
レビュー
RX 7900 XTを上回り,GeForce RTX 5070とも戦える新世代Radeon
Sapphire PURE Radeon RX 9070 XT GPU
PURE Radeon RX 9070 GPU
本稿では,Sapphire Technology(以下,Sapphire)製のRX 9070 XT搭載カード「PURE Radeon RX 9070 XT GPU」と,RX 9070搭載カード「PURE Radeon RX 9070 GPU」を用いて,その実力を確かめてみたい。
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はたしてNVIDIAのGeForce RTX 50シリーズを脅かす存在になるのだろうか。
AI処理とレイトレーシングユニットが進化。動作クロックの高さにも注目だ
まずは,RX 9070シリーズについて説明しよう。
RX 9070 XTとRX 9070は,「Radeon RX 7900 XT」と「Radeon RX 7900 GRE」の間に置かれるモデルで,1440pから4Kまでの幅広いゲーム環境をカバーするとAMDは説明している(関連記事)。
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RX 9070 XTとRX 9070は,ともにRDNA 4アーキテクチャに基づいた「Navi 48」コアを採用している。Navi 48は,TSMCのN4プロセスを改良したN4Pプロセスで製造され,357mm2のダイサイズに約539億個のトランジスタを搭載するGPUだ。
RDNA 4アーキテクチャでは,AMDが「Stream Processor」(以下,SP)と呼ぶシェーダプロセッサを16基束ねて1基の実行ユニットとする。その実行ユニット4基に,AI処理ユニットの「AI Accelerator」を2基,レイトレーシングユニットの「Ray Accelerator」を1基,さらにレジスタファイルやスケジューラ,テクスチャユニットなどをまとめた単位を「Compute Unit」(以下,CU)と呼ぶ。そのCUを2つまとめて「Dual Compute Unit」としているあたりは,RDNA 3アーキテクチャと同じだ。
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CUは,16基(Dual Compute Unitでは8基)まとめて「Shader Engines」を構成しており,Navi 48は,Shader Engines4基から成る。つまり,CUの総数は16×4で64基となるので,SPの総数は16×4×64で4096基という計算だ。RX 9070 XTは,Navi 48のフルスペック版だが,RX 9070はフルスペックから8基のCUを無効化している。そのため,RX 9070のCU数は56基,SP数も3584基となるわけだ。
RDNA 4アーキテクチャでは,AI Acceleratorが第2世代へと,Ray Acceleratorが第3世代へとそれぞれ進化。AI処理ユニットとレイトレーシングユニットの世代を進化させたあたりは,NVIDIAのGeForce RTX 50シリーズとよく似ている。
RDNA 4アーキテクチャにおける第2世代AI Acceleratorは,新たにFP8フォーマットの処理に対応したほか,AMD独自の超解像技術「FidelityFX Super Resolution 4」(以下,FSR 4)にも使用する。16基のSPに2基のAI Acceleratorを組み合わせるので,RX 9070 XTでは64基,RX 9070では56基を搭載する形だ。
また,第3世代Ray Acceleratorは,CUと同数となるので,RX 9070 XTは64基,RX 9070が56基をそれぞれ備えている。なお,AMDは第3世代Ray Acceleratorについて,「CU 1基あたりのスループットはRDNA 3アーキテクチャの2倍を誇る」と,その性能に自信を見せていた。
RX 9070のゲームクロックは2070MHzで,ブースト最大クロックは2520MHzと,RX 7900 XTに比べると若干高めだ。さらにRX 9070 XTは,ゲームクロックが2400MHzと高く,ブーストクロックに至っては2970MHzと,3GHzの目前に迫るほど。
ただ,後述するテスト環境において,RX 9070 XTとRX 9070の動作クロックを「GPU-Z」(Version 2.64.0)で追ってみたところ,RX 9070 XTは2921MHzまでしか上がっていなかった。2970MHzまで上昇することはめったにないようだが,それでも十分高い動作クロックだ。一方のRX 9070は,2646MHzまで上昇しているのを確認した。RX 9070 XTには及ばないものの,十分高い動作クロックと言えよう。
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RDNA 4アーキテクチャでは,AMD独自のキャッシュメモリ技術である「AMD Infinity Cache」が,第3世代へと進化している。キャッシュメモリ容量は,RX 9070 XTとRX 9070ともに64MBだ。
