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ダミーヘッドを用いた計測で明らかにする,ゲーマー向けヘッドセット46製品の音質(5)出力品質で選ぶお勧め製品
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印刷2016/10/08 00:00

レビュー

ダミーヘッドを用いた計測で明らかにする,ゲーマー向けヘッドセット46製品の音質(5)出力品質で選ぶお勧め製品

 音響測定用の「ダミーヘッド」をとうとう入手できたので,ゲーマー向け46製品で出力特性を検証してみようという企画を,ここまで,以下のとおりお届けしてきた。

  1. 出力品質を計測するということ
  2. 製品検証,ブランド名A〜E
  3. 製品検証,ブランド名H〜Ra
  4. 製品検証,ブランド名Ro〜T

これは4Gamerで作ってみた「リファレンスのピンクノイズと計測結果との差分を出すツール」のスクリーンショット。正式採用するかどうか決めていないが,「見やすさ向上への努力」は始めましたよということで
画像集 No.002のサムネイル画像 / ダミーヘッドを用いた計測で明らかにする,ゲーマー向けヘッドセット46製品の音質(5)出力品質で選ぶお勧め製品
 正直,テストパートの波形はなかなか見づらかったのではないかと思う。今回について言えば,「同一条件でより多くのデータを取り,それを横並びで比較する」ことを重視した企画なので,波形評価と試聴印象のコメントを併用してもらえれば幸いだ。
 「いかにして波形をより分かりやすく見せるか」は今後の検討課題とさせてもらえればと考えている。

 というわけで,今回のテスト結果をどうまとめるのかなのだが,今回は,最安値でも平均価格でもなく,4Gamerが独自の価格調査時にチェックしている複数ショップの中心価格帯で,ざっくり「2万円以上」「1万円台後半」「1万円台前半」「7000円以上1万円未満」「7000円未満」の5カテゴリーに分け,それぞれの価格帯で,ヘッドフォン出力品質のみを基準として,主に接続方式別でお勧め製品を2〜3取り上げることにした。

 それに先だって注意してほしいことは,先の製品検証パートで時折触れた装着感であるとか,使い勝手の善し悪しとか,そもそも今回の記事において何も言及していないマイク入力品質は,一切を考慮の対象外としていることだ。
 とくに重要なのは「アナログ接続時におけるヘッドフォンアンプとの相性」「USB接続時の動作安定性」を考慮の対象外にしている点で,「ヘッドフォンアンプとの相性がシビアで,マザーボードのオンボードサウンド機能と組み合わせるとロクな音が鳴らない」とか,「USBドライバの品質が今ひとつで,ゲームプレイを長時間していると問題が起こる」という事実が仮にあったとしても,考慮はしないということである。
 ひょっとしたら総合力では別の製品がより優れているかもしれないということは,どれだけ書いても強調しすぎることはないだろうと思う。

 では,順にお勧めを紹介していこう。


中心価格帯2万円以上のお勧め製品


GAME ONE(Sennheiser Communications)


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 「よいヘッドセットを長く使いたい」ということであれば,今回テストした中だとGAME ONEが第一の選択肢になる。低域とプレゼンスの絶妙なバランスは,本家Sennheiser(ゼンハイザー)のヘッドフォンを想起させる,素晴らしいものだ。
 周波数特性がほぼ同じPC 373Dではなく,こちらを選んだのは,お気に入りのサウンドデバイスやヘッドフォンアンプと組み合わせることで,音質をカスタマイズできる,アナログ接続型ならではの柔軟性がゆえである。なので,同じワイヤードでUSBの簡便性により重きを置くのであれば,PC 373Dを選択するのも,もちろんアリだろう。また,音が漏れるオープンエア型はちょっと……という場合も,PC 373Dになりそうな気はする。

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G933 Artemis Spectrum Wireless 7.1 Gaming Headset(Logitech G/Logicool G)


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 USBもしくはワイヤレス接続型には多機能性を求める人が多いと思うが,そういう多機能型ヘッドセットの第1候補にはG933 Artemis Spectrum Wireless 7.1 Gaming Headset(以下,G933)を選ぶ。ワイヤレス接続時の音質傾向は,重低音の出方からプレゼンスの押し出し具合まで,非常に「音楽的」だと感じられるからだ。

