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[CEDEC 2021]銃の構えは,正しく描かれているほうが珍しい!? 銃器や装備,戦技をゲームでリアルに登場させるための手法を,田村装備開発の専門家が解説
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印刷2021/08/26 12:49

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[CEDEC 2021]銃の構えは,正しく描かれているほうが珍しい!? 銃器や装備,戦技をゲームでリアルに登場させるための手法を,田村装備開発の専門家が解説

 CEDEC 2021の2日目となる2021年8月25日,「銃器と装備、戦術戦技を専門家の視点から解説」と題されたセッションが実施された。銃器に興味のあるゲーマーにとって,1時間と言わずいくらでも聞いていたいと思える非常に興味深いセッションだったので,紹介していこう。

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「CEDEC 2021」公式サイト


 このセッションは,ゲームに登場する銃器や装備,戦術戦技などについて,専門家が「ここはおかしい」「こうしたほうがリアル」と解説するもの。担当したのは,警察・自衛隊向け装備品や戦術戦技の研究開発,販売,訓練などのほか,映像作品への技術提供や出演も行う田村装備開発だ。
 登壇した同社の代表取締役,田村忠嗣氏は,元埼玉県警察のRATS(人質救出やテロ対策を主にする部隊)に所属していた人物で,田村氏を手伝う形で登壇した長田賢治氏は陸上自衛隊の特殊作戦群出身,もう1人のRYU氏は元海上自衛隊 SBU(特別警備隊,特殊部隊)のあと,PSC(Private Security Company)に所属していたという経歴を持つ,大変ガチな人達だ。

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セッションでは,銃器の歴史が簡単にまとめられた。大まかに言えば,9世紀前半に中国で火薬が発見され,モンゴルを介してヨーロッパに伝わり,15世紀から19世紀の間に銃の発射機構が発達。その間,18世紀の中頃から19世紀前半にかけて,カートリッジ(薬莢)が発展し,今も使われる銃器の原型ができたという
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銃器の種類はざっくり分けると「ハンドガン」「ライフル」「ショットガン」「マシンガン」の4種類となる。FPSプレイヤーならおなじみだ
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装備品は使用する任務や環境から考える


 さて,銃器や装備面でゲームにリアリティを持たせるにあたり,気を付けるべき点はなんだろうか。
 まず装備品については,シーンに合わせたものが必要になるという。その際の基準になるのが,単独行動か部隊行動かだ。単独行動なら目的にあったもの,さらに自分が最も使いやすいものを使えばいい。
 しかし,部隊行動の場合,目的にあったものはもちろんだが,部隊に迷惑にならない使いやすいものを選ぶことが重要になる。
 例えば,隠密(ステルス)行動時に,ガチャガチャと音がする装備をつけていれば,部隊の邪魔になる。いくら自分が強い状態を保てるとしても,迷惑がかかるならプロは使わないと田村氏は述べる。

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 次に考えるのは活動場所だ。そこが暑いのか,寒いのか,水に濡れるのか,汚れるのか,音を出せるのか,任務の時間が長期なのか短期なのかなど,場所によって条件はさまざまだ。そうした条件によって,装備品は変わってくる。
 ここで田村氏が取り出したのが,ハンドガンのホルスターだ。これはカイデックス(合成樹脂板)製のホルスターで,抜き差しが早く,しっかりとロックでき,さかさにしても落下しない便利なものだ。しかし,イラクなどの暑い地域に持っていくと,溶けて使えなくなってしまうため,ナイロン(布)製のホルスターのほうが適しているという。
 一方,水に濡れるところではナイロンが水を吸ってしまうため,カイデックス製のほうが使いやすいことになる。

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 汚れについては,例えばベルトのバックルの素材も,適したものとそうでないものがあるという。バックルには,金属製のものや樹脂製のものがあるが,金属製は強度が高く,CQB(Close Quarters Battle,近接戦闘)を行う警察などには向いている。しかし,汚れる場所で匍匐前進をして泥を噛んだ場合,しまらくなったり開かなくなったりするため,樹脂製のほうが良い。