第3世代の特徴について,AMDは詳しく説明していない。しかし,RDNA 4アーキテクチャでは,RDNA 3のチップレット構造を取りやめてモノリシック構造としたことで,AMD Infinity Cacheのレイテンシを縮小したのではないだろうか。
GPUに組み合わせるグラフィックスメモリはGDDR6で,容量は16GB。RX 9070 XTとRX 9070は,256bitのメモリインタフェースを持ち,メモリクロックはどちらも20GHz相当なので,メモリバス帯域幅は640GB/sという計算になる。これは,RX 7900 XTとの比較では80%の規模で,競合製品である「GeForce RTX 5070 Ti」(以下,RTX 5070 Ti)や「GeForce RTX 5070」(以下,RTX 5070)に届いていない。このあたりがゲームの描画性能にどう影響するのかも,テストで見るべきポイントと言えそうだ。
RX 9070 XTの消費電力指標である「Total Board Power」は,304Wであり,RX 7900 XTから11W低くなった。NVIDIAの指標である「Total Graphics Power」と比べるのは少々乱暴なのだが,消費電力はRTX 5070 Tiと同程度と言えそうだ。
一方,RX 9070のTotal Board Powerは,220Wで,RX 9070 XTより80W以上も低い。これは,RX 9070の回路規模が減少したことと,動作クロックが低めであるため,消費電力を抑えているのだろう。
なおAMDは,RX 9070 XT搭載PCでは定格出力750W以上,RX 9070搭載PCでは定格出力650W以上の電源ユニットの使用を推奨している。
そのほかに,GeForce RTX 50シリーズと同様に,RX 9070 XTとRX 9070ともにPCとの接続インタフェースが「PCI Express 5.0」に対応した点も忘れてはならない。
そんなRX 9070 XTとRX 9070の主なスペックを,AMDが上位モデルとするRX 7900 XTと,競合製品であるRTX 5070 TiとRTX 5070,それに競合の前世代GPUである「GeForce RTX 4080」(以下,RTX 4080),「GeForce RTX 4070 Ti」(以下,RTX 4070 Ti)とともにまとめたものが表1となる。
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表も裏も真っ白なカード・基板は小さいがGPUクーラーは巨大
それでは,PURE Radeon RX 9070 XT GPUとPURE Radeon RX 9070 GPUについて見ていこう。
どちらも外観は瓜二つで,表も裏も真っ白なモデルだ。側面にモデル名を記したタグが貼り付けられているが,それを見ないとどちらのGPUなのか判別が付かないほどである。そのため,カードの説明はPURE Radeon RX 9070 XT GPUで行う。
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カード長は実測約320mm(※突起部含まず)。RX 7900 XTリファレンスカードが約277mmだったので,それより約43mm長い。ただ,基板自体は195mmほどしかないようで,GPUクーラーがカード後方に125mmもはみ出している。
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GPUクーラーがはみ出た部分の裏面は,大きな開口部になっており,表面から裏面へとエアーが抜けるという,最近のグラフィックスカードではよくある構造だ。
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マザーボードに装着すると,ブラケットから約26mmもはみ出す背が高いカードでもある。
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重量は実測で約1219gだ。RX 7900 XTリファレンスカードが約1516gだったので,それよりも300gほど軽い。
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GPUクーラーは5本のヒートパイプを使用しており,カード前方と後方の大型フィンとGPUをつないでいる。Sapphireによると,このGPUクーラーは「Free Flow」と呼ばれる冷却設計がなされており,エアフローの経路を最適化することで,乱流を減らして空気を効率的に流せるので,安定した性能が発揮できるという。
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映像出力インタフェースは,DisplayPort 2.1a×2,HDMI 2.1b×2という,HDMIを多めにした構成だ。ブラケットには,排気孔も設けられている。
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GPUクーラーの側面の中央部には,Sapphireのロゴがあり,そこがカラーLEDにより点灯する。発光色は,設定ツールである「Sapphire TriXXソフトウェア」の「Glow!」機能で変更できるとSapphireはアピールしているが,本稿執筆時点の「Version 9.7.5」では,その機能が使用できなかった。
