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[TGS 2013]初出展のスウェーデンパビリオンで知る,日本とスウェーデンのゲーム産業における意外な距離感
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印刷2013/09/26 16:41

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[TGS 2013]初出展のスウェーデンパビリオンで知る,日本とスウェーデンのゲーム産業における意外な距離感

 東京ゲームショウの会場には,毎年さまざまな国がブースを出展している。今年も台湾やベトナムをはじめ,オランダ,スイスと国際色の豊かなブースが軒を連ねていた。その中で,ひときわ筆者の目を引いたのがスウェーデンパビリオンであった。
 というわけで,パビリオンで聞いたスウェーデンのゲーム事情,さらにちょっと気になった展示をいくつかご紹介したい。

あのビッグタイトルもスウェーデン発


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 スウェーデンにおけるゲーム産業の規模は,2010年から急激に増大している。2011年は前年比の約7倍と爆発的な成長を見せ,従業員数も倍増したという。この勢いは今も持続しており,スウェーデンは北欧のゲーム大国となっている。
 スウェーデンのデベロッパが制作したゲームとしては,「World in Conflict」や「Mirror's Edge」,「Battlefield 3」など多岐にわたる。「Magicka」や「Minecraft」といった作品も忘れてはならないし,我らがParadox Interactiveもスウェーデンを拠点にしている。

 こうした動きに対し,当初スウェーデン政府はあまり注目していなかったが,最近ではゲーム産業やWeb産業を盛り上げるべく,国を挙げて取り組んでいるという。
 また今回のパビリオンは,スウェーデンのウプサラ大学が協賛という形になっている。ウプサラ大学は500年以上の歴史を持つ,スウェーデンの名門だ。北欧最古の大学であり,ヨーロッパで最も権威ある大学の1つでもある(ノーベル賞受賞者を15名輩出)。
 このウプサラ大学は芸術学部ゲームデザイン学科を有するが,これはもともとゴットランド大学が2001年から開設していた学科で,ウプサラ大学がゴットランド大学を吸収合併する形で2013年7月に移行している。スウェーデンが誇る名門大学も,ゲーム教育,研究を急いでキャッチアップする必要に迫られたというわけだ。

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 ちなみに,今回パビリオンで取材に対応していただいたのは,ウプサラ大学芸術学部ゲームデザイン学科で教鞭を取る林 正樹准教授である。また,同学科は近年,東京工科大学メディア学部と交流を進めるために提携を行っている。日本から遠く離れたスウェーデンだが,ゲームという観点においては,作品そのものからゲーム研究,教育まで想像以上に深い関係があるのだ。


未来を垣間見るスウェーデンパビリオン


 さて,そんなスウェーデンパビリオンの展示をざっくりと見てみよう。

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 最も目を引いたのが「FLY or DIE」というタイトルのゲーム。これは学生によるゲーム制作コンペティションの優勝作品とのことだ。
 ゲームのシステムとしては,4人同時プレイの対戦ゲーム。プレイヤーはパッドを使って自機をコントロールし,ステージごとに1つだけ用意された爆弾を互いに体当たりして押し付けあう。タイムアップの時点で爆弾を持っていたプレイヤーキャラクターは爆死してしまう。
 特徴的だったのは操作方法で,パッドのLBボタンで左旋回,RBボタンで右旋回,同時押しで加速する。キャラクターの移動には慣性が働くため,一口に体当たりと言ってもそう簡単ではない。ただ操作そのものはシンプルなので,子供でもすぐに操作を理解して,大いにゲームを楽しんでいたのが印象的だった。

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小さな子供が飛び跳ねながらプレイしていた姿が印象的な「FLY or DIE」

 続いては,林氏が関わっている「T2V」(Text-To-Vision)という技術だ。これは簡単に言えば「一定のルールで書かれた台本(ほぼ自然な日本語)を読み込ませると,そのとおりの動画ができる」というもので,動画制作者にとっては夢の技術になるだろう。
 台本は,本当に自然言語(日本語)でよく,画面上の登場人物に動作をさせたいときは括弧書きで指定する(例:(おじぎ))。そのほかのテキストはセリフとして,音声合成システムによって読み上げられる。
 T2VはUnityベースで再設計が行われたとのことで,Unityへの書き出し,またはUnityからの利用も可能になっている。林氏は40年にわたってNHKの技術研究畑に在籍していたこともあり,「テレビ的なテクノロジーを,ゲームでも使えるようにする」技術としてT2Vを開発しているという。
 T2Vは,2013年10〜11月あたりにリリースされる予定だ。

