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「A列車で行こう9 トレインコンストラクション」で“移動をデザイン”し,まちと地域を描こう。川西康之氏に聞く鉄道デザインの面白さと魅力【PR】
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印刷2024/11/21 17:00

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「A列車で行こう9 トレインコンストラクション」で“移動をデザイン”し,まちと地域を描こう。川西康之氏に聞く鉄道デザインの面白さと魅力【PR】

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 車や船,飛行機,そして電車。どんなものでも乗り物であっても,それが好きな人であれば自分の理想の車両や機体を想像したり,描いたりしたことがあるはず。
 アートディンクより本日(2024年11月21日)発売されたPC用ソフトA列車で行こう9 トレインコンストラクションは,鉄道ファンはもちろん多くの乗り物好きの心をつかむであろう夢の鉄道デザインツールだ。

 素体となる車両の形状は65種類。ラッピングや窓の形,パンタグラフやヘッドマークはもちろん転落防止幌や床下機器といった細かい部位に分かれた各種パーツなど,自由度の高いカスタマイズ要素で夢の車両を作り,そして都市や郊外,さらに宇宙などで試運転できる。ゲーム本編となる都市開発鉄道SLGA列車で行こう9 Version5.0があれば,自身が作り上げた町や地域を走行させることも可能だ。

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トレインコンストラクションと同日で,A列車で行こう9の全バージョンと追加キットを収録した「A列車で行こう9 Version5.0 コンプリートパックDX+」も発売されている。詳しくはこちら
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「A列車で行こう9 トレインコンストラクション」公式サイト

「A列車で行こう9 Version5.0 コンプリートパック DX+」公式サイト


 さて,そもそも鉄道デザインとはどんなものなのだろうか? テレビやWebのニュース,新聞,SNSなどで新型車両の発表や運行開始に関する情報発信を見ることはあるが,果たしてどのような人たちがデザインし,どう作り上げていくのだろう。

 気軽に車両をデザインできるのが魅力のトレインコンストラクションだけど,鉄道デザインのリアルを知って脳内設定をより強固にした形でもゲーム楽しみたい――そう考えた4Gamerは,西日本旅客鉄道(JR西日本)の特急「やくも」やえちごトキめき鉄道の「えちごトキめきリゾート 雪月花」など多くの鉄道デザインを手がける建築家/鉄道デザイナーであるイチバンセンの川西康之氏に鉄道デザインの面白さとその魅力について聞いてきた。

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イチバンセン公式サイト



移動をデザインして人をつなぎ,地域を活性化させる


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 さっそくですが,建築デザインを学ばれていたという川西さんですが,どういう経緯で鉄道デザインを行うようになったのでしょうか。

川西康之氏:
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 私が代表を務めるイチバンセンは一級建築士事務所で,建築士事務所というと建物の設計を生業とするイメージがありますよね。
 では,そんな建物の設計をする会社がなぜ鉄道のデザインをしているのかというと,イチバンセンは公共の建物やまちづくり,みんなが使うもののデザインなどを得意分野としているんですね。なので,公共の乗り物である鉄道をデザインするというのは,私の感覚ではごくごく当たり前の流れでした。
 19世紀に生まれ,陸上の移動や輸送というものを劇的に変えた存在である鉄道は,当然ながら人の暮らしにも大きな影響を与えました。そして,行き来する人が増えればその地域や町の構造自体も変わってくる。建築と鉄道というものは,切っても切り離せない関係にあるんです。

4Gamer:
 なるほど。鉄道デザインというと車両の見た目のみをイメージしてしまいがちですが,大前提に公共のためのデザインであるということですか。それにはどのような考えを持って取り組むのでしょう。