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それぞれの動作クロック設定だが,PURE Radeon RX 9070 XT GPUは,ゲームクロックが2460MHz,ブースト最大クロックが3010MHzと,順に60MHz,40MHz引き上げている。3GHz動作を保証するグラフィックスカードというのは,なかなかインパクトが大きい。
一方のPURE Radeon RX 9070 GPUは,ゲームクロックが2210MHzで,ブースト最大クロックが2700MHzと,それぞれ140MHz,180MHz引き上げている。同じクロックアップモデルではあるものの,元のリファレンスクロックが低いこともあり,PURE Radeon RX 9070 GPUのほうがクロックの引き上げ幅が高い。
なお,メモリクロックはどちらも20GHz相当で,リファレンス仕様と同じだ。
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上位モデルや競合製品と比較。CoD:BO6でFSR 4のテストも実施
今回のテストにおける比較対象には,AMDがRX 9070 XTの上位に位置付けるRX 7900 XTと,競合製品となるRTX 5070 TiおよびRTX 5070,性能が近いと予想されるRTX 4080とRTX 4070 Tiを用意した。上位モデルとの性能差や競合製品との差を見つつ,GeForceシリーズを含めた位置付けを確認しようというわけだ。
使用したグラフィックスドライバは,Radeonシリーズが「AMD Software Adrenalin Edition 24.30.31.03」で,これはRX 9070 XTおよびRX 9070のレビュー用として,AMDが配布したものだ。一方,GeForceシリーズが「GeForce 572.50 Driver」で,これはテスト時において,RTX 5070が利用できるドライバに揃えた形だ。それ以外のテスト環境は表2のとおり。
CPU | Core i9-14900K(P-core 定格クロック3.2GHz, |
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マザーボード | ASRock Z790 Steel Legend Wi-Fi |
メインメモリ | Corsair VENGEANCE RGB DDR5 |
グラフィックスカード | Sapphire Technology PURE Radeon RX 9070 XT GPU |
Sapphire Technology PURE Radeon RX 9070 GPU |
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Radeon RX 7900 XTリファレンスカード |
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GAINWARD GeForce RTX 5070 Ti Phoenix |
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GeForce RTX 5070 Founders Edition |
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GeForce RTX 4080 Founders Edition |
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Palit Microsystems GeForce RTX 4070 Ti Gaming OC |
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ストレージ | CFD CDDS-M2M1TEG1VNE |
電源ユニット | CoolerMaster V1200 Platinum(定格1200W) |
OS | Windows 11 Pro 24H2 |
チップセットドライバ | Intel チップセットINFユーティリティ |
グラフィックスドライバ | Radeon:AMD Software |
GeForce:GeForce |
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さらに,FSRの性能もチェックするために,「3DMark」(Version 2.31.8372)の「AMD FSR feature test」を追加した。CoD:BO6は,FSR 4にいち早く対応しているので,FSR 4を有効にした状態でのテストも実施する。
追加テストの具体的なテスト方法は以下のとおり。
●AMD FSR feature test
- 「Quality Mode」を「Quality」に設定し,解像度を適宜変更しテストを実行する
●CoD:BO6
- 「極限プリセット」を適用
