
連載
「クレイジー・クライマー」のボードゲームでは,本当にビルを登ってゴールを目指す! 昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第1回
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どうもはじめまして。東京・調布の京王多摩川で「Book Cafe ヨミヤスミ」というブックカフェを経営しているシャクライと申します。
小さなブックカフェですが,週末にはレトロボードゲームを楽しむ2時間ほどのイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」を開催しています。それが4Gamerさんの目に止まり,この連載「昭和・平成レトロゲーム大百科」で毎月1つ,レトロボードゲームを紹介することとなりました。
最初に,この記事で扱う「レトロボードゲーム」とはなんぞや? というところを説明させてください。
ボードゲームと言っても,将棋やチェス,バックギャモン,ダイヤモンドゲームほど古いものではなく,時期的には昭和40年代くらいから国内向けに販売されるようになったもの,例を挙げるなら「人生ゲーム」のような大きな平たい箱に入って販売されたボードゲームがメインとなります。
この手のボードゲームの全盛期はファミリーコンピュータが一般に普及する前,つまり昭和50年代くらいになると思いますが,当カフェのイベントでは平成初期に発売されたものもたまにプレイします。
連載のタイトルは「昭和・平成」ですが,平成末期のものはさすがに「レトロ」ではないと思いますので,定義としては「ゲームセンターCX」方式を採用して,発売から20年以上経ったボードゲームを「レトロボードゲーム」として扱っていきたいと思います。
名作「クレイジー・クライマー」がボードゲームに!
記念すべき第1回のレトロボードゲームは,バンダイから昭和56年(1981年)に発売された「立体クレイジークライマー」です。
個人的な話になりますが,10歳の誕生日に買ってもらったゲームにして,人生初めての,そして人生でもっとも多くプレイしているボードゲームですので,まずはこちらを紹介させてください。
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「クレイジー・クライマー」(当時の表記は「クレージー・クライマー」だったようです)と言えば,ある年齢以上のゲーマーにとっては,昭和55年(1980年)に日本物産からアーケード向けにリリースされた縦スクロール型アクショゲームとしておなじみです。
主人公はビルクライマーで,超高層ビルを窓伝いにひたすら登り最上階を目指すという,何が彼をそこまで突き動かしたのか……!? と問いたくなる奇抜な設定に,独特な操作方法(両腕の動きに対応した8方向2本レバー操作)が相まって大ヒット。すがやみつる氏の漫画「ゲームセンターあらし」にも登場するくらいメジャーで熱いゲームでありました。
ただ当時10歳だった僕にとって,昭和のヤンキー全盛期に不良のたまり場とまでいわれていたゲームセンターに足を踏み入れるなど,もってのほか。同じくバンダイから発売されたLSIゲーム「クレイジークライミング」も,一般的な家庭の子供にとってはやや値が張る代物で,買ってはもらえず。持っている友達をうらやましく思っていました。
そんな中,誕生日プレゼントでなんとかお願いできそうだったのが,当時2000〜3000円ぐらいで販売されていた(記憶がある)「立体クレイジークライマー」だったのです。
自宅の近所にあったおもちゃ屋さんで買ってもらったときは嬉しかったですねぇ。弟とも,クラスの友達とも遊びました。当時はファミコンも登場しておらず,娯楽としてボードゲームはそれなり流行していて,友達の家にも何個かボードゲームがあったんです。
なので今日は●●くんの家で「おばけ屋敷ゲーム」,明日は●●ちゃんの家で「20世紀大予言ゲーム」みたいな感じで,いろんな友達の家でそれぞれが所有しているボードゲームを遊んでいました。
いま思うと,この幼い頃に遊んだボードゲームの思い出がこの歳になってふつふつと蘇り,その懐かしさを原動力にして令和の今,夜な夜な集まってレトロボードゲームをプレイするイベントを開催しているような気もします。
超異色,上に移動するボード(?)ゲーム!
