」に登場するバンド「OSIRIS」のボーカル,高良 京役で知られる小林正典さんです。子どものころ,意識せずに歌がうまかったというエピソードや,バスケットボール選手を目指していた学生時代,趣味であるゲームや映画の話など,たっぷりとうかがいました。ご本人提供の写真も掲載しているので,最後までお楽しみください。

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小林正典さんプロフィールリンク

「4Gamer女子部の“推し活”道(じょぶかつ)」
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プロのバスケ選手を目指していた学生時代
ある日,カラオケで歌ってみたら……


4Gamer:
 小林さんには何度もインタビューをさせていただいたり,現場でお会いしたりしていますが,パーソナルな面にスポットを当ててお話をうかがうのは初めてですね。今日はぜひリラックスして,いろいろと聞かせてください。

小林正典さん(以下,小林さん):
 本当に大した話はできませんよ!? これまでの記事を読ませていただいたんですけど,「みんなプライベートが充実してるなあ……」って感心してました(笑)。僕,そういうのがあまりないんですよ。外に出るのも好きじゃないですし。

4Gamer:
 確か,ゲームがお好きだとおっしゃってましたよね。最近はどうですか?

小林さん:
 今もやっていますね。最近だとこのあたりとか……(と言ってスマホの画面を見せる)。

4Gamer:
 あっ,すごくたくさんありますね。それなら,ゲームの話は後ほどじっくり聞かせていただきましょう! では,さっそく生い立ちから教えてください。

小林さん:
 はい。僕は北海道札幌市出身で,父,母,兄の4人家族の次男です。子どものころは,祖父母と一緒の二世帯住宅で暮らしていました。父は屋根を作る板金職人ですが,自ら会社を経営していたので,僕はいちおう社長の息子ということになります(笑)。

 小学生のとき,近所で一番バスケットボールが強い高校で,ミニバスケの体験をする機会がありました。そのときに指導してくれた監督のもとで,バスケを学びたいと強く思ったんです。それを親に話したところ,その学校に進むには中学受験が必要だと知りました。そこで,受験をして通うことになりました。

幼少期の小林さん
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4Gamer:
 小林さんは中学受験をされたんですね! では,そこから本格的にバスケを始めたと。

小林さん:
 そうです。中学からエスカレーター式で高校に進みましたが,非常にバスケが強いところで,20年以上連続で全国大会に出場しているような学校でした。

4Gamer:
 すごいですね。ちなみに,子どものころはどんなお子さんでしたか。

小林さん:
 うーん,活発なほうだったと思いますね。実家は札幌といっても山の上のほうだったので,クワガタやカブトムシを捕りに行ったりしていました。

4Gamer:
 中学・高校での印象深いできごとや思い出はありますか。

中学1年生の小林さん
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小林さん:
 とにかくずっとバスケをやっていたんですが,通っていた高校はいろいろと問題がありました。オブラートに包んだ言い方をしますが,とても厳しい上下関係があったんです。

4Gamer:
 ああ,体育会系ならではの……。

小林さん:
 それです。今では考えられないこともありましたね。僕はそこまで厳しい目には遭わなかったんですが,先生や先輩たちは伝統的に厳しかったです。そのあと,大学にはバスケの推薦で進学しました。

4Gamer:
 本当にバスケ漬けの毎日だったんですね。では,歌に目覚めたきっかけはどのあたりにあったのでしょうか。

小林さん:
 幼少のころは,たくさんの習い事をしていて,兄も僕もピアノを習っていたので,音楽が比較的身近にある環境ではありました。初めてカラオケに行ったのは小学生のときですが,そのときに「歌がうまい」と驚かれたんですよ。

 それから,高校で父兄も参加する新入生歓迎会のようなものがあり,1年生のときにカラオケをする機会がありました。「お前,うまいって聞いてるけど歌ってみてよ」と言われて,親も好きだったCHAGE and ASKAの「SAY YES」を歌ったら,そこにいた人たちがみんなびっくりして。あれ? 僕は歌うだけでこんなに人の表情を変えられるのかと思ったんですよね。

4Gamer:
 もう根っからの歌うまだったわけですね……。

小林さん:
 でも,自分としては,ただメロディのとおりに歌っているだけなのにと思っていました。例えて言うなら,お手本のとおりに文字をなぞっているだけなのに? という感覚です。正直なところ,いまだに自分の歌をうまいと思ったことはありません。

4Gamer:
 また,そんな発言を……。普通の人はそれができないから苦労するわけですよ!