- 「アップスケーリング/シャープニング」を,RX 9070 XTとRX 9070は「AMD FSR 4」,RX 7900 XTは「AMD FSR 3」,GeForceシリーズは「NVIDIA DLSS」に指定
- Radeonシリーズは「AMD FSR 3フレーム生成」を,GeForceシリーズは「NVIDIA DLSSフレーム生成」を,それぞれ「オン」に変更
- Radeonシリーズは「AMD FSRプリセット」を,GeForceシリーズは「NVIDIA DLSSプリセット」をそれぞれ「クオリティ」に設定
- ゲーム付属のベンチマークモードを実行。実行後に表示される平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートを結果として採用する
●モンハンワイルズ ベンチ
- 「ウルトラプリセット」を指定。Radeonシリーズは,「アップスケーリング(超解像技術)」で「AMD FSR」を,GeForceシリーズでは「NVIDIA DLSS」をそれぞれ使用する。GPUの素の性能を見るために,フレーム生成はどちらも「OFF」とした。また,レイトレーシングの項目を,どちらも「高」に変更している
- 同ベンチではスコアと平均フレームレートしか得られないため,別途「CapFrameX」(Version 1.7.4)を併用して,ベンチマーク実行中の1パーセンタイルフレームレートを計測している
テスト解像度は,RX 9070 XTおよびRX 9070が1440pから4Kまでのゲームプレイを想定しているため,3840×2160ドットと2560×1440ドット,それに1920×1080ドットの3つを選択している。
RX 9070 XTはRX 7900 XTを超える場面も
先述したとおり,PURE Radeon RX 9070 XT GPUとPURE Radeon RX 9070 GPUはクロックアップモデルだが,原稿執筆時点では動作クロックを変更する手段がなかった。そのため,カードの素の状態でテストを行っているが,GPUのそれぞれのリファレンス状態ではないため,以下,文中とグラフ中は,RX 9070 XT OCのように末尾にOCを付加していることをここで断っておく。
それでは3DMarkの結果から順に見ていこう。グラフ1は,「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
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RX 9070 XT OCは,Fire Strike“無印”こそ,CPUのボトルネックによる頭打ちが近いためか,スコアがブレてRX 7900 XTやRX 9070 OCを下回っている。しかしFire Strike ExtremeやFire Strike Ultraでは,上位に位置付けられるRX 7900 XTを,2〜5%程度上回っている点は立派だ。RTX 5070 TiやRTX 4080には,Fire Strike“無印”こそ離されるものの,解像度が高くなるにつれて差を縮め,Fire Strike Ultraで逆転している点は特筆に値する。
一方のRX 9070 OCは,RX 9070 XT OCの9割強のスコアを記録しており,RX 7900 XTに迫る勢いを見せている点も好印象だ。
続いてDirectX 12のテストとなる「Time Spy」の総合スコアを見てみよう(グラフ2)。
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RX 9070 XT OCは,RX 7900 XTを安定して8〜9%程度上回り,RTX 5070 Tiにも4%を超える差を付けている点は評価できる。また,RX 9070 OCは,RX 9070 XT OCの約93%の性能を記録し,RX 7900 XTといい勝負を演じている。
新世代のDirectX 12テストである「Steel Nomad」の結果が,グラフ3だ。
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RX 9070 XT OCは,RX 7900 XTを約29%も引き離しており,優れた性能を見せている。RTX 5070 Tiにも7%弱の差を付けおり,レイトレーシングを使用しないテストでは,これだけ高いスコアを発揮している点は素直に称賛すべきだろう。
RX 9070 OCのスコアは,RX 9070 XT OCの約87%だが,それでもRX 7900 XTを約12%ほど離している点は立派だ。
状況が変わるのは,DirectX 12 Ultimateに対応したテストの「Speed Way」(グラフ4)である。
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RX 9070 XT OCは,RX 7900 XTに約14%の差を付けているが,Speed WayではDirectX Raytracingを多用しており,第3世代のRay Acceleratorが奏功したと理解するのが妥当だろう。しかし,RTX 5070 Tiには約22%も差を付けられ,RTX 4080にも及ばない。レイトレーシング性能で,GeForce勢に差を付けられる状況は変わらないが,差は縮まってきた。
