企画記事
歴代PlayStation据置機のコンセプトを,ホーム画面の各種機能の追加・廃止から読み取ってみる
1994年12月3日に,ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)よりコンシューマゲーム機の初代PSが発売され,現行機のPS5まで,携帯機も含めてさまざまなデバイスがリリースされてきたのは,4Gamer読者ならご存じだろう。
PSシリーズの特に据え置き機は,テクノロジーの進化に合わせ,代を重ねるごとに多機能になっていった印象がある。そこで今回,歴代据置型PSのホーム画面(メインメニュー,ホームメニュー)をあらためて確認し,その変遷をチェックしてみた。
PlayStation
初代PSのメインメニューは,「メモリーカード」と「CDプレーヤー」の2項目しかないシンプルなものとなっている。
前者を選択するとメモリーカードに記録された各ゲームのセーブデータが表示され,それらを削除したり,もう1枚のメモリーカードにコピーしたりが可能だ。
CDプレーヤーは,(当たり前だが)音楽CDの再生ができる。再生・停止・早送りなどに加え,リピートやシャッフル,曲順を任意に変更できるプログラム再生機能も備わっており,CDプレイヤーとして必要十分なものとなっている。ただし初代PSはインターネットに接続できないので,楽曲名などの情報までは表示されない。
初代PSのメインメニューは,グラフィックスやサウンドなどについての設定項目が用意されていないこともあり,全体的な印象としては「ゲーム機にCDプレイヤー機能が付いた」といったところだ。
PlayStation 2
2000年3月4日に発売されたPS2のメインメニューも,項目が「ブラウザ」と「システム設定」の2つというシンプルなもの。
ブラウザと言ってもインターネットブラウザではなく,メモリーカードや光学ディスクのブラウザだ。メモリーカードは,初代PS同様に記録された各ゲームのセーブデータを削除したり,もう1枚のメモリーカードにコピーしたりできる。
光学ディスクについてできるのは起動のみ。ゲームの場合,ディスクが入った状態で本体を起動すれば自動的に起動したので,これを使う機会はそれほど多くなかった。
ゲーム以外のメディアでは,CDに加えDVDが再生できるようになった。筆者の周囲のゲーマーは,PS2を比較的安価なDVDプレイヤーとしても活用していたように記憶している。実際,DVDの普及率はPS2の登場によって一気に高まったようだ。
なお,システム設定では画面サイズなどが変更できるようになっており,初代PSよりもコンピュータ然としてきた感がある。
PlayStation 3
2006年11月11日に発売されたPS3はHD解像度に対応し,画面の情報量が一気に上がった。そのホームメニューは,クロスメディアバー(XMB)と名付けられたユーザーインタフェースをフィーチャーしたもの。「設定」「ゲーム」「ミュージック」「ビデオ」といったPS3の機能カテゴリーが横一列に並び,各カテゴリーで実行できる項目が縦に並んでいる。
PS3のもっとも重要なポイントは,本体のみでインターネットに接続できるようになったことだ。ゲームのオンラインプレイが可能になっただけでなく,インターネットブラウザも搭載していた。起動してみたところ,現在でも一応使うことはできたが,一部表示がおかしくなった。
また,もう1つの重要なポイントとしてはHDDが標準搭載されたことが挙げられる。これにより,初代PSとPS2で使われていたメモリーカードは廃止となった。
ゲーム以外のメディアでは,CDとDVDに加え,Blu-ray,MP3などの音楽データ,MP4などの映像データの再生に対応。アップデートによって,最終的には「ミュージック」カテゴリから,音楽ストリーミングサービスのSpotifyを利用することもできた(2023年7月7日サポート終了)。
意外なところでは,内蔵HDDやUSBメモリなどに記録した写真データを表示する「フォトギャラリー」が充実している。とくにスライドショー機能は指定した画像を順次表示していくだけでなく,各画像の“紙焼き”が風に流されて飛んでくるような,凝った演出を楽しめる。