川西氏:
 まず大事な目的として,みんなが使う空間,みんなが暮らす場所をデザインすることで,より幸せな未来,より幸せな社会を作るというものがあります。
 少子高齢化や人口減少,自然災害といったさまざまな課題を解決し,そこに暮らす人たちややってくる人たちに夢や希望を提供できるのか。自由に移動する権利と選択肢を実現するための都市空間をどう作っていくか。これは鉄道に限らずバスもですし,自家用車なども含まれますが,乗り物による移動のデザインと町,建築といった空間デザインっていうのは非常に密接につながっています。
 私たちはこれを横断的にトータルで計画するということを実際にやっています。

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4Gamer:
 暮らしやすい町や社会を構築するうえで大事なことが移動手段をデザインすることであると。実際には鉄道のデザインはどのようにスタートするのでしょうか。

川西氏:
 ご依頼主となるのはだいたい鉄道会社で,JRのような大手もあれば,第三セクターによって経営されている地域鉄道など,いろいろな鉄道事業主がいらっしゃいます。大手であればその筆頭株主である行政,第三セクター鉄道であれば地方公共団体などからご相談を受けることもありますね。

4Gamer:
 大きい会社もいわゆる第三セクター鉄道も,関わる人の立場もそれぞれあってその人数も多くなりそうです。

川西氏:
 そうですね。JRなどの大手鉄道会社は,大きな会社であることはもちろん,公共インフラの一部を担っている,私たちの暮らしにおいてとても大切な組織なんですね。そのほかの鉄道事業者もちろん同じで,また第三セクターによる経営が多いです。そういったこともあって,どちらも本当にいろいろな立場の方たちと仕事を進めることになります。
 プロジェクトを設計する人たちに,経営の数字を算出する人たち。それらを維持管理する人たちに車両を作るメーカーの人たちと,いろいろな立場の人たちがそれぞれの責任をもっていらっしゃるわけです。

4Gamer:
 それは……話をまとめるのは大変そうですね。

川西氏:
 はい(笑)。ではそのなかで,私たちのように小さな所帯の事務所がどのように鉄道デザインの話を進めるのかというと,毎回必ず「我々はお客様の代表です。お客様の立場を代弁,通訳する立場です」とお伝えしています。
 公共の乗り物である鉄道とそれに関わる空間の主役は誰かというと,当然ですがそれを使う人たち。それはお客様もですが,もちろんサービスや清掃などで駅や車内で働く人たちもです。その人たちの声が反映されないと,みんなが使う空間としての鉄道はデザインできませんよね。

4Gamer:
 確かにそうです。

川西氏:
 設計するプロセスにおいて,作り手や経営といった管理する立場の人たちだけで話し合っていてはそれはできません。実際,経営側の人たちの考えと使う人たちが求めることって,対立することが多いわけです。
 たとえば観光車両で,お客様はクッションの効いた椅子と木を使った温かみのある空間で過ごしたいと希望しているけど,経営側としては,椅子は汚れが目立たない素材にしたいし木材はコスト面や管理方法で気になる。清掃やメンテナンスを担当する人たちは,おしゃれで凝ったデザインより掃除や確認がしやすい素材や空間がいいと,それぞれに優先する事柄が違うんですね。

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4Gamer:
 なるほど。お客さんにとってくつろげる空間でも,掃除をする人にとっては「この窓の形は拭きにくい」や「奥まったところに清掃道具が手が届きにくい」といった理由で,掃除が面倒な車両になったりするわけですね。

川西氏:
 ええ。なので会議のときはそういった清掃に関わる立場の人たちも参加していただいています。そして,安全で管理しやすく,そして快適に過ごせる空間を作るための優先順位を考えながら「みんなが幸せに暮らせる」という一番の目標に向かって話し合います。
 デザインの仕事は,そういったそれぞれの立場に配慮しながら交通整理をするという役割も担っていて,それで私たちの仕事が成り立っているとも考えています。

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4Gamer:
 鉄道デザインとひとことで言っても,車両の見た目だけではなく,管理やサービス,さらに駅周辺の地域や町といった“使う人たち”も意識して作り上げていくわけですね。

