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印刷2022/09/18 02:16

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[TGS2022]「Alone in the Dark」,デモ版「Grace in the Dark」をプレイアブル出展。THQ Nordicのプロデューサーにシリーズ復活の意図を聞いた

 東京ゲームショウ 2022のTHQ Nordicブースに,「Alone in the Dark」PC / PS5 / Xbox Series X)がプレイアブル出展されている。1992年にInfogramesがリリースした同名タイトルの“リ・イマジネーション版”だが,現段階で,あまり多くの情報は公開されていない。
 会場で「Alone in the Dark」のプロデューサーであるベテランゲーム開発者,ミハイル・ペック(Michael Paeck)氏に話を聞いたので,その内容をお伝えしたい。


 その前に,「Alone in the Dark」について簡単に説明しておきたい。オリジナル版は,今からちょうど30年前の1992年,当時のゲーム業界で大きな存在感を発揮していたInfogramesというメーカーがリリースしたタイトルで,ホラーアドベンチャーの嚆矢として知られる作品だ。「世界初の3Dサバイバルホラー」としてギネスブックにも掲載されており,あとに続く多くのホラータイトルに影響を与えた。
 細かいことを言えば,商業ベースのゲームで3Dキャラクターが利用されたのも,「Alone in the Dark」が初のことだった。

 このあたりのことは,2012年3月10日に掲載したGDC 2012レポートに詳しく書いたので,興味のある人は目を通してほしい。さて,第1作の評価を受け,Infogramesは,シリーズ第2弾,第3弾を矢継ぎ早にリリースしたのだが,いずれも完成度が低く,そのため「Alone in the Dark」は次第に評価を落としていくことになる。InfogramesがAtariというブランドを手に入れて以降,何度かリブートが行われたものの,以前のような輝きを取り戻すことはなかった。
 2010年代末にはAtari/Infogramesが経営不振に陥り,保有する数々の資産を売却した結果,THQ Nordicが「Alone in the Dark」のIPを手に入れることになったのだ。

「Alone in the Dark」のプロデューサーを務めるTHQ Nordicのミハイル・ペック氏。1990年代後半に業界入りし,「ELEX」などを担当してきた経験を持つベテラン開発者だ
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原作に忠実で,同時に現代的なフォルムをまとった新作


 THQ Nordicが復活に挑む「Alone in the Dark」が,リメイクやリバイバルではなくリ・イマジネーション(reimagination。改めて想像したり,別の視点から解釈したりすること)であるのは,ペック氏によれば,「オリジナルへのリスペクトを最大限に表現するため」だという。ペック氏は,「忠実にリメイクしても,3時間で終わってしまうゲームです。しかし,世界観を拡大するうえで後世の我々が勝手に新しいものを付け足していけば,古くからのファンは納得しない。ですから我々は,リ・イマジネーションと銘打ち,とくに第2作,第3作のストーリーや世界観をうまく利用する形で,ゲームの規模を12時間ほど楽しめるように広げていったのです」と述べる。

 そこから生み出された大きな変更点が,ジェレミー・ハートウッドが「失踪した」という設定だ。
 オリジナル版では,デルセト屋敷で自死したジェレミーにまつわる不可解な謎を解くため,貧乏探偵のエドワード・カーンビーと,ジェレミーの姪エミリー・ハートウッドが屋敷に潜入するという話だったが,主人公の2人はそのままに,ジェレミーは失踪し,1993年の「Alone in the Dark」で誘拐された少女という役どころだったグレースが,ジェレミーの娘として登場している。
 
肩越しの三人称視点に統一された新生「Alone in the Dark」
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 東京ゲームショウ2022で公開されているデモ版が,「Grace in the Dark」というタイトルなのも,こうした理由からだろう。新生「Alone in the Dark」の導入部や一部ではなく,ティザーデモとして公開されているのだ。
 ペック氏によれば,「本編のリリース前に無料ダウンロードできるようにするか,メインメニューで選択できる別のチャプターとして用意するものの一部」だという。最近では,Don't Nodの「ライフ イズ ストレンジ2」のプロローグとして,「オーサム・アドベンチャーズ・オブ・キャプテン・スピリット」が無料公開されていたが,それに似た関係性にあるようだ。
 さらに言えば,グレースがストーリー上の大きな鍵を握る1994年の「Alone in the Dark 2」では,本編発売前に「Jack in the Dark」というプレイアブルデモが公開されており,「ティザーデモ」というファンサービスを開拓したのも「Alone in the Dark」シリーズだった。

