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「The Callisto Protocol」を開発中のグレン・スコフィールド氏が語るホラーゲームの過去,現在,そして未来
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印刷2021/08/26 19:45

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「The Callisto Protocol」を開発中のグレン・スコフィールド氏が語るホラーゲームの過去,現在,そして未来

 現在開催中のgamescom 2021で併催されている開発者会議devcom 2021にて,Striking Distance Studiosを率いてホラーアクション新作「The Callisto Protocol」を開発中のディレクター,グレン・スコフィールド(Glen Schofield)氏がQ&Aセッションに登場し,ホラージャンルの過去と現在,未来について語ったので紹介しておこう。

Striking Distance Studiosのディレクター,グレン・スコフィールド氏。「コール オブ デューティ」シリーズでは,「ブラックオプス」から「WWII」まで4作の総合プロデューサーとして活躍していたが,もとは「Dead Space」を生み出したことで知られる大ベテランだ
画像集#001のサムネイル/「The Callisto Protocol」を開発中のグレン・スコフィールド氏が語るホラーゲームの過去,現在,そして未来
 スコフィールド氏と言えば,「コール オブ デューティ」シリーズを手掛けたSledgehammer Gamesのイメージが強いが,元々はElectronic Artsに在籍し,内部開発チームのVisceral Gamesでホラーアクション「Dead Space」シリーズを生み出した開発者だ。すでにアートディレクターとして30年に及ぶキャリアを誇るベテランだが,2019年には長年の盟友であるマイケル・コンドリー(Michael condrey)氏と袂を分かち,韓国のKrafton (旧Bluehole Entertainment)に参加して,その北米支部となるStriking Distance Studiosを設立するに至った。

 そんなスコフィールド氏らStriking Distance Studiosが手掛けるサバイバルホラー「The Callisto Protocol」は,地球人が太陽系の開拓に成功している今から300年後の世界を舞台にし,木星の第4衛星である“カリスト”の刑務所コロニーで何かの事件が発生し,そこから脱獄するに至った主人公が体験する恐怖を描いている。新規IPの作品ながらも150人という従業員たちが,2022年のリリースを目指して開発を進めているという。


 今回,「The Past, Present, and Future of Horror Games」と題されたセッションのホスト役となったのは,欧米のゲーム市場では良く知られた日系人のゲームジャーナリスト,ディーン・タカハシ(Dean Takahashi)氏だ。今回は2人のやり取りをそのまま紹介する。

ディーン・タカハシ氏:(以下,タカハシ氏)
 まずは,ゲームにおける“ホラー”を,スコフィールドさん自身から説明していただけますか?

グレン・スコフィールド氏:(以下,スコフィールド氏)
 もちろん。ホラーゲームは,毎年1〜2本は必ず大きく注目するゲームが出てくる息の長いジャンルだと思います。その大きな流れを作ったのが,何と言っても「バイオハザード」であるのは間違いないでしょうが,そのシリーズも現役であるだけでなく,「ゲーマーを楽しませると同時に怖がらせる」という難しいタスクに数々のメーカーが挑戦しながら,切磋琢磨して常にジャンルが活性化されているのは喜ばしいことだと思います。新作の「The Callisto Protocol」もこのジャンルが話題になるような作品になればと思って開発を進めています。

タカハシ氏:
 2008年に1作目がリリースされた「Dead Space」まで,Electronic Artsはホラーゲームをあまり手掛けていなかったですが,そのインスピレーションとなったものはなんでしょう。

スコフィールド氏:
 ゲームで言うと,「サイレントヒル」シリーズですね。本当に大好きです。ホラーゲームというジャンルは,映画より長い10時間から20時間とプレイヤーの緊張感を持続させるという非常に難しいゲームデザインを強いられますが,例えば「サイレントヒル2」にしても,霧が満ちて霧笛が鳴り,何が起きるかまったく予想がつかないけど,恐怖が迫ってくるのを予期させるという状況が作られており,感服しました。
 他の作品だと,Monolith Productionsの「Condemned: Criminal Origins」(邦題: Condemned: Psycho Crime)のシーンのいくつかは「Dead Space」で借りたくなるくらいのものでしたし,「バイオハザード 4」は以前のシリーズ作品よりホラー重視の作品でなかったとはいえ,先ほど話した緊張感の持続というゲーム性では学ばせてもらうことが多かったです。

「Dead Space」より。現在,リメイク版がElectronic Artsによって開発中であることが知られている
画像集#002のサムネイル/「The Callisto Protocol」を開発中のグレン・スコフィールド氏が語るホラーゲームの過去,現在,そして未来

タカハシ氏:
 公開された「The Callisto Protocol」のトレイラーにはクリーチャーが主人公を襲おうとしているシチュエーションでカメラを横に置いたシーンもあって,多くのゲーマーが映画「エイリアン」シリーズの影響についても語っていましたが。

