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[インタビュー]市場に存在しなかった楽しさを形に。「ASURAJANG」ディレクターのキム・サンジン氏が語る,作品コンセプトや独自の魅力
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印刷2025/03/25 07:00

インタビュー

[インタビュー]市場に存在しなかった楽しさを形に。「ASURAJANG」ディレクターのキム・サンジン氏が語る,作品コンセプトや独自の魅力

 G・O・Pは,2025年3月27日17:00にPmangとSteamで,見下ろし型大乱闘バトルロイヤルゲーム「ASURAJANG(アスラジャン)」の正式サービスを開始する。本作は,最大33人のキャラが入り乱れて戦うバトルロイヤルゲームで,発表当時に付いてたタイトル名の“修羅場”にふさわしい作品だ。現在は事前登録やウィッシュリスト登録を受け付けている。

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「ASURAJANG」公式サイト




 本作はプレイして面白いのはもちろん,アニメ調の親しみやすいグラフィックスも大きな魅力と言える作品だ。ごく当たり前の話かもしれないが,愛着の湧きやすいキャラを操作し,ほかのプレイヤーと一緒に遊ぶのは,やはりシンプルに楽しい。

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 アニメ調のグラフィックスが特徴の対戦アクションバトルロイヤル「ASURAJANG」のオープンβテストが2025年2月20日〜2月25日に行われた。筆者もテストに参加してみたので,プレイレポートをお届けしよう。Pmangの公式サイトでは事前登録受付中だ。

[2025/02/26 11:00]

 そんな「ASURAJANG」を開発するデベロッパD-ZARDで,本作のディレクション/ゲームデザインを担当するキム・サンジン氏にメールインタビューを行ったので,その内容をお届けしよう。
 氏はNCSOFT,KRAFTONを経てD-ZARDに入社した人物で,「The Tower of AION」「MXM(マスター×マスター)」など多数の作品に関わった経歴の持ち主でもある。

キム・サンジン氏
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4Gamer:
 「ASURAJANG」は大乱闘あり,MOBAのようなチーム戦要素あり,さらに多数のプレイヤー同士で戦うバトルロイヤルの楽しさありと,とても欲張りなゲームのように感じました。こうしたゲームの基本形はすんなりと決まったのでしょうか。それとも紆余曲折あり,出来あがったものなのでしょうか。

キム・サンジン氏(以下,キム氏):
 これは,私が受けたインタビューの質問の中でも,とくに素晴らしい質問の1つだと思います!
 私たちは限られた人的リソースの中で開発を進める小規模なチームです。そのため,さまざまな方向性を試すことは難しく,「Master Feature Set」と呼ぶ「ゲームの核となる要素」をあらかじめ定義したうえで,開発を進める手法を採用しています。コードを書く前に,このMaster Featureのリストを作成します。
 「ASURAJANG」の開発を開始した当初に設定したMaster Featureは,以下の7つでした。

(1)乱闘に最適化された対戦アクションゲーム
(2)参入障壁の低い「本物の」バトルロイヤル体験
(3)長く遊んでも飽きのこないゲーム
(4)シンプルかつ直感的なアウトゲームプレイ
(5)アクションを際立たせるゲームグラフィックス
(6)アクションゲームに適したサウンド
(7)いつでもどこでもプレイ可能なゲーム

 幸運なことに,このMaster Feature Setは,開発当初から現在のリリース直前の段階まで,1つも変更されることなく維持されています。

4Gamer:
 そもそもの制作がはじまったきっかけや,企画段階で考えたこと,スタッフ間で話し合ったことなど,プリプロダクション時の様子を教えてください。

キム氏:
 私はフロム・ソフトウェアの「ダークソウル」「Bloodborne」「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」や,カプコンの「モンスターハンター」シリーズの大ファンです。
 また,「Fortnite」「PUBG」のようなバトルロイヤルゲーム,「DOTA2」のようなMOBAゲームも長年にわたり深くプレイしてきました。
 その影響もあり,私は常々「スタミナをリソースとして活用するアクション戦闘システムのPvPゲームを作りたい」と考えていました。しかし,なぜか市場にはそのようなゲームが存在しませんでした(笑)。