小林さん:
 まあでも,そういうできごとが何度かあって,歌に興味が芽生えたんですよね。あと,バスケで自分の能力に限界を感じるようになったこともありました。本当は大学には進学せず,音楽の専門学校に行きたかったんですが,親の反対もあって大学に進みましたね。

 そこでバスケを続けながら,軽音楽系のサークルに入ったものの,結局4年生で中退しました。親には申し訳ないことをしたなと思います。最後の反抗期だったのかもしれません。

4Gamer:
 軽音楽部での活動はどうでしたか。

小林さん:
 すごく印象深いできごとがありました。1年生のときの学園祭で,バンドで歌うことになったんです。そのバンドは,演奏メンバーが軽音楽部内でもスペシャリストと言われていた人たちで,ステージのトリを飾ることになりました。ただ,ボーカルは1年生の僕です。きっと観客の人たちは「誰だ,このボーカル?」という状態だったと思うんですが……。

 日が落ちて,すっかり夜の暗さになったころ,ステージにスポットライトが当たっていました。近くには焼き鳥か何かの露店があって,そこから流れてきた煙がちょうどステージに広がったんですよね。

4Gamer:
 スモークの演出じゃないですか!(笑)

小林さん:
 そうなんです。そこで歌い始めた瞬間,露店で買い物をしていた人や何かを食べていた人たちが,バッと一斉にこちらを向いたんです。そのとき,「歌はたった一瞬で人の心をつかめるのか」と驚きました。そして,ステージで歌うのはこんなにも気持ちのいいものなんだと感じたんです。

 高校のころまでは,まだ人に見られるのが怖いという感覚があったんですが,その学園祭ではとても気持ちよく歌えて,歌うことが好きだと実感しました。そこからですね,プロになりたいと漠然と思い始めたのは。

 とはいえ,当時は何の知識もなかったので,大学を辞めたあとは,ずっとアルバイト生活をしていました。最初に働いたのはコンビニで,その後はアパレルやパチンコ店などで働きました。

大学生時代の小林さん
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20代後半でアニソングランプリに出場


4Gamer:
 そして,27歳のときに第4回アニソングランプリをきっかけに上京し,デビューされたんですよね。

小林さん:
 はい。でも,その前に第3回大会にも出場しています。それまでオーディションなどは一切受けたことがなかったんですが,友人をはじめ,さまざまな人に勧められて挑戦しました。第3回では決勝まで進みましたが,そこで落ちてしまいました。

 第3回には,佐咲紗花さんや愛美さん,元・風男塾の瀬口かなさん,それから僕は本名で呼んでいますが(笑),Geroくんも出場していましたね。

4Gamer:
 錚々たるメンバーですね……! では,第4回に挑戦しようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか。

小林さん:
 第3回で優勝した佐咲紗花さんが,札幌の雪まつりのステージで歌ったんです。僕はたまたまそれを観て,やっぱり自分もステージに立ちたいと思いました。このまま札幌にいては駄目だ,上京してもっと多くのことを学ばなければと考えたんです。

 それで,第4回では審査員の方々に「受かっても落ちても上京します」と宣言しました(笑)。にもかかわらず,再び決勝で落ちてしまったんです。ぼんやりと「これから先は,もっといろいろな人と知り合い,この世界について学んでいかないとな」と考えていたら,「審査員特別賞の発表があります」とアナウンスがありました。

 決勝大会の出場者全員が別室に呼ばれたんですが,自分には関係ないと思い,「早くお酒でも飲みに行きたいな〜」なんて考えていたんです。すると,突然名前を呼ばれて,最初は自分のことだと気づきませんでした。

4Gamer:
 何というドラマチックな展開でしょうか。

小林さん:
 周りのみんなから「おめでとう!」という歓声が上がり,トロフィーをもらったあとも,なんだかずっと実感が湧きませんでした。

4Gamer:
 その審査員特別賞が,デビューのきっかけになったんですよね。

小林さん:
 そうです。発表が終わったあと,スタッフさんから「事務所(JTBエンタテインメント)に入るかどうかを決めてほしい」と言われ,所属することにしました。そして,「CRASH!」という作品の実写版で,黒瀬 桐という役を演じ,デビューしました。

