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[プレイレポ]超常現象の起こる謎の半島を,修理した車で走り抜けろ。ホラーテイストからリラクゼーションまでカバーする「Pacific Drive」の独自性
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印刷2024/02/27 08:00

プレイレポート

[プレイレポ]超常現象の起こる謎の半島を,修理した車で走り抜けろ。ホラーテイストからリラクゼーションまでカバーする「Pacific Drive」の独自性

 2023年は各所で「当たり年」「豊作」などと評されるぐらいに,非常に多くの傑作,話題作が発売された1年だった。特に秋から年末ごろにかけての発売ラッシュは凄まじく,今でもまだそのころに発売された作品をプレイ中,という人もいるのではなかろうか。だが今年も2か月が経過し,すでに数多くのビデオゲームが発売されている。大作ゲームや名作の続編などに区切りをつけ,ここらでなにか“一風変わった”ゲームを遊んでみたいと感じてきたのなら,「Pacific Drive」PC/PlayStation 5)はうってつけの作品となるだろう。

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 Pacific DriveはIronwood Studiosが開発し,2月22日に発売されたゲームだ。ストアページの説明文によれば,ゲームのジャンルは「ドライビング・サバイバル・アドベンチャー」とのこと。おそらく多くのプレイヤーにとって耳馴染みのないジャンルであろうし,実際にかなり変わった内容となっている。

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 ゲームの舞台となるのは「オリンピック半島」。政府によってなんらかの実験場とされた場所で,今では侵入経路が封鎖されている。明確に言及されるわけではないが,おそらく配達ドライバーであったらしい主人公は,なぜかそんなオリンピック半島に迷い込み,超常現象によって「隔離ゾーン」(作中では単に「ゾーン」と呼ばれることが多い)の内部に囚われてしまうこととなる。ということで,「ゾーンからの脱出を目指す」のが本作の大きな目的だ。

 物語のジャンルは「超常現象SF」で,不気味かつややレトロな質感はドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス」や,その原点となっている古典的なアメリカ映画などを彷彿とさせる。また、隔離地域を「ゾーン」,超常現象を「アノマリー」と呼称するところなどはストルガツキー兄弟の小説「ストーカー」を元ネタとしたビデオゲーム「S.T.A.L.K.E.R」シリーズが想起されるなど、随所にさまざまな作品の影響が見られる。純粋なホラーゲームというわけではないが,全体的に重く暗い雰囲気であり,突然びっくりするようなことも起こるので,心臓の弱い人や大きい音の苦手な人は,プレイする際にやや注意が必要であろう。

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 前述したように,本作は変わった内容の作品だ。ゲームプレイとしては,自動車でエリアの中を探索し,物を収集して拠点に帰り,拠点や自動車をアップグレードして新しい場所へ向かうというサイクルの繰り返しが主となっている。失敗してしまうと(初期設定であれば)所持していたアイテムの一部を紛失してやり直しになるというわけだ。

 「失敗」といっても,人間や怪物に追いかけ回されて殺されたりするわけではなく,あくまでアノマリーによる事故や,ダメージを受けるゾーンにオーバーステイしてしまったための死亡であってFPS的な「戦闘」があるわけではない。こういう(FPS視点の,純粋なストーリーゲームではなく,繰り返しが主体となっている)作品で「戦闘」がない,というのはかなり珍しいことであろう。
 
 本作のSteamレビューなどを見ると「ローグライク/ローグライト」という言葉が散見されるし,筆者の考えでは(前述の「S.T.A.L.K.E.R」シリーズに影響を受けた)「Escape From Tarkov」に代表される「脱出(Extraction)シューター」との類似性があるように思う。とはいえどちらも類似しているというだけで,そのものではないようにも感じられる。本作は既存のジャンルでそのまま説明することが難しい作品になっている。

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 ここからはPacific Driveの大まかな流れを紹介していこう。まず,拠点で行き先を決める。ストーリークエストがある場合は,その目的地が表示されるのでそこを目指すのがよいだろう。もちろん,クエストを無視してほかの場所に行くこともできる。マップは完全なオープンワールドではなく,エリアごとに分けられているが,各エリアはかなり広い。

 目的地を決めたら車に乗り込み運転開始だ。ドアを開け,乗り,ドアを締め,キーを回し,ギアをドライブにいれるというのをすべて操作しなければならないため,最初はかなり面倒に感じられるだろう。というか,本作は意図的に面倒くさく作られており,プレイヤーがモタモタしやすくなっている。戦闘が存在しないので,「モタモタしているうちに死ぬのか,なんとか打開するのか」というハラハラ感を生み出すための装置になっているのだ。目的地を目指すために必須である「マップ」もいちいち首を右に向けて確認しなければならない。もちろん,その間も超常現象は起きるし,雨の坂道だったら勝手に滑っていってしまったりもする。

