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[GDC 2025]「Skyrim」や「Fallout」からソロ開発へ。Nathan Purkeypile氏が語る「The Axis Unseen」制作の舞台裏
Purkeypile氏は約17年にわたってAAAゲームの開発に携わったあと,Just Purkey Gamesを設立し,1人でオープンワールドのホラーハンティングゲーム「The Axis Unseen」を開発した。
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本稿ではPurkeypile氏が語った,ソロ開発者として大規模なオープンワールドゲームを成功させるための実践的なアドバイスを紹介する。
AAA開発からソロ開発へ
Purkeypile氏はBethesdaで「The Elder Scrolls V: Skyrim」や「Fallout」シリーズなど,多くのヒット作に携わってきた。
なかでも「The Elder Scrolls V: Skyrim」と「Fallout 3」「Fallout 4」の3作品は,いずれもゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞しており,大規模タイトルでの実績は十分。しかし「Fallout 76」のローンチ時は評判が悪く,ネットの反応も厳しかった。
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こうした経験から,Purkeypile氏は新たな方向性として,自らがすべての側面に関われるインディー開発に興味を持つようになったという。
「私はいつも自分を単なるアーティストではなく,ゲーム開発者だと思っていました。だからBethesdaでも常にレベルデザインやシェーダーコードなど,ほかの部門の仕事にも首を突っ込んでいたのです」
なぜソロ開発なのか
Purkeypile氏はソロ開発を選んだ理由として,以下の点を挙げた。
・ゲーム開発のすべての側面に興味がある
・2人の幼い子供を持つ親として,柔軟な時間管理が必要だった
・小規模な会社を立ち上げる場合の人間関係のリスクを避けたかった
・自分のゲームプランに集中したかった
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氏は「小さな会社を立ち上げて友人を雇う場合,その友人を失う覚悟が必要です。最初から明確な契約を結んでおかないと,意見の相違が起きたときに解決に時間がかかります」と指摘する。
ただし完全にすべてを1人でやったわけではなく,必要に応じて外部の協力者を起用した。例えば,モンスターのコンセプトアートやジャーナルの挿絵を描いてもらったり,お気に入りのバンドからミュージシャンを迎えて音楽を担当してもらったりしたという。
このような外部協力者との関係では,「ゆるやかな制約の中で,彼らが誇りを持てるものを作れるようにする」アプローチを取ったそうだ。
実践的なソロ開発のアドバイス
■1. プロダクション管理の重要性
「プロダクション管理は非常に重要です。『会議は退屈だ』と思うかもしれませんが,ソロ開発者の場合は自分自身が物事を終わらせるよう促す必要があります」と,Purkeypile氏は強調した。タスク管理には「Asana」を使用し,重要な決定事項はすべてドキュメントに記録した。また,作業のスピードを上げるためにホットキー(ショートカットキー)を多用することの重要性も指摘し,「コーヒーとホットキーが秘訣です」と冗談めかして語っていた。
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■2. 新しいツールの積極的な採用
氏は「ゲーム開発は常に変化しています。PhotoshopからSubstance Painterへの移行は,私のキャリアで最高の変化の一つでした」と語る。新しいツールを試す時間を確保することは重要だが,そのツールがどれだけ使われるか,習得にどれだけ時間がかかるか,成果を考慮して時間制限を設けることも大切だという。
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とくに効果的だったのはVRでのスカルプティングで,「これまでキャラクターアーティストではなかったにも関わらず,30体以上のユニークなクリーチャーを作ることができました」と成果を語る。
VRスカルプティングは非常に直感的な作業方法で,Unreal Engine 5に直接インポートできる点も効率的だった。
■3. 複数台のPCを使用する
「複数のPCを使うことは,ソロ開発者にとって必須です」と強調する。彼自身,4台のPCと8つのディスプレイを使用しているそうだ。メイン作業用,ラップトップ,Perforceサーバー用,ビルド生成用とそれぞれ役割を分けている。また,Steam Deckを主要なスペックテスト機として活用し,これによってゲームがSteam Deck認証を取得できたという。![]() |
■4. オープンワールド設計のアプローチ
