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メトロイドヴァニア化した「プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠」をプレイ。ストーリーやゲームプレイの奥深さを聞けた開発者インタビューも
プリンスが帰ってきた! 新作「Prince of Persia The Lost Crown」発表。2024年1月18日に発売へ
Ubisoftは,本日(2023年6月9日)配信された「Summer Game Fest 2023」にて,アクションゲーム「Prince of Persia The Lost Crown」を発表した。2024年1月18日に発売予定とのことだ。※13:00追記,プレスリリースを追加しました。
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1989年にオリジナル作品が誕生した「Prince of Persia」(プリンス オブ ペルシャ)のルーツについては,その生みの親であるジョーダン・メックナー(Jordan Mechner)氏の基調講演の取材記事(関連記事)を掲載しているが,Ubisoft Entertainmentが同作の版権を獲得したのが2001年のこと。そして,2003年には高い評価を得た「プリンス オブ ペルシャ 時間の砂」がリリースされている。
その「時間の砂」のリメイク版となる「プリンス オブ ペルシャ 時間の砂 リメイク」(PC / PS4 / Xbox One)の開発が2020年にアナウンスされているが,2022年5月には開発を主導する傘下チームが変更されるなどの理由で,発売が延期されている(関連記事)。今回は,その進展についてのアナウンスではなく,まったく新しいタイトルとなる「失われた王冠」というプラットフォーム型アクションゲームであったために,6月9日に本作がアナウンスされた際には,欧米では「時間の砂」のリメイク版の進展を心待ちにしていたファンから,批判が相次ぐことになった。
ラディ氏に,そのことについて直球で質問してみたが,「時計の砂のリメイク版を心待ちにしていただいているファンの心情は理解しています。しかし,『失われた王冠』についてはプレイしていただくことで誤解が解けると確信しており,(今回の批判については)それほど心配していません」と語ってくれた。
メトロイドヴァニアとして落とし込まれた名作シリーズ最新作
さて,ラディ氏とのインタビューは後述するとして,「失われた王冠」の内容は,「時間の砂」よりもさらに古い時代のペルシャを舞台にしており,これまでの本編シリーズとは設定の異なるストーリーが描かれている。主人公となるサルゴンは,歴戦の雄たちで組織される「不死隊」(イモータルズ)を構成する7人の中で最も若く,血気盛んな青年だ。誘拐されてしまった王子ガッサンを救うべく,かつては栄華を極めていたというペルシア文明勃興の地「カーフ山」(Qaf Mountain)に仲間たちと向かい,ペルシャ神話に着想を得たさまざまなエリアを旅しながら,時を操る能力を得ていくことになる。
「失われた王冠」は3Dグラフィックスで描かれているが,上下左右と2Dプレーンのみを移動できる,よりクラシカルなプラットフォームアクションとなっている。その点ではオリジナルシリーズのゲームプレイに近いものが感じられ,パルクールのような素早い身のこなしはUbisoftによるリブート以降の雰囲気もある。つまり,プリンス・オブ・ペルシャシリーズのさまざまな作品をオマージュし,探索をさらに楽しめるメトロイドヴァニアに仕立てあげられている印象だ。
今回のプレイアブルデモは,ゲーム序盤と思われる「The Lower City」というエリアから始まった。不死隊のほかのメンバーとこの地にやってきた設定だが,サルゴンはほかのメンバーからどこか煙たがられているようで,新米だからか一緒に行動することも渋られている様子。サルゴンは,この時点ではとにかく前進あるのみの無鉄砲な気性であるようで,ほかのメンバーが散らばっていくのを尻目に,自分は両手剣をかざして正面入り口から進んでいくことになった。
サルゴンは両手剣に加えて,弓とチャクラムという鉄製輪を武器にする。今回のプレイで使用したXboxゲームコントローラでは,[Xボタン]がメレーアタック,その長押しでパワーアタックとなり,[Yボタン]が弓,その長押しでチャクラムを使用できた。また,[RTボタン]がドッジやスライドによる攻撃回避,[LTボタン]が剣を盾にしての受け流し(パリー),そして[RBボタン]は短い距離への瞬間移動を行う「テレポート」というアビリティがアサインされていた。この時点で,プレイヤーはテレポートに加えて「エアダッシュ」「エアダッシュ」(ジャンプ+[RTボタン])という空中で平行移動する時空操作関連のアビリティがデフォルトで備わっていた。