川西氏:
 はい。これは昨今,いろんなところで申し上げいるのですが,お客様にはもちろん,経営や維持管理を行う鉄道会社の人たちも「これは自分たちの町にしかないものだ」「私の/私たちの電車だ」と思えるものとなることが一番の理想だと考えています。

 鉄道の本質的な話にもなりますが,人口減少が進む今,とくに地方は大量輸送を担う役割という面で鉄道は斜陽産業だと思います。一方でまちづくりと鉄道はものすごく相性が良い。居心地のいい鉄道があり,駅から行ける範囲には町の人が自慢できるような生活と文化があり,歩く速度で感じられる安心,安全がある。
 そういった町や地域といった点と点を結ぶ線である鉄道もまた,その人たちの誇りになるものになるべきだと考えています。

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利用者が感動できる空間を作る。車両デザインの進め方


4Gamer:
 ここからは車両のデザインについて聞きたいのですが,まずはどういったことから取り組むのでしょうか。

川西氏:
 パーソナルスペースを決めていくということを一番最初に行いますね。
 何両編成で定員が何人というのは,運営のプランや総事業費の理由もあってだいたいは依頼があった時点で決まっています。それに合わせて平面の割り付けというのですが,お一人様あたりの横幅や奥行き,どういう座席を配置するかなどをだいたい定めていきます。
 これは鉄道に限らず,町や建物,クルマなどなんでもそうですね。この空間でお客様にどんな時間をお過ごしいただき,どんな感動を提供できるのかを考えることが一番大事なわけです。

4Gamer:
 それはもちろん通勤電車や特急,観光列車など,目的によっても異なるわけですよね。

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川西氏:
 はい。これはいわゆる普通席とグリーン席といった車両でも違いますし,どういう種類の座席をいくつの車両に用意するのかといったことも当然事業主にうかがいます。
 例として新潟の観光列車「えちごトキめきリゾート 雪月花」のお話をすると,雪月花は当時の泉田裕彦知事の直轄事業として新潟県が音頭を取っていました。北陸新幹線の東京〜金沢間が開業したことで,利用者に糸魚川,上越,妙高にも足を延ばしてもらうというのが大きな目的ですが,しかし金沢,軽井沢, 立山黒部があると。

えちごトキめきリゾート 雪月花(写真提供:イチバンセン)
copyright (C) Yasuyuki KAWANISHI + ICHIBANSEN / nextstations all rights reserved.
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イチバンセン公式サイト「えちごトキめきリゾート 雪月花」ページ


4Gamer:
 有名な観光地ばかりですね。

川西氏:
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 ええ。新潟はそのいずれにも勝てっこないという危機感を持っていたんですね。
 そこで,それら他県の有名観光地に負けないぞとPRする観光列車を導入したい。でも予算的には2両編成のものしか作れないですと。そこから「さてどうしようか」と考えるわけです。
 事業計画的には,定員45人で客単価が1万5000円から2万円ぐらいの観光列車に乗りに来る。そうなると首都圏や関西方面からは新幹線で,それもグリーン席やグランクラスで来るだろう。そう考えると,「さっき乗ってきた新幹線より狭いなこりゃ」と思われてしまったら,もうこの時点で不合格です。

4Gamer:
 新幹線の乗り心地と比べられてしまう。のんびりと2時間の観光列車でくつろげると思ったら……と。

川西氏:
 そこで大事なのは景色を楽しめる車窓や座り心地のいいシートといったものの前に,一人ひとりの空間があるんです。そしてそれは何ミリレベルという話にもなっていきますね。居心地のよさを考えるというと感覚的な話のように受け取れるかと思いますが,それを作るには数学的な大変さもあるんです。

