「ありがたき哉 日本語化」は,ここ最近で日本語対応となった海外作品を良い機会だからあらためて紹介しようという,フワッとしたコーナーです
「舞台は夢か現実か分からない美しくも残酷な世界がいいかな。サイドビューのシンプルなシステムで,死にまくって生き返りまくり,それでも少しずつ強くなって行動範囲を広げていけて……。ウホッ」みたいな人は,今回紹介する
「Withering Rooms」を遊んでみるといいかもしれません。
Withering Roomsは,精神病院に放り込まれた女の子が,恐ろしい夢の中で追いかけられて逃げ回って隠れ,時には真っ向勝負で殴り合ったり,死んだり,目覚めたりを繰り返して,舞台となる館の謎の真相に迫るPC向けホラーアドベンチャーです。2022年10月にアーリーアクセスが始まった作品で,2023年の8月に,β実装という形で日本語がサポートされたんですよね(
Steam※外部リンク)。ありがたき哉。
ちなみに筆者は今回初めてプレイする側の人間でして,ゆっくりと15時間ほどしかプレイしていませんが,怖いし,綺麗だし,歯ごたえがあるし,キャラは敵も味方も魅力的だしと,気に入りました。冒頭から恐縮ですが,個人的には
かなりおすすめのタイトルです。
日本語化作業は進行中というステータスです。まだ違和感を覚える部分もありますが,気にしない方向で乗り越えましょう
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様子が変すぎるヴィクトリアン様式の邸宅を探索
Withering Roomsを開発したのは,ワシントン州・シアトルを拠点とするインディーゲームスタジオ・Moonless Formlessです。設立は2022年ですから,かなり若いスタジオですね。
物語の舞台は,1892年のウェールズにある,モスティン私立精神病院とその周辺です。この病院に入院する患者は,観察のため,最初の夜をゲートハウス(門楼とでも言うのでしょうか)で過ごすというルールがあり,主人公の女の子・ナイチンゲールもまずはそこで過ごすことになります。
……のですが,その夜,彼女が目覚めた場所は,なんと
夢の中でした。場所としては,精神病院として使用されているヴィクトリアン様式の「モスティン邸」なのですが,その様子は明らかに現実世界とは異なります。そして彼女は,死んでも覚めない夢の中で,恐ろしい体験をすることになるのです。
(パチッ)こ,ここは……
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ヤバそうなところだわ! みたいな
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本作はいわゆる2.5Dスタイルのホラーアドベンチャーでして,基本的にはサイドビューで展開するアクションに,奥行きを利用した演出を加えた形のゲームとなっています。ごく大雑把に本作を表現すると「アンデッドや透明な幽霊,魔女が住まう恐怖の館を探索し,自らを成長させながら,その場所に秘められた謎を解き明かしていく」といった感じですね。全体の雰囲気は初代
「クロックタワー」や
「返校 Detention」(
PC /
Nintendo Switch /
iOS /
Android)などが近いでしょうか。ただこれらの作品より本作は戦闘が多いというか,むしろ
戦闘がメインと言ってもいいレベルで,敵とバチバチやり合うゲームです。
謎解きもアチコチに存在します
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しかも本作はローグライクの要素を盛り込んでありまして,ナイチンゲールは,死んで目覚めると,一部を除いて持っていたアイテムを失い,モスティン邸のレイアウトも変わります。いわゆる
ローグライトですね。本作は,
ホラーゲームそのものが持つ怖さと,
死んですべてを失う怖さを併せ持っているわけです。
「死こそが最大の教師」とは良い言葉ですね。実際のところ本作は,いわゆる“死にゲー”的な側面もあります
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戦闘で「有利な状況を作る工夫」が楽しい
ナイチンゲールは,夢で出会った人物に導かれ,駆け出しの魔女として,この不気味な夢の世界のメカニズムはどうなっているのか,なぜそんな場所が生まれたのか――などのさまざまな謎を解き明かすべく探索します。道しるべとなるのは,キーとなるNPC達との会話によって発生したクエストが中心で,やれ誰々に会え,やれ何々を持ってこいといった任務を遂行中に,多くの敵に遭遇し,戦うこととなります。
NPCはバラエティ豊富で,だいたい不気味です
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本作では探索する場所として屋外に出ることもありますが,その多くは主に家屋の通路と部屋です。部屋の多くには扉があり,(施錠されていなければ)それを少し開けて覗き,敵がいないと確認できたら(視界は限られているの完全ではありませんが)恐る恐る入る――という形で探索を進めることが多いでしょう。
扉を開けて追いかけてくる敵とそうでない敵は,少しずつ分かるようになってきます
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敵の種類や行動はさまざまです。種類としては,アンデッド,幽霊,ナイチンゲールと同じような魔女などがいますし,それぞれの行動は,部屋の中や廊下を徘徊していたり,ベッドで寝ていたり,何やらゴソゴソと不気味な作業に熱中していたりと,こちらもパターンは豊富です。