今回のデモのほぼすべての敵キャラクターは,ミイラ系の雑魚キャラクターだったが,中にはヘビーアタックを繰り出す“黄色や赤色に目を光せる敵”も出現し,どのように間合いを取るべきなのか分からず,ヘルスが削られていくことも多かった。突起物の着いた大型機械などが狭い空間で行く手を阻んでいることもあり,操作パターンも多いせいか,筆者はデモプレイだけでは思い通りの操作をすることはできなかった。もちろん,メトロイドヴァニアのファンであれば,心地良いプレイを満喫できそうな印象は感じられた。
敵を倒すと,「Time Crystals」というゲーム内通貨が獲得できる。この通貨は,マップに点在するショップでアイテムを購入するために使えるのだが,そのなかでもとくに重要なアイテムが「アミュレット」となる。これは,メレーアタックとレンジアタックの双方に新しいアビリティを付け加えるもので,たとえば弓での攻撃時に3本の矢を放てる「White Peacock」や,受け流しが成功した際に少しだけヘルスを回復する「Princess Roxana」,さらにチャクラムに任意で範囲攻撃場所を追加できる「Chakram Vortex」など,今回のデモでは9つのアビリティが用意されていた。
新しいアミュレットを購入するには,Time Crystalsが最低でも800ポイント必要になるが,今回の30分プレイで得られたのは250ポイントほどだったので,鉱石集めは長い道のりになりそうだ。
また,ブラックスミスを見つけて武器をアップグレードする「Azure Parnassos Ore」という鉱石や,「Xerxes」(クセルクセス)の名が付いたコインなどのゲーム内通貨も存在するが,これらはさらに希少なアイテムとなるようだ。このことからも「失われた王冠」は,かなり長きにわたって遊べるシングルプレイ用キャンペーンになっている印象だった。
開発者インタビュー 〜 サルゴンは,あの剣豪がモデルに?
4Gamer:
よろしくお願いします。歴史の長い「プリンス オブ ペルシャ」シリーズにおける,メトロイドヴァニアというジャンルを使ったアプローチは,どのような経緯で発展していったものなのでしょうか。
ノウニュル・ラディ(以下,ラディ)氏:
「失われた王冠」を企画するうえで,「プリンス オブ ペルシャ」の伝統を最大限にリスペクトしつつ,我々独自のビジョンをもって,新しい要素を持つシリーズ作品として開発にあたりました。オリジナル開発者のジョーダン・メックナーさんとも連絡を取り,彼の作品のコンセプトをどのように現代的に再構築していけるのかが大きな目標となりました。「時間の砂」のリメイク版も,別のチーム(Ubisoft Montreal)が現在も開発していますのが,その足を引っ張るようなプロジェクトではないのです。
4Gamer:
ストーリー的には「時間の砂」と関係はありますか。また,雰囲気的にはプロローグのような感じでしょうか。
ラディ氏:
いえ,「時間の砂」の三部作は9世紀頃という時間設定でしたが,今回はさらに1500年ほど古い時代(つまり,紀元前5世紀)を描いており,まだ神秘的な伝承などが息づく古代を舞台にしているのです。舞台である架空のカーフ山は,ペルシャ神話に時と知識を司る神鳥として登場する 「シームルグ」の棲む場所という設定になっており,プレイヤーはゲームを通して古代ペルシャの伝承に基づいたストーリーを学んでいくのです。もちろん,“カメオ的”にシリーズ作品と接点が感じられる要素も散りばめているので,ファンに気付いてもらえるとうれしいです。
4Gamer:
主人公のサルゴンは王子ではないのですね。どのようなキャラクターなのでしょうか。
ラディ氏:
サルゴンは若い戦士で,まだ飼い慣らされていないような血の気の多い性格です。不死隊の最も新しいメンバーで,仲間たちとともにカーフ山に連れ去られた王国の王子を救出しにいくことになります。我々がサルゴンの人物像でインスパイアされたのは,漫画家・井上雄彦さんの「バガボンド」で,サルゴンは宮本武蔵なんです。最初は野性味のあふれた“ヤルかヤラれるか”だけしか判断能力がない野蛮人ですが,さまざまな経験を積みながら,体だけでなく心も成長していくようなキャラクターを理想にしました。
4Gamer:
そう言えば,サルゴンは二刀流ですね(笑)。“不死隊”とは本当に不死身の神のような存在なのでしょうか。
ラディ氏:
いえ,これまでの戦争で生き抜いてきた戦士たちの称号みたいなものです。彼らはこの世界におけるスーパーヒーローのような存在で,たとえば壁を突き破るほど殴られても生きているようなカットシーンやアニメーションの描写は,多くの日本アニメから影響を受けたものになります。こうしたファンタジー性や神秘性を強調するために,不死隊のメンバーにも異なる能力を持たせるなど,個性を持たせました。
4Gamer:
