［プレイレポ］「inZOI」は，細部までこだわったキャラメイクや住宅づくりが魅力の新世代型ライフシム。リアルな都市生活を自由に満喫しよう

　PUBG StudiosやUnknown Worlds Entertainmentなどを子会社に持つ韓国の大手パブリッシャKRAFTONは，2025年3月28日に新作ライフシム「inZOI」のアーリーアクセスを開始する。


　本作の設定は，猫が神である世界でARカンパニーに入社したプレイヤーが，自身のアバターであるZOIを作り，同社が管理する箱庭型の都市で生活しながら，よりよい社会を創り上げる……というものだ。ZOIやその住居を製作する際の自由度の高さ，ゲームの舞台となる都市のビジュアルの緻密さなどは，4Gamerでもこれまでに何度もお伝えしている。
　筆者は今回，アーリーアクセスの開始に先立って本作をプレイできたので，その内容をお伝えしよう。

超細部までこだわれるキャラクタークリエイト機能

　ゲームを開始してまず最初に，プレイヤーの分身となるZOIを作成する。「inZOI」では，名前，年齢層，性別といった基本情報に加えて，「気質」という，生来の性格特性を設定する。気質が異なると，ゲーム中にZOIが取るさまざまな行動，その結果として表れる感情や欲求も変化する。

　選択可能な気質は，なんと9系統18種類もある。「ボランティア」と「愛に生きる人」，「冒険家」と「エンターテイナー」など，同じような性格の方向性だけれども微妙に違う，というキャラ分けにも対応している芸の細かさだ。
　どんなゲームでもキャラクタークリエイトに時間をかけてしまう筆者は，最初のステップで小一時間ほど悩んでしまった。


　そして，これは任意のオプションではあるが，「希望する人生」を選ぶこともできる。人生の目標をあらかじめ設定しておけば，ロールプレイがはかどることだろう。


　こうした設定が終わったら，次に行うのがZOIの外観設定だ。この外観設定は，「inZOI」最大の特長の1つと言っていい。顔，ボディ，衣装，アクセサリーの4種類のカテゴリーで多種多彩なパーツが用意されているので，きっと納得のいく自分だけの分身が作れるはずだ。
　選択できる項目があまりに多いので，いちから作るのが大変そう……という人のために，プリセットも多数用意されている。迷ったら，プリセットから選んで，微調整するという作り方をおススメしたい。


　それぞれのパーツもリアルそのものだ。とくに，プロデューサー兼ディレクターであるキム・ヒョンジュン氏が以前に語っていたように，従来のライフシムと比較して，アジア系の顔立ちを作りやすくなっている印象である。
　リアルさの追求については，顔の輪郭を微調整する際に，あえて左右非対称にできる点にも感動した。我々人間の顔は完全な対称形にはなっていないものだが，これまでのゲームにおけるキャラクタークリエイトでは，そこが十分意識されてきたとは言いがたい。この点，「inZOI」では，微妙に左右の造形を変えることで，現実にいそうなキャラクターを誕生させられるだろう。

身体の造形をかなり細かく編集できる

同じ外観設定でも，年齢層を変えることでこのように変化する

AIテクスチャ生成を使って服の模様を設定できる。試しに「rainbow」と単語を1つだけ入れてみた

内装・外装にとことんまでこだわれる建築モード

　キャラクタークリエイトが終了したら，プレイヤーが生活する都市や住宅を設定する。筆者がプレイしたバージョンでは，韓国の大都市をイメージした「ドヴォン」と，北米西海岸をモデルにした「ブリス湾」の2種類の都市を選択できた。ほかにも開発中だがインドネシアを思わせる「Kucingku（クーチンクー）」が実装予定とされており，今後の開発でさらに多くの都市の登場が期待できそうだ。


　住宅については，空き地を買ってそこに建築することもできるし，アパートの1室や一軒家など，すでに完成されているものも購入できる。いきなり家の部屋割りから設計するのはハードルが高いので，このゲームを始めたばかりのプレイヤーは，まずは既存の住宅を購入するか，空き地の上にプリセットの家を建てるのがいいだろう（幸いにも，平均程度の家を買えるだけの資金はゲーム開始時に与えられている）。

　こうした言わば「既製品」の家であっても，プレイ中には好きなときに入れる「建築モード」で，部屋の模様替えが可能だ。「inZOI」では部屋に置ける家具類が豊富に用意されており，調度品の選択に工夫をこらすことで自分だけのインテリアデザインを実現できる。
　トレーニング用品を集めたジム部屋を作ったり，家具をアンティーク調で統一したりと，「このZOIならきっとこういう部屋にするに違いない」などと考えながらオブジェクトを配置すれば，きっと楽しいはずだ。


　そして内装に慣れてきたら，いちから家を作ることにも挑戦してみよう。
　建物の土台となる「プラットフォーム」を設定して敷地面積を定め，そこに壁を置いてそれぞれの部屋を仕切っていくのは，それだけで時間が経つのを忘れるほどの中毒性がある。本格ミステリの舞台になりそうな幾何学的な間取りにするなど，あえて変な形の家を建ててみるのも面白いかもしれない。


