
レビュー
「Dawnfolk」は,シンプルなシステムをベースにした“遊び心のつめあわせ”のような作品だ。かわいいドット絵も魅力のサバイバル街作りゲーム
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かわいらしいドットアートが目を引く本作は,四角形のタイルをつなぎ合わせて街を作るシンプルなサバイバルゲームだ。発売前から高いクオリティの体験版によって一定の注目を集めていた作品だが,発売から1か月あまりでさっそく“非常に好評”のレビューを獲得している※。
※レビューの評価は2025年3月4日,評価数292件時点のもの
さっそく遊んでみたところ,確かに「これぞインディー!」という遊び心にあふれた作品だった。というわけで,本稿では極めてシンプルながら奥深いシステムが特徴のDawnfolkの魅力をお伝えしよう。
なお,Steamストアページでは体験版が公開中だ。丁寧なチュートリアルが用意され,日本語訳もしっかりしている作品なので,興味をひかれた人は体験版をダウンロードして遊んでみてほしい。
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「Dawnfolk」公式サイト
ちょっとずつ計画的に開拓&拡大! “イイ感じ”になったとこで次のゲームへ
Dawnfolkの舞台となるのは,暗闇に包まれたファンタジー世界。かつては人類が繁栄していたが,突如として巨大なモノリスが現れ,世界を闇で覆い尽くしてしまった。残された人々はかすかに残る光を求めて集まり,最後の時を迎えようとしている。
この状況を覆すために出現したのが,闇を払う力を持つ光の子リュールだ。最後の領主であるプレイヤーは,リュールの力を借りて闇に包まれた世界を開拓し,人類文明の再構築を目指すことになる。
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ゲーム開始直後には,マップにはたった1タイルの「ホーム」のみが存在する。ここを中心に新たな建物を建設し,人手や資源を集め,闇に包まれた危険な世界を開拓していくのだ。各種の建物は1日(約8秒ほど)が経過するごとに生産物を出力してくれるので,資源のバランスを考えながら拡張を進めよう。
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とはいっても,本作には「人手」「食料」「素材」「光」の4種類しか資源が存在しない。建設可能な建物はタイルの種類に紐付いていてアンロック要素がなく,労働者や兵士といった“ユニット”の概念も存在しないので,考えることはかなりシンプルだ。
ちょっと簡素に感じられるほどスッキリしたシステムだが,実際にやれることはかなり多い。タイルに紐付いた建物の種類が多彩で,開拓によってどんどん新しい建物を作れるようになるので,初プレイではかなり悩むことになるだろう。
豊富なランダムイベントが用意されていたり,開拓した際に恩恵が得られる「?」マークつきのタイルが各所に置かれていたりするのも,プレイしていて楽しい部分だ。そういったランダム要素からはポジティブな影響を得られることが多いので,単に街を広げていくだけでもワクワクできる。
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となればガンガン街を広げていきたいところだが,遊んでみるとそう簡単にはいかないことが分かってくる。資源の生産に関わる建物の建設コストはやや高めに設定されているのに対し,生産能力はさほど高くないのだ。
たとえば,基本的な食料生産施設「こむぎ畑」は,建設に人員15が必要で,完成すると1食料/1日の効果が得られるようになる。資源の価値が人員と同等と仮定すると,ペイする(投資以上の効果を得る)までに15日もかかってしまう計算だ。
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「時間経過で資源が得られるなら何日でも待てばいいでしょ?」と思うかもしれないが,そうは問屋が卸さない。この世界の闇は今でも広がり続けており,一定日数が経過するごとに「闇の嵐」が出現して街を破壊してしまう。それを払拭するには十分な光資源が必要なのだ。
光はもっとも希少な資源で,一部の建物(しかも建設コストが高い!)から少しずつしか採取できない。そのわりに役割の重要度は高く,街を破壊する嵐の払拭するだけでなく,マップの外周のタイルを利用可能にする際にも必要になる。これをキッチリとためるには,ほか3種類の生産体制を素早く整えなければいけない。
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それを達成するにあたって役立ってくれるのが,タイルに配置された資源を直接取る「資源撤去」と,建物ごとに設定された「おとなりボーナス」の概念だ。
