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第3回「日本格ゲーメーカー連合会」レポート。F2Pや“2Dと3Dの違い”に関する議論,鉄拳の企画書が蔵出しなど濃密な2時間に
「第3回 日本格ゲーメーカー連合会」出演者一覧
・セガ
青木盛治氏(「Virtua Fighter esports」チーフプロデューサー)
・アークシステムワークス
石渡太輔氏(「ギルティギア」シリーズゼネラルディレクター)
片野アキラ氏(「ギルティギア ストライヴ」ディレクター)
・アリカ
西谷 亮氏(代表取締役社長)
・SNK
小田泰之氏(「THE KING OF FIGHTERS XV」チーフプロデューサー)
・カプコン
松本脩平氏(「ストリートファイターV」プロデューサー)
・バンダイナムコエンターテインメント
原田勝弘氏(「鉄拳」シリーズチーフプロデューサー)
格闘ゲームのF2Pについて
F2P(基本プレイ無料)については,過去に「鉄拳レボリューション」「DEAD OR ALIVE 5 Last Round」「DEAD OR ALIVE 6(基本無料版)」などのタイトルで実施されている。原田氏はF2P単体でタイトルを成立させるのではなく,ユーザーの全体数を増やす目的や次回作へのプロモーションとして有効な施策であると考えているという。
なお,有料パッケージ版を販売するほうが圧倒的に利益も得られるため,長期間のアップデートにもつながっていくとのこと。かつての格闘ゲームの商品寿命は約半年〜2年ほどだったが,パッケージ版を有料販売している「ストリートファイターV」は6年近いアップデートが続けられていると原田氏は言及する。こうした状況を踏まえたうえで,基本プレイ無料からパッケージ版を買ってもらう導線が重要であると考えているという。
一方で石渡氏や小田氏は,F2Pというビジネスモデルをどうゲームに組み込むを考えるよりも,作品作りに集中したいという開発視点からの見解を示している。また,小田氏は,格闘ゲームのIPをF2Pにするならジャンルを変えなければならないのではないかとも語った。
このテーマではサブスクリプションについての話題も出ている。原田氏は,基本操作を学べばほかのゲームにもある程度スムーズに移行できるシュータータイトルと異なり,格闘ゲームはユーザーの流動性がそこまで高くないため,格闘ゲームだけだとサブスクリプションは厳しいのではないかとコメントを残している。
2D格闘ゲームと3D格闘ゲーム,それぞれの良さと難しさ
今や2D格闘ゲームも3Dグラフィックスで作られており,そういった意味では2D格闘ゲームと3D格闘ゲームの間にある垣根は低くなっている。アークシステムワークスでは,精緻な3Dグラフィックスを用いつつ,2D格闘ゲームのルールで作品を制作。さらに映像ではカメラが回り込むなど,3D的な演出も取り入れられている。
片野氏は今や2D格闘ゲームと3D格闘ゲームの違いはあまりないと考えているそうで,基本的な操作系統については2D格闘ゲームを踏襲しつつ,3D格闘ゲーム的なZ軸(奥行き)を使ったアクションを導入することは可能であると語る。確約はできないと前置きしつつも,アークシステムワークスでもどこかの時点でこういった取り組みを行うだろうと意欲を見せた。
3Dグラフィックス制作に必要となるモーションキャプチャはかつて高価な技術だったが,今は導入コストも下がっているという。ただ,デバッグの手間などに,ある程度コストが掛かってしまうのは避けられないそうだ。
また,モーションキャプチャについて石渡氏は,キャラクターが身に付けたアクセサリなど“揺れモノ”の動きも物理演算に任せたのではいいものにならないと指摘する。アークシステムワークスでは動きを“後付け”しており,こういった部分でもコストが掛かってしまうそうだ。
そのほか,3D格闘ゲームは,Z軸の概念が入ることで処理が複雑化するため,通信対戦における遅延対策として注目されているロールバックネットコードとの相性があまりよくないという。原田氏曰く「3D格闘ゲームはコリジョン(攻撃や食らいの判定)もすべて座標が設定されているため,ロールバックネットで巻き戻した際に再現しづらい処理が多くなる」そうだ。
カプコンの松本氏は,既存の2D格闘ゲームIPを3D格闘ゲームに落とし込むことも可能だが,やるならば別のシステムにするほうがいいと話す。「ストリートファイター」にしても,ナンバリングタイトルに3D格闘ゲームのルールを取り入れるつもりはまだないが,「ファイナルファイト」を3D化してそこに「ストリートファイター」のキャラクターを出すというように,世界観を守りつつ別システムのゲームにするというのはあり得る話とコメントした。