確かに不死隊メンバーのキャラクターデザインは,それぞれの人物像が際立っています。ひょっとして,ゲーム中に一緒に戦うとか,もしくは反目し合うことになるとか? とてもカットシーンのためだけに作られたキャラクターたちには見えませんが。
ラディ氏:
ストーリーの展開については何もお答えしませんよ,ネタバレになってしまいますからね(笑)。でも,おっしゃることはその通りです。メノリウス(Menolius)は弓の名手ですし,仮面を被ったラジェン(Radjen)は究極の暗殺者といった具合に,それぞれの兵科をストイックに体現していくキャラクターたちで,サルゴンはその意味で“歩兵の中の歩兵”といったところでしょうか。そんな彼らがカーフ山に行き,その妖力によって不死隊の結成力に影響が出てくる……ということが,ここでお話しできるすべてですね。
4Gamer:
メノリウスと言えば,サルゴンの使っている弓の名前は「Bow of Menolius」と名付けられていました。サルゴンの2本の剣も名前のついた“夫婦剣”で何かの由来があるようですが。
ラディ氏:
本当によく観察していますね(笑)。「失われた王冠」にはさまざまな武器やアイテム,オブジェクトや地域が登場しますが,それら1つひとつに何らかの伝承や曰くがあって,この世界の歴史を感じさせるものになっています。本当に奥深いストーリーになるように作っているので,そうしたことはプレイしていく中で学んでいただければと思います。
4Gamer:
今回のビルドをプレイして,最初のステージで目から赤い光線を放つ敵でかなり苦戦しました。5回倒されて,仕方がないので素通りする道を選びましたが……。
ラディ氏:
あそこで出てくる赤い目のキャラクターは,申し訳ないですが雑魚キャラクターですね(笑)。ただ,今回はチュートリアルをプレイできない仕様だったので仕方ないかも知れません。敵キャラクターはヘビーアタック時に特徴的なシグナルを発生させますが,それが黄色と赤色の目の光なんです。チュートリアルをプレイしていると,赤色に光った時はRTボタンのドッジかスライドを使わなければ攻撃をかわせず,黄色く光った時はRTボタンで受け流ししないと身を守れません。少しプレイすると慣れると思いますので,ぜひまたプレイしてください。
4Gamer:
素通りできたということは,それだけさまざまなプレイスタイルにも対応しているということでしょうか。
ラディ氏:
うーん。ゲームデザインの側面から言いますと,「失われた王冠」はアクション性の高いメトロイドヴァニアですから,1対1の敵は障害となります。雑魚キャラクターでしくじってしまうのはともかく(笑),ボスキャラクターに倒されながらもリスポーン地点でアミュレットを組み替えるなど試行錯誤をして,勝利できるようにスキルアップしていく楽しさを味わってもらえればと思います。
4Gamer:
シリーズで特徴をより強調されているのが「時の力」ですが,これについて説明をお願いします。
ラディ氏:
「時間の砂」で描かれていたのもリワインド(巻き戻し)という時空変化の概念ですが,「失われた王冠」では,さらにそれを練り込み,時に関する特殊能力をいくつか考案しています。その1つが,今回のデモで公開している「テレポート」ですね。そのほかにもゲームを進めていくうえでいくつかの能力を身に付けられますが,私のお気に入りは“時空を切ってしまう”というものです。爆発物を投げつけられると,その直前の空間を切って裂け目を作り,相手のいる場所にその爆破物を送り返すというようなことができます。
4Gamer:
アミュレットは,今回のデモでは9つほどが用意されていました。
ラディ氏:
今回のデモ向けに多めにアンロックしていたもので,本来ならゲーム開始時点では確か3つほどのアミュレットしか登場しません。ゲームを進めていくうちに,特定のエリアで見つけたり,ボスを倒して獲得したり,あるはショップで購入できたりするようになります。アミュレットは合計で40種ほど用意され,それぞれが特徴的でゲームプレイを変えることになるので,1つひとつを試してほしいですね。
4Gamer:
すごい数ですね。ゲームマップはカーフ山地域を描き上げた1つのマップになるのでしょうか。
ラディ氏:
はい。1つの大きなマップとして描いています。このジャンルにはありがちですが,たとえばペルシャからエジプト,さらにインドに進むというようなゲーム環境にバラエティを持たせるためだけに,それぞれのセクションに区切ってしまうようなこともありますが,「失われた王冠」ではカーフ山に連なる1つの地域を非常に細かく描き切っています。そのうえで,以前の作品をプレイした人ならば驚いてもらえるような,ちょっとした工夫も付け加えていますよ。
4Gamer:
いろいろと作り込まれているのを感じます。本日はありがとうございました。
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- ライター:奥谷海人
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