RX 9070 OCは,RX 9070 XT OCの約93%に留まるが,それでもRTX 5070やRTX 4070 Tiに明確な差を付けている。
リアルタイムレイトレーシングテストである「Port Royal」の結果がグラフ5だ。
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RTX 9070 XT OCは,RX 7900 XTを約25%も引き離し,RTX 5070 TiやRTX 4080と肩を並べている。Speed Wayとは打って変わって,RTX 5070 Tiに匹敵するレイトレーシング性能を見せつけたわけだ。
RX 9070 OCは,RX 9070 XT OCの約89%ほどで,RTX 5070 TiやTX 4080の後塵を拝する。しかし,RTX 5070に約16%,RTX 4070 Tiに約13%の差を付けている点は評価できる。
グラフ6〜8は,AMD FSR feature testの結果だ。このテストではFSR 2を使用するため,GeForceシリーズでもテスト可能だ。
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FSR 2 OnとFSR 2 Offでどれだけフレームレートが上昇したかを計算すると,RX 9070 XT OCとRX 9070 OCは,どちらも1.6〜1.9倍程度伸びている。ただ,RX 7900 XTも1.6〜1.9倍程度なので,伸び率は差がない。GeForceシリーズの伸びも,1.6〜1.9倍程度に収まっているので,FSR 2を使用する限り,RX 9070 XT OCやRX 9070 OCに優位性はないと言っていい。
それでは実際のゲームではどうなるのか。グラフ9〜11はCoD:BO6の結果となる。
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RX 9070 XT OCの平均フレームレートは,RX 7900 XTを7〜13%程度も引き離し,RTX 5070 Tiに対しても,19〜36%程度という大差を付けている。これは,CoD:BO6がRadeonシリーズへの最適化に積極的であるためだが,RX 9070 OCでさえ,RTX 5070 Tiを優に上回っている点は,なかなか衝撃的だ。
1パーセンタイルフレームレートを見ると,RX 9070 XT OCはGPU性能差の出にくい1920×1080ドットこそ伸び悩んでいるものの,2560
RX 9070 OCは,平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートともにRX 7900 XTとほぼ横並びだ。
そんなCoD:BO6において,FSR 4を有効にしてテストした結果がグラフ12〜14だ。なお,FSR 4はRDNA 4でしか使用できないため,RX 7900 XTはFSR 3を,GeForceシリーズはDLSS 3を使用している。
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RX 9070 XT OCの平均フレームレートは,3840×2160ドットこそ他を上回るものの,それ以外の解像度では伸び悩んでいる印象だ。とくに1920×1080ドットでは,平均フレームレートが不自然に低い。CoD:BO6はFSR 4に対応しているものの,フレーム生成はFSR 3のままなど,十分に性能を使い切れていないのではないだろうか。
RX 9070 XT OCの1パーセンタイルフレームレートは,1920×1080ドットではRTX 5070に置いていかれ,RX 9070 OCにもなぜか逆転を許してしまっている。3840×2160ドットで,RX 7900 XTに約25%の差を付けるなど光るところはあるものの,実力を発揮できていない。FSR 4の対応は改善が待たれるところだ。
グラフ15は,モンハンワイルズ ベンチのスコアをまとめている。
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どの解像度でも,RX 9070 XT OCが優勢だ。RX 9070 XT OCは,RX 7900 XTに3〜20%程度の差を付け,RTX 5070 Tiも2〜12%程度引き離している。RX 9070 OCは,RX 9070 XT OCの約88%まで落ち込む場面もあるものの,それでも3840×2160ドットで,カプコンが最高評価とするスコア2万以上を満たしている点は評価できる。
モンハンワイルズ ベンチにおける平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートの結果がグラフ16〜18だ。
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平均フレームレートは,スコアを踏襲しているが,RX 7900 XTが4K解像度では60fpsを少し上回るぐらいなのに対して,RX 9070 XT OCが70fpsを超えて見せた点は立派と言えよう。
1パーセンタイルフレームレートは,CPU性能の影響が強いので差が付きにくいが,それでもRX 9070 OCが,RX 7900 XTやRTX 5070 Tiに肩を並べているのは見どころだろう。