 私が最初に戦闘システムを考えた際にもっとも重視したのは,「直感性」でした。このゲームを初めて見る人でも,いま何が起きているのかを理解できるようにすることが重要だと考えました。そのため,若干遅めの戦闘テンポを採用しました。
 さらに,適応しやすく,何度もチャンスがある戦闘メカニクスを設計しました。しかし,このような戦闘システムは,プレイヤーのフィジカルスキル(操作技術)に依存しやすいため,場外リングアウトによる敗北の要素を取り入れることで,戦術の幅を広げました。

 とはいえ,スタミナベースの戦闘は馴染みがなく難しいと予想されたため,まずは「参入しやすいバトルロイヤルモード」を作ることにしました。そしていま,当初構想していた戦闘体験が完成し,皆様にお届けできるようになりました。

4Gamer:
 昨年,D-ZARDのCEOキム・ドンヒョンさんが来日した際,「キャラクターのビジュアルや設定的魅力と,操作したときの魅力をリンクさせると大きな相乗効果がある」という旨の発言をされていました。キム・サンジンさんはじめ,開発チームもこの考え方に基づいて開発を進めているのでしょうか。

キム氏:
 もちろんです。
 キャラクターの設定や戦闘デザインをビジュアルに反映し,さらにそのビジュアルに適した戦闘アニメーションや操作感を設計しています。「このキャラクターは,どのように戦うのがもっともふさわしいのか?」を常に考えながら,シナジーを最大限に引き出せるように開発を進めています。

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4Gamer:
 「このキャラクターのこういう戦い方が面白く,遊んでいて思い入れも増す」というような,「相乗効果」の具体例をいくつか教えていただけないでしょうか。

キム氏:
 例えば,「トウゴ」を例にあげましょう。

 トウゴは,天界の公務員であり,金剛力士という設定です。通常,金剛力士は「金剛杵(こんごうしょ)」を武器にすることが一般的ですが,公務員らしさを表現するために,巨大な筆を武器として採用しました。
 そして,筆は墨で濡れているものなので,トウゴの攻撃は闇属性ダメージを与え,攻撃を命中させることで敵が墨で視界を奪われる状態異常(暗闇)になるように設計しました。

 また,トウゴの十二支は「午(うま)」なので,馬の後ろ蹴りをオマージュし,固有スキルを後ろ蹴りに設定しました。
 トウゴは使いやすいコンボを持つキャラクターであり,通常攻撃の途中に固有スキル「後ろ蹴り」を挟むことで,「通常攻撃→固有スキル→通常攻撃→固有スキル→通常攻撃(特殊技)」という流れるようなコンボが可能です。
 周囲に敵がいない状況では,このコンボを活用すると大きな効果を発揮できるでしょう。

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4Gamer:
 キャラクターたちのデザインが実に魅力的だと思います。デザインしたチームについて,過去に関わった作品,影響を受けた(お好きな)ゲームや映像作品,コミックなどを交えて紹介していただくことは可能でしょうか。

キム氏:
 「ASURAJANG」のキャラクターデザインチームには,韓国ゲームである「メイプルストーリー2」「勝利の女神:NIKKE」「エピックセブン」などの開発経験を持つデザイナーたちが参加しています。
 これまでに手掛けたプロジェクトのジャンルの幅が非常に広いため,ゲームの好みや影響を受けた作品の幅もとても広いのが特徴です。

 大衆的なPvPゲームでは,「フォートナイト」や「Apex Legends」,サブカルチャーゲームでは,「原神」や「ゼンレスゾーンゼロ」,格闘ゲームでは,「キング・オブ・ファイターズ」や(少し古いですが)「ヴァンパイアセイヴァー」,さらに,「ポケットモンスター」シリーズも大好きで,かなり影響を受けています。
 アニメに関しては,ジャンル問わず幅広く楽しむタイプで,例えば最近の作品では,「ダンジョン飯」「葬送のフリーレン」「チェンソーマン」「呪術廻戦」,さらに少し前の作品では「キルラキル」や「メイドインアビス」なども好んでいます。
 本当に多くの作品に影響を受けているため,すべてを挙げるとキリがないほどです(笑)。

 こうした多彩なインスピレーションが「ASURAJANG」のキャラクターデザインに込められていると思っています。少しでもその魅力を感じ取っていただけたら,とても嬉しいです!

