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[CEDEC 2015]教育用ゲームを作り,プレイしてもらうことの意義。学生が教育用ゲームを作ってみた
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印刷2015/09/01 13:40

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[CEDEC 2015]教育用ゲームを作り,プレイしてもらうことの意義。学生が教育用ゲームを作ってみた

 CEDEC 2015のインタラクティブセッション(ポスターおよび試遊機の展示&出展者による解説が受けられる小ブース企画)には実に多種多様な発表が見られた。その一つ,「教育での利用を目的とするゲーム制作の試み〜数学ゲーム、インターネット安全学習ゲームなど」と題されたブースでは,いささか地味めでありながら,興味深いデータが公表されていた。
 ブースの責任者は,東京工科大学メディア学部特任准教授の岸本好弘氏。4Gamerの読者的には「ファミスタの父」である岸本氏と言ったほうが分かりやすいだろうか。
 教育用ゲーム(いわゆるシリアスゲーム)を制作し,実際にプレイしてもらう中で得られた知見とは,どのようなものなのだろうか。

東京工科大学メディア学部特任准教授 岸本好弘氏(右)と,マッチロック ツール&ミドルウェア事業部 BISHAMONエバンジェリスト/部長 後藤 誠氏(左)
画像集 No.001のサムネイル画像 / [CEDEC 2015]教育用ゲームを作り,プレイしてもらうことの意義。学生が教育用ゲームを作ってみた


教育用ゲームが及ぼす「副効果」


 ブースでは,教育用ゲームの制作と効果測定について,2つの事例が示されていた。
 1つは「Global Math」関連記事)への参加だ。Global Mathはベネッセホールディングスが主催する事業で,数学的思考が身につくゲームを公開し,ネットを介して実際にプレイしてもらうというサービスである。1年に1回,コンテストを開催しており,今回の展示では2014年のコンテストで最優秀賞および優秀賞を受賞した大学生が制作したゲームが試遊できた。

画像集 No.002のサムネイル画像 / [CEDEC 2015]教育用ゲームを作り,プレイしてもらうことの意義。学生が教育用ゲームを作ってみた
 もう1つは「第3回シリアスゲームジャム」への参加。これは,教育用のゲーム制作を目的とするゲームジャム(短時間でゲームを作るイベント)で,第3回は「インターネットにおける安全学習」がテーマになった。
 シリアスゲームジャムが一般的なゲームジャムと大きく異なるのは,事前にセミナーなどの時間が用意されていることだ。教育用ゲームでは,プレイヤーが間違った情報を学んでしまうようでは意味がないので,専門家を招いての制作者向けセミナーが開催される。
 また,制作時間が長めに取られているのも特徴といえるだろうか。最終的な制作は24時間前後のゲームジャム方式になっているが,素材の作成などは制作期間以外に行われるケースが多い。当然,制作チームの結成も,ゲームジャムの期間よりずっと前の段階で行われる(一般的なゲームジャムでは,チーム結成は開始直後に行われる)。

 作られたゲームがどのようなものかは,実際にプレイするのが一番早いだろう。Global Math 2014のBest Performance賞(最優秀賞)に輝いた「てくてくロボット」や,COOL Idea賞(優秀賞)の「Halving Ice」,そして第3回シリアスゲームジャムの最終成果物は以下のリンクからプレイできる(なお,いずれもGlobal Mathのアカウント登録が必要。登録は無料)。

「てくてくロボット」

「Halving Ice」

第3回シリアスゲームジャムの最終成果物


画像集 No.004のサムネイル画像 / [CEDEC 2015]教育用ゲームを作り,プレイしてもらうことの意義。学生が教育用ゲームを作ってみた
 これらの試みの中で,個人的に最も興味深く感じたのは,シリアスゲームジャムの成果物を利用して,実際に小学生16人を対象として効果測定を行った結果である。
 参加した16人の小学生は,ゲームをプレイする前と後で,セキュリティに関するテストの成績が明白に向上した。だが,これについては「だから教育効果があった」と断言するには,やや弱いデータと言わざるを得ない部分がある。

 むしろ明白に効果があったのは,同伴していた保護者の意識である。14名の保護者に対してアンケートを取ったところ,実施前には「ゲームを勉強に利用すること」に対して「あまり良く思っていない」が7割を占めていたのに対し,実施後には「良いと思う」が9割を越えたのである。
 教育用ゲームを利用して学習している様子を見るというイベントは,保護者に対してポジティブな印象を強く与える効果がある――この仮説は,さらなる実験と測定が必要だが,とても重要な示唆であると言えるだろう。


岸本氏に聞く「シリアスゲームジャム」


 CEDEC期間中,機会を捉えて岸本氏に,「学生が教育用ゲームを作ること」及び「シリアスゲームジャムの意義」について聞いた。以下はその一問一答である。

4Gamer
 シリアスゲームジャムと一般的なゲームジャムは,どこが違うのでしょうか。

岸本氏
 シリアスゲームジャムは,シリアスゲームの普及を目的としています。まずそこが大きな違いと言えるでしょう。そのうえで,一般的なゲームジャムは,参加者が「ゲームを作って楽しむ」という側面が強く見られますが,シリアスゲームジャムにおいては,作ったものに対して,効果測定という形での評価があります。これが大事であり,また大変でもあるところですね。
 そういう意味では,「ハッカソン」に近い部分もあります。

 またシリアスゲームジャムの場合,これまで英語学習やサイバーセキュリティなどをテーマにしてきましたが,それらのジャンルの専門家がゲームジャム内部に入っている必要があります。これらのテーマについて,参加者が自分で「こんなものだろう」と勝手に作ってしまうのでは,望ましい教育結果が得られる保証もありませんから。
 このため,シリアスゲームジャムでは参加者にまずセミナーを受けてもらい,そこで学んでから,企画に入ってもらっています。動画を使って勉強したり,専門家がメンバーに入ることもあります。

プロのゲーム開発者が集まるCEDECだけあって,プロ視点からの厳しい評価が飛び出すことも。開発者にとっては,とても貴重なチャンスでもある
画像集 No.003のサムネイル画像 / [CEDEC 2015]教育用ゲームを作り,プレイしてもらうことの意義。学生が教育用ゲームを作ってみた

4Gamer
 参加者は学生が多いですが,反応はどうでしたか。

岸本氏
 これまで参加してきたのは,エンターテイメント志望の学生が中心的です。そのため,シリアスゲームの持つ「役に立つ」という特徴は,やりがいとして新鮮だったようです。普段は面白さを追求しているわけですから。また,効果測定まで行うというのも,良い経験になっています。

4Gamer
 第3回まで行われているシリアスゲームジャムですが,第4回の予定はどのようになっていますか。

岸本氏
 来春を目指して現在,検討中です。まだテーマが決まっていない状況ですね。テーマについては,公募するのも面白いかと思ってます。

4Gamer
 どうもありがとうございました。

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