スコフィールド氏:
 「エイリアン」シリーズは大好きで,特にアーティストとしては長年リドリー・スコット監督の作品には影響を受けていますが,照明効果のディレクションは「The Callisto Protocol」ではまったく異なるものを当初から想定していたので,ゲームに影響したかと言えば,それほど意識していたわけではないですね。
 ホラーやSF映画も皆で100作以上は見直しましたが,ゲームの設定などでSFホラーとしてダイレクトに影響を受けたのはポール・アンダーソン監督の「イベント・ホライゾン」ですし,ストーリーのペースで言えば「テキサス・チェーンソー」も影響を受けましたし,思い出すとキリがないくらいですね。

タカハシ氏:
 多くの他のジャンルのゲームと違うのは,とにかく主人公は敵よりも弱いという前提にありますよね。

スコフィールド氏:
 ええ。ですから,追われるシチュエーションでは「強くて怖い」敵である一方で,プレイヤーが緊張しながらプレイを進め,「直ぐに死んでしまわないような一定の距離」が必要なのです。ホラーゲームをデザインするうえでは,プレイヤーが緊張をもってプレイしていくうえでこのペースの作り方が非常に難しくて,常に試行錯誤を行う部分であると思います。
 戦闘シーンでも,「バイオハザード」ではナイフしか持っていないようなときもあり,自分の弱さを感じながら敵と対峙するという状況がうまく利用されています。「The Callisto Protocol」は異なる設定で異なるゲームメカニックのゲームであるので,ナイフ1つと言うような状況はないですが,それでも緊迫したアクションを楽しめるよう調整しています。
 また,映画とゲームの比較で言うと,カメラワークの難しさが挙げられます。プレイヤーが必ずしも敵が出現してくる方向を向いているとは限らないので。特に「The Callisto Protocol」はカットシーンに委ねずにリアルタイムで進んでいきます。これはゲームをデザインうえでの大きなハードルの1つでした。80%のゲーマーが,その状況に気付いてくれれば表現としては1つの成功だと感じるので,そのレベルで緊張感を維持できればと考えています。

タカハシ氏:
 「Dead Space」を開発するうえで,もしくはローンチ以降に学んだものはありますか?

スコフィールド氏:
 「Dead Space」は,当初はElectronic Artsの中でも実験的に開発が進められ,どこかインディ的な作業で企画やプロトタイプが作られていきました。最初の6〜8か月くらいは15人程度のチームでゲームを作っていたのです。
 当初,幹部は「EAがホラーゲームを作るのなら,そのゲームは本当に怖くなければいけない」というスタンスだったので,プロトタイプはとにかく恐怖感を煽るようなデザインになっていました。その際に映画産業の方々からもいろんな助言をもらいましたが,ゲームは「プレイヤーがカメラのコントロールの主導権を握っている」ので,あまり参考になりませんでした。
 映画の影響を受けつつ,映画とは異なるものを作っているということを痛切に感じましたし,開発継続が許可されて以降も2年ほどはずっと試行錯誤が続いていたんです。続編,そして現在の「The Callisto Protocol」にはその時のノウハウが生かされていると思います。
 あとはオーディオですね。「Dead Space」の開発時には相当な時間をサウンドルームの中で過ごして細かい調整を行っていたのですが,今はCOVID-19の影響もあって,中々それができていないのは少し残念に感じています。

チーム結成以降,COVID-19の影響からほとんど一緒にいる時間がないというStriking Distance Studiosだが,すでに150人という大所帯だ
画像集#003のサムネイル/「The Callisto Protocol」を開発中のグレン・スコフィールド氏が語るホラーゲームの過去,現在,そして未来

タカハシ氏:
 ゲームのテクノロジーの進化では,「Dead Space」の時代と「The Callisto Protocol」で表現も変わりましたか?

スコフィールド氏:
 もちろん。サウンドから照明まで非常に洗練されているのは間違いありません。キャラクターにしても,汗がにじみ出てくるような表現を利用できるので,キャラクターの感じる恐怖を読み取っていくことになります。そのあたりで何ができるのかは,これからのホラージャンルでさまざまな実験が行われていくことでしょう。

タカハシ氏:
 「The Callisto Protocol」は,「Dead Space」の恐怖を再生しようとしているのでしょうか。それともホラーに対して,異なるアプローチを行っているのでしょうか?

スコフィールド氏:
 違うゲームですからね。衛星の地表であり,刑務所であるという設定も大きく異なりますし,その部分での新しいストーリーを楽しんでいただきたいと思っています。皆さんが「The Callisto Protocol」をプレイし終えた時に,以前の作品の焼き回しだと感じたり,単に怖かったと感じるのではなく,良いストーリーだと思ってもらえるようにしたいですね。



 「The Callisto Protocol」については,2020年末に制作がアナウンスされて以降,多くの情報が開示されているわけではないものの,ホラーゲームのファンなら大きく注目できるのは間違いなさそうだ。様々なゲームや映画の影響を受けながらも,「Dead Space」を超えるようなSFホラーへと成熟していくのか。続報を楽しみにしておきたいところである。

2020年12月の制作発表以降はほとんど新しい情報のない「The Callisto Protocol」だが,“キラー”と名付けられたアートワークが1枚公開されている
画像集#004のサムネイル/「The Callisto Protocol」を開発中のグレン・スコフィールド氏が語るホラーゲームの過去,現在,そして未来

「The Callisto Protocol」公式サイト

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