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Razer ManO'War(Razer)


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 多機能型ヘッドセットでG933の音質に対抗できる,唯一の製品だ。中域の解像度と高域の伸びを重視するならRazer ManO'Warに軍配が上がる。リッチな低域よりもさらに低い,ディープな重低域が好みの人にもお勧めできよう。
 予算が許すなら,「G933とManO'Warを両方買って,好みのほうを残す」でもいいくらい,出力音質のレベルは拮抗している。

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中心価格帯1万円台後半のお勧め製品


ATH-PDG1(オーディオテクニカ)


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 ホームオーディオ向け製品で一定の地位を築いているメーカーが,上位の価格帯に向けて出してくる製品は,さすがにしっかりしていると唸らされたのがATH-PDG1である。きちんとした「ホームオーディオの音」が鳴るので,音を聞いていて違和感を覚えない。この価格帯の中からシンプルなアナログ接続型として選ぶならこれだろう。
 別途,良質なサウンドデバイスを用意する必要はあるものの,長く使うなら十分に元は取れるはずだ。

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G633 Artemis Spectrum RGB 7.1 Surround Gaming Headset(Logitech G/Logicool G)


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 追加投資の不要なUSB接続型では,多機能モデルとしてのG633 Artemis Spectrum RGB 7.1 Surround Gaming Headset(以下,G633)が第1候補となる。G933ほど傑出はしていない――両者で音質が異なることは製品レビュー時指摘済みだが,今回,それを視覚化できたのは本当によかったと思う――ものの,十分にバランスのよい音質でゲームを楽しめるはずだ。

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中心価格帯1万円台前半のお勧め製品


NASH 20(Mionix)


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 アナログ接続型では,プレゼンスの帯域がきつくなく,「ドンシャリではない右肩下がり」型の製品として,NASH 20を推す。長時間のゲームプレイでも疲れにくい音質傾向なので,そのミニマルなデザインと相まって,長く使えるヘッドセットになるのではないかと思う。
 正直に言うと,改訂前の,税込で1万5000円を超える価格なら,1つ上のカテゴリーで落選していたと思うが,あまり競合の多くない価格帯へ下りてきたことによって,ぐっと魅力的になったと言える。

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RIG Surround(Plantronics Gaming)


性能評価パートでもお断りしたとおり,今回まさかの撮影漏れにつき,過去の記事より写真を流用する
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 今回のテストレギュレーションによる恩恵を最も受けたと言えるのが,RIG Surroundだ。以前掲載したハードウェア短評でも指摘したように,RIG Surroundは,付属するコントローラの完成度が相当に低いのだが,そこを考慮の対象外に置くと,ヘッドセット業界のビッグネームであるPlantronicsらしく,「よい音だ」と感じられる製品になっているのである。
 アメリカンな強めのドンシャリでありながら,高域に歪んだ感じがしないというのは,そうそうたくさんあるわけではないが,RIG Surroundであればその音が得られる。

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中心価格帯7000円以上1万円未満のお勧め製品


Siberia 200(SteelSeries)


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 7000円以上1万円未満という市場は,一般ゲーマーがちょっと頑張って手を伸ばせるギリギリのところではないかと思うのだが,ここには,ゲーマー向けヘッドセットの老舗であるSteelSeriesの製品から,主力のUSB接続型ではなく,比較的安価なアナログ接続型モデルが入ってきた。
 Siberia 200は,低域より下の周波数帯である重低域が強い。重低域が強い密閉型ヘッドセットらしい特性として,耳に近いところで音が鳴るので,音に迫力がある。

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Renga(ROCCAT)


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 アナログ接続型ではもう1つ,Rengaもお勧めできる。重低域より高い周波数帯域となる低域が強いので,同価格帯のSiberia 200と比較して充実した,たっぷりの低音感が得られる。また,オープンエア型エンクロージャを採用する製品に近い,音が耳に張り付かない鳴り方をするのも魅力である。
 この価格帯から選ぶときは,一聴の価値ありだ。

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G430 Surround Sound Gaming Headset(Logitech G/Logicool G)