前者は分かりやすく,タイル上の生物を狩れば食料,木々を伐採すれば資源を即座に確保できる。そのかわり,特定の生物や木々の存在が前提条件となる建物(牧場など)は建てられなくなってしまうわけだ。資源をまとめて入手する手段が乏しい序盤は重宝するが,頼りすぎると後半に困ることになる。
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とくに重要なのは後者だ。一部の建物は,特定の資源や建物と隣接することで効果を増強できる。たとえば,平地に建てられる「農場」は,隣接する畑や果樹園が産出する食料の数を増やしてくれるので,可能ならセットで運用したい。
ここで思い出してほしいのは“建設できる建物の種類はタイルの種類に紐付いている”というルール。平地に動物や森林がある程度なら撤去すればいいが,山岳,海洋,砂漠といったタイルは対処が難しい。そのため,効率よく建物を並べるには探索時点で計画を練っておく必要がある。
探索でパッと新しいタイルが見えると「この地形でこの資源を活用すべきか,撤去して即資源にすべきか」という考えが頭を巡るようになる。これは想像以上に奥深く,隣接による効果を持つ建物が増えるとどんどん配置のパズルが悩ましくなってくるのだ。
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なにより良いのは,非常にイイ感じのタイミングでゲームが終わるということ。本作はステージクリア方式が採用されており,ステージごとに攻略目標が決まっている。内容によってプレイ時間は異なるが,たいてい1時間以内には決着がつく。
ある程度発展して管理が面倒になるあたりでスパッとゲームが終わるので,ダラダラと続くことがない。よく「シミュレーションゲームは安定させるまでの序盤が楽しい」と言われるが,Dawnfolkはまさに“シミュレーションの楽しい部分”を凝縮して味わえる作品といえる。
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バリエーション豊かなステージとアンロック要素による楽しみの幅広さ
このようにシンプルで奥深いゲームなのだが,本作の体験に淡白さはなく,緩急がついたストーリー性を感じられる内容になっている。それを実現しているのが,遊び心あふれる工夫の数々だ。
まず,各ステージにはクリア条件とともに固有のギミックが用意されており,それを中心にゲームが進行する仕組みになっている。これがなかなか個性的で「交易を中心に利益を上げて周囲の民族を平定していく」「一定期間ごとに食料を送付しなければいけない」など,マップごとにまったく異なる動きが要求される。
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マップ形状自体にも特徴があり,構成するタイルに大きな偏りがある構造になっていて,ステージ攻略自体がチュートリアルとしての役割も担っている。おかげで,毎回ゼロから始まるステージクリア型のシミュレーションゲームにありがちな「同じ作業をさせられている感」はほとんどなかった。
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ステージ攻略を完了したり,各ステージに設定されたサブ目標を完遂すると「ブルーライト」を獲得できる。これはゲーム内では一切利用できず,メインメニューで新ステージなどのコンテンツをアンロックするために使えるリソースだ。
ブルーライトは結構な勢いで獲得できるので,普通に遊んでいればスパスパと遊びたいコンテンツを解禁していける。短いサイクルで遊べるステージ攻略と,コンテンツの解禁というご褒美の噛み合いは良く,遊んでいて止め時を見失いそうになってしまった。
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既存のシステムをシンプルにまとめただけでなく,プレイヤーを退屈させない仕組みが随所に盛り込まれたDawnfolkは,まるでお菓子の詰め合わせのような作品だ。本作を遊ぶだけで,ちょっとずついろいろな遊びを“つまむ”ような感覚で味わえる。
そのうえで奥行きはしっかりと確保されており,ストーリーを食べ終えてもデイリーチャレンジやパズルなどのコンテンツが用意されていて終わりがない。手軽に,そして長く遊べる作品を探している人にはピッタリの1本だ。
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「Dawnfolk」公式サイト
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