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 任務時間による装備の違いは,自衛隊と警察部隊をイメージすると分かりやすい。長期任務に赴く自衛隊はバックパックを背負っているが,短期任務の警察は背負わない。本当に短期の任務で音を出したくないときは,拳銃1つを腰につけるだけという場合もあるそうだ。

 以上のように,装備品をゲーム内に登場させるにあたって,その任務はどういうものか,どういう環境なのかを考えることで,リアルな雰囲気を表現できる。


銃の構えは正しくできているほうが珍しい


 続いては,リアル感を出すための動きや考え方についてだ。
 田村氏によると,ここで大事なのが,「マズルコントロール」(銃口のコントロール)だ。ここがおかしいと,プロの目にはカッコ悪いが,ほとんどの映像作品で,「できているほうが珍しい」というレベルで再現されていないという。逆に言えば,ここをしっかりするだけで,とても格好いい動きになる。

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 状況によって使い分けるマズルコントロールとして,田村氏は「ローレディー」「コンバットレディー」「シューティングレディー」「ハイレディー」「タイトレディー」の5つを紹介した。
 ローレディーは,銃口を真下に向けた状態だ。床を向いているので安全な状態であるわけだが,これが傾いている映像作品を見ると,田村氏は「まず格好悪いと思う」そうだ。なぜなら,銃口は味方に向けてはならないものであり,たとえ銃口を下げていたとしても,斜めに持った時点でこの前提が崩れてしまうからだ。

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 ゲーム中の表現として,前に立っている味方の背後で,同じ方向を向きつつ仲間の左側から右側に移動する際,銃口を前に向けたまま移動するシーンはよくあると思う。だが,これはあり得ないと田村氏は断言した。仲間が前にいるのなら,背後を通るときは銃口をローレディーまで下げるか,もしくは完全に上に向ける(ハイレディー)にして,絶対に仲間に銃口を向けない形で移動するのだそうだ。
 こうした動きをしっかりするだけで,かなり変わって見えると田村氏は指摘する。

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ハイレディーに関しては,45°ぐらいの角度で上に向ける“なんちゃってハイレディー”はよくある間違った表現で,見てのとおり完全に味方に銃口が向いている。ローレディーも同様だ
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 ローレディーから傾いて斜めになった状態は,コンバットレディーという。特定の角度があるわけでなく,真下でも真横でもない中間は,すべてコンバットレディーだ。
 銃を真横に構えた状態は,シューティングレディーとなる。

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 最後のタイトレディーは,銃を前に構えるのではなく,後方に引き付けたような撃ち方だ。なぜこのような構えになるのかというと,壁際の攻防で必要になるから。もし壁の影に敵が隠れていた場合,銃口を前に出した状態では,敵に銃を取られてしまうかもしれない。だからといって,銃を下げていては敵への対応が間に合わない。
 そこで,銃を引いた状態にしておけば,そうした問題を解決して戦えるわけだ。狭いところで銃を使うための技術だといえる。

ゲームで見ないこの構えがタイトレディー
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真ん中のRYU氏が壁,左の長田氏が敵だ。銃口を前に出していると,視界外の敵に銃を取られる可能性がある
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銃を下げては,敵を見つけても上げる暇がない
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タイトレディーの状態で入れば,銃口を出さずに撃てる
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 田村氏は,ハンドガンの構え方にも言及した。自分の身体を正面に向け,両腕で真っ直ぐにハンドガンを構えるスタンスを「アイソセレススタンス」という。一方,映画やドラマなどでよく見る,片足を引いて身体の半身を正面に向ける形のスタンスは「ウィーバースタンス」だ。
 それぞれのスタンスは,使いどころを間違えると滑稽になってしまうと田村氏は述べる。ウィーバースタンスの利点は物陰に隠れて撃てることで,欠点としては,足運びがしにくいこと,相手に脇腹を撃たれてしまうことが挙げられる。つまり,物陰に隠れていないなら,ウィーバースタンスはまずしない。
 広いところでは,アイソセレススタンスを取り,ボディーアーマーの前面で弾を受ける動きとなる。
 こうした動きの意味を分かったうえで取り入れることで,よりリアルな作品になると,田村氏は話していた。