　ちなみに，ここまで紹介してきたキャラクタークリエイト機能と建築機能は，「inZOI」のデモ版である「inZOI: Creative Studio」で体験可能だ。これらの機能に興味を持った人は試してほしい。

こちらはブリス湾の家と街並み。好きなタイミングで街の景観も編集できる

テンポの良さと自由度の高さが共存した，リアル志向のライフシム

　ZOIとその住む家を設定したら，いよいよゲーム本編の開始となる。
　ZOIは「お腹が空いた」「入浴したい」といった基本的な生理的欲求や，最初に選んだ気質によって決まる「好み」などに基づいて，次々に行動を選んで生活をしていく。
　例えば，「探求者」気質として設定した筆者の分身であるZOI「山室良」を操作せずに観察してみたところ，ゲーム開始直後からパソコンに向かい，午前中は食事やトイレ以外のすべての時間を好みのPCゲームに費やしていた。そのあと散歩に向かった彼は，ほかのZOIに話しかけられたものの，「会話をすることを好まない」「誰とも関係を築くのが難しい」といった探究者ならではの特徴が災いしてか，あろうことか相手に「目の前から消えてほしい」と伝えて喧嘩別れをして家に帰ってきてしまった。

　このように，ZOIはそれぞれの性格に沿った動きをしつつ，時としてハプニングも発生する。筆者は彼らの生活を眺めて「そうそう，日常ってこんな感じだよなあ」という妙な納得感を得てしまった。


　もちろん，ZOIの生活に介入してプレイヤー自身が行動を決めることもできる。家の内装をはじめ，ゲーム内で登場するオブジェクトの大半はクリック可能であり，実に多彩な行動を選択できる。例えば，パソコンを使うと，前述のゲームだけでなく，執筆や作曲，動画制作といった創作活動を行える。また，ゲーム内にいるほかのZOIを選ぶと，ジョークや哲学的な話，果ては侮辱まで，さまざまな話題を選べるという細かさだ。本作では日常生活で起こりうるさまざまな可能性に対応しているので，プレイ中には画面のあちこちをクリックして，どんな行動ができるかを確認してほしい。


　取れる行動の種類があまりにも多く，何をしたらいいか分からないプレイヤーは，「映えスポットで自撮りしたい」「消火器を確認したい」といった，プレイを進める中でZOIが自動的に抱く「期待」の達成を目指すといいだろう。
　対象となるアイテムを所有していない場合は，建築モードから購入して自宅に設置し，対応する行動を選ぶことで達成が可能だ。ほかにも，より長期的な人生目標である「野心」を設定できるなど，本作にはプレイヤーがライフシムを楽しむための手助けとなる要素が盛り込まれている。


　勉強したり仕事をしたりすることも，1日を有意義に過ごすうえでは大切だ。
　本作の入学や就職は，年齢や能力などの条件さえ満たしていれば，ボタンひとつで行える。学校や職場に行くなどの重要な予定は，「スケジュール」に登録され，時間になると教えてくれるので，うっかりすっぽかす心配がないのもありがたい。


　ここまで紹介してきたように，「inZOI」は日常生活に関することならほぼ何でもできてしまう高い自由度を確保しつつ，必要以上にゲームテンポが遅くなることを巧みに回避している。ZOIの能力もあっという間にレベルアップするし，ゲーム内時間で1週間もしないうちに赤の他人からホームパーティーを開く仲になったり，婚約できるほどになったりと，人間関係の進展も迅速だ。


　もしもライフシムというジャンルのことを「現実と同じようなことを繰り返す退屈なゲームだ」と考えて敬遠している人がいたら，筆者はそんな人にこそ本作をおススメしたい。キム・ヒョンジュン氏が以前のインタビューで語っていたように，このジャンルならではの醍醐味である「キャラクタークリエイトの楽しさ」「建築モードの楽しさ」「いろいろなキャラクターのコミュニケーションから生まれるロールプレイの楽しさ」「キャラクターの相互作用などによる社会現象の発生」を存分に味わえるだろう。

「室内で靴を履く」かどうかのオプションがある本作。もしかすると，室内では帽子やヘッドホンなどのアクセサリも外したいという要望が出てくるかもしれない。というか，要望したい！（クローゼットで衣装を変更したり，パジャマに着替えたりはできる）

　「The Sims」シリーズなどを遊んできた熟練のライフシムプレイヤーにとっても，生成AIによる3Dオブジェクト作成機能などによって既存作よりもリアルさをぐっと増した「inZOI」のプレイは，新しい驚きに満ちた体験になるはずだ。
　ついにアーリーアクセスとなった本作が次世代のライフシムの標準になっていけるかどうか，今後の開発ロードマップを見守っていきたい。

「inZOI」公式サイト