他社タイトルの中で一番好きなナンバリングとキャラクター
このテーマでは,個人の思い入れが詰まった面白い回答が発表された。番組内で発言した順でまとめるが,番組の進行上の都合か,西谷氏の回答はなかった。
・原田氏
「真SAMURAI SPIRITS 覇王丸地獄変」(以下,真サムライスピリッツ)の牙神幻十郎。タイトルとしても「真サムライスピリッツ」は印象に深く残っているそうだ。
・青木氏
特定のキャラクター名は挙げないが,「鉄拳」シリーズのキャラクターは気になっているし,好みだという。
・片野氏
「ストリートファイターEX」のチャレンジモードが,格闘ゲームのテクニックを身に付けていくきっかけになったという。このモードがなければ,ここまで格闘ゲームを続けてこなかったそうだ。キャラクターは「真サムライスピリッツ」のナインハルト・ズィーガーを挙げた。
・石渡氏
原田氏と同じく「真サムライスピリッツ」の牙神幻十郎。未だにスタッフが声マネをするのをよく聞くという。ほかには革ジャンがカッコイイ「堕落天使」の壬生灰児や,ロケテスト大会で優勝できた「ファイターズインパクト」のユキヲを挙げた。
・小田氏
「ストリートファイターZERO2」のマッチョで寡黙なサガット。インパクトの強さでは「ストリートファイターEX」のダラン・マイスターが一番で,当時はことあるごとに彼の話をしていたという。
・松本氏
「THE KING OF FIGHTERS」の椎 拳崇。ガッツリ関西弁を喋るところに親近感があったそうだ。
格闘ゲーム以外で注目しているジャンルやタイトル
こちらもそれぞれのクリエイターとしての目線が分かる,興味深い結果となった。
・西谷氏
ベルトスクロールアクションに注目している。このジャンルはしばらく作っておらず,溜まったアイデアもあって,いけるのではないかという感触がある。
・原田氏
ストラテジーゲームに注目している。オンライン会議のバックグラウンドや,仕事の合間に遊べるのが魅力。
・青木氏
オンライン対戦疲れがあり,1人でじっくり遊べるものや,ストーリー性が高いもの。個人的にはゾンビモノも好き。
・片野氏
個人的には建築ゲームや経営シミュレーションを遊ぶ。数年前からクオリティが高いものを早く出してくる中国開発ゲームに注目している。
・石渡氏
インディーズゲームに注目。自分たちがテクノロジーに追いつく間に置いてきた面白さのようなものがある。
・小田氏
「太陽のしっぽ」をどこかが移植してくれないかと思っている。
・松本氏
バトロワ系ゲーム疲れで,1人用ゲームを遊ぶことが増えている。キャラクターのストーリーを伝えるもの,キャラクター同士の関係性を伝えるものに可能性を感じている。
「鉄拳」の祖先も登場した,お宝鑑定企画
「チーム対抗戦!お宝鑑定企画」では,スタジオにいるセガ,アリカ,バンダイナムコエンターテインメントのチームと,リモート参加のカプコン,アークシステムワークス,SNKのチームが互いに「お宝」を出し合って対決した。
西谷氏が「ストリートファイターEX plus α」の雑誌企画でプレゼントされた「ストリートファイターEX plus α 樽」を出せば,小田氏がネオジオポケットの阪神タイガースカラーで応えるなど熱い戦いが繰り広げられた。
お宝の中で注目されたのは原田氏が提出した,「鉄拳」の祖先となる企画書。「鉄拳」は最初から「鉄拳」というタイトルが付いていたわけではなく,社内での試作段階では「神威」と呼ばれていたのは有名な話だ。今回,蔵出しになった企画書は,その「神威」よりもさらに前の段階のものであるという。キャラクター原案の書類,ミーティングの記録,3D格闘ゲームを研究するのに参考にしたと思しき「Virtua Fighter」アーケード版のパンフレットなど,さまざまな書類が残されており,開発現場の雰囲気を伝える記録として,極めて貴重な品である。
キャラクター原案は現在の「鉄拳」とは方向性を異にするもの。素手で仕留めたセイウチの皮を被った「キラー・ザ スノー」,ヨガとオーラで戦い,投げ間合いが広い美少女「ラルラ・アニー」,ムエタイと中国暗殺拳を使う仮面の男「ミスター・ハヌマーン」,非力な博士がドーピングで変身して緑色の巨人になる「エンペラー・ハルク」,琉球空手とケンカ殺法を使う「ジャン・クローマンダル」といった面々が登場する予定だったようだ。
