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印刷2024/11/15 19:24

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KRAFTONの新作「inZOI」はアジア圏に住む人が違和感を持たないライフシムとなるか。プロデューサー兼ディレクターに聞いた[G-STAR 2024]

 韓国・釜山で開催中のゲームイベント「G-STAR 2024」のKRAFTONブースでは,新作ライフシム「inZOI」の試遊台が出展されている。
 G-STAR 2023で初報が出て以降,グラフィックスのリアルさもさることながら,キャラクター制作の自由度といったところで,注目しているライフシムファンは多いはずだ。

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 今回,本作のプロデューサー兼ディレクターであるキム・ヒョンジュン氏に,ゲームを紹介してもらいながら話を聞けたので,その内容をお伝えしよう。

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「The Sims」を15年遊ぶファンが作る新しいライフシム


 キム氏によれば,そもそも本作は開発を始めてから2年ほどしか経っておらず,昨年にG-STARで出展されたのが開発1年めのバージョンだったというのだから驚きだ。今後は既報のとおり,2025年3月28日に日本を含めてアーリーアクセスを開始する予定になっている。

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 KRAFTONは本日(2024年11月8日),Unreal Engine 5を採用したフォトリアルなグラフィックスが特徴のライフシム「inZOI」アーリーアクセスを2025年3月28日に開始すると発表した。リアルな世界で,「ZOI」と呼ばれるキャラクターたちが生活する様子を楽しめる。

[2024/11/08 22:39]

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 さて,ライフシムということで,その比較対象として「The Sims」シリーズを思い浮かべる人もいるだろう。同シリーズは世に出て20年ほど(※初代シムピープルが2000年に発売されている)になるのだが,実は,キム氏自身もThe Simsシリーズを15年も遊んでいるほどのファンなのだそうだ。
 そこで,inZOIを制作するにあたって,The Simsの開発者にインタビューを行い,そこでいろいろなアドバイスがもらえたという。また,そのときに言われたのが「The Simsは西洋ではすごく人気があるけれど,アジア圏ではそこまでではない。ライフシムがinZOIによってアジア圏でも楽しめるジャンルになってほしい」ということで,競争マインドではなく,協同マインドといった感じの会話になっていたのだとか。

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 このように,キム氏が15年のプレイヤーということもあって,The Simsの楽しさを誰よりも分かるとしたうえでinZOIを制作することになった。そして,キム氏としてはアジア圏の人,とくに日本のプレイヤーはライフシムが好きだという確信があるそうで,テイストやデザインをアジア向けに作ることで,絶対によい反応をしてくれると考えているのだという。

 一方で,The Simsはそれだけの歴史があるゲームだけに,それに匹敵するほどのコンテンツを最初から提供するのは不可能だとキム氏は話す。一旦プレイヤーに本作を見せて,これからいろいろ作っていこうという気持ちでアーリーアクセスを決めたそうだ。

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 さらに,8月のgamescomで話題になったことから,早めに(アーリーアクセス)をリリースしたほうがいいという判断をしたのだという。
 実は,gamescomでの公開前にインフルエンサーに本作を触ってほしいという連絡をしたそうだが,その段階で反応があったのはわずか8人だったそうだ。
 しかし,公開後は,その8人の配信が注目を集め,のちに80人くらいのインフルエンサーが参加し,今では900人ほどのインフルエンサーからリリース時に配信したいという希望が届いているという。ちなみにこの数字は西洋圏だけで,アジア圏を省いた人数だ。

 実のところ本作はKRAFTON社内でもそこまで期待されていなかったのだという。そのため,AAAゲームのように大型マーケティングは最初から考えていなかったそうだ。しかし,プレイヤーの反応を見て,本作はバイラル(口コミ)で広げていけるのではないかと確信し,インフルエンサーやストリーマーに,このゲーム楽しさを広めてもらうといったことを,マーケティングとしてやっていくことにしたのだという。


ライフシムファンが好きな4つの要素


 続いてキム氏は,ライフシムが好き人は,4つの特徴のいずれかが好きだと話す。それは「キャラクタークリエイトの楽しさ」「建築モードの楽しさ」「いろいろなZOI(キャラ)のコミュニケーションから生まれるロールプレイの楽しさ」「それを含めた社会現象の発生」である。
 これら全部を好きな人は多くはないが,どれか1つを強く好きでいる人が多いそうで,inZOIには,もちろんそうした要素が取り込まれているそうだ。

