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新しいゲームの形「GameFi」とは。プラットフォーム「PlayMining」体験会のセッションをレポート
GameFiは現状,Web3という大きなトレンドの1ジャンルとして注目されているが,栗原氏によると「お金を稼げるゲーム」として新たな投資の対象に扱われたり,「ゲームの未来に影響するのか」といった議論がなされたりしているという。経営コンサルタント会社であるA.T.カーニーのレポート(※リンク)では,現在のグローバルにおけるGameFi市場のユーザー規模は3500万人,市場規模は6000億円前後であり,2025年にはユーザー規模が2.4億人,市場規模が3兆円に成長することが予想されているとのこと。
さらに栗原氏は,GameFi市場では投資が非常に活発で,Web3領域では2022年上半期に前期の約3倍にあたる25億ドルの投資が集まったこと,そしてブロックチェーン上の取引ではゲーム系アセットを扱うものが全体の約6割を占めることを紹介し,「GameFiは大きな存在感を持って,ブロックチェーン市場を引っ張っている」との見解を示した。
その一方,2021年冬から多くの暗号資産銘柄の価格が下落し,“暗号資産の冬”と言われる状況が続いている。しかし,GameFi分野はやや異なる状況にあり,ベンチャーキャピタルが引き続き,有力投資了領域として注目しているという報道があったり,スクウェア・エニックスやセガといった日本の大手ゲーム会社がGameFi事業に参入を表明したりしている。
続いて,GameFiの歴史が紹介された。2017年11月にローンチされた「CryptKitties」は,NFTの猫2匹を交配させて新たな猫を産ませ,それを取引するというゲームだ。栗原氏は,レア度の極めて高い猫が2000万円近い価格で取引されたことを示し,「この事実に世界中の事業者が刺激された。NFTをゲームの領域で使うことに可能性があるということで,GameFiの歴史が始まった」と説明した。
「CryptKitties」は当初,実験的なプロジェクトという意味合いが強く,明確にGameFiの元祖と言えるタイトルは「Axie Infinity」である。「アクシー」と呼ばれるモンスターを集めて,繁殖させてバトルするゲームだが,バトルに勝利すると「Smooth Love Potion」(SLP)という暗号資産をもらえる──すなわち,Play to Earnの概念がゲームの設計に最初から組み込まれていた。
ちなみに,2021年に栗原氏が初めて本作を知ったとき,プレイを始めるために必要なアクシー3体の価格は10万円前後となっており,かなり驚いたそうだ。
ただ,「Axie Infinity」のプレイヤーはあまり裕福ではない国や地域に多いという。なぜ彼らが多額の初期投資を必要とする本作をプレイできるのか。それは,NFTを貸し借りする「スカラーシップ制度」を利用しているからである。この制度は,NFTを投資商品として買ったオーナーが,時間はあるけれどもお金のない人(スカラー)に貸し出してゲームプレイを代行してもらう仕組みだ。
NFTのオーナーは,ゲームプレイで稼いだ金額の一定割合をスカラーに支払うことになり,オーナーは不労所得を得られ,スカラーはゲームをプレイするだけで収入を得られる。Win-Winとなる仕組みがうまくハマり,本作のアクティブユーザーは2021年7月末で80万人前後だったが,3か月後には230万人まで一気に増加した。
しかし,「Axie Infinity」の成長は長く続かなかった。まず,2021年8月をピークにゲームプレイで稼げるSLPの価格が下落。栗原氏は,本作を「ブリードの仕組みによってスケールする速度が非常に速い一方,ユーザーが稼げて,どんどん新しいユーザーが入ってくる状態を維持していくこと──経済圏を健全に維持していくことは非常に難しいと示したタイトル」と表現する。
栗原氏の見解によると,ゲーム体験は「インゲーム」「アウトゲーム」「メタゲーム」の3つに分類されるという。
インゲームは,ゲーム内の基本アクションそれ自体の面白さであり,格闘ゲームにおける対戦やソーシャルゲームのメインとなるバトルを指す。
アウトゲームは,ゲーム内の基本アクション以外の面白さ。育成要素やカードゲームのデッキ構築,コレクション要素などを指す。
そしてメタゲームは,ゲーム外での面白さである。ゲームIPのファンアート制作やファン同士によるコミュニティの形成,交流などを指す。
ゲームの黎明期であれば,シンプルにインゲームだけで人々を楽しませることができたが,何年もそればかりだと飽きられてしまう。そのため,継続的にプレイしてもらえるようにインゲームを補強するシステムが次第に追加されていった──つまり,アウトゲームが形成されていったというわけだ。
フィーチャーフォンやスマートフォン向けのゲームは,インゲームのリッチさではコンシューマゲームには敵わないため,栗原氏はアウトゲームやメタゲームを重視したと説明する。たとえば,「怪盗ロワイヤル」はアウトゲームやメタゲームの面白さによって,異なる体験価値を創出してユーザーを引き付けたという。また,昨今では放置するだけでもゲームが進行するような,ほとんどアウトゲームだけのタイトルも少なくない。
また,人々がSNSで体験をシェアする時代であるため,メタゲームの重要性が増しているとのこと。「Fate/Grand Order」は物語に奥行きを持たせることにより,各々のプレイヤーが想像したり,ファン同士で情報交換をしたりする余地を用意していたと語る。
上記のアプローチによって,現状のGameFiを整理するとどうなるのだろうか。栗原氏によると,GameFiはインゲーム軽視,アウトゲーム重視,メタゲーム体験の一部重視という傾向にあるそうだ。とはいえ,「Axie Infinity」の事例を受けて,最近では「ゲームが面白くないと続けてもらえない」ため,インゲームに力を入れるタイトルも増えているというが,リッチなインゲーム体験を追求しようとすると開発期間が長くなり,既存の人気タイトルにPlay to Earn要素を移植するだけだと既存ファンの反発を招くなど,まだハードルも多い状況だという。
