2024年11月16日と17日,日本最大規模のアナログゲームイベント
「ゲームマーケット2024秋」が,幕張メッセの展示ホール4・5・6・7で開催された。
東京ビッグサイトで開催された前回から,会場がさらに広くなり,見通しがよくなった今回のゲームマーケット。大型ブースが“田の字”を描くように並び,そのあいだに一般ブースが配置されるレイアウトは前回と変わらないものの,空間が広がったことでブース同士の間隔は広くなったように感じられた。
また前回は2日目のみの設置だったフリースペースが常設になり,フードコーナーや
「こどもゲームコーナー」「ビッグゲームパーク」といったアトラクション系のコンテンツと共にホール7に集められる形となった。特設ブースも“その場で遊べる,楽しめる”をコンセプトにしたものが多く,会場全体で買い物と遊びの双方を楽しめる工夫が見られた。
フリースペースとフードコーナーは合わせてホール7の6割ほどを占め,混雑時でも席を見つけられるほど広かった。会場で購入したゲームを即座に遊ぶといった楽しみ方も,前回から定着してきたようだ
 |
会場全体を使った「ドラマチック謎解きゲーム」,チェッカーやシャンチーといった古くからあるゲームを体験できる「伝統ゲーム」,リアルな戦場をシミュレートする作品の歴史を展示する「ウォーゲームの世界」など,バラエティに豊かな特設ブースも
 |
 |
 |
 |
 |
 |
会場が東京ビッグサイトから幕張メッセに移ったことについて,ゲームマーケットの事務局長を務めるアークライトの
草野彰宏氏に話を聞いたところ,今のところ好意的な意見が多いとのこと。また今後も出展者からはもちろん,一般参加者からも意見を汲みあげながら,「新会場に適したゲームマーケットの姿を探っていく」とのことである。
ゲームマーケット事務局長の草野彰宏氏
 |
また,以前に告知されていたSPIEL Essen 2024へのゲームマーケットへの出展については,一定の成果をあげたと認識しているという。「海外挑戦プラン」の募集で集まったタイトルから,すでに複数タイトルの海外展開が決定したとのことで,次回ゲームマーケットでも同様のプランを用意する予定とのことだった。出展者側で海外展開を目指している人は,続報に期待しておこう。
次回「ゲームマーケット2025春」は2025年5月17日と18日に,今回と同じく幕張メッセでの開催となる
 |
「ドラスレ」×「HacKClaD」コラボなど,新作情報が続々公開
国内外のアナログゲームが一堂に会する場であるゲームマーケットは,さまざまな新作が発表される場でもある。というわけで,まずは会場で見かけた大手ブースの新製品を,まとめて紹介していこう。主な発表タイトルは以下のとおり。
種別 |
タイトル |
メーカー |
ボドゲ |
電力会社 アウトポスト |
アークライト |
ボドゲ |
ビヨンド・ザ・ホライゾン |
アークライト |
ボドゲ |
スポットライト |
アークライト |
ボドゲ |
ヒストリー・オブ・ザ・ワールド |
ホビージャパン |
ボドゲ |
SETI:地球外知的生命探査 |
ホビージャパン |
TRPG |
サイバーパンク:エッジランナーズ ミッション・キット |
ホビージャパン |
TRPG |
真・女神転生III-NOCTURNE TRPG 復刻版 |
ホビージャパン |
TRPG |
指輪物語TRPG 5E |
ホビージャパン |
TRPG |
プリパラ み〜んなであそぼう!ダイスキTV |
ホビージャパン |
マダミス |
デビルマン アーマゲドン序章 |
viviON |
マダミス |
メガゾーン23 バハムートの残影 |
viviON |
ボドゲ |
ミュー&モア 日本語版 |
ケンビル |
ボドゲ |
ティーガーデン 日本語版 |
ケンビル |
ボドゲ |
ピラミドミノ2 和訳付き輸入版 |
ケンビル |
ボドゲ |
バビロン 日本語版 |