この書類には生い立ちや格闘スタイル,イメージのベースが書かれているのだが,ジャン・クローマンダルの場合「ガイル,ケン,ジャン・クロード・バンダム風のキャラ」,ミスター・ハヌマーンは「アドンのような感じでなおかつ中国拳法も使う」と記されており,当時のゲーム界で「ストリートファイターII」の影響がいかに大きかったかが伺える。また,“非力な博士が戦う”というエンペラー・ハルクのコンセプトも,のちのボスコノビッチ博士を思わせるものがあって興味深い。
企画を立てる中ではゲームの方向性についての議論も行われたようで,「1:ナックルヘッズの続編にする」「2:ストリートファイターIIを純粋に継承する」「3:新基軸のシステムを持つ新しいゲームにする」という選択肢が議論されている。「ストリートファイターIIは格闘ゲームのフォーマットとなるほど完成度が高く,ユーザーからも違ったシステムは望まれていない。格闘ゲームの制作ラインを1つしか持てない以上,新基軸のゲームだけを開発するのは危険」ということで「2:ストリートファイターIIを純粋に継承する」という選択がなされている。
ただし,その後の「鉄拳」は,「3:新基軸のシステムを持つ新しいゲームにする」という方向に舵が切られていったという。前述したような困難を乗り越えて「ストリートファイターII」との差別化にも成功したわけだが,個人的にはセイウチ男やドーピング博士が登場する格闘ゲームも見てみたかった気がする。
「THE KING OF FIGHTERS XV」の無料DLCでオメガ・ルガールの追加が決定
番組の最後にはさまざまな新情報が公開された。こちらも簡潔にまとめておこう。
「THE KING OF FIGHTERS XV」の無料DLCが2022年4月14日に配信されることが発表された。このDLCでは「オメガ・ルガール」(CV:最上嗣生さん)が使用可能に。トレイラーでは,多くのプレイヤーに悪夢を見せたジェノサイドカッターや高速突進するバニシングラッシュのほか,目からのビームを放つ技が確認できる。同時に追加される新モード「BOSS CHALLENGE」では,CPUのオメガ・ルガールと対決できるという。勝てばオメガ・ルガール専用コスチューム「Ωアーマー」や新ステージ,新楽曲が手に入るそうだ。
また,2022年5月にはイギリスのBitmap BooksからKOFシリーズの書籍「THE KING OF FIGHTERS THE ULTIMATE HISTORY」が発売される。544ページに歴代作のアートワークやインタビューが掲載されており,日本でも発売が予定されているという。和訳の有無については触れられなかったが,Bitmap Booksのネオジオ関連書籍「NEOGEO: A Visual History」は「NEOGEO: A VISUAL HISTORY ネオジオ〜目で楽しむ軌跡〜 JAPANESE EDITION」として日本語翻訳版が出ているため,続報に注目したい。
Switch版「FIGHTING EX LAYER ANOTHER DASH」では,2022年4月1日に遅延を低減する「次世代ネットコード」を導入するアップデートが配信される予定とのこと。また,PS4やSteamで配信されている「FIGHTING EX LAYER」に対しても,同時期ではないが,遅延に対策するアップデートを実装したいと考えているそうだ。
そして,アークシステムワークスが開発中の「アラド戦記」を題材とした格闘ゲーム「DNF Duel」の発売日が2022年6月28日になったこともアナウンスされた。同作と「GUILTY GEAR -STRIVE-」のワールドツアーイベント「ARC WORLD TOUR 2022」の開催もアナウンスされたばかりなので,要注目だろう。
「GUILTY GEAR -STRIVE-」と「DNF Duel」のワールドツアーイベント“ARC WORLD TOUR 2022”が開催決定。賞金総額は20万ドル
アークシステムワークスは本日,対戦格闘ゲーム「GUILTY GEAR -STRIVE-」と「DNF Duel」を競技種目としたワールドツアーイベント「ARC WORLD TOUR 2022」を開催すると発表した。詳しい開催時期などは明かされていないが,賞金総額が合計20万ドルにのぼるイベントとなるようだ。
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- ライター:箭本進一
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