キャラクタークリエイトに関しては,今年のgamescomでも大きな話題となっていたが,今回のG-STAR会場では,これら全部が体験できるとのこと。ぜひ会期中に触れておきたいところである
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 また建築は,プレイヤーが自分自身で壁から床,家具,照明,飾りまで設置できるそうだ。もちろん,プリセットも用意されているが,そのプリセットの内装なども自分で変更できるとのことで,かなりカスタマイズ性の高さが感じられる。
 キム氏によると,家具は1500種類もあり,リリース時には2000個を目指しているという。また,こうした家具は色などをカスタマイズできるので,同じ家具を使っていたとしても,配色によって見栄えが大きく変わる部屋にできそうだ。

 また,今回の紹介時に軽くプリセットを配置するシーンを見せてもらったのだが,プリセット同士を重ねるように配置すると,自然につながっていることに驚いた。この手の完成したものを配置する場合,基本的には重ならないように配置していくイメージを持っていたからだ。
 キム氏は「よく気づかれましたね(笑)」と笑いながら述べて,これ自体が難しい技術であり,複雑な家にしてもZOI達がつなぎ目などからすり抜けるといったことはならず,ちゃんと行動すると話していた。

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 こうなると,配置の幅がかなり広がり,デザインセンスが生かせる建築要素になりそうな印象だ。それこそ,デザイナーが考えるような家や部屋を作り上げるプレイヤーも出てくるのではないだろうか。
 とすると,作った家や部屋を公開できたら面白いのではと思ってキム氏に聞いたところ,「Canvas」(ユーザー生成コンテンツプラットフォーム)で可能だという。
 Canvasで,プレイヤーが作ったキャラクターを公開,ダウンロードできることは,キャラクターカスタマイズ機能を体験できる「inZOI: Character Studio」の配信で明らかになっていたが,家,さらには部屋だけでもここで公開できるのだという。これは本当にコミュニティに建築家が登場しそうで,楽しみになってくる。

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 なお,Canvasにはランキング機能もあり,当然,目立つ分だけダウンロードされやすくなるわけだが,その基準は「いいね」の数だけではないという。というのも,ある人がキレイな家を作ったとして,その家を誰かが少しいじってアップロードしていいねをもらう可能性があるからだ。
 本作には,そうした制作物に対しての仕組みがあり,それを判断したうえでランキングが決まるという。つまり,ランキング上位になるためには,オリジナルで挑戦しないとダメというわけだ。

 続いて,「ロールプレイング」だが,本作ではプレイヤーが見ていないところもシミュレートされており,ZOI達が何かしらの行動,コミュニケーションを行っているのだという。
 これは開発者目線で見ると非効率的な部分であるとキム氏は話すが,あえてこうした路線を取ったのは,本作が人生そのものを味わうために作られたものだからだ。
 それもあって,ゲームの重さについては,グラフィックスがすごいからというのよりも,CPU処理,つまりシミュレーション部分が重くなっているのだという。そのため,シミュレーションを作ることに対して,最適化できるようにかなりの努力を行っているそうだ。

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 そんなZOI達が住む都市には,300人のZOI,300の自動車が存在しているという。さらに,それぞれのZOIには600種類から価値観や好みが設定されていて,それぞれの価値観,意思,性格でそれぞれの人生を歩んでいる。
 例えば,ギターを弾いているZOIがいれば,それはそういう性格だから自分の意志で弾いている。それを写真を撮っているZOIがいたなら,これも自分の意志で,その歌が好きだから撮影している。それらがセットで設定されて動いているわけではない。

 このように,ZOI自身の性格どおりに,自分のライフを楽しんでいることが,本作の魅力になるという。

 なお,性格の悪いZOIが何かを盗むとして,運が悪ければ警察に捕まるのだという。一方,早めに逃げ出したら捕まらないのだが,その判断をするのもZOI自身となるそうだ。そして,これはプレイヤーが見ていないときも,どこかで発生しているかもしれないのである。

 そうした事件を後からプレイヤーが知ることができるのか気になるのだが,キム氏によれば軽い泥棒の事件は,大きな話ではないので認知できない可能性があるそうだ。現実の小さな事件も,どこかで起きた知らない出来事……というのと同じである。

 一方,自分がプレイしながら,どこかに行って何かを起こしたとき,それが噂になって広がっていくという要素もあるそうだ。その影響で,ある日に友達から「何か事件を起こしたの?」といったメッセージが来るかもしれないという。そうした,自分に関わるものはまわりまわって知ることになるらしい。

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 こうした噂の広がるスピードについては決められていないそうだが,不倫は早めに伝わるようにしているのだという。というのも本作は,モラル的な世界,よりいい世界を目指すというコンセプトらしく,悪い噂は早く広まってしまうそうだ。

 実は,本作のプレイヤーはARカンパニーという会社の従業員として,この世界を管理する義務があるのだという。そのため,わざと「グランド・セフト・オート」のような感じでプレイすると,カルマがだんだん蓄積されていき,ZOIの評判が全般的に悪くなってARカンパニーの上司に叱られたりするのだという。