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 USBヘッドフォンアンプの出力音量がそれほど大きくないという欠点は抱えるものの,この価格帯でUSB接続型から音質重視で選ぶならこれしかないと断言できる存在が,G430 Surround Sound Gaming Headset(以下,G430)である。というか,その音響特性は,価格を考えると驚くべきものがある。

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中心価格帯7000円未満のお勧め製品


G230 Stereo Gaming Headset(Logitech G/Logicool G)


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 ハードウェアが同じで,接続インタフェースと差し色のみ変わった後継製品「G231 Prodigy Gaming Headset」(以下,G231)が実質的なお勧め対象ということになるのかもしれないが,G231は発売直後ということもあって,実勢価格は7600〜8400円程度(※2016年10月8日現在)と,やや高い。なので,いまこの瞬間であれば,店頭在庫のみとなっているG230 Stereo Gaming Headset(以下,G230)のほうを狙うべきだろう。
 7000円未満の価格帯において,G230は文句なしにトップクラスの音響特性を持つ。「予算はあまりないけれども,外れは引きたくない」人が真っ先に検討すべき製品だ。

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TRITTON Kama Stereo Headset(Mad Catz Interactive)


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 今回,最も「いい意味で期待を裏切られた」のがこのTRITTON Kama Stereo Headset(以下,Kama)である。実勢価格が4000〜4200円程度(※2016年10月8日現在)と,ゲーマー向けヘッドセットとしてはほぼ最低の水準にありながら,今回テスト対象としたMad CatzおよびTRITTONブランドのヘッドセットで,唯一,筆者が「おっいい音」と思った製品だったりする。
 音質傾向はけっこうキツめの右肩下がりなので,その点は人を選ぶだろうが,5000円以下という予算でゲーマー向けヘッドセットを買うならこれしかない。

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最後に


 何というか,ここまで各価格帯のお勧めにLogitech G/Logicool Gが並んでしまうと,また「4亀はロジ贔屓」「榎本はロジの回し者」と言われてしまうのであろう。そもそも特定のメーカーから何らかの優遇措置を受けているなら,こんなまどろっこしいことをする必要など欠片ものないのだが,まあ,こういう結果である以上,いろいろ言われてしまうのは仕方ないと諦めている。

 現実的な話をすると,Logitech G/Logicool Gはゲーマー向け製品ブランドの巨人なだけあって,市場をよく研究しており,また,価格帯ごとに「仮にベストではなくともベター」なものを,うまく投入できているように思う。
 今回のテスト結果からお勧め製品を選ぶとして,「極めて個性的で,ユーザーの評価が真っ二つに分かれる」ような製品ばかりを選んでもいられないわけで,Logitech G/Logicool Gの製品をオルタナティブ――というか,音響特性的なむしろコンサバど真ん中――として挙げておくとバランスが取れるというのが,偽らざる理由だ。
 それ以外だと,ビッグネームはあらかた名前を連ねる結果となった。オーディオテクニカは初評価だったが,Sennheiser Communications製品と同じく,同様,貫禄の品質だったと言っていいだろう。買う,買わないはさておき,機会があれば一度試してみると,ホームオーディオメーカーが作るゲーマー向けヘッドセットがどのようなものかを知る,いい機会になると思う。

 あとは,MionixにROCCAT,TRITTONを選ぶことができたのは,波形特性検証ならではということになるだろうか。総合評価では残念なRIG Surroundが一点突破で食い込んできたのも,個人的には面白かった。

 では,このなかでどれがベストかという話になりそうだが,それは述べない。誰でも好みの音質はあり,しかもそれは個人個人でけっこう異なる。だからこそ音響の世界は奥が深く,だからこそ山ほどの製品が存在するのだ。
 幸いにして,ダミーヘッドの導入で,今後は主観だけに頼らない製品評価を行えるようになった。今回,そして次回以降のヘッドセット評価記事が,読者のゲーマー向けヘッドセット選びに助けとなれば幸いである。

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  1. 出力品質を計測するということ
  2. 製品検証,ブランド名A〜E
  3. 製品検証,ブランド名H〜Ra
  4. 製品検証,ブランド名Ro〜T
  5. 出力品質で選ぶお勧め製品(本稿)
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