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新生「Alone in the Dark」を開発するタレント集団


 「Alone in the Dark」の開発を行っているのは,スウェーデンに本拠を置くPieces Interactiveで,ここは2017年にThe Embracer Groupに買収され,THQ Nordicが率いる事業グループに組み込まれたデベロッパだ。
 ペック氏によれば,開発メンバーは40人ほど。開発で重要な人物となりそうなのが,ゲームディレクターと脚本を担当するミハイル・ヘドベルク(Michael Hedberg)氏だという。氏はインディーズゲーム市場に大きな影響を与えたサバイバルホラー「Amnesia」シリーズや,SFサバイバルホラー「SOMA」の制作に携わった経験を持つ。

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 また,モンスターのデザインにはフリーランスのコンセプトアーティストであるガイ・デイビス(Guy Davis)氏を起用した。デイビス氏はDCコミックスのアーティストとしてスタートし,最近はギレルモ・デル・トロ監督のお気に入りとして,「パシフィック・リム」「クリムゾン・ピーク」「シェイプ・オブ・ウォーター」といった作品でクリーチャーデザインなどを担当している。もともとクトゥルフ神話の影響が強い「Alone in the Dark」シリーズだけに,デイビス氏は新生「Alone in the Dark」でも,舞台となるルイジアナの湿地帯にふさわしい,ヌラヌラとした名状しがたい異形のモンスター達を生み出しているとペック氏は説明してくれた。

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 新生「Alone in the Dark」のサウンドを手がけるのは,オランダ出身のミュージシャンであるジェイソン・フーネン(Jason Khonen)氏で,「ドゥームジャズ」や「ダークジャズ」などと呼ばれる,ジャズの新ジャンルの第一人者として知られるアーティストだ。フーネン氏に「1930年代風」というテーマで作曲してもらった1時間分の楽曲を,ペック氏は共同でアレンジしながら10時間ほどのボリュームに増やしているそうだ。
 カットシーンはドイツのMetricMindsとオランダのGate 21という,THQ Nordic傘下の専業グループが担当しており,ペック氏はPieces Interactiveをサポートするスタッフだけで100人を超える陣容で開発を進めていると語った。

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 ペック氏によると,「Alone in the Dark」では,エドワードとエミリーを2人の主人公としてプレイできる。オリジナル版を知っているなら説明するまでもないが,これは,2人を交互にプレイしていくのではなく,スタート時にどちらかのキャラクターを選んでゲームを進めていくというスタイルだ。
 ペック氏は,「セリフやカットシーンを追加するなど,現代的なアレンジをしなければなりません。背景の異なるエドワードとエミリーでは話し方が違いますし,人間関係によって,NPCの受け答えや動きも変化します」と述べた。
 ただし,選んだ主人公によってストーリーが変化したり,それぞれが異なる特殊スキルを持っていたりすることはないそうだ。とはいえ,上記のように12時間ほどのプレイスル―が想定されたボリューム感のかなりある作品を,その気になれば2倍楽しめるのは,ファンにとって嬉しいことかもしれない。

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 なお,幕張メッセのTHQ Nordicブースにあったクローズドセクションは,オリジナル版と同様,新生「Alone in the Dark」でも舞台となるデルセト屋敷の門構えを模した,ゴシックホラー風味の“映えコーナー”になっており,中では「Grace in the Dark」を10分間プレイできる。
 筆者が訪れたときは列を作る来場者の女性率も高く,サバイバルホラーが広い層に楽しまれていることが感じられるが,果たして,少し混雑し始めた雰囲気もあるこのジャンルに新たな風を吹き込むことができるだろうか。2023年中だという「Alone in the Dark」の発売を楽しみにしたい。

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