ケンビル |
ボドゲ |
ヴォイドフォール |
Engames |
ボドゲ |
グランドオーストリアホテル |
Engames |
ボドゲ |
グランドオーストリアホテル拡張:レッツワルツ |
Engames |
アークライトブースで発表された新作は,人気タイトルのスピンオフ作品
「電力会社 アウトポスト」と,新規タイトルの
「ビヨンド・ザ・ホライゾン」「スポットライト」の3作品だ。会場では各タイトルのコンポーネント(内容物)が展示されていた。
また,アークライト・ゲーム賞の発表コーナーでは,サイシュピールの
「バザールの商人たち」が最優秀賞を受賞したことが発表されていた。最優秀賞受賞作品は商品化が行われる可能性が高いので,こちらも注目だ。
「バザールの商人たち」はゲームマーケット2024春で発売された,交渉とセットコレクションを中心としたタイトルだ。ゲームマーケットの紹介ページから説明書が閲覧できる
 |
 |
ホビージャパンブースでは,ボードゲームとテーブルトークRPGの双方で,大きな発表が行われた。テーブルトークRPG関連の幾つかのタイトルは,先に記事を掲載して
お伝えしているが,このほかにもアニメ「プリパラ」シリーズをテーマにしたテーブルトークRPG
「プリパラ み〜んなであそぼう!ダイスキTV」のパネルが掲出され,来場者を驚かせていた。どんなゲームなのかは想像もつかないが,早くも
公式サイトがオープンしており,ダイスを構えるキャラクターの姿が公開されている。
関連記事
ホビージャパンは,2025年1月から3月にかけて発売するテーブルトークRPG関連の新製品――「サイバーパンク:エッジランナーズ ミッション・キット」「真・女神転生III-NOCTURNE TRPG 復刻版」「指輪物語TRPG 5E」の3作を本日(2024年11月16日),発表した。
[2024/11/16 00:00]
ボードゲームでは,文明の発生から第一次世界大戦に至るまでの歴史をたどる重量級ゲーム
「ヒストリー・オブ・ザ・ワールド」の新バージョンが,2025年にリリースされることが明らかとなっている。2018年に発売された新版から7年ぶりのリメイクということで,どんな変化が加わるのか今から楽しみだ。
マーダーミステリー関連では,viviONのアナログゲームブランド・ADICEのブースにて,永井 豪氏の名作漫画「デビルマン」をテーマにした
「デビルマン アーマゲドン序章」,近年になってリブートの動きが始まったOVA「メガゾーン23」をテーマにした
「メガゾーン23 バハムートの残影」の2タイトルのマーダーミステリー作品が,いずれも2025年春にリリース予定であることが発表されていた。
また,これらはパッケージ版だけでなく,同時期にスタート予定のオンラインサービス
「ミステリーラボ」を用いた,PCおよびスマホでのオンラインプレイにも対応するという。
なおマーダーミステリー関連の新情報は,後日まとめ記事を掲載する予定なので,こちらも楽しみに待っていてほしい。
viviONの商品に関する情報は,アナログゲームレーベル「ADICE」の公式Xなどで告知されている
 |
 |
さらにジャイアントホビーのブースでは,同社の人気シリーズ
「ドラスレ」と,SUSABI GAMESの
「HacKClaD」とのコラボ商品が2025年春に登場することが発表されていた。詳細は不明だが,ポスターには「Collaborative Expansion」との記載があり,いずれかの作品の“拡張”として新商品が発売されるのかもしれない。
HacKClaDシリーズを手掛けるSUSABI GAMESの
かく氏によると,本企画は前回のゲームマーケットの会場での会話が元になって生まれたものだという。続報はジャイアントホビーやSUSABI GAMESの公式X,およびSUSABI GAMESのDiscordなどで告知予定とのことなので,いち早く情報をキャッチしたい人はフォローしておくといいだろう。
