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[GDC 2025]「サイレントヒル2」リメイクは迷宮の恐怖をどう再構築したのかーー同作のシニアレベルデザイナーが登壇したセッションをレポート
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GDC 2025の2日目(現地時間2025年3月18日),Level Design Summitのセッション「Silent Hill 2: The Mystery of the Remake」では,ゲームに登場するLabyrinth(迷宮)の環境ストーリーテリングと意思決定のプロセスを通して,オリジナルの魅力と現代のゲームデザインをどう融合させたのかが語られた。
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「SILENT HILL 2」のリメイクでは,自身の原点に立ち返る形でシニアレベルデザイナーとして従事。もともとプレイヤーとしても愛着のある作品だったため,声がかかった際には強い興奮と情熱を感じたという。
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リメイクにおける大きな挑戦の一つが,恐怖を形作るレベルデザインの再構築だった。オリジナル版のレベルデザインは,不明瞭で複雑な構造がプレイヤーに不安と恐怖を与える重要な要素となっていた。しかし現代のゲームデザインにおいては,オリジナルの不明瞭さから生まれる不安感を維持しつつ,遊びやすさを調整し,過度なストレスを軽減することが求められる。
Labyrinth(迷宮)は3人のレベルデザイナーが制作したエリアであり,リメイクではほぼゼロから作り直す必要があった。
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リメイクの開発では,複雑でナビゲーションが困難な点を解消するために,Subtle Trail(微細な導線)を導入。壁や床にわずかな痕跡を配置し,自然と出口へと誘導する視覚的なヒントを用意した。これにより,プレイヤーが無意識に正しい方向へ進みやすくなっている。
また,オブジェクトや空間が心理的な圧迫感を与えるデザインは継承しつつ,エリアごとに異なる視覚的テーマを明確化させた。回転するキューブの謎解きも,よりシンプルで論理的な解法に変更され,キューブの操作による環境の変化を視認しやすくした。
さらに,迷宮内ではプレイヤーが自らの足跡を残しながら進む仕組みを採用。これにより,方向感覚をサポートしつつ,探索の不安感を演出する。このアイデアは,ギリシャ神話の「アリアドネの糸」 から着想を得たという。
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本作の開発では,オリジナルと同様に環境が物語を語るストーリーテリングを重視し,「ファンの期待を裏切らず,細部までこだわる」ことを最優先にしたという。例えば,ある謎解きオブジェクトの配置は,その雰囲気に最も適した場所へと移動。また,戦闘だけでなく「逃げる恐怖」を演出するための環境設計も強化された。
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その一例として,床下に潜む敵「マンダリン」(Mandarin)は,暗い環境でも認識しやすいよう特定の光や視覚的エフェクトが追加された。さらに,床下から巨大な顔が覗く演出を強化し,圧倒的な恐怖感を演出。同時に,プレイヤーが安全なエリアと危険なエリアを直感的に理解できるよう,行動範囲の調整やフロア構造の最適化も行われた。
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Labyrinth(迷宮)は物語や主人公ジェイムスに深く関わる場所であるため,ネタバレを避ける意味でも詳細な説明は控えられた。しかしこのセッションを通して,「リメイクとは,過去を尊重しつつ,新たな体験を生み出すこと」だという考え方が伝わってきた。
それは単なるリバイバルではなく,ホラーゲームの新たな基準を作ろうとする意志でもある。原作の雰囲気を生かしながら,新たな恐怖体験を届ける──リメイクの本質に向き合い,ゲームを作るとはどういうことか。改めて考えさせられるセッションだった。
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