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 目的地を目指しがてら,忘れてはいけないのが「探索と収集」だ。ゲーム開始時点では非常に物資が乏しいため,素材をこまめに,手当たり次第集めるのが重要となってくる。道に放棄された廃車からガソリンを抜き取ったり,パネルを解体して金属にしたり……ともかくなにか建造物を発見したらいちいち車を停車し,見に行ってみるのがよい。車はちゃんと平らなところに駐車しておかないと,どこかに行ってしまったりするので要注意だが。

 金属を解体するための「スクラッパー」,ドアの鍵を破壊するための「バール」などの装備にも耐久力が設定されており,壊れたら素材からクラフトする必要がある。つまり,素材が足りないと素材収集用の装備も作れないというようなジリ貧の状況になり得るのだ。こういう理由もあって,目的地だけを目指さずにじっくり探索するというのが非常に重要なゲームプレイになっている。とはいえ,あまり滞在しすぎると「不安定前線」というダメージを受けるゾーンが迫ってきてしまうので,どこかで見切りをつけなければならないタイミングもあるのだが。この「探索と収集」,そして「切り上げ時の見極め」は本作のキモというか,一番楽しいところだ。コツコツ物を集めるのが好きな収集好きのプレイヤーにはたまらない要素だろうし,生還できたときの達成感はかなりのものがある。

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 素材も無限に収集できるわけではなく,インベントリを管理するというような要素もある。バックパックに入り切らない分は,いちいち車のトランクに持ち帰って空きを作ってから再度拾いに行かねばならない。

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 素材を充分に収集し,そろそろ帰るかとなったらマップ上にあるアンカーを目指し,そこにあるエネルギーを車に蓄える必要がある。そのエネルギーによってゲートウェイを開け,ゲートウェイを通過できれば拠点であるオートショップに帰れる。SF的な説明はやや難しいが,ゲーム的な要素だけを言えば「何箇所か巡って,最後にゴールにたどり着かなければならない」ということだ。ゲートウェイが開くと嵐が起こり,非常に危険度が高いため,かなり焦って目指したほうがよい。

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 ゲートを通過できれば無事拠点に帰還。その後は,車の修理や必要なアイテムを作るなど、次のドライブに向けた準備を進める時間だ。集めてきた素材は車の修理にも用いることになる。車はタイヤ一つ一つ,パネル一枚一枚にすべて耐久力が設定されており,こちらもかなり面倒くさい要素だ。場合によってはアノマリーがひしめく危険な道中でも緊急的に修理しなければならないタイミングがやってくるかもしれない。このあたりは宇宙船がボロボロ壊れる宇宙探索ゲームである「Outer Wilds」を少し連想させる。
 
 拠点で落ち着いて修理をする場合は,ちょっとしたリラックス効果も感じられる。「House Flipper」「PowerWash Simulator」などの作業シミュレータ系ゲームと近い感覚なのだ。ひとつのゲームを説明するときに「Escape From Tarkov」と「House Flipper」が同時に出てくるなんてことはあまり起こらないので,これは本作が変わったゲームであることの証左かもしれない。

 素材は車の修理,道具の制作のほか拠点自体の強化にも用いることになる。拠点を強化することによって拠点で行えることが増え,ゲームの進行が有利になる。

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 拠点では車にステッカーを貼ったり,装飾することも可能だ。拾った装飾用アイテムを車内に配置することもできるので,車に愛着が湧きやすくなっている。ちなみに,ゲーム内の説明によれば主人公が乗っている車は「レムナント」であり,人間をどんどん執着させ,最後は持ち主が行方不明となる危険な物体の一種とのこと。執着しすぎない程度に装飾するのがよいだろうか。

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 ここまで読んで,本作を「難しそうだ」と感じた人は安心してほしい。本作には非常に充実したゲームプレイオプションがあり,難度をプレイヤー好みに変えられる。たとえばドライブ失敗時にアイテムを落とさないようにしたり,車両がダメージを受けないようにしたり,なんだったらプレイヤーの死亡自体をオフにしたりもできる。また,緊張感のためかやや画面が見づらい場面も多い本作であるが,そのあたりはアクセシビリティオプションで調整可能だ。

 筆者もまだ序盤部を遊んだだけだが,本作のことを非常に気に入った。ゲームプレイが面白いのはもちろんのこと,グラフィックスの格好良さや,カーラジオから流れる楽曲の素晴らしさなど,細部まで気の利いたとてもよく出来た作品だと感じる。知っている作品の要素は数多くあるが,総合すると何とも似ていない,オリジナリティに溢れた新しいゲーム体験となっていた。「Pacific Drive」,非常におすすめなので,ぜひとも遊んでほしい。

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