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[TGS 2013]稲船敬二氏らゲームクリエイターがインディーズゲーム事情を熱く語った,スペシャルトークライブをレポート
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印刷2013/09/24 19:07

イベント

[TGS 2013]稲船敬二氏らゲームクリエイターがインディーズゲーム事情を熱く語った,スペシャルトークライブをレポート

画像集#008のサムネイル/[TGS 2013]稲船敬二氏らゲームクリエイターがインディーズゲーム事情を熱く語った,スペシャルトークライブをレポート
 東京ゲームショウ2013のインディーズゲームコーナーでは,一般公開日の2日間(2013年9月21・22日),インディーズゲームとゲーム実況を融合させた「インディーズゲームフェス2013」が行われていた。その最終日,最後のステージプログラムとして,「インディーズゲーム・トークライブ〜クリエイター達が語るゲームづくりの世界〜」が開催され,インディーズゲームを実際に制作しているクリエイターらが集結して激論を繰り広げた。
 このイベントに出演した登壇者は以下の9名で,開発会社社長から現役大学生まで幅広い顔ぶれとなった。なお,ホスト役は,インディーズゲームフェス2013の特別顧問であるユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 大前広樹氏が務めている。

■登壇者(順不同)
稲船敬二氏(comcept)
遠藤琢磨氏(アクワイア)
南治一徳氏(ビサイド)
馬場功淳氏(コロプラ)
楢村 匠氏(NIGORO)
飯田和敏氏(チーム・モンケン)
なる氏(えーでるわいす)
Nicolai氏(エンドレスシラフ)
木村祥朗氏(オニオンゲームズ)


画像集#013のサムネイル/[TGS 2013]稲船敬二氏らゲームクリエイターがインディーズゲーム事情を熱く語った,スペシャルトークライブをレポート
(左から)大前氏,馬場氏,南治氏,遠藤氏,稲船氏,飯田氏,楢村氏,なる氏,Nicolai氏,木村氏

 イベントの冒頭,スクリーンには稲船氏がクラウドファンディングサービスのKickstarter(キックスターター)で出資を募っているゲーム作品「Mighty No.9」のビジュアルが映し出された。同作には,9月24日現在までに244万ドル(約2億4000万円)以上の出資が寄せられており,インディーズゲームが理想とする一つの方向へと進んでいる注目のプロジェクトと言える。
 世界から憧れの目で見られた,かつての日本のゲーム。その雰囲気を残しつつも,今のゲームの形で作りたい,という稲船氏の思いから立ち上がったのが,Mighty No.9のプロジェクトだ。同プロジェクトについて,なぜKickstarterで発表したのかを問われた稲船氏は「Kickstarterのいいところは,誰かにお金を出してもらうと,誰かのものになること。ゲームの場合,お金を出してくれたユーザーには,お金ではなくゲームの面白さを返せばいい。完成したゲームは,ユーザーのものになり,僕達(comcept)のものにもなるので,次に出そうと思ったときも大きな会社に判断を委ねず,僕達の判断で決める自由を与えられる」と回答。そして,クラウドファンディングがインディーズゲームの「これからの基本になっていく」と語った。

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 トークのテーマが,ゲームを作るためのお金に関する話題になると,学生ゲームクリエイターのNicolai氏は「自分たちの技術を磨くことをモチベーションにつなげ,あまりお金をかけずにゲームを作っている」と話した。これを受けて,「新しいゲームで新しいことをやりたいと思ったとき,お金があればさらに心強い仲間も集められる」との意見も数人のクリエイターから挙がっていた。

 しかし,クラウドファンディングなどでお金が集まりすぎると,逆に管理できなくなって破綻するケースがあると,大前氏は明かした。こうした懸念に対し,稲船氏は「もし僕が26歳でこれ(Kickstarter)をやっていたらたぶんできない」と,その難しさに同意する。さらに続けて「よく稲船はチャレンジャーだと言われるけど,石橋を叩くチャレンジャーなので,『やるぞ!』って思ってカプコンを飛び出したのが45歳。それまではとにかく学んで学んで,最低限のことを知って,さらにこの歳だから覚悟もできてる。Mighty No.9はそこからのスタートですからね。だからきっと若い頃にお金がたくさんあったとしても,たぶん失敗しちゃいますよ。お金がないから(Nicolai氏らを指して)彼らは工夫をしてゲームを作るんだけど,お金があったら使っちゃいますよ(笑)」と,自らの経験に基づいて語った。
 同人ゲームクリエイターのなる氏も賛同し,「お金がないといいゲームが作れない,ということにピンと来ない」と語り,「その使い方を学んでいない自分達にとって,もしお金があったとしても,今よりいいものが作れるかは分からない」と答えた。