4Gamer:
 純粋な歌手活動だけでなく,すぐにお芝居にも挑戦することになったわけですね。戸惑いはありませんでしたか。

小林さん:
 いや,兄(北海道で活動中の俳優・小林エレキさん)も役者ですし,もともとお芝居には興味がありました。

 ちなみに,「CRASH!」で楽曲を制作していたのが,Elements Gardenの上松範康さんだったんです。だから,僕のデビュー曲を書いてくださったのは上松さんなんですよ。それをきっかけに,上松さんの作品の仮歌の仕事をいただくようになりました。

4Gamer:
 なるほど,そこでつながりが生まれたんですね!

小林さん:
 でも,やはり声優としての勉強も必要だと感じ,しばらく事務所の養成所に通い,お芝居の基礎などを学びました。当時,特別講師として参加されていた緒方恵美さんの授業を受けたことがあります。緒方さんは,この業界がいかにシビアであるかを語ってくださって,僕は,すごくありがたい話を聞かせてもらったなと思いました。なかには話を聞いて怖がっている人もいましたが……。

4Gamer:
 小林さんは意外と物怖じしない性格ですよね。

小林さん:
 いやでも,知らない人ばかりの環境ではまったくしゃべれなくなりますよ(笑)。初対面の人も得意じゃないし……。ただ,ちゃんと相手に興味を持てるようになれば,その人のことをもっと知りたくなりますし,自然と話しかけられるようになりますね。

4Gamer:
 ちなみに,MBTIはやりましたか? ご自分のタイプをご存じですか?

小林さん:
 僕,仲介者(INFP)です。

4Gamer:
 MBTIは,最初のアルファベットの「I」が内向的,「E」が外交的なんですよね。ちなみに私は運動家(ENFP)なんですが,最後の「P」は「J」と違って計画性がないらしいです(笑)。例えば,「J」は旅行に行ったら,あらかじめすべて計画を立てておきたいタイプだそうで。

小林さん:
 ああ,僕は絶対やらないですね(笑)。「その場で決めればいいじゃん!」って思います。

 そういえば,全然関係ないんですが,僕,ちょっとスピリチュアル的な能力というか,そういうものがあったという話をしたことありましたっけ?

4Gamer:
 いや,ないですね。

小林さん:
 大人になってから,兄とお酒を飲んでいたとき,「お前は小さいころ,話をしながら全然違うところを見ていた」と言われたんです。実は,高校生くらいまで,少し霊的なものが見えていました。

 他人の死相のようなものが見えたり,道などで何かを選ばなければならないとき,「こっちは選んでは駄目だ」と直感的に分かったりしたんです。危険なほうに行こうとすると,自分の中でアラートのようなものが鳴る感覚がありました。

4Gamer:
 それは今でもあるんですか……?

小林さん:
 いや,大人になってからはほとんどなくなりました。また感じる可能性がゼロではないと思いますが,何かを感じやすいほうではあると思います。

4Gamer:
 直感も優れているのでしょうし,ご先祖様のような存在が守ってくれているのかもしれませんね。

 そういえば,このインタビューで恒例の質問があります。ここまでの半生を振り返る意味でお聞きしますが,ズバリ,幼少期からデビュー前までの間,モテましたか。

小林さん:
 モテたって言いたいんですけどね……本当に駄目でした。唯一のモテ期は中学のときですが,僕は1年生のころ,身長が130cmくらいしかなかったんです。すごく小柄で,髪型もおかっぱのような感じだったので,そのせいか,高校生くらいのお姉さんたちに信じられないくらい可愛がられていました(笑)。膝に座らせてもらったり,肩に頭を預けて甘えたりしていましたね。

4Gamer:
 それはすごいですね。ほかに何か甘酸っぱい思い出はありますか。

小林さん:
 子どものころに習っていたピアノの先生が,すごく好きでした(笑)。幼稚園の先生でもあったんですが,本当に優しくて,先生のそばにいたいからピアノを習おうと思ったくらいです。

 隣に並んで弾いたり,手を取って「こうだよ」と教えてもらえたりするのがうれしすぎて……。

4Gamer:
 思ったより小さいころの話でしたが,めちゃくちゃ甘酸っぱいですね(笑)。

小林さん:
 でも,小学校2年か3年のときに別の先生に代わったんですよ。そうしたら,「何も面白くない!」ってなってしまって。優しいおばあちゃん先生だったんですが,結局辞めてしまいました。最初の音楽との触れ合いは,すごく不純な動機でしたね(笑)。