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 次は,リアル感を出すための考え方として「マズルコンシャス」が挙げられた。これは,銃口を常に意識することであり,初級段階では「撃ってはならない箇所に銃口を向けない」となる。警察官でも自衛官でも,銃を最初に手にした人がまず教わることだそうだ。
 中級になると,「跳弾にも気を配ること」が追加される。弾は硬いものに当たると跳ねるため,この跳ね方も意識しなければならないのだが,今回は時間の都合で跳ね方の説明は割愛された。
 そして上級は「必要があれば,撃ってはならない箇所にも銃口を向ける」というもので,初級と矛盾することを意識しなければならなくなる。「撃ってはならない箇所に銃口を向けない」のは,安全管理上の話であり,徹底する必要のあることだが,上級ともなると,敵を倒すことが安全管理になることもある。味方を撃たないことを優先しすぎると敵にやられてしまうというわけだ。場合によっては,やむなく味方や人質に銃口を向けることもあるという。

 さらに田村氏は,「特級?」として「銃口は最も効率的に敵を倒せる箇所に向けておく」を紹介した。先のハイレディーやローレディーを行うと,敵に銃を向けるまでに0.1秒の隙ができる。それをなくすために,味方の頭に銃口が向くことを許容しつつ安全管理は指だけで行う。その代わり,敵を撃つのも早い。
 田村氏は,いくら自分が上達しても,この「特級?」をやろうとは思わないが,ある国の特殊部隊はこれを実践していると補足した。

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 もう1つ,リアル感を出すために紹介されたのが「マインドセット」だ。安全な状態では「グリーン」,警戒状態では「イエロー」,敵に対処する状態では「レッド」のマインドになる。下の画像の写真は,装備は身に着けていてもまったく戦う気がないグリーンの状態だ。
 この状態で突然テロが発生し,撃たれたとすると,戦闘態勢に入るにはしばらく時間がかかる。田村氏は,この「しばらく」は1秒ほどだが,その1秒は非常に長く,それだけあればやられているという。
 これがイエローなら,0.3秒で反撃が行えるのだそうだ。

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 このマインドセットをゲームに置き換えると,グリーンであるのは,ミッションが始まる前のブリーフィング時だけであるべきだ。現場に行ってからグリーンになることは絶対にありえないという。
 もちろん,ストーリーの展開上,そういう状態になることについては田村氏も理解を示しつつ,プロなら,少しでも危険がある場所では,すぐに戦えるイエローに入るため,余計な話はしないし,タバコも吸ったりしないという。


0.3秒で撃ってくる敵をどうすればいいのか


 人間の反応速度は,だいたい0.3秒だと言われているが,元レスリング選手の吉田沙保里さんは,タックル時の反応速度が0.17秒だそうなので,世界最高クラスの人はその限りではない。田村氏など,トレーニングを積んでいれば,これが0.2秒ぐらいになるという。

 つまり,トリガーに指をかけている人間が,敵を発見してからトリガーを引くまでにかかる時間は,0.3秒だということだ。そして,プロと素人が敵を撃つまでの時間差は,0.1秒ほどでしかないということでもある。
 映画やゲームなどで,「3,2,1,GO!」と一気に部屋に突入する「ダイナミックエントリー」はよく見られる表現だが,これを踏まえると全部嘘であると田村氏は断言した。あのように突入したら,まず撃たれて死んでしまう。

