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[TGS2022]Movereブースで見つけた,現実世界とVR空間で対戦するVRゲームをレポート。動くシートと風が,ヒヤリとする落下感を生み出す
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印刷2022/09/17 01:26

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[TGS2022]Movereブースで見つけた,現実世界とVR空間で対戦するVRゲームをレポート。動くシートと風が,ヒヤリとする落下感を生み出す

 2022年9月15日から9月18日にかけて,千葉県・幕張メッセにて開催されている「東京ゲームショウ2022」には,いわゆるビデオゲームだけでなく,ユニークなVRゲームや機器も展示されている。
 そんな中,Movereブースには可動式チェアの「揺動呈示装置Lumbus」を使って現実側とVR側で対戦する「『掌の上で踊らされる』をVR化してみた(仮)」が出展されていたので,本稿ではそのレポートをお届けしたい。

「揺動呈示装置Lumbus」
画像集 No.001のサムネイル画像 / [TGS2022]Movereブースで見つけた,現実世界とVR空間で対戦するVRゲームをレポート。動くシートと風が,ヒヤリとする落下感を生み出す

Movere公式サイト



動くシートと風が,ヒヤリとする落下感を生み出す


 「『掌の上で踊らされる』をVR化してみた(仮)」は,現実側1人とVR側1人の合計2人で遊ぶVRゲームだ。戦場となるのは,巨大仏像の掌の上。現実側プレイヤーはVR側プレイヤーを掌の上から落とそうし,VR側プレイヤーは落ちないように耐える,といった趣向のゲームとなっている。

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 詳しく説明していこう。VR側プレイヤーは,Movereが制作したデバイス「揺動呈示装置Lumbus」(以下,Lumbus)のシートに座りHMDを装着する。対する現実側は,VIVEトラッカーを持てば準備完了だ。
 ゲームがスタートすると,VR側プレイヤーは巨大仏像の手のひらの上に出現する。ここで現実側がVIVEトラッカーを傾けたり振ったりすると,VR側プレイヤーの座ったLumbusはVIVEトラッカーと同じように動き,「掌の上で踊らされる」というタイトルどおりの体験をすることとなるわけだ。
 Lumbusは最大で26度傾くうえ,後述するように傾きを強く体感できる仕組みになっている。これだけでもけっこう迫力があるのに,Lumbusをどう動かすかは現実側プレイヤー次第。つまり動きを予想することはまったくできず,これがまたスリルに拍車を掛ける。
 VR側プレイヤーが掌から落ちてしまうと,周囲からゲームと連動して動く扇風機の強風が吹きつけてくる仕組みになっていて,落下感と強風,そして扇風機のファンが回るときの甲高い音も相まって,背筋がヒヤっとすること請け合いである。

写真右の現実側プレイヤーが持っているのがVIVEトラッカーだ。この状態で手を動かすと,Lumbusもそのとおりに傾く仕組み
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 落ちないためには,Lumbusが傾くのとは逆方向に身体を動かして耐えるしかない。一定時間が過ぎれば,今度はVR側と現実側のプレイヤーが交代となるので,今度はさっきのお返しをする番だ。
 なおVRゲームでありつつ,周囲の人も同時に楽しめるこのユニークなゲームシステムは,Movereが過去にシートが動くタイプのVRコンテンツを出展したとき,ギャラリーが画面の動きに合わせてプレイヤーを団扇であおいで驚かせたことから着想を得たという。

掌から落ちないよう,傾いた方向と逆に身体を動かして耐える
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VR側プレイヤーが落ちると,上下8か所に設置された扇風機が連動し,風を吹きかける
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 現実側とVR側で対戦するゲームシステムもさることながら,Lumbus自体もユニークだ。ゲームに連動して傾くシート(モーションシート)は既にさまざまなものが存在しているが,Lumbusは低コストで低電力,かつ傾きが強く感じられるのがメリットだと,開発者であるMovereの脇田 航氏は語っていた。
 Lumbusを動かすのは,シートの後部にセットされる2本のアクチュエータだ。ほかのモーションシートではもっと多くのアクチュエータが使われており,シートを「支える」ような構造になっているのだが,これではアクチュエータの負担する重量が大きくなり,これに対応するため高出力のアクチュエータを使わなければならない。そしてアクチュエータは高出力であるほど,動きが遅くなってしまう。

公式サイトより,無人のLumbusが傾く様子。大きく傾けられるのが分かる
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こちらも公式サイトから。左側が従来品,右側が後部のアクチュエータでシートを保持するLumbus。回転中心から耳までの距離がより遠くなることから,傾きを強く感じられるという
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 そうした中で作られたLumbusの開発テーマは“あまり大きな力を使わずに,人間を揺らしつつ,アクチュエータの負担も減らす”ことだったそうだ。
 シートの下部は起き上がりこぼしのような球面になっており,アクチュエータで“支える”のではなく,後方に配置された2本で“保持する”仕組みだ。これで,シートを大きく揺らすことと,しっかり保持することを両立しているとのこと。
 なおシートの下部に球面を採用したモーションシートはほかにも存在するが,Lumbusでは後方から保持する構造にしたことで,アクチュエータに求められる出力を引き下げ,素早い動きと消費電力の軽減,低コスト化を実現したという。モーションシートの中には100万円以上するものもある中,Lumbusはシート無しで39〜78万円,推奨シートとのセットで47〜86万円という低価格を実現している(TGS 2022会場に展示されていた,扇風機と連動するモデルは現時点で未発売とのこと)。

シートの下部は球面になっていて,小さな力で前後左右に傾けられる。脇田氏曰く「ロッキングチェアを前後だけでなく左右に傾くようにし,後ろから2本の手で支えた状態」とのことだ
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公式サイトより,シートを設置していない状態のLumbusの基本セット。上に伸びているのがアクチュエータだ
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基本セットにシートを設置した状態がこちら。後部にアクチュエータが伸びているのが分かる

アクチュエータが伸び縮みし,前方向へシートを傾けている
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 現時点ではUnreal Engine 4とUnityに対応しており,制御用レシーバプログラムや動作確認用サンプルプログラムが公式サイトからダウンロードできる。知識がある人なら,自分でプログラムを組むことで既存ゲームでも使える可能性があるとのことだった。
 また,「『掌の上で踊らされる』をVR化してみた(仮)」はSteamでの配信が予定されており,ストアページもすでに公開されている。


 なおMovereは,このほかにハーネスや専用シューズが不要なVR用歩行デバイス「Crus」も開発しており,公式サイトで購入可能となっている。こちらもユニークな製品なので,気になる人はTGS 2021のレポート記事も合わせてご一読いただきたい。
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 東京ゲームショウ2021のオフライン会場にある「広島市立大学×Movere」ブースで,「VR用歩行装置 Crus-TypeC」というデバイスが披露されていた。VR用の歩行デバイス自体は珍しいものではないが,9万9800円と比較的安価な点と,ハーネスや専用シューズを必要としない手軽さが魅力だ。

[2021/10/01 01:37]

Movere公式サイト

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