人生の転機,「バンやろ」との出会い


4Gamer:
 小林さんのキャリアを語るうえで,やはり2016年からの「バンドやろうぜ!」(以下,バンやろ)は外せません。私もリリース当時から取材などで追わせていただいていますが,最初はオーディションだったんですよね。

画像はこちらの記事より
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小林さん:
 はい。「バンやろ」は間違いなく僕の転機になりました。結果としてオーディションには合格しましたが,受けに行ったときに蒼井翔太くん(「バンやろ」に登場するバンド「FairyApril」のボーカル 鳳 葵陽役)に会ったんです。

 公表されていますが,昔は翔太くんもElements Gardenさんの仮歌を担当していて,ちょうど僕の前任者のような存在でした。だから面識もありましたし,歌唱力がめちゃくちゃ高いのもよく知っていたので,「ああ,終わった……俺は落ちた……」と思いました(笑)。

4Gamer:
 そこから今年で9年になるんですね……。

小林さん:
 本当ですよね。「バンやろ」でたくさん活動していた当時は,普段のような楽観主義ではいられないなと思っていました。

 とにかく,もっと歌がうまくなりたいということばかり考えていたんです。「バンやろ」サウンドディレクターの安谷屋(光生)さんは,耳がめちゃくちゃ良いので,「この人を本気で驚かせたい」という気持ちが強かったですね。

 ただ高い声が出るだけでは意味がない。もっといろいろなものを乗せて歌えるようにならないと,と考えていました。

2023年3月23日・24日開催「ドリームマッチ デュエル・ギグ2023 RAVEN/ADVENT」より(関連記事
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4Gamer:
 デビューからしばらくは,なかなか芽が出なかったとのことですが,「バンやろ」が決まって安心したというより,むしろ考えることが増えたという感じでしょうか。

小林さん:
 「バンやろ」が決まったときは,「本物の人たちの中に入らせてもらえた」と思いました。だからこそ,常に上を目指さなければと感じました。
 完璧なんて存在しませんが,それでも今もなお目指し続けています。

4Gamer:
 OSIRISは5月に台湾公演もありますよね。きっと今後もさまざまなライブが開催されると思いますが,そちらでもぜひ取材させてください!



休みの日はできるだけ外に出たくない
ゲーム・映画好きのインドア派


4Gamer:
 では,趣味に関するお話を聞いていきたいと思います。例えば,時間を自由に使える休日があったとして,どのように過ごされますか。

小林さん:
 家にこもるための食料などを前日に買い込んで,当日は家から一歩も出ません(笑)。もう根っからのインドアなので……。それこそ,ゲームをしたり,映画やドラマを観たりと,基本的に1人でできることが好きです。

4Gamer:
 なるほど。冒頭で少し話題に出ましたが,最近はどんなゲームをプレイしているんですか。

画像は公式Xより
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小林さん:
 今,一番やっているのは「Wizardry Variants Daphne」(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ)です。

4Gamer:
 おお,かなり本格的なタイトルが来ましたね。

小林さん:
 最近のアプリゲームって,誰でも簡単に遊べるものが多いじゃないですか。でも,昔から「ウィザードリィ」は鬼のように難しいと言われていて,さすがにアプリ版はそこまでではないものの,それでもかなり難度が高いんですよ。

 このアプリゲームに関しては,最近のゲームでは珍しく「キャラクターロスト」があります。せっかくガチャで手に入れて育てたキャラも,戦闘で死亡し,蘇生に一度でも失敗すると灰に,2回失敗すると完全に消えてしまうという……。

4Gamer:
 うわ,厳しい!!