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そのビルの窓には不規則に穴が空いていて,地上からスタートしたコマを空いた窓に引っ掛けて上階を目指します。空いている窓が一般的なボードゲームのマス目に当たるわけです。
そして屋上で待っているヘリコプターにいち早くつかまったプレイヤーが勝者となる……というのが基本のルールです。
移動には,プレイ開始時に各プレイヤーへランダムで5枚ずつ配られる「プレイカード」を使います。そこには移動できる窓の位置が赤丸で描かれていて,それがビルで移動できる(穴が空いている)窓の位置と合っていれば,カードを出して移動できるという仕組みです。
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やすやすと登らせてくれない,さまざまなトラップ
そんな感じでビルを登っていくわけですが,このゲームでは5階,10階といったように,5の倍数階を超えるたびに,プレイヤーがルーレットを回すことになります。
ルーレットには,プレイヤーを下の階に落とす落下物(花瓶や鉄アレイ)や,アクシデントなどが発生する「クレイジーカード」,このゲーム最大の難敵である「キングコング」の移動が割り振られていて,誰かが5の倍数階を超えるたびにドキドキ。ラストの25階から30階は,1階上がるごとにルーレットを回す鬼のような厳しさとなります。
ちなみに,アーケードの「クレイジー・クライマー」に登場するのは「キングゴリラ」です。ボードゲーム版でも,ルーレットには「ゴリラ」と書かれているのですが,カードや商品の箱には「キングコング」と書かれていて,こちらが“正式名称”っぽいです。ボードゲーム版が「キングコング」の許可を取ったとは思えないのですが,このあたりも昭和ならではの緩さかもしれません。
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クレイジーカードによるアクシデントには,最大で5つ下の窓に落とされる恐ろしいものも(空いている窓のカウントなので,落下階数としてはさらに多くなるのです)。
さらに,ほかのプレイヤーとの位置交換や,全員のプレイカードを集めてシャッフルなど,戦略を根本から覆すものも入っています。状況が不利なときは一発逆転を狙えますが,トップにいるプレイヤーは極力引きたくないでしょう。しかもゴールであるヘリコプターも,このクレイジーカードの指示によって右へ左へと移動するので,最後の最後まで気が抜けません。
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そしてキングコング。さきほど「このゲーム最大の難敵」と書きましたが,このキングコングに捕まると(周囲の8マスにプレイヤーが入ると),有無を言わさず地上(1階)に叩きつけられてしまいます。ゴール直前の28階あたりでこれを食らったら,心が折れて立ち直れないかもしれません。
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これが昭和の厳しさと言ってしまえばそれまでなんですが,令和の時代にプレイするなら,多少マイルドに調整するのもありでしょう。ちなみに当カフェのイベントでプレイするときは,落下物と同様でひとつ下の窓に落とすルールに変更しています。それでも縦横無尽に動き回ってプレイヤーの行く手を阻むキングコングは十分手強いです。
ちなみに,当時のボードゲームの説明書の最後の方には,「ゲームをより楽しむためにオリジナルルールを追加するのもあり」的なことがよく書かれていました。ルールの変更や追加にはメーカー側も寛容だったようです。
戦略と運要素のバランスが絶妙
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また,アーケードゲームのクレイジー・クライマーが一人で挑む孤独な戦いであるのに対して,ライバルクライマーと先を争う対戦型というのがより熱くさせるポイント。進行ルートを妨害したり,地上近くから一気にジャンプアップできたりといったあたりが,「立体クレイジークライマー」ならではの面白さといえる思います。
というわけで,これから毎月1つ,レトロボードゲームをこんな感じでご紹介していきます。ここで紹介したゲームは,当カフェBook Cafe ヨミヤスミで開催するイベントでプレイできますので,よかったらご来店ください。
■■Book Cafe ヨミヤスミ■■
京王線の京王多摩川駅から徒歩6分ほどの場所にあるブックカフェ。1980〜90年代の本や雑誌,漫画に加えて,パソコン雑誌やゲームブックなども揃っています。
毎週末開催されるイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」では,本連載で紹介したものをはじめとしたレトロボードをプレイできますので,下記のイベントサイトでお申し込みのうえ,ぜひご来店ください。
公式サイト:https://www.instagram.com/yomiyasumi
公式イベントサイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi-8jidayo
公式X:https://x.com/yomiyasumi
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