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[CEDEC 2022]「復刻できないあのゲームを、合法的にプレイできるようにするために、今できること」レポート。キーワードは裁定制度と納本制度
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印刷2022/08/26 17:03

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[CEDEC 2022]「復刻できないあのゲームを、合法的にプレイできるようにするために、今できること」レポート。キーワードは裁定制度と納本制度

 ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2022」の最終日となる2022年8月25日,「復刻できないあのゲームを、合法的にプレイできるようにするために、今できること」というセッションが行われた。
 ゲーム好き弁護士である橋本阿友子氏と弁理士の松田 真氏,NHK放送文化研究所の大高 崇氏が登壇し,復刻できないゲームをプレイするためにどういったアプローチが考えられるのか,法的な観点から知見を共有した。

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左から,骨董通り法律事務所 弁護士/ピアニストの橋本阿友子氏,松田特許事務所 代表弁理士/古物商の松田 真氏,NHK放送文化研究所 メディア研究部 メディア動向 主任研究員の大高 崇氏
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セッションの前に,なぜここに登壇したのかを,それぞれがゲーム好きとして自己紹介するという気合の入りぶり
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 さて,言うまでもない前提としてゲームは著作物だ。原則として,使用するには著作権者の許諾が必要で,勝手に使っては著作権侵害となる。逆に言えば,権利者の許諾を得られるなら著作物として利用してもよく,古いゲームでも,権利を持っている会社が復刻してくれるなら何も問題はないわけだ。

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 しかし,世の中にはそうでないゲームはたくさんある。例えば,倒産した会社のゲームは誰も許諾権限を持っていないので,復刻が望めなくなる。これをなんとかできないかというのが,このセッションの本題だ。

 では,「復刻が望めなさそうなもの」を復刻につなげるための具体策はなんだろうか。
 その1つとして橋本氏が紹介したのが,著作権法の「裁定制度」で,これは,権利者不明の場合,供託金を先に払って使えるようにするという制度だ。
 「権利者が誰か分からない」「権利者がどこにいるのか分からない」「亡くなった権利者の相続人が誰でどこにいるのか分からない」など,権利者の許諾を得る手続きができないという状況は,珍しくない。そうした状況を解決するために,文化庁長官が権利者に代わって許諾してくれるというのが,裁定制度になる。

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 松田氏によると,この裁定制度にはゲームにおける実例が存在するそうだ。「北斗の拳」「北斗の拳3 新世紀創造凄拳列伝」で,著作権者はショウエイシステム,利用者は東映アニメーション,利用方法はゲーム機に複製し販売となっている。ショウエイシステムは1999年に倒産しているが,2018年の「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ 週刊少年ジャンプ50周年記念バージョン」関連記事)には「北斗の拳」と「北斗の拳3 新世紀創造凄拳列伝」が収録されており,復刻にあたっては裁定制度が使われている。

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 とはいえ,実際に利用するのは簡単な話ではないようだ。この実例があることを知った松田氏は,あるタイトルについて個人で裁定をやってみようとしたのだが,入口で挫折したという。数十年前のゲームの権利者は誰か,会社なのか,クリエイター個人なのか,内製だったのか,外注だったのか……。こうした権利情報が分からなかったのだ。

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 「裁定制度って,権利者が誰か分からなくても使えるんじゃないの?」と思うかもしれないが,本当に権利者が不明なのかは,ある程度決まった方法でリサーチしなければならない。また,本来は使用料の支払いが発生するため,通常の使用額に相当する補償金の供託が必要となる。

 裁定制度は,以前から使いにくいということで簡略化が進められているが,今なお時間や経済的負担を生じるものなのだそうだ。しかし,使えるときには,ゲームにとって価値ある制度と言える。

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 もう1つの復刻策として挙げられたのが,国立国会図書館(National Diet Library)にゲームを集めるというものだ。著作権法には,一定の場合に許諾なく著作物を利用できる規定があり,分かりやすい例を挙げれば,学校の授業での利用がある。
 国立国会図書館による利用もその1つで,資料を保存するため,納本制度で出版物を網羅的に収集している。しかも国立国会図書館では,それらの劣化や損傷を防ぐために,許諾不要で「絶版等資料」(絶版またはそれに準ずる理由で入手困難な図書資料)をデジタル化し,配信できる。以上のことから,絶版等資料に該当するゲームなら家庭に配信できるのではないかというわけだ。

松田氏が示した,運用上の問題はさておき,法的にはここまで可能ではないかという図。絶版となったゲームを国立国会図書館から配信し,その後人気が復活したら元のゲーム会社が再び配信,同時に国立国会図書館の配信は停止とする。2つのサーバーをスイッチして配信するという話だ
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 納本制度はもともと,出版社が国立国会図書館に本を収める制度で,2000年からパッケージ系の電子出版物も納本対象になっている。つまり,ゲームも納本が可能だ。実際,松田氏が調べたところ,国会図書館に所蔵されているゲームの数は,2000年以降で大きく増えているという。しかしこのデータは,1999年以前のゲームはほとんど納本されていないことも示している。

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 納本制度の対象は,「パッケージ化されたもの」に限定されているという問題もある。CDやDVDなど,モノになっている必要があるため,データのままのゲームは納本できない。そうしたゲームをどのように未来に残していくかは,これから考えていかなければならないという。

法的にはこうすればデータの保護もできるのではないか,と松田氏が考えた案
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松田氏らは,国立国会図書館にゲームを寄贈する「寄託部」という活動をポケットマネーで行っているそうだ。諸般の理由で寄贈は新品未開封に限定される。未開封の絶版ゲームは高価なので,金銭的にも大変だそうだ
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 まとめると,合法的に復刻する方法として,現状では使いにくいかもしれないが裁定制度がある。議論や工夫の余地はあるが,納本制度も使えるかもしれない,といったところだ。

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 国立国会図書館では,たいていの本を借りて読める。2022年2月には,個人向けのデジタル化資料送信サービスも始まった。同じように,ゲームでも国立国会図書館が使えるのではないか。今あるルールをうまく変更したり,場合によっては法律を改正することで,活用の道が広がるのではないかと,大高氏は話した。ゲーム文化の継承という点で,これからできることは何なのかを考えさせられるセッションだった。

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