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台本が自動的に3DCG動画になるという,まさに夢の技術

 その隣で大型スクリーンに映っていたのは,4Kテレビを用いたバーチャルミュージアム。林氏は「4Kテレビや8Kテレビで何を見るかが問題」と指摘する。つまり,「テレビにふさわしい,ないしはそれが必要になるコンテンツが不足している」のである。
 展示されていたバーチャルミュージアムはこれまたUnityで動いており,画像の緻密さはさすがの一言だった。浮世絵を拡大すると,紙質までしっかり見えるほどの情報量を持つこのバーチャルミュージアムは,無論,単体で美術館として利用することも可能だろう。ただ,このクオリティならば,「ひたすらその世界を歩き回る」コンテンツがあっても相当楽しめるのではないかと感じた。

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実際の博物館と勘違いしそうなクオリティだが,あくまでバーチャルミュージアムである

 続いて,視線入力の展示があったが,こちらは別の記事に譲りたい。これも思わず「未来だ!」と感嘆する技術である。

 さらに,注目せざるを得なかった展示がクリップスタジオだ。人型入力デバイス「QUMARION」(人形の関節にセンサーがあり,人形のポーズを変えるとデータとしてPCに入力される)を使った動画制作のデモが公開されていた。漫画のようなパースを自動的に生成するシステムも搭載されており,迫力ある3DCG動画を比較的容易に作成できるようだ。
 しかも,このクリップスタジオにT2Vが搭載されるという。これによって,かなり凝った3DCG動画が手軽に作れるようになる。動画制作を趣味にしている人だけでなく,プロダクトやイベントの紹介,操作を説明する動画を作る場合にも大いに役立ちそうだ。

人形のポーズをPC上で再現。もちろん,ポーズからポーズへの移行は自動補完してくれる
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 日本から東京工業大学の展示も行われていたので紹介しよう。「スパイダーGCC」と銘打たれたフォースフィードバック3Dマウスだ。これは複数の糸で球体が宙吊りにされているデバイスで,これを好きな方向に動かすと,PC上の3D空間にあるポインタを自由に動かせるのだ。
 その特徴はフォースフィードバック機能を搭載していること。球体を吊っている糸はそれぞれモーターで駆動するようになっており,PC上で移動させたいオブジェクトが障害物に触れると,球体もそれ以上動かせなくなるのだ。この“カツンと止まる”感触はなかなか新鮮で,耐久性や専有面積など解決すべき問題はいろいろ思い浮かぶものの,興味深いデバイスだと言える。
 ちなみに2Dバージョン(要は普通のマウス)もあり,こちらもフォースフィードバックシステムを有していた。

見れば見るほど不思議なデバイスだ。だが2Dバージョン(写真右)を見ると,「なるほどそういうものか」という,つい素朴な感想がこぼれる
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※お詫びと訂正 初出時,東京工科大学と記載していましたが,正しくは東京工業大学でした。訂正するとともに,お詫びいたします。(2013年9月27日)


遠くて,意外に近い国――スウェーデン


 スウェーデンというとあまりにも日本から遠く,またスウェーデンのニュースも滅多に日本には入ってこないのが現実だ。実際,Minecraftや「Hearts of Iron」シリーズなどに膨大な時間を費やしてきた人にとっても,やはりスウェーデンは“遠い国”だと感じているのではないだろうか。
 だが近年,スウェーデンと日本とのゲーム産業はその関係を急速に深めようとしている。来年以降,東京ゲームショウ会場に訪れることがあれば,そんな思いがけない世界の狭さを体験できる海外ブースを覗いてみてほしい。

 なお,東京ゲームショウ2013は閉幕してしまったが,「イノベーティブ・スウェーデン」と題したスウェーデンの最先端技術(ゲームを含む)の展示が,日本科学未来館にて2013年10月2日〜18日に行われる。興味がある人は,足を運んではいかがだろうか。

日本科学未来館「イノベーティブ・スウェーデン」

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