グラフ19〜21は,「Starfield」の結果だ。
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RX 9070 XT OCの平均フレームレートは,RX 7900 XTに9〜16%程度の差を付け,RTX 5070 Tiも4〜11%程度離している。RTX 4080には,1920×1080ドットこそ届いていないが,2560×1440ドット以上の解像度では少し上回り,優位性を見せた。また今回のテストで唯一,RX 9070 XT OCが3840×2160ドットの1パーセンタイルフレームレートで,60fpsを上回っている点は称賛できよう。
RX 9070 OCの平均フレームレートは,RX 7900 XTに若干届いておらず,RTX 4070 Ti相当と言ってよさそうだ。
「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下,FFXIV黄金のレガシー ベンチ)の総合スコアをまとめたのがグラフ22となる。
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同タイトルはGeForceシリーズへの最適化が進んでおり,Radeon勢は辛い戦いを強いられる。今回のテストでも,RX 9070 XT OCはRX 7900 XTに届かず,RTX 5070 Tiに6〜29%程度の差を付けられた。RTX 4080にも,10〜29%程度離されてしまっている。
RX 9070 OCも,RX 5070に2〜8%程度の差を付けられて,RDNA 4アーキテクチャでも,FFXIV黄金のレガシー ベンチが不得意であることが明確だ。
そんなFFXIV黄金のレガシー ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ23〜25である。
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平均フレームレートは総合スコアを踏襲したものとなっており,最小フレームレートはCPU性能の影響が強くなるため,差が付きにくい。それでも,3840×2160ドットを見ると,RX 9070 XT OCの最小フレームレートは,RTX 4070 Tiを超えるのがやっとといったレベルである。
「F1 24」の結果をまとめたのがグラフ26〜28だ。
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ここでは再びRX 9070 XT OCが勢いを盛り返す。RX 9070 XT OCの平均フレームレートは,RX 7900 XTの1.2〜1.3倍程度を誇り,RTX 4080といい勝負を演じている。RX 9070 COの平均フレームレートは,RX 7900 XTに8〜16%程度の差を付け,RTX 5070 Tiに迫る勢いを見せている。
最小フレームレートは,1920×1080ドットでRX 9070 XT OCが唯一,150fpsに達しているほか,3840×2160ドットでRTX 4080と揃って60fps超えを果たしており,実力の高さがうかがえる。
RX 9070 XTの消費電力は320Wほど。RX 9070は250W程度と低め
さて,RX 9070 XTのTotal Board Powerは304Wであるが,Sapphireによると,PURE Radeon RX 9070 XT GPUの消費電力は317Wとのこと。一方のPURE Radeon RX 9070 GPUは245Wということだが,いずれもクロックアップ版のカードなので,リファレンス仕様より大きい。
では,実際に消費電力はどうなのか,NVIDIA製の消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を使って,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。
3DMarkのTime Spy Extremeの「Graphics test 2」実行中に計測した消費電力がグラフ29だ。
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グラフを見ると,RX 9070 XT OCはRTX 4080と同レベルで,RX 9070 OCがRTX 5070と同程度のように見える。RX 9070 XT OCとRX 9070 OCのギャップは,かなり大きく,RX 9070 OCはかなり消費電力を抑えているようだ。
グラフ29の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求め,最大値と合わせてまとめたものがグラフ30となる。
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RX 9070 XT OCの中央値は320Wほどで,Sapphireの公称値に近い結果となった。RX 7900 XTやRTX 5070 Tiに比べると,14Wほど増えてしまっている。3GHzという高い動作クロックの代償は少なくない。それに対して,RX 9070 OCの中央値は,250W弱でこちらも公称値とほぼ同じだ。RX 9070 OCは,RX 9070 XT OCから70W以上も消費電力が低く,RTX 5070やRTX 4070 Tiを下回っている点は評価できる。
