2022年11月12日に,福岡県の九州産業大学で開催された
「CEDEC+KYUSHU 2022」では,サイバーコネクトツーの福田憲克氏による,講演
「初自社パブ『戦場のフーガ』におけるローカライズ事例」が行われた。
同社から2021年7月29日に発売された
「戦場のフーガ」(
PC /
PS5 /
Xbox Series X|S /
PS4 /
Nintendo Switch /
Xbox One)は,“ドラマティックシミュレーションRPG”を謳う作品だ。対応言語は,日本語,英語,フランス語,イタリア語など12言語で,音声も日本語とフランス語の2種類が用意されている
講演では,同作のローカライズに関する情報を紹介する「『戦場のフーガ』について」と,ローカライズに関連した「弊社独自の施策」「Steam Chinaの対応」「社内のローカライズガイドラインについて」の4項目について語られた。
開発部 サウンド課マネージャーの福田氏。サイバーコネクトツーでは,ローカライズ室はサウンド課に属するという
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「戦場のフーガ」とローカライズについて
はじめに,本作におけるローカライズについての説明が行われた。ここでは,ローカライズにあたるものとして,「ゲーム内のテキスト」や「UI」「音声」「BGM」,そしてゲーム外のコンテンツであるWebサイトや漫画などが挙げられた。
ローカライズは,単純な翻訳だけでなく,その国の習慣や文化も考えて修正を行う必要がある。国によっては,十字架っぽい武器の存在や,子供がお酒やたばこをお使いで買いに行くようなイベントもNGに
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ゲーム内テキストについては,文字数を25万字と想定。同社のほかタイトルは100万字程度なので,かなり少ないほうになるそうだ。それもあって,対応言語数は26言語と,いつもより多くの採用を目指したとのこと。
しかし,翻訳やLQA(Linguistic Quality Assurance/言語的品質保証)の予算見積もりが1億円以上になることが判明する。予算目標は1000万円なので,ローンチ言語は日本語と英語,フランス語の3つに絞り,ほかの言語(イタリア語,スペイン語,繁体字,簡体字,ドイツ語,ラテンアメリカスペイン語,ブラジルポルトガル語,ロシア語)は,発売後にDLCで配信することしてコスト削減を計画したそうだ。
また翻訳とLQAは,フリーランスなどの外部に頼みコストの削減を図った。
タイトルロゴは,日本語と英語,繁体字,簡体字,韓国語を用意
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なお音声は,日本語とフランス語の2種類を選択している。フランス語を選んだ理由だが,過去作「
Solatorobo それからCODAへ」の世界観がフランスで,本作がそれと同じ“イヌヒト”と“ネコヒト”の世界だからそうだ。
キャラクターのボイスは,日本語もフランス語も日本人声優が担当しているが,フランス語はフルボイスではなく,リアクションボイスのみに。そして,ナレーションなどの文章系は,別途フランス人にお願いしている形だ。
挿入歌も音声と同様に日本語とフランス語を用意している。はじめはフランス語のみで,国内の専門学校での収録を予定していたが,発音が難しくフランスでの収録に変更。後日,日本語に翻訳し日本語での収録を行ったそうだ。
ゲーム外では,公式サイトや漫画動画,PVなどの翻訳が必要になった
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サイバーコネクトツー独自の施策
ローカライズおける独自の施策として,先にも触れたとようにコスト削減を目的とした「翻訳者・LQA」の募集が行われた。プロ/アマチュアを問わず,日本のゲームやアニメ,漫画,そしてサイバーコネクトツーが好きな人を対象に,WebやSNSで募集したという。友人や知人などにも声をかけるなどし,アンケートや翻訳テストなどを実施して決めていったとのこと。
また,過去作の翻訳ではプレイヤーから「違和感がある」との声もあったので,選考では作品に対する熱量も重視したそうだ。
ゲームの開発が遅れたことで,後から追加する予定だった言語が発売に間にあったそうだ
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先の翻訳言語の削減や本施策のかいもあって,かかった費用はほぼ予算どおりに
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施策に対する良かった点と問題点
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Steam Chinaの対応
講演では,ローカライズとは別に行ったSteam Chinaへの対応についても語られた。こちらは,審査内容が非常に厳しいため,多くの修正が必要になったとのこと。
政治や宗教的な要素や血などの過激な表現のほか,アルファベットの使用なども制限される。この規制により,
同社のロゴが表示できなくなったという問題もあったそうだ。
髑髏も使用禁止
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本作は中国語対応版をSteamで配信している。ただこちらは,中国政府によってアクセスを止められる可能性もある。中国向けに確実に配信を続けるのであれば,手間のかかるSteam Chinaでのリリースも大切になってくるようである。
社内のローカライズガイドラインについて
最後に,本作のローカライズに伴い用意された,サイバーコネクトツーの
「ローカライズガイドライン」が公開された。効果的に,かつローカライズフレンドリーな開発を目指すもので,“アイコンの内容は文字でなく絵で示す”ことや,セリフなどのテキストを“直接ソースコードに埋め込まない”ことなどがあげられている。
また,日本語より文字数が多く表示されることを想定したUI作りなど,あらかじめローカライズを考えた作りにしておくことも大切であると話していた。
講演の締めに,続編の告知も
![画像集 No.030のサムネイル画像 / [CEDEC+KYUSHU]「初自社パブ『戦場のフーガ』におけるローカライズ事例」講演レポート。さまざまな工夫でコスト削減に成功](/games/575/G057551/20221113001/TN/030.jpg) |