［プレイレポ］血は拭えても，暗い記憶は消せない。「シリアルクリーナーズ」は，殺人現場の“清掃”をしながらキャラクターの過去を垣間見るゲーム

　3月4日に開催された「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」のハピネットブースに，「シリアルクリーナーズ」（PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / Xbox One / Nintendo Switch）がプレイアブル出展されていた。


　PC（Steam）などではすでに発売されているタイトルだが，評価の高い作品であり，2023年3月30日にはPS5/PS4/ Switch版が発売される予定だ。本稿でそのプレイレポートをお届けしよう。


　本作は2017年にリリースされた「シリアルクリーナー」の続編にあたるタイトル。殺人現場を綺麗に掃除して犯罪をもみ消すという基本のシステムはそのままに，ビジュアルを一新している。また前作の操作キャラはひとりだけだったが，今作ではBob，Lati，Psycho，Viperという4人の掃除屋を使用できるようになった。


　殺人現場を「掃除」して証拠を隠滅するという，ほとんどジョークのような設定だけあって，本作のプレイ感はわりとユルい。やるべきことは「死体の回収」「証拠品の隠滅」「血痕の掃除」とそれなりに多いが，キャラクターが警察に捕まらない限りゲームオーバーにはならないので，気楽に仕事をこなしていける。

もう駄目かと思いきや……発見されなかった

　警察が見ていない間に死体をさっと運んで，見つかりそうになったら死体を放置しその場から離脱。警戒がゆるむまでは別の場所で血痕を掃除する……といった行き当たりばったりな遊び方でも，捕まりさえしなければ問題なし。子どものころに遊んだ「だるまさんがころんだ」を思い出してしまうプレイ感だ。


　とはいえあまりナメすぎると多数の警官に追われてあえなく捕まってしまうので，くれぐれも気をつけてほしい。


　警官は，死体や証拠品が動かされていることに気づいても，そこに近づいてくる程度で，本格的な捜索を始めたりはしない。もし見つかっても壁などを利用して視線を切るように逃げ，机の下やクローゼットなどに隠れれば簡単に追跡をまくことができる。また相手を誘導するために，わざと見つかって逃げる手もある。さらに「クリーナーズセンス」の能力を使えば，警官がハイライト表示されるなどして，死体を運ぶタイミングを判断しやすくなる。

クリーナーズセンスを使用。掃除すべき血痕もわかりやすくなった

　小さな証拠品は入手するだけで隠滅したことになるが，大きなものは死体同様に車などへ運ぶ必要がある。投げて警察を気絶させることもできるので，割り切って武器として使ってしまうのもいいだろう。


　血痕を掃除すると画面左上に表示されているゲージが減っていき，これが白いライン以下になると条件達成となる。つまり汚れが多少残っていても構わないわけだ。几帳面な人は気持ち悪いかもしれないが，監視の目が厳しいところは避けて，掃除しやすいところを回っていくのもいい。


　さて，最低限押さえておくべきポイントを伝えたところで，次はプレイヤーが操作できる4人の特徴をお伝えしよう。


　まず4人のリーダー格，Bobはベーシックな能力を持つキャラクターだ。死体を「死体袋」に入れて人目につきにくくしたり，「ブラッドスライド」で血痕の上を高速移動したりできるが，4人の中ではもっとも堅実なプレイが求められる。


　Latiはこの稼業には似合わない，気丈さと優しさを兼ね備えた女性。身体能力が高く，「パルクール」で高い壁を乗り越えたり，死体を素早く移動させたりできる。また路面に落書きして，警察の注意を引くことも可能だ。
　

　Viperは勝気な若いハッカー。コンピューターから死体や証拠品の情報を得たり，扉や照明などを遠くから操作したりできる。通風孔を移動できるのは彼女だけだが，死体を担ぐことは無理で，引きずるしかないことに注意。


　Psychoはチェーンソーで「バラす」のが得意な男だ。またバラしたあとは一部を投げて警察を気絶させることもできる。荒っぽい仕事は彼におまかせだ（汚れを広げている気もするが）。


　なお，本作の物語は，1999年の大晦日に集まってパーティーをする4人が，これまでにあった印象的な仕事を回想する形で描かれる。


　静かで緊張感のあるジャズをバックに語られる彼らの過去の物語は，どこか苦いムードが漂う。この稼業からなかなか抜けられないBob。友人に見捨てられ，裏の世界に足を踏み入れることになったLati。人生を変えるチャンスがあったにも関わらず，それを逃したPsycho。無邪気なのはまだ若いViperくらいのものだが，考えてもみれば，殺人の証拠隠滅を生業とする人間の過去が，幸せなものであるはずがない。


　掃除屋たちは殺人現場を綺麗にすることはできても，己の過去や，忌まわしい記憶を綺麗にはできないわけだ。なんとも皮肉な話だが。


　4人の思い出話から始まり，意外な結末へと展開していくストーリー運びも本作の大きな魅力のひとつ。海外ドラマや映画が好きな人は特に，すべての殺人現場を綺麗にしたくなってしまうだろう。

「シリアルクリーナーズ」公式サイト