4Gamer:
 なるほど。確かに,決まった車両の形や広さ,定員からそれを作り出すわけですからね。

川西氏:
 もう一つ分かりやすい例を挙げると,JR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」があります。
 銀河は地域の活性化を目標に企画された特別急行列車で,依頼をいただいたとき「普段あまり鉄道を使わない人が乗ってみたい思える電車を作りたい」というお題で。当時のJR西日本の幹部の方がとある女子大の学生と話したとき「私,電車なんか乗らへん。痴漢ばっかりおるし」と言っていて,これはよろしくない。多くの人が安心して乗れるものを作らなければならないと感じたという話を聞きました。

WEST EXPRESS 銀河(写真提供:イチバンセン)
copyright (C) Yasuyuki KAWANISHI + ICHIBANSEN / nextstations all rights reserved.
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イチバンセン公式サイト「WEST EXPRESS 銀河」ページ


4Gamer:
 ああ……そもそも「乗りたくない」が生まれてしまっているわけですね。まさにさきほどのパーソナルスペースの確保が重要になると。

川西氏:
 はい。それで銀河は「遠くへ行きたい」という気持ちを叶えるような,長距離を安心して乗れる寝台列車のような座席や個室,女性席など,利用する人たちのそれぞれの理由にあったスペースを用意した電車となりました。乗務員の接客についても提案しています。
 私は身長が179cmなのですが,180cmぐらいのひとがきちんと身体を伸ばせるスペースを,願わくば横になれる空間を作りたいと。それで昔の寝台列車の居住空間なんかも参考にしながら割り付けを行いました。
 プロセスとしては大体このように,平面の割り付けをしっかり固めてからコンセプトにあった座席や内装のデザインを進めていくというものになります。

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4Gamer:
 銀河はその名前とカラーリングも,かつて憧れた人も多い寝台急行を連想させるものですね。
 乗務員の接客の仕方まで担当されているというのは,どういった考えのもとで行っているのでしょう。

川西氏:
 接客もやはり電車に乗るという体験のひとつですから。これはほかに担当した観光列車などもそうですが,鉄道のコンセプトには地域に根差した部分があるので,電車のことはもちろんその地域の話もできるようにしていただきたいというのがあります。

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4Gamer:
 なるほど。なんだかそれはコンシェルジュ的なことだけではなく,“道が分からなくて声を掛けたらその行先を教えてくれる地元の人”みたいな感じもありますね。

川西氏:
 ああ,そうですね(笑)。それでいうとサービスを提案するとき,「車内ではなるべく話しかけて」とか「アナウンスや説明は地元の言葉を使ってほしい」とかいう話をします。見知らぬ土地で見知らぬ人との対話って,意外と忘れられない体験になりますよね。それが旅の豊かな時間につながりますから。
 お客様にもずっと席に座っているのではなく,あちこち車内を歩き回って楽しんでいただけるよう車両をデザインしています。

4Gamer:
 いいですね。私は旅では観光地を回るより,何の目的もなく町を歩いてその雰囲気を味わうのが好きなのですが,電車自体がその地方の一部みたいな感じがします。

川西氏:
 地元を盛り上げるのはもちろんですが,「この鉄道を動かしているのは自分たちだ」という心持ちも大事なんですね。とくに地方は,人口が減っていくなかで関係人口が増えるようアピールしなければならない。つまり地元企業としても,一人ひとりが高い意識で取り組んでいかなければならないんです。

4Gamer:
 先ほどの,運営や開発メーカーだけではなく,鉄道に関わるいろいろな人たちに企画段階から会議に参加してもらっている……という話もそれにつながるんですね。

川西氏:
 はい。一人ひとりが高い意識を持とうといっても,できあがったものがいきなり上から降ってきて「これでやって」って言われたらやはり嫌ですよね。それがたとえば清掃の人や日々のメンテナンスを担当する人だったら,楽しみながらやろうと言われても「急に言ってきたと思ったら,なんでこんな面倒くさそうな車両を……」となると思います。
 先ほど「デザイナーは交通整理も大事な役割」という話をしましたが,それがないようデザイナー自らが鉄道に関わるいろいろなポジションの方々に直接説明して回っています。