続いて,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測した結果も見てみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を「タイトルごとの実行時」,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ31だ。
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ピーク値を結果として採用するため,どうしても差が大きくなりやすい傾向が出てしまう。それを踏まえても,RX 9070 XT OCは,RX 7900 XTから11〜42W程度高く,RTX 5070 Tiからは30〜66W程度も高い。ここでも,高クロック動作の代償が表れた形だ。一方のRX 9070 OCは,RX 9070 XT OCから40〜86W程度低く,RTX 4070 Tiと肩を並べている。
GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkにおけるTime Spy Extremeの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっており,ファンの制御方法も違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。それを踏まえた結果は,グラフ32のとおり。
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RX 9070 XT OCとRX 9070 OCは,ともに高負荷時でも50℃台で,GPUクーラーの冷却性能は優秀だ。消費電力が比較的高めだったRX 9070 XT OCでさえ,この温度に留めておける冷却性能は評価できよう。
最後に,騒音計を使って,RX 9070 XT OCとRX 9070 OCの動作音を検証してみたい。今回は,41.2dBAの環境で,グラフィックスカードに正対する形で50cm離したところに騒音計を置いて,動作音を計測した。なお,ここでもバラック状態でテストを行っているので,実際にケースに組み込んだ状態よりも動作音は大きくなっていることを断っておく。アイドル時と高負荷時は,GPU温度を測定した条件と同じだ。その結果はグラフ33となる。
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アイドル時は,どのGPUもファンの回転が停止するため,横並びとなる。高負荷時では,RTX 5070が50dBAに迫りつつあるが,それに対してRX 9070 XT OCとRX 9070は43dBA前後と,だいぶ騒音も小さめだ。PURE Radeon RX 9070 XT GPUとPURE Radeon RX 9070 GPUのGPUクーラーは,静音性が良好と言っていいだろう。
新たな選択肢としてポテンシャルは高い。FSR 4対応がカギだが,なくても十分な性能
以上のテスト結果を踏まえると,RX 9070 XTはRX 7900 XTを上回る場面も多く,RTX 4080同等かそれ以上という評価でいいだろう。ただ,FFXIV黄金のレガシー ベンチで見られたように,最適化が進んでいないと性能が奮わない。また,高クロック動作であるがゆえの消費電力の高さという弱点も見えた。一方のRX 9070は消費電力を抑えながら,RTX 5070相当の性能を発揮している点は立派だ。
米ドルでのメーカー想定売価は,RX 9070 XTが599ドルで,RX 9070が549ドルとされ,2025年3月5日時点での為替で計算すると,それぞれ9万円,8万2000円強となる。Radeonシリーズは,なぜか日本市場だと価格が吊り上がりがちだが(※最近はGeForceシリーズも似たようなものだが),それでもRX 9070 XTがRTX 5070 Tiの想定価格である14万8800円以下で,RX 9070がRTX 5070の想定価格である10万8800円以下で,登場してくれば,かなり魅力的な選択肢になり得るだろう。
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FSR 4は,RDNA 4アーキテクチャでしか利用できないので,ゲームが早急に対応してくるかは読めない。ただ,FSR 4を使用しなくても,RX 9070 XTおよびRX 9070の潜在能力は高いので,ミドルハイ市場向けGPUでもGeForce以外の選択肢ができたことは,ゲーマーにとっては喜ばしい限りだ。あとはAMDとNVIDIAが競合し,価格がこなれてくること望むばかりである。
SapphireのPURE Radeon RX 9070 XT GPU製品情報ページ
SapphireのPURE Radeon RX 9070 GPU製品情報ページ
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Radeon RX 9000
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