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ゲームとエアガンの合わせ技。韓国軍や警察の教材にもなっているXR体感シューター「Practical Shooting Simulation」[G-STAR 2024]
これは“市販品のエアガンに装着できるXRデバイス&サービス”で,本格的な射撃体験がゲーム仕立てで楽しめるというものだ。
ただし,厳密には一般販売されているゲームないしデバイスではない。現状はレジャー店舗でのサービスとして提供されている。
まずは構成物の説明から。本サービスの一式は以下のとおり。
・市販品のエアガン(同一規格の必要はあるはず)
・専用XRデバイス(計2種)
・スクリーン(最大300インチ)
・カメラセンサー
・プロジェクター
・システムボックス
XRデバイスは「マズル(銃の先端部分)」に装着するものと,「マガジン(弾倉)」として接続するものがある。
詳しくはないためヘタなことを言えないが,エアガンメーカーで規格が合っているものなら,どれでも取り付けられるとは聞いた。
本サービスは2023年より,主に店舗型ビジネスで提供されており,韓国には現在3店舗あるという。日本の場合で置き換えると「VRレジャー施設に行く感覚」で体験できるのだろう。また,アジア圏での海外展開も進められており,韓国以外でもできる地域があるようだ。
詳しいプレイフィールはこれから紹介していくが,本サービスはすでに“韓国の軍隊や警察ではシミュレーター教材として導入”され始めているとのこと。つまり,プロフェッショナルが「これはイイ」と使っている程度にはリアリティ,もしくは機能性に優れているのだろう。
実際,やってみるとすごかった。
まずサービス以前に,エアガン自体がすごかった。私は子供の頃,1000円ぽっちで買えたおもちゃ相当のエアガンしか知らず,銃撃のなんたるかもFPSの経験で知ったかぶっていたソルジャーだったが,本格的なエアガンってすごい。トリガーを引いた瞬間,上半身が揺れた。
これでもなお実銃とは比べものにならないのだろうが,人生で初めて「これがリコイル(反動)ってやつか……」と実感した。そりゃあ,こんな衝撃があるのならFPSの画面に映る両手もブレるってもんだ。重量もけっこうなもので,確かにこれを持って走るのは簡単ではなさそう。
なお,今どきのハイエンドなエアガンが,すでに実銃と比肩するようなスペックになっていたのなら,エアガン好きとエアガンメーカーの方々ごめんなさい。以降は実銃での射撃体験に等しいサービスと思おう。
こうしたセッティングを済ませたら,あとはスクリーンに専用のゲームを投影する。遊べるタイトルは,射的感覚でスコアを競う「スポーツ系」と,ゲーム性を高めた「エンタメ系」があった。それぞれ複数タイトルが用意されていて,十数種類の遊び方が可能だ。
エンタメ系のほうは分かりやすく言うと,「バーチャコップ」「タイムクライシス」「ハウス・オブ・ザ・デッド」など,過去にゲームセンターの定番であったガンレールシューティングの系譜だ。これらとの大きな違いは“圧倒的にリアルな射撃の体感”と言えよう。
肝心の楽しさについて,本サービスは射撃体験としては圧倒的におもしろい。だが,そこに意識の大半が持っていかれることで,各ゲームの印象はそれほど残らない。内容がある意味そっちのけになるのだ。これはタイトルにパンチが足りないせいか,逆に体感が強すぎるのか。
筆者はゾンビ系タイトルを遊んだが,ゲーム体験のおもしろさを問われれば,たぶんハウス・オブ・ザ・デッドに軍配を上げる。
けれど,射撃体験として見るなら甲乙をつけがたい。そもそもの“遊びが違う”ということなのだろう。
ゾンビをそこそこ撃ったあと,同行していた4Gamerスタッフ(ここまでの画像の赤ジャン男性)に「撮影するから」と銃を預けた。
銃を手放して最初に感じたのは,上半身の疲労だ。ゲームのワンプレイの半分程度,時間にすれば数分程度で,体がポカポカしている。両肩もジリジリとシビれていた。なるほどなるほど。
こうした銃撃の反動を受け続けていたら,そりゃめっちゃ疲れるのは当然か。銃器の出てくるゲームや戦争映画などでありがちな疲労描写に,人生で初めて納得と共感,そして敬意を抱けた。
実際,ブースのスタッフにやたらと気に入られた同行者は,このあと3タイトルほど続けてプレイさせられ,ようやく銃を置けた。
感想としては「今日は一日中,もう両肩が上がる気がしない」とのこと。私はカメラ片手に「だろうね」とひと言だけ返した。
あらためて,実銃とエアガンでは体感する衝撃が比較にならないかもしれなくても,エアガンだけで十分に理解できることがあった。射撃って本当に疲れるのだ。銃も重く,反動も重い。疲労で照準がブレて,気付けばあんなに軽かった引き金ですら重く感じてくる。そして思う。
これまでFPS作品のキャラクターたちに思っていた,「んだよこのリコイルはよお。ワキを締めろよワキをよお」なんて思っちゃってごめんなさい。キミたちは本当に優れたヒーローだったんだね。
韓国は銃社会ではないが,男性らは徴兵制度の影響で銃器に触れる機会があるため,興味や好奇心以上に(過酷な訓練の日々の)相棒として愛着すら湧いている人がそこそこいると聞いたことがある。
※2024年11月16日21:10ごろ,誤字を修正いたしました
同じく銃社会ではない日本でも,サバイバルゲームを中心としたエアガンコミュニティは大きいが,母数で考えると比較にならないだろう。そのため,仮にサービスを展開するとしても,サバゲー好き……はゲームよりリアルを選びそうな気がする。ならばFPS好きを狙うだろうか? 一度体験してみると,私のように意識が変化するかもしれないので勧めたくはある。
なお,本サービスを提供するSHOOTING KOREAは,機材の貸し出しやフランチャイズにも対応してくれるという。しかも,フランチャイズ加盟で店舗を出すときは「店名はご自由に付けていただいて構いません」とのことだった(本当かどうかは資料請求をお問い合わせください)。
ゲーム業界の立場からはなんとも言えないサービスだが,エアガンファンの参考になっていれば,これ幸いだ(疲れた腕で筆を置く)。
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「SHOOTING KOREA」公式サイト(韓国語)
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