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[GDC 2018]次の巨大ゲーム市場はインド。世界最大のデータ消費量を記録したインドにゲーム業界も注目
インドではモバイルゲーム開発の草分け的存在である99 GamesのCEOでマネージングディレクターのロヒス・バット氏 |
インドというと,安価な労働力と質の高い教育を武器に,3Dアセットの制作を中心としたアウトソーサーとして,ゲーム業界でも存在感を示している。
また,シリコンバレーを中心としたIT産業に有能な人物を多く送り込んでおり,Microsoftの現CEOサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏やGoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏達を思い浮かべる人も少なくないだろう。
そんなインドが,人材の供給地としてだけでなく,ゲーム市場としても頭角を現してきた。Facebookのオグレン氏によると,そのきっかけとなったのが2016年にモバイルキャリアReliance Jioが,データ通信料の95%値下げを大々的なプロモーションを開始したときだったという。
これによって,ライバル企業との値下げ合戦が勃発してインフラが急速に拡大。2016年以前にはインド国内全体の月間データ消費量が2億ギガバイトだったのに対し,2017年にはアメリカと中国を足したよりも多い,15億ギガバイトにまで拡大することになったという。
今では,全消費者のうち22.4%がスマートフォンを利用するに至っているという。Android及びiOS市場においても,アプリのダウンロード数はアメリカを抜いており,2018年のモバイルゲーム市場の規模は6億4900万ドル,さらに2020年には9億4300万ドルに跳ね上がると試算されている。
ボリウッド界の大スター,シャー・ルク・カーンさんとタイアップして2016年にリリースされたマッチ3型パズルゲーム「Fan: The Game」 |
App Store向けにチェスやジグゾーパズルといったゲームアプリを提供し始めたが,ゲームに馴染みのないインドのスタートアップだったということもあってか,どれも数千ダウンロード程度に終わっていた。しかし,クリエイティブな方向に舵を取った英単語パズル「WordsWorth」を2008年11月にリリースすると,同年中にいきなり100万ダウンロードを突破し,自立する意志を固めたとバット氏は言う。
現在も,自らを「スーパー・インディ・スタジオ」と銘打って巨大資本に頼ることなく地元の投資会社の支援のみで経営を続けており,2013年以降はボリウッドの男優をフィーチャーしたレースゲームの「Dhoom」や,マッチ3ゲームの「Fan: The Game」などで,インドにおいて圧倒的な存在感を示しているという。
バット氏によると,インドはまだまだ発展途上にあり,その経済力は3つの層に分けることができる。第I層は,欧米並みの生活基盤を築いている上層部で,人口にすると1億2000万から1億5000万人程度。生活費が安い分だけ,映画やゲームのようなエンターテイメントに消費する額が大きいところも,中国に近いと言えそうだ。
MAUとARPPUを比較すると,日本と中国の市場の差は歴然。バット氏はインド市場は中国に近いと話す |
また,中間層にあたる第II層は4億人とバット氏は推定していたが,月収は500ドル程度で,欧米や日本から見るとまだまだ所得は少ない。しかし,この層の成人のほとんどはスマートフォンを所持しており,今後はこの層をゲーム市場として開拓できる余地があるという。
第III層は,半分以上の6億5000万人とされるが,バット氏によると一日二食を食べることもままならないほどの貧困層であり,生活基盤を整えていくだけでも数十年はかかるとのこと。このあたりを明け透けに語れるのは,インドは発展途上の国の中でも政治的に開放された土地柄であるということだろうか。
事実,最後に登壇したKing.comのユウ氏も,同社の大ヒット作品「Candy Crash」がインドのアプリ市場でトップに居続けていることから,もともと英語が話せて欧米文化に慣れ親しんでいる人口の多いインド市場への参入は,それほど難しいことではないとする。ヒンドゥ教の宗教的な制約もそれほど厳しいものではなく,同国の新年にあたるディーワーリーをゲーム内でイベントとしてタイアップさせることで,インドの消費者にもアピールできると話していた。さらに,バット氏同様にボリウッドを絡めたプロモーションが有効であるとも述べていた。
インドのアプリストア。インドの国民的スポーツであるクリケットをテーマにしたゲームも散見されるが,基本的には欧米とは変わらない印象だ |
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