小林さん:
 最近,大型アップデートがあったんですが,キャラは上限まで育てているし,装備もある程度そろっているので,「まあ,いけるでしょ」と思ってプレイしたら,全然進めませんでした(笑)。でも,こういう難度の高いRPGはすごく好きなんですよね。

4Gamer:
 なるほど……。ほかに遊んでいるタイトルには,どのようなものがありますか。

小林さん:
 スマホゲームだと,「アークナイツ」や「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」あたりですね。「アークナイツ」は,「ウィズダフネ」と比べると難度的には優しいですが,キャラのレベルを上げていても,しっかり攻略を考えないと勝てない仕様になっています。

 ストーリーも文章量が多いのですが,とても面白く,気づいたらハマっていました。よくプレイしているのはこの3本ですが,ログインだけ続けているアプリはまだまだたくさんあります。

4Gamer:
 コンシューマー系のゲームはどうですか。

小林さん:
 難度はそこまで高くないのですが,PlayStation 5の「メタファー:リファンタジオ」がもう少しでクリアできるところです。アトラスさんのタイトルですね。

4Gamer:
 かなり幅広く遊んでいるんですね。ちなみに,オンラインゲームもプレイされますか。

小林さん:
 やらないですね。やっぱり,人とコミュニケーションを取らないといけないのがちょっと……(笑)。

4Gamer:
 ああ……。

小林さん:
 「スプラトゥーン」は少しやってみたんですが,僕はあまりプレイがうまくなくて。気心の知れた友達と一緒なら楽しめそうなんですけど……。友達と遊ぶ「桃太郎電鉄」とかもすごく好きですしね。仲のいい人と一緒なら,ゲームも楽しめるのかもしれません。

4Gamer:
 それこそ,前回のインタビューにも登場していただいたご友人の佐久間(貴生)さんに教えてもらえばいいのでは……?

小林さん:
 確かに。あと,生田鷹司くん(「バンやろ」東雲大和役で小林さんと共演)も,めちゃくちゃゲームが好きなんですよね。実は,Nintendo Switchでフレンド登録しているんですよ(笑)。

4Gamer:
 そうなんですね!

小林さん:
 知らない人と話しながらプレイするのは無理ですが,何かをしゃべりながらゲームをするのはできます。いつかゲーム配信をやってみたいなとは思っていますが,機材に弱いので,環境が整わないと難しいですね……。

4Gamer:
 期待しています。そういえば,アーケードゲームで歌を歌われたそうですね(※「GITADORA GALAXY WAVE」の「月下美人(石井 真之 feat.小林 正典)」)。

小林さん:
 そうなんです。せっかくなのでゲームセンターで聴きたいのですが,まだ行けていなくて。ありがたいことに,Xなどでも「曲が良かった」と言ってくださる方がいらっしゃるようで,とてもうれしいです。

4Gamer:
 映画もお好きなんですよね。一番好きな映画を挙げるとしたら,何でしょうか。

小林さん:
 もうずっと言い続けているんですが,「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」です。昔から吸血鬼が好きなんです。

 発祥の地のような場所にも行ってみたいと思い続けています。美しくて,でも脆い存在というところがすごくかっこいいなと。主演のトム・クルーズがとても綺麗なんですよ。

4Gamer:
 それまでの印象とはガラッと変わった役でしたよね。ああいう,少しダークで耽美なイメージがお好きなんでしょうか? V系の音楽とも通じるところがありますし。

小林さん:
 はい。でも,自分の性格とはあまり合っていない気がします(笑)。

 あと,映画のジャンルでいうとゾンビ映画が好きです。「ドーン・オブ・ザ・デッド」とか……。なぜゾンビ映画が好きかというと,救いがないからなんですよ。ハッピーエンドっぽい作品もありますが,基本的にはバッドエンドで。その救いのなさが,僕ら人間の世界っぽいなと思うんです。

4Gamer:
 楽天家を自称する小林さんが,なぜ急にそんなネガティブな発言を……。

小林さん:
 (笑)。いやでも,ネガティブに捉えているわけじゃないんです。「これが映画で良かったね」と思うんですよ。現実だったら発狂しちゃうけど,映画だからこそ楽しめる。だから逆に,ラブロマンスとかハッピーエンド系の映画はあまり観ないんですよね。綺麗に完結するより,シビアな展開のほうが楽しいなって思ってしまうので。

4Gamer:
 私は韓国のコンテンツばかり観ているので,ここ数年のゾンビやパンデミック系映画だと「新感染 ファイナル・エクスプレス」とか「非常宣言」が好きですね。観ました?

