渋谷Web3大学は2024年2月22日,1周年記念イベント
「我々はWeb3で世界をもっと良くできると信じて突き進む」を東京都内で開催した。このイベントでは,同コミュニティが展開するプロジェクト第1弾
「Perfect 災害支援 Game」の概要や企画・開発の経緯などのプレゼンテーションが行われた。
渋谷Web3大学とは,Web3に特化した渋谷発のプロジェクト創発コミュニティ
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渋谷Web3大学 学長
hajimex氏によると,事の発端は物流会社・前山倉庫の代表取締役社長 前山 諭氏がボランティア活動の資金繰りに苦心していたことだった。渋谷Web3大学としても,Web3を活用して社会貢献に取り組みたいと考えていたことから,「Perfect災害支援DAO(分散型自律組織)」の実現をゴールとするクラウドファンディングを実施し,約1200万円の資金調達に成功した。
hajimex氏
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そして,Perfect災害支援DAO構築のための活動として最初に取り組んでいるのが,新しい技術のGameFi(ブロックチェーンゲーム)で災害支援の課題解決を試みる「Perfect 災害支援 Game」こと
「Disaster Quest」の開発である。
Perfect災害支援DAO独自トークン「FAB」は,イギリスのTV番組「サンダーバード」から命名された
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「Disaster Quest」が解決しようとする課題は「行き当たりばったりの災害支援」。すなわち,たとえば国内のどこかで災害が発生しても,それがニュースとなり,多くの人が支援金などを提供したところで終わりとなる。ノウハウが蓄積されない現状を何とかしたいというわけだ。
GameFiプラットフォーム「PlayMining」を運営するDigital Entertainment AssetのFounder & Co-CEOを務める
山田耕三氏は,「Disaster Quest」の開発には個人で参加している。令和6年能登半島地震の政府などの対応について「素晴らしかった」と評価したうえで,SNSなどで見られる多くの人の反応には「普段から議論しておくべきことなのに,事が起きてからああだこうだと言う。そしてまだ2か月も経っていないのに,もう話題にもしない」と厳しく指摘。そうした状況にならないためには,国民1人ひとりが普段から毎日コツコツと情報を収集して準備を整え,いざというときに備えなければならないというのが,山田氏の主張だ。
山田耕三氏
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しかし,トレーニングジムにしろ英会話にしろ,そのほうがいいと理解していても,多くの人にとって継続するのはなかなか難しい。まして,いつ来るか分からない災害に備えて毎日コツコツ……というは,かなりハードルが高い。そこにGameFiを組み合わせることで,多くの人に継続して災害の知識を学んでもらおうというのが,「Disaster Quest」なのだ。
発起人の前山氏を筆頭に,「Disaster Quest」に関わるメンバー
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山田氏によると,「Disaster Quest」は災害の情報を記した「災害対策カード」を使うゲームで,その目的は災害に関する集合知を平時のうちに整理しておくことにある。ただし,情報は本当に正しいのかが分からないという問題を抱えているため,災害対策カードに個人名を記すことによって「その人が実際に,こういう状況下で体験した」「その人が実際に,日々こういう準備や訓練をしている」といったことを担保するという。
また災害対策カードに記された情報は,基本的にWebで無料公開されるが,NFT化されたカードを購入すれば,より詳細な情報を得られる。
1995年の阪神淡路大震災時に未使用のポリタンクが役立ったという,山田氏の体験が記された災害対策カード
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加えて,たとえば前山氏の個人名が入った災害対策カードを購入したり,二次売買したりすれば,前山氏にロイヤリティが入るという形でボランティア活動の支援もできる。
ただし,災害対策カードは「この災害に備えるための情報が欲しい」と思っても,販売方法がガチャ形式であるため,狙って購入することはできない。欲しいカードはトレードしたり,マーケットで購入したりする必要がある。
上記のとおり,災害対策カードの情報自体はWebで誰でも確認できるが,情報を読むとユーザーにゲーム内ポイントが付与され,「どれくらい周りの人に広めたいか」という評価ができる。この評価によってカードのランクが決まり,シーズン中,ランキングの上位に入ったカードのユーザーには報酬が与えられるとのことだ。
こうした射倖性や金銭的なインセンティブが,人々の継続性や情報拡散の原動力としていかに作用するか。この焦点が「Disaster Quest」のチャレンジの1つであり,本質的な取り組みであると,hajimex氏は語った。
また山田氏も「サステナブルに対して,そうしたインセンティブを使うことは,PlayMining全体の思想と合致している」と話していた。
生成AIで作成された「Disaster Quest」のロゴ。太陽と月がモチーフとなっているが,両者間の引力が地震の原因になり得るという意味や,災害が起きたときが昼か夜かで状況が変わるという意味が込められている
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ゲームのナビゲーターとなる白ウサギは「人を導く情報」を象徴している。テーマ曲も完成しているそうだ
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チャレンジポイントや持続可能な成長のビジョンが示された
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「Disaster Quest」のリリースは2024年6月を予定
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会場では,スペシャルゲストによるセッションも行われた。衆議院議員 自民党Web3プロジェクトチーム 事務局長
川崎ひでと氏は,「2024年におけるWeb3政策の動向予測」と題したセッションにより同チームの取り組みを紹介した。
川崎ひでと氏
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2023年から2年連続でWeb3ビジネスの推進を見据えた期末時価評価課税の改正を提言し,政府がそれに対応したことから,Web3のスタートアップが国内で起業しやすくなった。また,現在はDAOに法人格を持たせるべく,内閣府令を改正しようと取り組んでおり,うまくことが運べば4月に実現するとのこと。これが実現すれば,今まで以上にDAOを地方創生に活用できるようになる。こうした取り組みは,今後も続けていくと意気込みを語っていた。
同じくスペシャルゲストとして招かれた,CV VC(Crypto Valley's Blockchain VC)アドバイザー/シリコンバレーベンチャーズCEO/渋谷Web3大学 グローバルアドバイザー
森若幸次郎氏は「世界最高峰のスイスのWeb3ベンチャーキャピタルが期待する未来」と題したセッションで,今後数年の世界的なWeb3の動向予測などを語った。
森若幸次郎氏
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世界経済フォーラムにて,2027年までに世界のGDPの10%がトークン化され,トークン化資産の時価総額が24兆ドルなると予測されたこと,金融業界ではブロックチェーンの採用が拡大していること,投資家がブロックチェーンに対して本気になっていることなどが紹介されていた。