
プレイレポート
[プレイレポ]小さな取引から始まる麻薬王への道のり。違法ビジネスの細部を描く「Schedule I」
そんな犯罪者としての成功物語を描く「Schedule I」は,思わず「あともう一取引だけ」とつぶやいてしまう中毒性と,地下ビジネスの世界を緻密に再現した没入感を持つ犯罪シミュレーションゲームだ。
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2025年3月25日にSteamでアーリーアクセスをスタートさせた本作は,発売からわずか数日で大きな話題となった。タイトルにあるSchedule Iとは,アメリカの薬物取締法で「医療用途がなく乱用の危険性が高い」とされる最も規制の厳しい薬物カテゴリーを指す。
そう,このゲームでプレイヤーは麻薬ディーラーとなり,ハイランド・ポイントという架空の西海岸の街で,取引を重ねながら自分の「帝国」を築いていくのだ。
違法ビジネスの隅々までを再現
Schedule Iの最大の特徴は,薬物製造から販売までの全プロセスが細かく再現されていることだ。
多くのシミュレーションゲームでは,生産や加工がメニュー選択だけで完結してしまうことが多い。しかし本作では,土を混ぜる,水やりをする,収穫する,製品を包装するといった一連の作業がすべて,プレイヤー自身の手によるインタラクティブなミニゲームとして実装されている。
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例えば,マリファナを育てるには,まず専門店で土を購入し,売人から種を入手する。そして,それらを自分の部屋に持ち帰って植木鉢に植え,定期的に水やりをしなければならない。収穫後も,乾燥や包装といった手間のかかる作業が続く。こうした細かなプロセスのひとつひとつが,絶妙な難度のミニゲームとして設計されており,単なる作業ではなく,プレイヤーの技術や判断が問われる楽しい挑戦となっている。
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完成した商品は,ゲーム内のブラックマーケットアプリで出品するか,直接顧客に届けるかを選べる。顧客とのやり取りはスマホのメッセージアプリを通じて行われ,「〇〇の裏で会おう」「バスケットコートにいるよ」といった具合に,取引の場所や時間が決められる。
こうした取引には独特のスリルがある。約束の場所に向かう途中でパトカーとすれ違ったり,人目につく場所での受け渡しに神経をすり減らしたりと,違法取引ならではのリスクが常に付きまとうわけだ。
警察の取り締まりの目を逃れながら,かつ期待する顧客を失望させないようタイミングよく商品を届けるプレッシャーは,単なる「配達」とは一線を画す体験といえる。この危険と隣り合わせの違法ビジネスの雰囲気が,本作の魅力といえるだろう。
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小さな部屋から始まる成功への道のり
ゲームの序盤,プレイヤーはボロアパートの一室を拠点に活動を始める。最初は小規模な取引から始まり,徐々に資金を蓄えていくことで,より良い拠点を確保したり,新しい製造設備を整えたり,さらには配下の売人を雇ったりと,ビジネスを拡大していける。
このゲームサイクルが効果的で,常に「次は何をしよう」という新たな目標がおのずと生まれる。こうした進行は多くの経営シミュレーションに通じるものがあるが,「違法ビジネス」という設定がプレイに独特の緊張を与えており,より引き込まれる体験を作り出しているように感じた。
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とくに印象的なのは,ゲームが進むにつれて実感できる「成長」のプロセスだ。最初は徒歩で数グラムの商品を届けていた自分が,いつしかスケートボードや車を使って移動し,複数の拠点を持ち,何人もの部下を指揮する「ボス」になっていく。こうした変化が目に見える形で表現されているため,強い手ごたえを得られる。
常に頭の片隅にある「リスク」
もちろん,このビジネスには常にリスクが付きまとう。警察の巡回や取り締まりを避けながら活動する必要があり,時には警察から逃げ回ることもある。また,ライバルのディーラーやカルテルとの抗争も避けられない。こうした「危険」の存在が,ゲームに絶妙なリアリティをもらたしている。
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本作の戦闘システムは素手,近接武器,銃器と多岐にわたるが,正直なところ,FPSゲームと比べると少々単調な印象は否めない。しかし,「犯罪者」としての立場を考えれば,戦闘に及ぶこと自体がリスクであり,むしろ戦闘を回避する選択肢も含めた緊張感こそが本作の本質と言えるだろう。
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Schedule Iのもう一つの魅力は,リリース当初から実装されている協力プレイ機能だ。友人と一緒に麻薬帝国を築き上げる体験は,想像以上に楽しい。一人が製造を担当し,もう一人が販売を受け持つといった役割分担が可能で,効率よく事業を拡大できる。
「オレは今日の出荷を終わらせるから,そっちは収穫と梱包をやっておいて」といった会話が生まれる状況は,まるでドラマの一場面のようだ。
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アーリーアクセスながらも優れた出来栄え
Schedule Iは現在アーリーアクセス版であり,開発者によれば約2年間のアーリーアクセス期間を予定しているという。しかし,現状でも十分に楽しめる内容となっており,一般的なアーリーアクセスゲームと比較しても完成度は高い。全領域をアンロックするまでのプレイ時間は約30時間とされており,コンテンツ量も十分だ。
特筆すべきは,開発チームがコミュニティからのフィードバックを積極的に取り入れ,頻繁にアップデートを行っている点だ。こうした姿勢は,今後の発展への期待感を高めている。
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もちろん,改善の余地がないわけではない。現状では,一部のミニゲーム(特に混合ステーション)がやや反復的で奥深さに欠ける印象がある。また,ビジネスを自動化していくと,初期の魅力であった「手作業」の面白さが薄れてしまう点も気になる。
さらに,街の住人の多くに個性や深みが不足しており,薬物取引以外のアクティビティも限られている。稼いだ資金の使い道も,ビジネスの拡大以外にはあまり選択肢がないため,長時間プレイした際の単調さが懸念される。
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しかし,これらの点はアーリーアクセスゲームとしては珍しくない課題であり,今後のアップデートで改善されることを期待したい。とくに,キャラクターや拠点のカスタマイズ要素の拡充や,より多様なサブアクティビティの追加は,ゲームの寿命を大きく延ばす要素となるだろう。
時間を忘れて黙々と遊べてしまう犯罪シミュレーション
Schedule Iは,犯罪をテーマにしたシミュレーションゲームとして,独自の魅力と中毒性を持っている。薬物製造から販売までの全プロセスが作り込まれており,小さな取引から始めて帝国を築き上げていく過程は,強い達成感をもたらす。
また,友人との協力プレイにも対応しており,役割分担しながら事業を拡大していく体験は格別だ。アーリーアクセス版でありながら,多くのコンテンツが実装されており,開発チームの熱意とコミュニティへの配慮も感じられる。
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犯罪シミュレーターという一風変わったジャンルながら,その没入感と作り込みの丁寧さは多くのプレイヤーを虜にするだろう。今後のアップデートでさらに進化することを考えると,長期的に楽しめる作品になることは間違いない。
ビジネスシミュレーションが好きな人,友人と協力プレイを楽しみたい人,また,「普段とは違う体験」を求めるプレイヤーにとって,Schedule Iはお気に入りの一本になるはずだ。
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Schedule I
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