PS3は,PS2と比較すると一気にマルチメディアプレイヤー/エンターテイメントコンピュータとしての機能が充実した。その大きな理由は,上記のとおりインターネット接続が本体のみで可能になったこと,HDDが標準搭載されるようになったことにある。
ライバルにあたるMicrosoftのXbox 360も,やはりマルチメディアプレイヤー/エンターテイメントコンピュータとしての側面が強化されており,今振り返ると2000年代半ば頃はゲーム機が多機能化に向かっていた時代だったのだと思わされる。
PlayStation 4
日本では2014年2月22日に発売されたPS4のホーム画面は,上から順に3つのエリアに分けられている。画面最上部は新着のお知らせやオンラインのフレンド数などが表示される「機能エリア」,その下に最近起動したコンテンツが左から順に表示される「コンテンツエリア」,さらにその下は,それらコンテンツの情報を表示する「コンテンツインフォメーションエリア」(表示にはインターネット接続が必要)となっている。
ゲーム以外のメディア対応状況では,CDの再生ができなくなったことが大きい。試しにCDをディスクドライブを挿入すると,「認識できないディスク」と表示されてしまう。
また音楽データや映像データ,画像データは内蔵HDDにコピーできなくなり,USB接続したストレージにあるファイルを「USBミュージックプレーヤー」や「メディアプレーヤー」で再生・表示する形式となった。
DVDやBlu-ray,SpotifyはPS3と同様に利用可能で,NetflixやPrime Videoといった各種動画ストリーミングサービスが「テレビ&ビデオ」カテゴリから利用可能となった。
総じてPS4は,マルチメディアプレイヤーとしての色が薄くなり,ストリーミングをはじめとした外部サービスでカバーできるところは任せようとする意図が感じられる。
筆者自身,2014年当時はまだ音楽CDを購入してはいたものの,全部MP3に変換してスマホで聴いているという状況だったので,CD非対応化はまったく気にならなかった。
PlayStation 5
2020年11月12日に発売されたPS5のホーム画面は,基本的にPS4のものを踏襲。コントローラのPSボタンで呼び出せるコントロールセンターで表示される各種の「カード」でゲームの情報やヒントをなどをチェックできるほか,画面下部のアイコンでアプリの切り替えや,お知らせのチェックなどができる。
コントロールセンターはゲームをプレイしている途中でも呼び出すことができ,各種の情報や機能へのアクセスが可能となっている。
ゲーム以外の対応メディアは,PS4と基本的に同じ。ただしデジタルエディションやPS5 Proのディスクメディア再生には,別途ディスクドライブが必要となる。また対応音楽ストリーミングサービスに,Apple Musicが加わった。
その一方で,専用のインターネットブラウザは廃止された。一手間加えればインターネット検索などは可能だが,正直なところわざわざPS5を使うよりも手元のスマホを使ったほうが便利だ。
そんなPS5は,PS4以上にゲームに特化した感がある。記事冒頭では「代を重ねるごとに多機能になっていった印象」と記したが,実のところその多機能化の方向性は途中で変わっている。
PS3まではソニーグループの強みを活かして,どんどんマルチメディアプレイヤー/エンターテイメントコンピュータとしての機能が強化されていったが,PS4以降は,各種インターネットサービスの多様化と普及に応じて機能を取捨選択し,ゲーム機への原点回帰を進めようとする意図があるように感じられる。
とくにPS5は,ゲームプレイ中の利便性を高める機能を追加するなど,よりゲーム中心のコンセプトで設計されたと言えるのではないだろうか。
PS5の発売から4年,上位モデルのPS5 Proも先日発売され,そろそろ次世代機の噂が聞こえてきてもおかしくない今日この頃。次のPS据え置き機がどんな方向性で設計され,どんな機能が追加されるのか,歴代ホーム画面の変遷から予想するのも面白いかもしれない。
PlayStation公式サイト
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