ナイチンゲールが使える武器は,刃物や鈍器といった肉弾戦に向いたものから,投げナイフや銃など遠距離で戦える物,素材を集めて作れる薬品や魔法(“呪文”との表記もありますが,本稿では便宜上,魔法と記します)など,その数は少なくありません。ただナイチンゲールの攻撃や,アイテムの使用,魔法の詠唱には予備動作のようなものが含まれる(つまり操作に対して機敏に反応してくれない)ため,敵の動きや,攻撃のタイミングなどはキチンと学んでいく必要があります。
飛びかかってくる敵などに反応するのは難しいので,やはり少しずつ行動パターンを覚えていく必要があります
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足を止めて体力(と回復手段)頼みで敵を殴り続ける――のような行動でも倒せる敵はいますが,通用するのは最初だけです。相手を毒を付与して少しずつダメージを与える,痺れさせて動きを止めて背後をとって攻める,音の出るアイテムで気を引く,複数の敵を“おとり”を出す魔法で分断する――などといった形で
工夫する必要がでてきます。必要というか,これが本作の面白さをグッと高めている要素と言えるでしょう。
「エンチャント」の魔法をかけて仲間にした(邸内に飾ってあった)鎧と共に,敵を挟み撃ちにしているところです。鎧が弱くて有効じゃなかったですが
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タッグで挑んでくる敵の力を分断できていますね
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幽霊に関しては扱いが少し特殊です。幽霊は鏡に映るか,ナイチンゲール自身の呪いゲージが溜まっている状態でしか,その姿を見ることができません。見ることができた場合は,カメラを使って写真に写し取ることで倒せます。
カメラを構えて
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パシャリ。ちなみに撮った写真は,この手の写真を集めている愛好家(?)に売れます
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なお“呪い”は戦闘以外でも本作の重要な要素になっています。敵の攻撃やトラップなどで溜まった呪いのゲージはアイテムなどの特定の手段で減らすことができますが,呪われていなければ見えない通路やオブジェクトなどが存在しているため,呪いは必ずしもゼロの状態が良いとは限りません。呪いを増やすための装備品があるのも,そういう理由からです。
死んでも繰り越せる物は増え,彼女は強くなっていく
ナイチンゲールが死ぬと,基本的に獲得した持ち物をすべて失いますが,多くのローグライトがそうであるとおり,すべてがまっさらの状態から何度も挑戦する――みたいなことにはなりません。
家屋やその周辺には
「祭壇」が点在しており,これを見つけて一定の供物を捧げると,祭壇一つにつき,死んでも失わない(次に目覚める時まで覚えておける)アイテムを一つ指定することができます。武器や防具といった装備品,魔法,回復アイテムといった各種消費アイテムなどを,死んでも持ち越せるわけです。祭壇は序盤から,(あくまでも筆者の感覚ですが)テンポ良く発見できる印象ですね。
何を覚えるかは,任意の祭壇をタッチすることでいつでも管理できます。最初から“祝福”されていて,死んでも忘れないアイテムもあります
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冒険中に手に入る「記憶の涙」を祭壇に捧げることでも,覚えられるアイテムを増やせます
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またナイチンゲールそのものも,
魔女の能力を高める形で成長させられます。
レベルアップは“最初の魔女”を始めとした特定のNPCにアイテムを渡すことで行えます。ステータスは体力や,呪い,毒,麻痺などの耐性,動く速度や運などとさまざまです。装備品と合わせて,ナイチンゲールをプレイヤーの好みに合わせて育成できるわけですね。
ステータスを高められる謎の装置も登場します
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そのほかにも冒険を進めていくうちに,ナイチンゲールに協力してくれるNPCが増えて便利なアイテムを売ってくれるようになるほか,発見した鏡(姿見)をワープゲートのように使えるようになったりすることで,探索のショートカットが可能になります。
ステータス強化に必要となる供物関係のアイテムはやや貴重品という扱いですが,部分的にNPCから購入できるようになります。キャラクターの成長のテンポは実に良い塩梅でした
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総合的に良ゲー感溢れる一本
ナイチンゲールは最初の夜に(夢の中で目を覚まして),ごく短いチュートリアルを経て,すぐにモスティン邸の探索を始めます。薄気味悪い邸宅を,コツコツと足音を響かせながら歩き始めると,もうその時点で「こりゃ雰囲気がいいぞ……たぶんおそらく絶対面白いに違いない」と感じられるはずです。
戦闘もコツを掴むことで少しずつ被弾を防げるようになり,気付けば,覚えていられるアイテムは増え,ナイチンゲールの能力は高まり,装備も(見るからに)強まり,どんどんやめられなくなっていくでしょう。物語の結末がどうなるかにワクワクしながら,じっくりと遊んでみてほしい作品ですね。