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 また,遠藤氏からは「Mighty No.9のプロジェクトは,稲船氏のゲームクリエイター歴27年という実績があったことで資金を集めることができた。しかし,実績がないゲームクリエイターはどうやってお金を集めたらいいのか」という疑問が投げかけられた。すると,馬場氏がモバイル市場の話題を挙げ,個人で作ったゲームでもバナーの広告収入で1000万近く稼ぐことがあるという。実際,コロプラが立ち上げているゲームブランド「Kuma the Bear」のアプリが,アマチュアのゲームに負けることもあり,「そういうゲームは実際に面白いし,オープンな場なのだからどんどん出していくべき」と語っている。さらに稲船氏も「稲船敬二という名前でモバイルを作っても売れない」と断言。実績が先行する市場ではないところにチャンスがあると付け加えた。

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 それでも遠藤氏は「モバイルのゲームを作るにも,それなりにお金がかかる印象がある。そこにインディーズ開発者が入れる余地があるのか」と心配の声を挙げた。これに対し,南治氏は「実力のある人は,そこを軽く跳び越えてくるから大丈夫」と回答。さらに飯田氏も「インディーズには,会社ではできない強みがある」「実績がある我々は限界を知っているけど,実績がない(いい意味で)バカはそれを知らないから怖い。このホールの空気感もバカっぽくて侮れない(笑)」と語り,インディーズのクリエイターを賞賛した。

 最後のテーマは「作りたいゲームを作るために,どんな戦いをしているのか」。この問いに対しては,登壇者全員が次のように答えている。

馬場氏:
 1つ言えるのは,社長になるのはいいことだと思います(笑)。やりたいことをやるには,責任を持たなくてはならない。すべての責任を負うことになる立ち位置になれば,好きなことはできると思いますよ。

南治氏:
 作りたいものを作るのではなく,作ってるものを好きになるというのはどうでしょうか(笑)。

遠藤氏:
 私は社長なので,作れるという立場ではないんですが,作りたいゲームを作るのはただ思い描くだけでは難しい。その中でも,インディーズのパワーとビジネスの融合を考えていて,会社の中でもインディーズチームを作ってみようと話しているんですが,社員からは反対されています(笑)。

稲船氏:
 いいゲームの企画を考えることは誰でもできるけど,それを通すことができないんです。大きな会社では,企画がなかなか通らない。インディーズでは,お金がない。スタートさせることができない,という部分は同じなんです。そこを通すためには,ゲームの企画を企画書の中だけでなく,外側もすべてゲームとして考える。そのためには嘘をついても,ハッタリを使ってもかまわないんです。プロトタイプを作る前の,プリプロダクションをしっかり考えておくこと。とにかくあきらめない精神を持っていれば,きっと自分達の作りたいものは作れます。会社が企画を通してくれない,才能があるのに分かってくれない,と他人のせいにしてあきらめるなら,作らなくていいです。

飯田氏:
 お金と時間のトレードオフは成立しないと思っています。お金も時間もない僕の場合は仲間を増やすしかなくて,そういう仲間はどこにいるか分からない。とにかくいろんな場所に行って,こういうイベントにも参加するのは,すごくいいと思います。ゲームを遊ぶ人,作る人,実況する人,コスプレする人,今までいなかった種類の人とたくさん出会えて,それが大きな幹になっていく可能性がありますからね。

楢村氏:
 僕は,自分のゲームを実況されようが好きにしてくれと思っています。楽しそうな映像を広めてくれることは,宣伝になりますからね。また,せっかくこういうすごい方々と同席させていただいたので,肩を叩いてどこか連れて行ってもらうとか,そんなことを企んでいます(笑)。自分達で道を拓くこともしますが,もっと早くなるステップがあるなら,迷わずそちらを進みます」(楢村氏)

なる氏:
 僕は現場の人間なので,毎日ソースコードを開いたり,絵描きの人は絵を描くことを止めずに続けるということだけです。そうすれば仲間も集まってくるだろうし,先へも進めると思っています。

Nicolai氏:
 学生サークルという立場から言わせていただくと,自分たちの作りたいゲームは,自分が個人的にやりたいゲームというところから始まり,それからほかのお客さんに通用するのかということを考えます。お金をかけずに自分の納得するまで作り続けられることも,同人ゲームのいいところで,経験にもなりますからね。

木村氏:
 あんまりお金のある生活をしていない,ギリギリの状態の僕の発言に響いてくれる仲間がいる状態がすごく好きで,昔から助けられてばかりいます。その仲間についてきてもらうために,アイデアを毎日考え,面白いことを毎日言い続ける。そんな風に生きていこうと思っています。

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 これだけの顔触れが集まるイベントに,40分という時間はあまりに短く,「もっと話したい」という出演者,「もっと話を聞きたい」という来場者は多かったのではないだろうか。それでも個性溢れる登壇者のアドバイスの数々は,おそらく会場に詰めかけていたであろうゲームクリエイターを目指す人達にとって,貴重なものになったはずだ。
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