SUSABI GAMESのブースでは,独立型拡張セット「HacKClaD. DeltA」の先行販売が行われ,開幕直後から長蛇の列が生まれていた。前作「アイドルアライブ」についても,登場する全アイドルの楽曲制作に向けたクラウドファンディングが決定するなど,メディアミックス展開が積極的に行われている
 |
 |
かく氏に「実現可能性を考慮せず,今後やってみたいこと」を聞いたところ「ボードゲーム業界にとどまらない展開で,驚きとワクワクを届けたいです」と,新たな展開への意欲を語ってくれた
 |
日本鉄鋼連盟(JISF)がゲムマ参戦。会場で見かけた気になるブースをチェック
ここからは,会場で見かけた気になるタイトルを,筆者の独断でピックアップして,写真で紹介していこう。各キャプションには,メーカーやゲームタイトル,関連リンクを合わせて掲載するので,気になった人はそこから詳細を確認するといい。
ムービック「NIKKE DUEL ENCOUNTER」
Level InfiniteのシューティングRPG「勝利の女神:NIKKE」を題材としたボードゲームで,会場では初心者向け体験会が開催され,12月20日に発売の「2nd ENTRY」の展示も行われた。
リンク:公式サイト
 |
 |
大興印刷株式会社「アニマルカードゲーム」
Web漫画「カードゲームうさぎ」の作中でプレイされているTCGをアピールするブース。2024年5月に開始されたクラウドファンディングでは1億507万3000円を集めるなど,大きな期待を受けている作品だ。発売前の体験イベントが開催されており,一般販売も想定しているとのこと。
リンク:公式サイト
 |
 |
QUETI TECTONICS「EMBER: Obsidian Protocol」
ロボットのプラモデルを用いた大型ミニチュアゲームの日本語版。2019年にKickstarterでクラウドファンディングが行われ,5年の歳月を経てついに生産開始に至ったという力作だ。今後は日本国内に向けた一般販売も実施予定とのことなので,公式Xをフォローしつつ続報を待とう。
リンク:公式Xページ
 |
 |
 |
 |
オインクゲームズ「海底探検 深版」
発売10周年を迎えた人気タイトル「海底探検」のアップグレード版にあたる。特殊ダイスが収録されたほか,空気を消費することで3つのダイスを振って合計値を参照できる追加ルールが登場し,より“深い”体験を味わえるようになった。
リンク:公式サイト
 |
 |
ジーモード「みんなで空気読み。究極の二択」
空気を読んで適切な行動を取る「空気読み。」のアナログ版。悩ましい“究極の二択”が大量に収録されており,親プレイヤーの回答を当てれば点数を獲得できる。すでに在庫は売り切れとのことで,現在は再生産待ちとのこと。手に入れたい人は実店舗に足を運ぶか,公式Xなどで続報を確認して再販を待とう。
リンク:「空気読み。」シリーズ公式Xアカウント
 |
 |
ClaGla「クルクルミラーサーカス」
ホワイトボード仕様の円形タイルに書かれた文字を推測するパーティーゲーム。回答者にはタイルの一部が公開され,自由に回転させられる。公開される部分には鏡が設置されるが,それに惑わされずに答えを見つけ出さなければならない。
リンク:公式紹介ページ
 |
 |
スタジオムンディ「まねきねこれくしょん」
人気ゲームデザイナーのライナー・クニツィア氏が手掛けた「Black Sheep」のリメイク版にあたる作品。コタツとネコをモチーフにしたコンポーネントは作り込まれており,オリジナル版とは違った可愛らしい雰囲気を作り出している。
リンク:公式紹介ページ
 |
 |
I was game「タリックス」
「ボルカルス」などを手掛けた上杉真人氏が販売していたのは,前作「エクストリームトリックス」の続編にあたるトリックテイキングゲーム。同ジャンル内でもかなり“先鋭化”した内容だという。再販の予定はなく,メーカーなどから声がかかれば製品化されるかもしれないとのこと。
