PCゲームを遊ぶ人なら,「リネージュ」というタイトルを一度は見聞きしたことがあるだろう。同作は,オンラインゲーム黎明期の1998年にNCSOFTが韓国でリリースしたMMORPGだ。2002年には日本でもサービスが始まり,今なお運営され続けている。
2021年11月4日にグローバルリリースされた
「リネージュW」(
iOS /
Android /
PC)は,そんな「リネージュ」の流れを汲むスマートフォン/PC向け新作MMORPGだ。見下ろし型の画面や「変身」「マジックドール」といった特徴的なシステムを「リネージュ」から受け継ぎつつ,世界共通のサーバーを設置し,大幅にパワーアップしたゲームとなっている。
ゲームをインストールしたら,まずは自分の分身となるキャラクターを作ることになる。現在「リネージュW」で使えるのは,「君主」「騎士」「魔術師」「エルフ」の4クラスだ。この並びを見るだけで懐かしさを覚える人も多いかもしれない。
「君主」はスキルを使ってさまざまなバフを与えられるのに加え,プレイヤー同士の集まりである「血盟」(いわゆるギルド)を創設できる唯一のクラスである。
「騎士」はさまざまな武器を使用でき,攻撃力と防御力を併せ持つ前衛タイプ。「魔術師」は回復や範囲攻撃といった魔法の使用が可能で,「エルフ」は弓と固有の属性精霊魔法を使って多彩に活躍できる。
ほかのゲームでは誰でも作れるギルドが「君主」のみの特権だったり,回復専門のクラスがいなかったりするが,そこは「リネージュ」と変わらない。
現在選べるクラスは4つ。なお,スクリーンショットはすべてPC版(PURPLE)で撮影したもの
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君主
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騎士
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魔術師
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エルフ
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インタフェースは,画面左下のバーチャルパッドで移動,右下のボタンで攻撃という,スマホ向けMMORPGでは定番の形式だ。オート機能により操作の手間が省かれているところも,現代のトレンドを踏襲している。
画面左上のクエスト欄をタップすると目的地まで自動で移動し,モンスター撃破や重要人物との会話といった任務を進めてくれるので便利だ。
もちろん,オート戦闘も可能だ。モンスターが出現する狩り場にキャラクターを連れて行って「Assist」のボタンを押せば,周囲のモンスターとオートで戦い,ドロップしたアイテムも集めてくれる。外出時にはオート戦闘で経験値とアイテムを稼ぎ,自宅では手動操作やオートでクエストを進めてストーリーを堪能する……といった具合に,ライフスタイルに応じた遊び方ができるのだ。
クエストも自動進行が可能(上写真)。このクエストは樽に変身して敵に見つからないように進む変わり種で,これは自分で操作する必要がある(下写真)
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NCSOFT独自のクロスプラットフォーム「PURPLE」を使えば,スマートフォンとPCの連携が非常にスムーズになる。公式プラットフォームなので動作に関する不安はないし,それなりのスペックのPCを持っているなら,スマートフォン版よりも大きな画面で,より高画質な設定で「リネージュW」を楽しめる。
加えて通信環境があれば,PCで動作させている「リネージュW」の映像をスマートフォンやタブレットに送信し,携帯性と高画質を両立するリモートプレイも可能だ。
ゲームとしては,ほかのNCSOFT製MMORPGと同様にかなり遊び応えがある。毎日こまめにログインして日課をこなし,じっくりと経験値を稼いでキャラクターを強くしていく,MMORPGらしいプレイ感を味わえるだろう。
PCに「PURPLE」(公式サイト内ページ)をインストールすれば,スマートフォン版よりも高画質な設定が利用できる
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前述したとおり,「変身」や「マジックドール」といった「リネージュ」の特徴的なシステムも本作に受け継がれている。プレイヤーキャラクターの姿をモンスターや重要人物に変えられるのが「変身」だ。「変身」した姿に応じてステータスが上昇し,特有のスキルを覚えることもあり,戦闘面でも役立つ。特定地域のモンスターを倒し続けて,ドロップアイテムで「モンスター図鑑」の項目をコンプリートするか,ログインボーナスやガチャなどで未入手の「変身カード」を手に入れれば,新しい「変身」が可能となる。
ただ,「変身」の中には特定の武器タイプが必要なものがある。例えばガイコツのような「スパルトイ」の場合,弓以外の武器に対応しているため,弓を装備しているキャラクターが変身しても素手になるわけだ。本作のキャラクターはクラスによって装備できる武器が異なるので,選択したクラスや敵の属性にあわせて,「変身」と武器を使い分けよう。
「変身」するには「変身カード」が必要
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「スケルトン」に「変身」した姿。画面内はモンスターだらけに見えるが,画面真ん中のガイコツが自分のキャラクターだ
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「変身カード」の中には「リネージュW」の世界に登場する重要人物も存在
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とくに変わっているのが「オーク樽」。攻撃が一切できなくなるが,HPとMPの回復力がアップする
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そして,プレイヤーに付き従ってくれるかわいらしい人形が「マジックドール」である。得られる経験値や持てる重量などにプラスの補正を加えてくれる,召喚獣の一種だ。「リネージュ2M」をプレイしている人なら「アガシオン」のような存在といえば分かりやすいだろうか。こちらはログインボーナスやガチャなどで手に入る。