Purkeypile氏はBethesdaで経験した,オープンワールド設計に関する貴重な知見も共有した。氏は「The Axis Unseen」のワールドサイズを「Skyrim」の5倍に設定したが,これは慎重な検討の結果だった。「早い段階でプレイテストを始めることが重要です。別のプログラムでデザインしても構いませんが,実際にどう感じるかを確かめるために,なるべく早くエンジン内で確認するべきです」
また,視点の制御やランドマークの配置も重要であり,プレイヤーがどこからでも,少なくとも一つのランドマークを見られるようにすることを推奨している。「Fallout 76」のマップデザインでは,「トップ・オブ・ザ・ワールド」(スキーリゾート)と大型掘削機をランドマークとして使用し,遠くからでも見えるようにしていた。
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■5. モジュラー建築キットの活用
効率的な環境構築のために,Purkeypile氏は単純な「ブロックキット」を作成し,それを組み合わせて建物や構造物を素早く構築した。「従来の『レゴキット』と呼ばれるものは,特定の方法でしか組み合わせられない超カスタムパーツでした。私は昔ながらのレゴのように,文字通りなんでも作れるようなものに戻しました」
■6. Unreal Engine 5の活用
「The Axis Unseen」はUnreal Engine 5で開発された。「UE5はオープンワールドゲーム向けに設計されており,以前は難しかったことが容易になりました」と述べる。とくにワールドパーティショニングシステム(オープンワールドを管理するための仕組み)や,LODシステム(3Dオブジェクトの詳細度を距離に応じて自動的に調整するシステム)が役立ったという。
ただし,新しいエンジンには「トラバーサルスタッターやシェーダーコンパイルの問題」などの“成長痛”も伴う。
氏はこれらの課題に対して,メインメニューの裏でシェーダーをキャッシュするなど,実用的な解決策を提案していた。
■7. マーケティングと安定性の重要性
インディーゲームのマーケティングについては「学習するスキル」と表現し,早い段階から情報を発信することの重要性が説かれた。「ポッター理論(完璧を求めるよりも実践を重ねるほうが上達する)と,賭博を組み合わせたようなものです。時間をかけると上達しますが,なにがうまくいくかは必ずしも分かりません」
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また,ライブショーケースについては「ウィッシュリスト増加が目的なら価値はあまりない」としつつも,フィルターのない率直なフィードバックを得る機会として非常に価値があるとした。
安定性の維持については「できるだけ早く頻繁にプレイテストし,長期間安定したビルドを維持することが重要」とコメントする。これにより,問題点を早期に発見して修正できるからだ。
振り返りと教訓
3年半の開発期間を経て「The Axis Unseen」をリリースし,Steamでは「非常に好評」のレビューを獲得したPurkeypile氏。
彼は今回,以下のような教訓を共有した。
・より大きなバッファ期間を設けるべきだった(最後の2〜3か月は結局クランチすることになった)
・ゲームの発表をもう少し遅くするべきだった(マーケティングの労力を考えると)
・デモをより早く公開し,レビューを集めるべきだった
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最後にPurkeypile氏はまとめとして,「ソロ開発はすべての人に向いているわけではありません。ゲームのすべての部分,退屈な作業も含めて気にかける必要があります」と結論づけた。
AAA開発への復帰はあるか
講演後の質疑応答で,AAA開発への復帰を考えているかという質問が出てきた。これに対し,Purkeypile氏は「正直言って,溝を掘る仕事のほうがまだマシです」と率直に答えた。
「AAA開発,とくに大企業でのリーダーシップポジションはとてもストレスフルでした。血圧が高くなり,辞めたら正常に戻りました」
一方で,別のビッグプロジェクトを再び手がける可能性については前向きな姿勢を示した。ただし,3年半の大規模プロジェクトののち,「1か月でシッピングできるような本当にバカなことをやりたい」と笑いながら言った。現在は粘土で作ったものをスマホでスキャンし,すべての効果音を自分の口で作るようなゲーム(?)を作っているという。
Nathan Purkeypile氏の講演は,AAA開発からインディー開発への転身という個人的な旅路と,ソロ開発者として大規模なオープンワールドゲームを成功させるための実践的なアドバイスを提供するものだった。
ひときわ印象的だったのは,彼がAAAスタジオでの経験を生かしながらも,ソロ開発者ならではの柔軟性と創意工夫を発揮して,品質を妥協することなく効率的に開発を進めた点だ。
「The Axis Unseen」の成功は,一人の開発者が情熱と適切な方法論を持って取り組めば,かつては大規模チームでしか実現できなかったようなプロジェクトも可能になることを示しているのかもしれない。
「The Axis Unseen」公式サイト
「GDC 2025」公式サイト
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