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 ダイナミックエントリー自体は実際に使われるが,それは要件が整っていた場合だ。ダイナミックエントリーの要件となるのは,S(スピード)A(アグレッシブ)S(サプライズ)の3つであり,これが整っていないと非常にリスクが高い。ダイナミックエントリーは,敵を急襲するものなので,時間をかけては意味がない。敵を驚かせ,反撃する暇を与えずに終わらせるのだ。
 とくにサプライズは重要で,敵が気づいていればサプライズにならない。「この扉から敵が来るな」と分かっている場合,最初からそこに銃口を向けておけば0.3秒で撃てるわけで,突入しても良い結果にならないことは想像に難くない。

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 このサプライズは,自分で作り出すことが可能だという。これを「ディストラクション」と呼び,そのための道具を「ディストラクションディバイス」という。ゲームに登場するもので分かりやすいディストラクションディバイスは,閃光弾や音響手榴弾と呼ばれているものだろう。ピンを抜いて投げると,光と大きな音が発生する。これを使うと,相手が驚く,つまりサプライズを無理やり作り出せるわけだ。

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 ここで田村氏は,ネット上で流れているディストラクションディバイスの情報は間違っていると指摘する。「フラッシュバンを食らった相手は気絶する」「5〜6秒行動できなくなる」など,さまざまな情報がネット上に存在する。しかし,普通の家屋に投げ込んだ場合はせいぜい1〜2秒しか相手は止まらないという。これは,田村氏が現役時代に実際に食らったときの経験上の話で,ゲームのような強烈な効果はないようだ。

 とはいえ,1秒はプロにとって十分な時間だ。
 人は何かをするときに,認知,決断,行動という手順を踏む。ボールペンがあるとして,これを見つけることが認知,これを手に取ろうとすることが決断,実際に手を取るのが行動だ。そして,この決断から行動の間には,約0.3秒の間がある。
 これを実戦に置き換えると,扉から入ってくる相手に対して待ち構えている(決断した状態で行動を待っている)敵は,0.3秒で撃ってくる。しかし,ディストラクションディバイスによって,これを認知に戻してしまえば,1秒の隙になる。プロなら,その間に敵を倒す力を持っているわけだ。

 では,ディストラクションディバイスがない場合はどうすればいいだろう。田村氏は,そのやり方はたくさんあるのだが,あまり話すと本物の部隊に迷惑がかかってしまうため,1つだけ紹介するとして,「話しかけること」を挙げた。
 室内の敵に対して,「要求を言ってみなさい」と声を掛け,「逃走車両を用意しろ」と返ってきたとしよう。そこで「今から用意しますから,どこのメーカーの,どういった車種がいいですか? 要望があれば聞かせてください」と言う。そうすると,敵は「どの車にしようかな」と余計なことを考え,決断が終わっていた状態だったのに認知の状態に戻ってしまう。これが隙となるため,敵が返答しようとした瞬間に突入する,といった流れになるそうだ。

 お次は,部隊間の意思疎通について。
 田村氏がゲーム中でおかしいと思う部分は,「声を出す」ことだ。先の突入時の掛け声「3,2,1,GO!」などは,突入タイミングが敵にバレるだけなので,絶対にしない。同様に,無線の使用も難しい。

 では,音が出ないハンドサインはどうだろうか。隠密状況が確立しているような状況ならともかく,数メートル先に敵がいるような緊迫した状況では,ほぼ使わないそうだ。

 音を出さずに行う意志疎通には,プレストーク(無線をツ・ツ・ツーなどと鳴らして伝える)という方法がある。こちらは,確かに音は出ないが,相手に聞いている暇がなく伝わらないことも多いため,ほとんど通じないと思ったほうがいいという。
 プレストークを有効に使うには,自分の部隊と相手の部隊以外に,別の場所にいる3つめの部隊が必要だ。プレストークを3つめの部隊に伝えて,そこで言葉に変えてもらって,相手の部隊に伝えるわけである。
 そのほか,ケミカルライトやフラッシュライトを用いて,点灯する色や間隔で意思疎通することもあるとのことだ。