小林さん:
 「新感染」は観ました! 主演の人(コン・ユ)のお芝居がすごく良かったです。

4Gamer:
 コン・ユ,いいですよね! コン・ユといえば「イカゲーム」はぜひ観てください。この間,シーズン2が終わったばかりですが,シーズン3が6月に配信されるので間に合うように……! シーズン2のお芝居,すごかったです。

小林さん:
 分かりました,観ます。でも僕,欲望に弱いのか,ハマると寝ずに朝までぶっとおしで観てしまうんですよね。ちゃんと時間を作らないとな……。韓国映画や韓国ドラマは,役者さんの演技がうまいですし,作品の完成度もめちゃくちゃ高いですよね。

 あと,韓国のゾンビものだと,ドラマ「今、私たちの学校は……」が面白かったです。シーズン2が始まるんですよね。

4Gamer:
 ずっと気になっていながら,まだ観ていませんでした。今度チェックします! やっぱり,ご自身もお芝居をされているので,役者さんの演技は気になりますか。

小林さん:
 あまり勉強という感覚で映画やドラマを観ることはありませんが,「うまいな」と思う役者さんはすごく気になります。そういう意味で,「この人の芝居,すごい!」と思ったのは,「ファンタスティック・ビースト」のエディ・レッドメインです。

4Gamer:
 ああ,あの人はすごいですね!

小林さん:
 存在感が圧倒的で,とにかくうまいなと感動しました。

4Gamer:
 小林さんは,基本的に歌手活動がメインだと思いますが,お芝居や声優の仕事もコンスタントに続けていますよね。

小林さん:
 はい。それこそ,去年,韓国ドラマ(「輝く星のターミナル」)の吹き替えをやらせていただきました。

4Gamer:
 あっ,「SF9」(韓国の8人組男性アイドルグループ)のロウンが演じた役ですよね!? 小林さんが担当されているとXで知って,めちゃくちゃびっくりしました。

小林さん:
 ロウンさんって,身長が190cmくらいあるみたいなんですよね……。その方の声を僕が担当するのは,かなり無理があるんじゃないかと思ったんですが,ディレクターさんがいろいろとアドバイスをしてくださいました。

 初めての吹き替えで悪戦苦闘しましたが,回を重ねるごとに少しずつ理解できるようになりましたし,すごく楽しかったです。いい経験になりました。



歌に対する熱い想い
これから挑戦してみたいことや夢について


4Gamer:
 これまでの人生で,挫折を経験したことはありますか。

小林さん:
 バスケットは,高校あたりで限界を感じていましたね。歌に関しては,しょっちゅう心を折られていますが,挫折というほどではないかもしれません。とはいえ,歌いたくなくなる瞬間は何度もあります。

4Gamer:
 それは,どういったことが原因なのでしょうか。

小林さん:
 やはり,人間関係の影響が大きいですかね。あとは,「バンやろ」のようにキャラクターとして歌うことで,自分自身をすべて出せないもどかしさを感じることもありました。だけど,ステージを見てくれるお客さんの眼差しを感じると,キャラクターを背負う責任の重さをあらためて実感します。

 歌うことがしんどくなったときは,一切歌わない時間を作ります。そういうとき,僕はカラオケバーのような飲み屋に行くんですよ。そこでは,自分のことを知らない人たちが,ただ純粋に自分が楽しむために歌っている。

 誰かのためではなく,自分のために歌っている姿を見ていると,この仕事を始めたころの気持ちに立ち返ることができるんです。「また頑張ろう」と思える。そして,結局,僕を歌の世界に引き戻してくれるのも,やっぱり歌なんですよね。

4Gamer:
 その気持ち,よく分かる気がします。

小林さん:
 歌に関しては,よく「すごくうまいけど,努力されているんですか?」と聞かれるのですが,「いや,していません」が答えなんです。これは誤解を招く言い方かもしれませんが,歌に対して「努力している」と思ったことはないんですよ。

 僕の中で,努力というのは苦しくて辛いものだという認識なんです。僕は,ただ好きで歌っているだけで,自分自身に課した目標に向かって進んでいるだけなので。

 でも,自分にとってお芝居は努力です。それこそ,「バンやろ」で言えば,花江夏樹くん,内田雄馬くん,梅原裕一郎くんたちと,当時一緒に収録しましたが,「もうレベルが違うな」と。

 圧倒的に自分の経験値が足りないと痛感しましたし,ボーカリストだからといって言い訳はしたくなかった。自分で足を踏み入れた世界なのだから,どんなにキツくても辛くても,たくさん考えて頑張らないといけないなと思っています。