 また,この都市に住むZOIは「死ぬ」というシステムがあり,いつになるかは分からないが,落雷や食あたり,交通事故など30種類の死に方があるのだとか。
 なお,アーリーアクセスの段階では保険のシステムを入れる予定で,もし家族の誰かが死んだときにお金が手に入るという,ちょっと生々しいものになっている。
 それもあって「家族全員を火事で……としたら,お金持ちになるのでは」という話を開発でしたことがあるそうだ。それくらいに自由度の高いゲームではあるが,それを制限するのがカルマだという。

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 そもそもカルマが下がるとどうなるかというと,悪いことをしてカルマが下がったZOIが死んでしまうと,そのZOIは幽霊になってしまうそうだ。そして,都市に存在できるZOIは300人であるため,幽霊が増え続ければ……いずれは本当にゴーストタウンになりかねないわけである。

 一方,普通のZOIが死んだときは,赤ちゃんが生まれるのではなく,都市内の年齢分布があり,それに合わせた年齢のZOIが出現するのだという。ただ,プレイヤーのZOIが知り合いである,例えば住んでいるところから20〜30人くらいの家族では,赤ちゃんから死ぬまでをシミュレートしているそうで,年齢分布から出現することはないそうだ。

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 なお,都市内には空き家もあり,プレイヤー自身がZOIをそれぞれの家に入れることもできるが,時間が経過すると300人のZOIの誰かが住み始め,そこで家庭を作ることもあるという。
 また,どこかで知り合ったZOIと人間関係が深くなればこの都市に引っ越してくることもあり,中には職場で会って,付き合って,結婚までできる仕組みもあり,配偶者になったZOIは自分がコントロールできるようになるとのことだった。


AI技術による画像の取り込みと
自身がZOIになるモーションキャプチャ


 本作には,ほかにも撮影した写真(2D映像)をゲームに読み込んで,3Dグラフィックスに変換するAI技術も使われているという。3D化されたオブジェクトは,帽子ならかぶれ,カバンなら持つことができるといったように,ただ取り込んで終わりというわけではない。

 一方で気になるのは,著作物などを取り込んだ場合だ。シングルプレイであればともかく,例えば配信やダウンロードができるといったオンライン上でのやり取りが発生しないのかという点が気になる。

 キム氏によれば,現在のinZOIはマルチプレイができないので,1人でいじって楽しむのは問題ないとのことだが,Canvasでアップロードすれば問題になる可能性があるという。逆に言えば,AIで取り込んだものも公開できるというわけだ。
 ただし,KRAFTONのAIがその問題となるものを1次的に探し,そして2次的に運営がちゃんと確認するという方針になっているため,そこまで心配はしていないとのことである。

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 また,WebCAMを使って,プレイヤーの動きを3Dでモーションキャプチャできる機能もあるという。この機能だけでも面白いということで,いろいろなインフルエンサーがまるでVTuverのようにinZOIのキャラクターをかぶって配信するのが話題になったそうだ。
 その反応があまりにも良かったので,その機能を強化する方向で開発しているのだとか。アーリーアクセス時にはもっと派手な機能になるとキム氏は話していた。

 一通り,ゲームの説明が終わったあとに,残りの少ない時間で質問をした。
 1つは,韓国や日本,アメリカなど多様な文化圏があるが,例えば家に入るときに靴を脱いだり,脱がなかったりといった文化的なところをそれぞれの地域に合わせていけるのかというものだ。

 キム氏はそれが一番難しく,自身がThe Simsをプレイするときに一番違和感を持つところだと話していた。そのため,それらを解決するために西洋地域のプレイテスターが50人ほどいてフィードバックをもらい,反映しているのだという。
 同じように日本地域のプレイヤーの声も多く聞きたいとしており,どんな小さな声でもいいので上がってきたなら積極的に反映していきたいとのこと。なお,ゲーム内の家で靴は脱げるそうだ。

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 そしてもう1つ,プレイヤーがどこまでプレイに介入できるのかを聞いた。

 基本的にはプレイヤーは1人のZOIか,家族しかコントロールはできないそうで,どのような都市なのかの調整はできるものの,プレイヤーが1人ずつの行動は操作できない。また,自分が操作するZOIも性格によっては操作どおり100%動くとは限らないのだとか。

 ともあれ,家族それぞれを自分の操作で移動させて,スクリーンショットを撮影するといったことは問題なくできるようだった。
 キム氏は最後に,すべてのZOIを自分がコントロールできると,それは少しつまらない。いろいろなZOIが自分のZOIとコミュニケーションしながら,自分では想像できなかったエピソードを作っていくのが本作の楽しさだと話してくれた。

「inZOI」公式サイト

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