タイトーは2023年8月24日,同社の創立70周年を記念し,
「70周年 レトロ筐体・AM機械展示会」を東京・新宿住友ホールにて開催した。当日は同社の創立記念日にあたり,メディアや関係者を招待し,タイトーの歴史を代表するアミューズメント機器や幻のタイトー製ロボットなどを公開していた。
イベント会場に展示されていたのは,1970年代から1980年代にかけてアミューズメント施設などで稼働していたアーケードゲーム筐体やエンターテインメント機器,ロボットなどの実機。しかも全9種,すべて動く状態だった。
来場者を迎えてくれたのは,タイトーが1984年に制作したイベント用ロボット
「ゆめ丸ジュニア」だ。同社は1980年代にゲームで培った技術を応用し,ロボット開発を手がけ,「タイトーロボットフェスティバル」なるロボットを操作して遊ぶイベントを開催していた。
「ゆめ丸ファミリー」として開発された「ゆめ丸ジュニア」
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ゆめ丸ジュニアは,タイトーのイベント用ロボットの中でも最も人気が高く,動作は自動ではなく,別室のオペレーターがラジオコントロールで操作している。前進,後退,回転といった移動と連動して足が動き,二足歩行のような動きを見せてくれる。
会話もやはりオペレーターがワイヤレスマイクを通して直接しゃべるというローテクな仕組みだが,それが逆に可愛らしくも見える。そんなオペレーター用の操作機材一式も,当時のものが使われているというのは興味深いところだ。
右腕やアンテナの伸縮ギミックを搭載。前方のマイクで会話相手の声を拾う
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なんとオペレーター用の機材一式も当時のまま。ブラウン管テレビは,本体のカメラで撮った映像をアナログ電波で受信している
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タイトーのロボットのカタログ。ゆめ丸ファミリーの姿も見られる
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会場に展示されていたアーケードゲーム機は全5台。こちらもすべてプレイができるものだった。
リリース順に紹介すると,1972年の
「スピードランナー」は,アクセルとハンドルで操作し,3車線を走る車を追い越しながらスコアを競うドライブゲーム。プレイヤーの車は筐体の上側に仕込まれていて,ハーフミラーで路上に映し出される仕組みだ。別の車にぶつかると,回転しながら吹っ飛ぶという派手な演出が実に楽しい。
これらがすべて機械式ロジックによって動くエレメカであり,エンジン音のサウンドは8トラックのカセットテープから流れているそうだ。
「スピードランナー」はビデオゲームではなく,エレメカだ。機械による車の動きが実に味わい深い
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内部構造も見せてもらった。ベルトに載ったミニカーが前後に動いて,道路を走る車を表現。プレイヤーの車は,右上のブラックライトの奥にある。左上のリールは走行中のエフェクトを投影する装置だ
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内部右側に見える白い物体は,サウンドを再生する8トラックカセット
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「ウエスタンガン」(1975年),
「インターセプター」(1976年),
「スペースインベーダー」(1978年)の3作品は,かつてタイトーで活躍したゲームクリエイター
西角友宏氏が手がけたものだ。
左から「スペースインベーダー」「インターセプター」「ウエスタンガン」
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「ウエスタンガン」は,左右のガンマンを拳銃型コントローラで操作し,2人対戦が楽しめるビデオゲーム。CPUはまだ使っておらず,ロジック回路で開発されていたが,同作をライセンス供与した米ミッドウェイ社がCPU使った電子回路で作りあげたことに感銘を受け,のちの「スペースインベーダー」ではCPUを採用することになったそうだ。
「ウエスタンガン」。「ビデオゲームに登場する史上初の拳銃」として1975年にギネス認定。画面はモノクロでドットに濃淡をつけ,上から緑のフィルターをかけている
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「インターセプター」は,西角氏が手がけたエレメカ「スカイファイター」をビデオゲームに移植したもの。当時としては斬新なコクピット視点の3Dシューティングで,飛行する戦闘機に照準を合わせて撃ち落としていく。西角氏は「スペースインベーダー」よりも同作に愛着があったとのことだ。
「インターセプター」は時間内に敵機を何機倒せるかを競うゲームだ
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そして,ご存じ「スペースインベーダー」は日本だけでなく,世界中でヒットしたビデオゲーム。2020年には「最も長く続いているビデオゲームシリーズ」としてギネスの世界記録に認定されている。
今年,生誕45周年を迎えた「スペースインベーダー」。これはアップライトのレバー操作タイプ
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1988年の「トップランディング」は,旅客機の離着陸を楽しめるフライトシミュレータだ。前作「ミッドナイトランディング」ではスプライトで夜景を表現していたが,新たに3Dポリゴンを採用し,昼間の情景を映し出している。現代のゲームと比べれば3DCGはチープではあるものの,「スペースインベーダー」からわずか10年で,ここまで進化した技術力は見逃せない。