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 さらに,熟練の隊員同士なら,近距離では何も使わずに意思疎通が行えるという。例えば,行動中に仲間がピタっと止まり,銃を前方に向けたとすれば,「止まらなければならない理由がある」ということ。もしここで声を出せば,自分達の存在が敵にバレてしまう。無言の仲間を見て,自分も何も言わずにそれに合わせた動きをすれば,それは「無言の意思疎通」になる。

仲間が座って銃を構えたら,仲間は「ダブルガン」を求めている。自分はその後ろに立って銃を構えれば,2人で戦える
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危険個所と部隊員の数でスピードを変えればリアルになる


 続いては戦技について。ここではCQC(近接格闘)CQB(近接戦闘)MOUT(市街地戦闘)の3つが紹介された。

 CQCは,法執行機関(Law Enforcement)やミリタリーが使用する,合理性のみを求めた格闘技術だ。離脱,拘束,武器の取り上げ,殺害がメインで,ルールや武器の制限はない。多くの場合,自分が銃やナイフを持った状態での格闘になるため,素手対素手の戦いとは異なる動きになるそうだ。

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 映像作品でのCQCでは,よく銃を持った腕を掴まれて,それをかっこよく振りほどいてから銃で撃つといった演出が行われる。しかし,田村氏はそうしたシーンのCQCを講演で実践し,「腕を掴まれても銃を握った手は動くんだからそのまま撃ちます」「振りほどかないでもう片方の腕で相手の顔を殴ります」と話す。そして,映像はあくまで演出で,実際は1秒で終わるシンプルな戦いであると付け加えた。

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 CQBは,狭い場所や家屋などで行われる近距離戦闘だ。特徴としては,狭いので敵の位置が把握しやすいことと,プロと素人の差が埋まりやすいことが挙げられる。
 離れた距離でプロと素人が撃ち合えば,まず確実にプロが勝つ。しかし,狭い場所ではどちらの弾も当たるうえ,上記のとおり,反応速度には0.1秒の差しかない。そのため,CQBで勝つには,かなり細かな洗練された動きが必要になるという。

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 MOUTは街中での戦闘を指す。広い場所なので,CQBに比べて敵の位置や危険個所が分かりにくい。銃器だけで戦う場合,待ち構える側はさまざまな場所から攻撃できるため,圧倒的に有利なケースが多く,速い動きで制圧するか,スモークやサーマルビジョンを使わなければ攻略は困難だ。
 映画などに見られる,隊形を組んでゆっくり街中を進み,無傷で突破するようなシーンは,まず起きないという。

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 田村氏は以上の話を総括して,「危険個所と部隊員の数でスピードを変える」ことで,映像の質が向上すると述べた。
 具体的には,危険個所を抑えきれる状況と,抑えきれない状況で,キャラクターの行動を変える。隊員の数が,敵に攻撃される可能性のある危険個所をすべて抑えられるだけ揃っているのなら,水が流れるようなスムーズな行動をさせると自然になる。
 一方,すべての危険個所が抑えきれない状況であれば,隠密またはできる限り素速い行動をとらせる。この2点を踏まえたうえで,マズルコントロールやマズルコンシャスを徹底すれば,作品のリアル感が高められるとセッションをまとめた。

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 非常に説得力があり,面白い講演だったが,これを聞いて気になるのは,やはり「ではプロの視点でリアルに作られているゲームはどれなのか」ということだろう。質疑応答でこれを聞かれた田村氏は,「バイオハザード ヴィレッジ」と答えた。
 同作には,田村氏や長田氏がモーションキャプチャで参加しており,「動き自体はそれなりのものになっているかなと思います」とのこと。細かな動きのリアリティを意識してゲームを遊んでみるのも面白いかもしれない。

「CEDEC 2021」公式サイト

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