リンク:上杉真人氏 Xアカウント
 |
 |
keepdry
今回で創設10周年を迎えたkeepdryは,デッキ構築ゲーム「神機共鳴コア・コネクション」や,対戦カードゲーム「ガンナガン」のキャラクターたちが描かれた10周年記念グッズを販売していた。
リンク:keepdry Xアカウント
 |
 |
CMON JAPAN「アンマッチド:アドベンチャー テイルズ・トゥ・アメイズ」
伝説や歴史に登場する人物が戦う「アンマッチド」シリーズ新作の先行販売が行われた。また,次に日本語化するシリーズ作品の投票や,クラウドファンディングが行われていた「ファイナル・ガール」(関連記事)の追加支援受付なども実施されていた。
リンク:CMON JAPAN 公式Xアカウント
 |
 |
allplay「Through the Desert」
アメリカに拠点を置くallplayのブースでは,同社が展開するタイトルの日本語版が販売されていた。まだ国内パブリッシャがリリースしていない「Through the Desert」(砂漠を越えて)なども日本語に対応済で,国内展開を待つファンを驚かせていた。
リンク:allplay公式サイト
 |
 |
またゲームの販売だけでなく,各ブースが展開する面白い企画に参加するのもゲームマーケットの楽しみの一つだ。先述のとおり会場全体が広くなったことで,中規模のブースでも特殊な企画や展示が行いやすくなったようである。
Engamesのブースでは,人気のタイトルを投票で決定する「Engames総選挙」が行われた。ゴツい本格的な投票箱が用意され,有効投票数は649票にのぼったという。結果が知りたい人は,公式Xアカウントをチェックしてみよう。
リンク:Engames 公式Xアカウント
 |
 |
その中でも特筆して注目を集めていたのが,鉄のリサイクルをテーマにしたボードゲーム
「リサイクルハンター」を,クイズに回答できた人向けに無料配布していた,“JISF”こと
日本鉄鋼連盟のブースだ。
日本鉄鋼連盟は,国内における鉄鋼業の調査や研究を行う一般社団法人とのこと。そのため直接的に利益を出す活動は難しいそうで,今回は無料頒布というスタイルになったのだとか。
パッケージには収録された「鉄トークン」は,鉄製のナットで表現されている
 |
 |
 |
現場で本企画の紹介を担当してくれたのは,日本鉄鋼連盟の技術・環境部 地球環境グループで参事補を務める
青木宗太氏だ。青木氏によると,本作は鉄のリサイクル性や環境優位性をアピールするために開発された作品であり,ゲームを通じて“何度も生まれ変わる鉄”の姿を体感できるという。
日本鉄鋼連盟 技術・環境部 地球環境グループ参事補の青木宗太氏。ほぼ100%を再利用できるという,鉄鋼業の環境優位性を紹介してくれた
 |
製品としてのクオリティにも力が入っており,ゲームデザインは
カナイセイジ氏,編集に
白坂 翔氏と
秋山昂亮氏,アートワークに
TANSAN,プロデューサーに
安藤耀司氏と,開発チームにはかなり豪華なクリエイターが揃っている。
となれば手に入れて遊びたいところだが,現在のところ教育機関とボードゲームカフェ向けの抽選による配布,およびイベントでの頒布のみが入手経路となっている。遊ぶには当選したボードゲームカフェに行くのが一番手っ取り早い手段といえる。
青木氏は「一般販売をしてほしい,という声は多く頂戴しました」と語っていたが,やはり販売の形を取るのは現時点では難しいようだ。ただ,今後は頒布する機会を増やす手段を検討するとのことなので,入手したい人は
公式Xをフォローしつつ続報を待とう。
実はゲームマーケット2024春にも出展を行っていたという日本鉄鋼連盟。そのときは「鉄の生まれ変わり」を表現したすごろくを展示していたという
 |