4Gamer:
 よく伝わりました。ちなみに,ご自身の活動について,今後の展望はありますか。

小林さん:
 これといった強い欲があるわけではありませんが,歌えなくなるのは嫌だなと思っています。舞台などの活動も続けていきますし,お芝居や稽古もすごく好きですが,やはり中心には歌がありますね。そこだけは,絶対に譲るつもりはありません。

4Gamer:
 では,これから挑戦してみたいことがあれば,教えてください。

小林さん:
 ありがたいことに,さまざまな楽曲を歌わせていただく機会があり,今ではV系の方たちとのつながりも増えました。ですが,やはり自分の出発点がアニソングランプリであることは,これからも忘れたくありません。アニメに関する歌やお芝居には,今後も積極的に挑戦していきたいと思っています。

 それから,自分の肩書を人に説明するのが難しいんですよね。バンド界隈の方からは「声優」と言われ,声優界隈では「ボーカリスト」と言われる。どちらが嫌ということもありませんし,どちらかに寄せなければいけないという気持ちもないのですが……。

 緒方さんもおっしゃっていましたが,この世界はやる気だけでは絶対に生き残れない場所だと痛感しています。だからこそ,ずっと高みを目指していかなければならないなと。

4Gamer:
 そうですよね。では,声優として挑戦してみたい役などはありますか。

小林さん:
 僕は,人間観察が趣味なんです。人が何を考えているのかを知りたいという好奇心が強いのだと思いますが,殺人鬼の気持ちは分からないじゃないですか。

 だから,殺人鬼やサイコパス,マッドサイエンティストといった,狂気をはらんだ役を演じてみたいなと思います。自分がおかしくなっている,狂っていることに,自分自身では気づいていないようなキャラクター。難しいとは思いますが,きっと演じがいがあるのだろうなと。

 もちろん,主人公もやりたいですけどね。

4Gamer:
 歌手としての夢についても,聞かせてください。

小林さん:
 歌手として,「武道館やドーム,スタジアムを満員にしてやる!」みたいな夢は,一切ないんですよ。僕にとって,1人の前で歌おうが,1000人の前で歌おうが,やることは変わりません。1人のために歌えないなら,1000人のためにだって歌えない。どんな場所であっても,どんな環境であっても,常に同じように歌えなければならないという感覚が,ずっとあります。

4Gamer:
 では,「こういう歌手でありたい」といった信念はありますか。

小林さん:
 死ぬまで歌っていたいですね。うん……それは,ずっと思っています。

 学生時代にバスケをやっていて,ある日突然,「あ,もうこれ以上うまくならない」と感じた瞬間に,興味を失ってしまったんですよ。だから,歌に関しても,いつか同じような瞬間が訪れるかもしれないと思いながら生きています。

 僕は歌うことが好きだし,きっと死ぬまで歌い続けるだろうなと思う反面,「これ以上うまくなれない」と感じたら,辞めると思っています。だからこそ,そうならないように,ずっと「もっとうまくなりたい」という気持ちを持ち続けていたい。誰かとの勝負ではなく,常に自分自身との戦いを続けていこうと。

4Gamer:
 「死ぬまで歌いたい」という言葉,感動しました。これはもう,今日のインタビューのタイトル候補ですね……!

小林さん:
 (笑)。音楽って,常に新しいものが求められていると思うんです。だけど,僕は無理に新しいものを追い求めるつもりはありません。その代わり,自分の中での新しい発見をし続けたい。そういうアンテナを張り続けていれば,自分自身や次のパフォーマンスの成長につながっていくと思うので。

 だから,ヒップホップやレゲエなど,さまざまな音楽を聴いています。そのなかでリスペクトできる部分を見つけ,自分に取り込んでいくんです。アマチュアだろうがプロだろうが,そこには上下の区別はないと思うんですよね。「人は必ず自分にないものを持っているはず」という考え方で,僕は世界を見ています。

4Gamer:
 とても素晴らしい考え方だと思います。

小林さん:
 とはいえ,「このボーカル,すごくうまいな」と思う機会は,そう多くはないんですよ。ものすごく生意気な言い方になってしまいますが,「これは知っている感じだな」とか,「なるほどな」と感じることがほとんどで。

4Gamer:
 では,「驚くほどうまい!」と感じるボーカルがいたら,どうしますか?