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とにかく難しい! 車両デザインの色の話


4Gamer:
 ここまでうかがった話って,トレインコンストラクションに限らずA列車9全体の楽しみ方につながるものだと感じました。
 トレインコンストラクションで作成した列車は,A列車9本編で自分の作った町や地域を走行させられるわけですが,長距離と近郊,観光などどこの区間にどんなデザインの車両を走らせるかを決める脳内設定を楽しめるというか。
 車両デザインで言うとやはり外見の色の印象って大事だと思うのですが,どうやって決めているのか知りたいです。走行区間の風景やその地域や町のイメージカラーなど,いろいろありそうだなと。

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川西氏:
 色はですね,とっても難しいんですよ。
 デザインや設計において一番大事なのは根拠です。車体の構造であれば天井の高さや通路幅,窓の大きさは数字として測れますし,素材であれば走行で発生する振動やねじれといったものから構造計算をして作れる。すべて数字の根拠が出せるんです。
 ところが色はというと……根拠があまりないのです。

4Gamer:
 印象みたいな,人によって異なる要素が強いわけですね。

川西氏:
 はい。素材と合う塗装や熱の反射率といった数字的に決めなければならない部分はありますが,使える色からなにを選ぶかは難しいわけです。会議にはいろいろな立場の人が集まってどういう色にするかを話し合いますが,みな基本的に主観で話すのでこれが一番揉めるんです(笑)。
 過去には200種類以上の色を用意したけど全部×みたいなこともありましたね。

4Gamer:
 えっ。確かに「赤系だね」って共通認識があっても「じゃあどういう赤か?」という話にはなりそうです。では実際どのように決めていくんですか?

川西氏:
 一番楽なのが,経営トップの偉い人が「この色」って言ってくれることですね(笑)。
 といっても自治体やホールディングスなどいろいろな立場の偉い人たちがいるので,それぞれが言い出すとこれは大変です。決まりません。

4Gamer:
 (笑)。

川西氏:
 我々がよくご提案するのは,12色セットの色鉛筆を持っていって「ここから消去法で決めましょう」といって絞っていく方法です。
 私たち日本人は,自分を主張するのって苦手だったり下手だったりしますよね。それより「これはないですよね」という話をしていった方が進みが早いんです。そうやって絞った色をベースに,地域のシンボルとなる色はこれだなとか,競合他社で近い色を使ってないかを調べながら。

取材終了後,アートディンクより贈呈された「A列車で行こう オリジナル色鉛筆(24色)」。今後はぜひこちらの活用を!
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4Gamer:
 これまでデザインを手掛けた車両だとどういったものがあるのでしょう。

川西氏:
 たとえば銀河ですが,これは瑠璃紺色(るりこんいろ)という暗く深みのある青紫色を使っています。青一色の車両というとブルートレインで,これが永久欠番みたいになっていて手を出しにくいみたいなイメージがあったんですが,コンセプト的に合っているなと。
 あとは日本の伝統的な色であり,西日本の美しい景色に映えるというのもあります。自然界で瑠璃紺色はなにかというと,夜明けの西の空の色。夜明けを走る銀河はそれにぴったりだと思いました。

画像は「A列車で行こう ひろがる観光ライン」Nintendo Switch / PC)に登場するWEST EXPRESS 銀河
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 日本の伝統的な色でいうとJR西日本の特急「やくも」もあります。沿線地域の色彩や文化をイメージし,たたら製鉄の黄金色や赤瓦の町並みの赤銅色などをベースにしたブロンズメタリックカラーで仕上げています。

JR西日本 特急やくも(写真提供:イチバンセン)
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イチバンセン公式サイト「JR西日本 特急やくも」ページ


4Gamer:
 どちらも日本の自然に溶け込む色ですね。それで言うとえちごトキめき鉄道の「えちごトキめきリゾート 雪月花」の朱色も日本的というか,神社の鳥居のような印象があります。