4Gamer:
 また,D-ZARDがどんな開発集団なのか,雰囲気を教えてください。おおまかな規模や,どんなチーム(部署)があって,どのように協力しつつ制作されているのでしょうか。

キム氏:
 現在,「ASURAJANG」の開発チームは25〜30名規模で運営されています。小規模チームのため,各部門に1人ずつしかいない場合が多いです。 そのため,効率的に開発を進めるために,以下のような方針を取っています。

・会議を最小限にし,短時間で決定する
・決定したら,すぐにデザイン・実装し,テストを行う
・結果を見て,問題なければブラッシュアップし,問題があれば修正する
・このプロセスを高速で繰り返す

 また,ディレクター,アートディレクター,プロデューサーも例外なく実務に携わっており,チーム全員がほぼ毎日テストプレイを行っているのも特徴です。

4Gamer:
 キャラクターに行動力(スタミナ)が設定されており,基本的には複数の相手に囲まれると対応が難しかった感覚があります。「そもそも囲まれない,数的優位を作られないよう立ち回るのが正解」という理解で合っているでしょうか。
 そのほか,これから「ASURAJANG」を始める人に向けて,コツのようなものを教えていただけるとありがたいです。

キム氏:
 おっしゃるとおり,それが基本的なプレイスタイルになります。「ASURAJANG」の戦闘はTTK(Time to Kill/敵を倒すまでの時間)が短い一方で,スタミナシステムが導入されているため,数的不利な状況では戦いが非常に厳しくなります。そのため,常にスタミナを適切に管理し,敵の位置を把握しながら戦うことが重要です。
 プレイのコツとして,私が個人的に思う「ASURAJANG」の初心者と上級者の違いは,「回避カウンターをどれだけうまく使えるか」です。
 回避カウンターは,敵の攻撃をタイミングよく回避すると,5秒間だけ使用可能になる強力なアクションです。敵キャラクターの動きをよく観察し,自分のキャラクターに攻撃が当たる瞬間に回避を押すことで回避カウンターを発動します。敵を空中に浮かせたあと,空中コンボへとつなげてみてください。ほかのゲームでは味わえない,爽快感あふれるバトル体験を楽しめるはずです!

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4Gamer:
 2月に行われたオープンβテストの手ごたえはいかがでしょうか。また,3月27日の正式リリースまでに対応したい課題などはありますか。

キム氏:
 オープンβの反応は,私たちが期待していた以上に良くて,とても驚きました。ほとんど宣伝をしていなかったにもかかわらず,多くのプレイヤーの皆さんに「ASURAJANG」を楽しんでいただけました。
 とくに,一部のプレイヤーは非常に長時間プレイしてくださり,本当に驚きました。たった5日間のテスト期間にもかかわらず,80時間,90時間も遊んでくださった方がいたのです。この場を借りて,心より感謝申し上げます。
 正式リリースまでに解決すべき課題は山ほどありますが,その中のいくつかを挙げると,ランキング関連の問題修正,新キャラクターの追加,不便だった要素の大幅な改善などに取り組んでいます。
 そのほかにも多くの課題を解決している最中ですので,ぜひご期待ください!

4Gamer:
 日本のゲームファンに届けたいメッセージをお願いします。

キム氏:
 こんにちは。はじめまして! 「ASURAJANG」のディレクター,キム・サンジンです。
 長い時間をかけて一生懸命作り上げてきた「ASURAJANG」を,ついに皆さんに正式サービスとしてお届けできることを,本当に嬉しく思います。
 「ASURAJANG」は,少し独特な操作感やゲームプレイを持つため,最初は戸惑うかもしれません。しかし,私はこのゲームにしかない「手応え」や「楽しさ」があると信じています。ぜひ,その魅力を存分に味わっていただければと思います!
 また皆さんとお会いできる機会を楽しみにしています。ありがとうございます!

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