小林さん:
 それはもう,めちゃくちゃ僕の好奇心の対象になりますね。以前,とあるボーカリストの方に対してそう感じたことがあったのですが,もう興味が抑えきれなくて,つい質問攻めにしてしまいました(笑)。

 でも,結局のところ,さっきも話したとおり,勝負の相手は自分自身なんですよね。どれだけ素晴らしいパフォーマンスをする人がいても,極端な話,それは自分には関係のないことです。もし相手のエネルギーに気圧されて負けてしまったら,それはつまり,自分自身にも負けたということ。だからこそ,自分との戦いを続けながら,死ぬまで歌っていたいと思います。

4Gamer:
 これからのご活躍を楽しみにしています。それでは最後に,読者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。

小林さん:
 あらためまして,ここまで読んでくださってありがとうございました。生い立ちからさまざまなお話をしましたが,まとめると,僕は本当に楽天家な人間です(笑)。それに,目標や目指す場所に向かうのが,亀のように鈍足なんですよ。気が向かないと動かない主義なので……。

 でも,ありがたいことに,周りの皆さんのおかげで,たくさんの素晴らしい機会をいただいています。おそらく,今年もいろいろな作品が世に出ると思いますので,このインタビューをとおして僕という人間を少しでも知っていただき,そんな僕が届けるものを楽しみにしていただけたら,うれしいです。

 こんな僕ですが,これからもよろしくお願いします!

4Gamer:
 本日はありがとうございました!

――2025年2月収録

反射で答えて! 一問一答コーナー


Q01.今,一番好きな,またはハマっている食べ物は?

 今というか,ずっと昔からですが,ラーメンが好きです。醤油派です。

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Q02.実は,◯◯が苦手なんです……!

 虫とイカの塩辛……。塩辛は,新鮮なものなら大丈夫ですが,市販のピンク色に着色されているものは苦手ですね。

Q03.口癖はありますか。

 最初に「あっ」とか「えっと」って言っちゃいます。
 コンビニで「お箸いりますか?」と聞かれたら,「あっ,ください」って答えます(笑)。

Q04.ついやってしまう癖は?

 鼻を触る。

Q05.好きなファッションは?

 モード系が好きです。「NO ID.」というブランドの服をよく着ています。

Q06.好きな色は?

 白,黒,シルバー。あとは以前から紫が好きだと公言していましたが,最近は少し薄紫寄りの色が好きです。

Q07.無人島に何か1つだけ持っていくなら?

 どこでもドア……と言いたいところですが,現実的にはナイフかライターですかね。

Q08.1億円あったらどうしますか?

 レコーディングスタジオを作ります!

Q09.行ってみたい場所はありますか?

 国内なら,行ったことはありますが,福岡というか九州にまた行きたいです。
 国外なら,ルーマニアですね。吸血鬼の故郷。

Q10.生まれ変わるとしたら,何になりたい?

 女の子になってみたいです! 今とは違う自分になってみたい。

Q11.世界中,過去も含めて誰でも会えると言われたら,誰に会いたい?

 うーん……hydeさん? 歴史上の人物なら,やっぱり織田信長とか卑弥呼とかクレオパトラとか……。

Q12.魔法使いに「願いを3つだけ叶える」と言われたら?

 1つ目は「どこでも移動できる能力」,2つ目は「時間を巻き戻せる能力」,3つ目は「理想の自分になれる能力」。

Q13.肉体と精神の衰え,どちらが怖い?

 肉体ですね。精神はどれだけ歳を取っても自分の歴史ですが,肉体の衰えだけはどうにもできないので。



〜おまけ〜
インタビュアー・たまおが感じた小林さんの印象

 小林さんとは,「バンやろ」の取材をきっかけにお話しするようになりました。初めてお会いしてから,もう9年になりますが,最初に生で歌を聴いたときの衝撃は,今でも忘れられません(忘れもしない2016年10月,代官山UNITのライブでした)。

 また,今回これだけじっくりと,歌や人生についてインタビューさせていただいたのは初めてでしたが,歌についての話は尽きることがなく,「この方は本当に生まれながらの歌手なんだな」とあらためて実感しました。

 でも,やっぱり「自分では自分の歌をうまいと思わない」発言はどうかと思います! ご自身が何と言おうと,間違いなくうますぎるので……!

 とはいえ,良い意味で本当に裏表がなく,信頼できる人だと感じる演者さんのひとりです。また取材させていただくのを楽しみにしています!


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