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印刷2025/03/22 19:06

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[GDC 2025]タトゥーアーティストが主役のADV「Inkression」を見る。廃れた故郷の過去と現在をひも解き,街の物語をインクで刻む

 GDC 2025の会期中に併催されたインディーゲームイベント「Day of the Devs: San Francisco Edition」で,PC向け新作アドベンチャーゲーム「Inkression」をチェックしてきたので紹介しておこう。

 本作を開発するのは,アメリカ・ニューヨークで2023年に発足したばかりのゲームスタジオ,BROKENCIGSだ。

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 「Inkression」の主人公は,かつては活気に満ちていた故郷“ノータウン”に戻ってきた,タトゥーアーティストの「ミリー・サマーヴィル」。周囲の高層ビルに埋もれるかのように残された古いアパート群が,新しい商業地として生まれ変わる再開発計画を持ち上げられている街で,住民たちは住み慣れた街を失う現実に直面しながらも,新たな生き甲斐と進むべき道を選ぶ岐路に立たされている。

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 ミリーは故郷を離れたあと,さまざまな出来事があったのか,心にどこか大きな傷を負っている様子だ。帰郷後は知り合いのタトゥースタジオで働きながらも,忘れそうになっていた願いを果たすべく,街の中に残された痕跡をたどりながら,住人たちの過去と現在をひも解いていく。

 本作で特徴的なのは,そうした物語や記憶を“タトゥーアートで刻んで表現していく”ことにある。

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 本作の体験版は,前回のSteam Nextフェスで公開されていた。ゲームのオープニングは,いきなりぎこちないタトゥーの作業から始まる。それほど芸術的でもない「PIECE FULL」という形象を掘っては拭き取るだけの作業は,PlayStation 2世代のような古めかしいアートスタイルの,入れ墨(お絵描き)シミュレーションなのかと錯覚してしまう。

 腕を借りた男性は,「Z」というストリートネームで認知される知り合いが経営している,タトゥースタジオの顧客だ。作業があるときはスタジオ内を動き回り,職場の仲間や顧客と会話していく。
 やがてミリーはトイレに行きたくなってしまう。用を足すのではない。タバコを吸いたくなったのだ。

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 トイレの窓から見える,どこかニューヨークのブルックリンを連想させる街の風景も,非常に描き込まれていて良いデキだが,このタバコを吸うゲームメカニックも味が合って魅力的だ。

 喫煙時は,1人称視点でタバコを口にあて,スクロール操作で吸ったり吐いたりする。吸いすぎると咳き込んでしまうし,なにより会話中は“煙を吐き出さなければ”話が続かず中断されるのが面白い。
 実際,喫煙中はインタラクティブなカットシーンを眺めているというよりも,実際にミリーの目で世界を眺めているような錯覚に陥る。

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 街の散策時,当初は世界のほとんどが白黒のモノトーンで表現されているが,出会う人やそのペット,看板やポスターにぶつかって「見る」(スペースバーを押す)ことにより,そこに色やデザインが描かれ,くすんでいた風景が華やかな姿になっていく。
 これによりミリーもアイデアを得て,タトゥーへの情熱と地元愛を取り戻していく,というストーリーになっているようだ。

 ゲーム内では日本語の文字が随所に存在するが,その文字はインディースタジオとは思えないほどの完璧さだ。どうやら,ナレーティブライターの1人に日本人が参加しているらしい。Steamページでも,インタフェースとテキストが日本語化されることも表記されている。

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 そんな本作の発売はまだしばらく先になりそうで,現在は2026年第1四半期のリリースが予定されている。3か月ほど前には日本語トレイラーが公開されたが,気になった人はデモをプレイしてみて,Steamストアページのウィッシュリストに追加しておくのはどうだろう。

左から,BROKENCIGSのCindy Fan氏と,Luke Li氏。まだ若いチームであるが,すでに「Lime Juice」(2023年)など,特徴的なゲームデザインやアートスタイルに傾倒したゲームを4作もポートフォリオに持つ
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