GameFiにおけるアウトゲームは,Play to Earnのキモとなる部分である。栗原氏は,再び「Axie Infinity」を引き合いに出し,たとえゲーム自体のクオリティが多少低くても,お金が稼げるという体験が加わるだけでアクティブユーザー数を劇的に増やせることを指摘する。
さらにNFTの導入により,ゲーム内のアイテムに金銭的な価値が生まれ,他のユーザーと取引できるようになったため,実際にキャラクターやアイテムを所有するという体験が深まった。その一方,NFTの需要と供給のバランスが崩れると,ゲームの経済圏が崩壊し,ユーザー離れを起こすことに言及し,今後はトークノミクス専門のコンサルタントのような人材が求められる傾向が加速していくだろうと語っている。
そして,GameFiにおけるメタゲームについては,どのプロジェクトであってもユーザーがNFTや暗号資産を早い時期に所有することが重要であると指摘した。つまりNFTや暗号資産は株式会社における株のように機能する側面があり,ユーザーと運営が一体となってプロジェクトを完成させていくようなコミュニティを形成できるという。実際,全盛期の「Axie Infinity」や「STEPN」には強固なコミュニティが存在し,そのメンバーが情報を拡散することでユーザーが増えていった。
ただし,二次創作やeスポーツ的な盛り上がり方に関しては,まだまだ発展途上であるとのことだ。
栗原氏によると,GameFi市場の起点となるのはPlay to Earnの元祖と言える「Axie Infinity」だが,ゲームをプレイするとトークンが稼げるというシンプルな仕組みだった。しかし,この仕組みは稼ぎたい人が続々と集まり,どんどん稼いでしまうとトークンの価値が下がり,長続きしないことが分かっている。そこで登場したのが“to Earnからの脱却”と“to Earnの拡張”という2つの軸である。
“to Earnからの脱却”の事例として,「Axie Infinity」を全体的にリッチにした「Axie Infinity Origin」が紹介された。同作はPlay to Earnではなく,Play&Earnを謳い,ゲーム自体のクオリティが向上しており,またコンテンツの幅も広がっている。また,世界中のコミュニティがAxieのeスポーツ大会を開けるようなプログラムや,土地のNFTを使った「Axie Infinity ランド」のローンチを予定しているそうだ(ランドは2022年12月にアルファ版がプレイ可能となった)。
また,従来のGameFiは最初にNFTを購入しないとゲームをプレイできないが,Free to Ownを謳う「DigiDaigaku」は無料で始められる。具体的には,ゲームを始めるとGenesisと呼ばれるNFTがフリーミント(無料発行)でユーザーに提供される。そのGenesisを持ち続けてもいいし,ほかのユーザーと取引してもいい。
Genesisを所持していると,Spiritと呼ばれるNFTがエアドロップ(無料配布)される。GenesisとSpiritの組み合わせると,Spiritがバーン(削除)され,今度はHeroと呼ばれるNFTがミント(発行)されるのだが,Heroの強さは組み合わせ次第。そのため,ユーザーはより強いHeroを求めて取引やミントを繰り返すことになる。
なお現在のところ,ミントしたHeroがゲームシステム上でどのように使われるのかは公開されていないとのこと。そのため,栗原氏は「ミントという体験自体をゲームにしようとする試みに見える」として,インゲームの体験だけでなく,アウトゲームやメタゲームを駆使して新しい体験を生み出そうとしていると評した。
一方,“to Earnの拡張”は,靴のNFTを購入し歩くことでトークンを稼げる「STEPN」のMove to Earnを筆頭に,Sleep to EarnやEat to Earnなど,生活上のさまざまな行為にインセンティブをつけるというアプローチだ。身体を動かして稼ぐ人が増えることにより,社会に健康な人が増えるといった,社会課題の解決に役立つかもしれないという期待もあるという。
社会課題解決につながりうる事例としては,マンホールのフタを撮影し,投稿することでトークンを稼ぐ「TEKKON」というゲームが紹介された(現在は電柱も対象となっている)。マンホールなどのインフラは,経年劣化などによる事故発生を防ぐため,地方自治体は調査会社に依頼し,定期的にマンホールのフタをチェックし,ヒビなどの損傷がないかを調査している。こうしたコストが大きいため,それを置き換える手段としてGameFiの仕組みを利用しているというわけだ。ユーザーはマンホールの写真を撮って投稿するだけで収入を得られ,地方自治体はこの手段で従来の調査を代替することができれば,コストを削減かつ地域の安全が保てるという構造になっている。
セッションの後半には,PlayMiningの今後の方針が披露された。
1つめは「暗号資産DEAPcoin経済圏の長期・安定運用の実現」である。栗原氏は「Axie Infinity」や「STEPN」といったタイトルの経済圏が数か月で崩壊した一方,PlayMiningで展開している「JobTribes」は2年近い運営実績を誇ることを挙げ,今後もユーザーが安心して楽しめる環境を維持していきたいと語る。
2つめは「プラットフォーム特性を活かした広範なコンテンツラインナップ」とのこと。タイトルを増やし,「Web3アミューズメントパーク」の実現を目指すため,2023年以降に自社タイトル4本,他社タイトル数本の展開を予定しているという。
3つめには「Web3の“水先案内人”として,企業・ユーザーをWeb3に導く」として,楽天市場やテレビ東京といったパートナーシップ企業の力を借りながら,コラボの展開などで企業やユーザーのWeb3参入を促していきたいと展望を語った。
「PlayMining」公式サイト
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