「マジックドールのコア」を手に入れて「マジックドール」にセットすれば,自動で解毒剤を使ってくれるなど,さらにプレイが快適になる。
プレイヤーに付き従う人形が「マジックドール」。ステータスに補正を加えてくれる
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プレイヤーの後ろに付いてきてくれるのが可愛らしい
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コアをセットすると,アイテムの自動使用などで戦闘が有利になる
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なお,同じ「リネージュ」シリーズだけあり,本作には「リネージュ2M」にも登場しているものが多い。例えば「コレクション」は,不要になった装備をお題どおりに集めて登録すれば,装備が消えるのと引き換えに,キャラクターの能力が底上げされる。
「マジックドール」の基本は「アガシオン」と同様で,こちらにもコレクション要素はあるが,登録しても消失しない。また,不要な「マジックドール」を複数体集めて「合成」すれば,確率で上位のレアリティのものが手に入る。
キャラクターにスキルを覚えさせるためには村で魔法商人から「スキル ブック」を買うか,モンスタードロップなどを通じて入手する必要がある。また,アイテムにはそれぞれ重量があり,所持重量がキャラクターの持てる最大重量の50%を超えると自然回復が阻害されるなど,「リネージュ2M」との共通点も多い。
「リネージュ2M」と共通するシステムである「コレクション」。装備や,さまざまな変身カードをお題のとおりに手に入れると,ステータスが底上げされる
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アイテムには重量があり,持ちすぎるとHPやMPの自然回復ができなくなる。画面下にある「MAX49.9%」のボタンを使えば,特定のアイテムを最大重量の49.9%ギリギリまで買うようなことも可能。こちらも「リネージュ2M」でおなじみのボタンだ
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印象的なのが,本作の美しいグラフィックスだ。キャラクター選択時など一部のUIは中世の写本をイメージしたものになっており,目を楽しませてくれる。また,村の建物やキャラクターの服装,そしてガチャの演出に出てくる機械仕掛けのチェス盤など,中世っぽさを演出するこだわりも光っている。
キャラクターの性別選択画面。まるで中世の写本のようだ
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カットシーンから,シワだらけの老人と使い込まれた楽器。フォトリアルな中世風世界だ
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こちらもカットシーン。トゲだらけの柄を握って流れ出した血が,地面の仕掛けに流れ込んでいく
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英雄の活躍を描いたレリーフは,中世の宗教画風になっている
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村の裏通りは雑然としていて,ならず者どもがたむろしている。薄汚れた質感がリアルだ(写真上)。美しい魔術師研究所。村がリアルなだけに,幻想的な美しさが際立つ(写真下)
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ガチャ演出として登場する,機械仕掛けのチェス盤。天板がからくりで開き,中から陶器製らしいコマが登場する
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モンスターが徘徊する,おそろしいダンジョン
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ダークファンタジーな物語や演出にも注目したい。本作の登場人物は善人ばかりというわけではなく,中には人間らしい弱さや狂気を見せる者もいる。主人公の「エルフ」からして“魔物に騙されて同族を殺め,その罪を償うために人間界に追放された”という出自となっている。
人間同士の差別や,狂気に陥った息子が罪を犯したのを知りつつ庇う父など,やるせない物語もあるうえ,イベントによっては彼らにどう声をかけるかの選択肢が出ることもあり,明るく楽しいファンタジーものとは一線を画している。
「エルフ」は魔物に騙されて同族を殺めてしまった(上写真)。魔物の手先であるペペーリは,「エルフ」の過ちをあげつらい,精神を苛んでくる(下写真)
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差別される「火田民」の少年ヴァン。火田民は人間扱いされず,一方的に搾取されている
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レジンは,ウェアウルフになった息子のため,食料として死体を運んでいた。しかもその死体は,殺人を楽しみとする領主の息子が罪のない人々を殺したものなのだ。どんな言葉をかけろというのだろうか
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村には首つり死体がぶら下がっていることも
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サーバーが世界で共通となっており,村では海外のプレイヤーが外国語で雑談しているのも面白い。普通なら尻込みしてしまいそうなところだが,ゲームに内蔵されている翻訳機能を使えば,チャットがAIによって自動で日本語に翻訳される。画面左下の小さな歯車アイコンをクリックして設定画面を呼び出し,画面右に出た「チャット設定」の下部にある「自動翻訳」スイッチをONにすればいい。
さっきまでずらっと並んでいたハングル文字が,自動翻訳をとおすと実は晩ご飯の話題だと分かった……なんてこともあり,どこの国のプレイヤーも話題はそう変わらないことに気づくだろう。
「リネージュW」の世界はまだまだ始まったばかり。これから年末年始にかけ,ゲームをじっくりとプレイする機会もあると思うが,遊び応えのある「リネージュW」の世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。