「トップランディング」。写真の筐体は小型のタイプだが,ドアやシートを備える半密閉型の大型筐体も存在した
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「電車でGO!」は展示物の中で最も新しく,1996年(正式稼働は1997年)の作品だ。リリースから27年が経過している。シリーズ化はもちろん,「職業ゲーム」という新たなジャンルを開拓したパイオニアでもある。開発当初は社内から反発もあり,初代の生産台数は比較的少なかったそうだ。
タイトーを代表する「電車でGO!」は,実在する電車の運転を再現したシミュレーションゲーム。普段ゲームを遊ばない人も多く取り込んだ
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そして,会場で強い存在感を放っていたのが「ギターロボット 弦遊(げんゆう)」だ。本物のギターを自動演奏するロボットだが,人の形をしていない。ネックには弦を押さえるための仕掛け,ボディには弦を弾く機械の指があり,それらをコンピュータが制御して,リモコンで選曲された曲を演奏するというものだ。
人間には不可能な機械ならではの演奏が可能で,1987年に50台限定,1250万円(!)で発売され,高級ホテルなどに導入されたという。展示されていたのは金色だったが,銀色のバリエーションもあり,現存するのはタイトーが保管する金と銀の各1台とのこと。
このロボットのために制作されたテーマ曲「イリンクス」は,ギタリストのクロード・チアリさんが作曲を手がけている。ロボットでしか演奏できない特別な譜面になっていて,ゴダイゴのミッキー吉野さんと浅野孝已さんが演奏楽曲の監修を担当したそうだ。
「ギターロボット 弦遊」。当時のタイトーの技術を結集して作られたロボットだ
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ネックの無数のチューブにはワイヤーを内蔵し,コンピュータ制御で弦を押さえる仕組み
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人間のギター奏法とは異なり,下から上に向かって弦を弾いて音を出す。これもまたワイヤーで動作している
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箱を開けると制御盤のほか,譜面が記録されたカード型のROMが差し込まれている
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箱の中にはワイヤーの数だけソレノイドが内蔵されている。電子制御で動かして,ネックの弦を押さえるというわけだ
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会場には,1980年代に多数のアーケードゲームのハードウェア面を主に手がけてきた,タイトーの技術顧問を務める三部幸治氏が訪れていた。
今回のイベントについて,三部氏は「今はビデオゲームが中心の世の中。物理的な機械でゲームが動くことに対し,非常に新鮮な驚きをもって皆さんご覧になっている」と述べる。ビデオゲームの歴史に関する展示や講演において「昔はこういうゲームの作り方をしていた」という話をすると,古くからのゲームファンには懐かしく,新しいファンには興味を持ってもらえることが,とてもうれしいという。
三部幸治氏。「トップランディング」や「ダライアス」など,1980年代のアーケードゲームを多数手がけ,1990年代には一時代を築いた業務用カラオケ事業に携わっている
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CPUを使わず,機械や回路のロジックだけでゲームを作っていた時代は,クリエイターが頭の中にゲームデザインのイメージを最初からしっかり持って,そこから回路図を書いてはんだ付けをしていくという作り方だった。その後,CPUを使うようになってからは,ゲームのことはあまり考えずに基板を作り,途中からゲームデザインやプログラムを考えていくという作り方へと大きく変わったそうだ。
作り方が変わったことにより,ゲームにもいろいろな工夫ができるようになった。その一方で,昔ならではの良かった部分を切り捨てながら進化を遂げてきたことが,年代順にゲーム機を並べてみるとよく分かると,三部氏は語ってくれた。
タイトーが輸入販売していたジュークボックス,Seeburg社の「MARAUDER SX-100」。もちろんこれも作動する
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展示機種のフライヤーや基板。写真の基板は「スペースインベーダー」のものだ
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観光地やテーマパークなどで見られるメダル販売機「メダルタイパー」。タイプライターのような仕組みで文字を刻印する機能を内蔵し,昨年より稼働中
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タイトー70周年と「スペースインベーダー」45周年の絵柄のメダルは,タイトーのゲームセンターで販売が予定されている
![画像集 No.028のサムネイル画像 / 創立70周年,タイトーの歴史に刻まれた貴重なゲーム機やロボットをすべて動く状態で公開。「70周年 レトロ筐体・AM機械展示会」に行ってきた](/games/999/G999905/20230825041/TN/028.jpg) |