川西氏:
 おっしゃるとおり雪月花は実際に鳥居にも使われている銀朱色を使用しています。これも日本の伝統色ですね。そういった車両の色のイメージも,先ほど話しましたように鉄道に関わる人皆が説明できるようレクチャーしています。
 色というのは結局は意志。事業者の意志,あるいは地域の意志なんですよ。なので説明も押し付けるものではなく,「自分たちはこの色なんだよ」話したくなるか,分かりやすく説明できるかどうかなんです。そこが決断のポイントですね。

「A列車で行こう9 Version5.0」に登場するえちごトキめきリゾート 雪月花
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4Gamer:
 地域性を持ったものづくりという点では公共の建築物と近い考えで作られているのだなと感じたのですが,建物と鉄道でここは違うなというところがあれば知りたいです。

川西氏:
 建築に比べて,鉄道車両に使える素材が本当に限られているということですね。
 鉄道を作る際,過去の事故や事例をもとにその安全性や強度などを厳重に確認したうえで素材が選ばれます。新しい素材を使うにも何度もテストに挑んでも通らないということは当たり前で,設計するときも0.0ミリ単位の薄いアルミ板1枚からしっかり決めます。

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4Gamer:
 素材の話だと,先ほど走行で発生する振動やねじれという話をしていましたね。“ねじれ”とはなんだろうと気になっていました。

川西氏:
 鉄道車両って,いうなればずっと雑巾絞りをしているような状態にあるんです。線路のカーブにはカントという,遠心力の影響を少なくするため高低差を設けてありますが,それでも縦に長いものなので,前方は曲がろうとしているけど後方は真っ直ぐというねじれが発生します。
 車体の金属は靭性がありますが,ガラスにはそれがありません。曲げれば割れます。なので窓の大きさってのはある程度限界がありますし,もちろん規格もあると。

4Gamer:
 なるほど。そういった制限があるぶん,あとから変更するというのは相当難しいですね。

川西氏:
 はい。それだけに後付けもできません。たとえばあとあと「このスペースに絵を飾りたい」と思っても,家の壁のようにピンを打つというわけにはいきません。最初にしっかり決めるために相当シミュレーションをする必要があるところが大きな違いだと思います。

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4Gamer:
 いいお時間となりました。最後にこれからトレインコンストラクションを楽しもうというゲームファンに,鉄道デザインの面白さや魅力をお願いできますでしょうか。

川西氏:
 やはり公共の乗り物ですので,たくさんのお客様にご利用いただけて,そして喜んでいただけるというのが鉄道デザインの大きな魅力じゃないかなと思います。
 大変な部分であり面白さでもあるのが,公共のデザインに100点満点というのはないというところです。本当に多種多様な方たちが利用するものなので,全員が納得するものはありえないですし,民主主義の国として反対意見があることが当然なんですね。
 6割〜7割の支持をいただけたら十分で,いろいろな人たちに寄り添ったり立場を考えたりしてそれを目指すのが,鉄道デザインのやりがいを感じられる部分です。

 鉄道は環境負担が少ない乗り物であり,住みよく安心できる町とその地域と地域をつなぐもの。鉄道デザインはまちづくりそのもので,人の生活をデザインするものだと思います。ゲームをとおしてより多くの皆さんに興味を持っていただけると,我々も本当に嬉しいですね。

4Gamer:
 お時間たっぷり貴重なお話をいただきありがとうございました!

A列車9のパッケージを眺める川西氏。普段ゲームをするのかを聞いたところ,「いえ。子どものころは親の教育方針でゲームができなかったんですね。いま始めるとその反動も出そうですし,始めたらハマってしまうというのも分かっているので……」と答えてくれた。A列車9のゲームの内容を説明すると「いまのゲームってそんなところまでできるんですか?」と驚きながら,ゲームに登場する車両などにも興味を示していた
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