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[GDC 2022]「Horizon Forbidden West」の部族の設定に影響を与えた,とある日本の文化とは――西の地の人々の生き方を表現するデザイン
GDC 2022公式サイト
「Horizon Forbidden West」は,2017年に発売された「Horizon Zero Dawn」(PS4 / PC)で“機械に支配された世界の救世主”となった主人公のアーロイが,禁断の地とされていた西部へ旅をしていくというストーリーが描かれるアクションRPGだ。大学で工業デザインを学び,卒業後の2002年にGuerilla Gamesに参加し,今年で20年となるIjzermans氏にとっても,メモリアルな作品となったという。
機械獣と戦いながらも行き着いた先には,多くの人がテレビや雑誌などで一度は目にしたことがあるであろうサンフランシスコの“残骸”があり,さらに複数の部族たちがフィーチャーされている。
この,「坂の街」とも言われるサンフランシスコをベースに制作された地域についてIjzermans氏は,“1000年もの間,ほとんどの場所が水没していた”という設定をもとに,丘になっているところが陸地として残った“小さな島々で構成されたような場所”としてデザインしたことを説明した。
陸地として残った場所は温暖化が進行し,熱帯雨林のような植生と白い砂浜が広がり,かつて陸地だった水中には,砂浜に砂を供給するサンゴが生息している。高層ビルのロビーだった場所は洞窟のよう役目を担っている。パレス・オブ・ファイン・アーツやエンバカデロ・センターといった観光地は,水没したまま遺跡化。このあたりはプレイヤーである我々にもわかりやすい描写であろう。
Ijzermans氏のセッションの主役が,この西の土地で大きな勢力を誇る「ウタル」と「テナークス」だ。この2つの部族は,前作に登場した人々と同様に,過去に栄えた文明やその利器をほとんど伝承しないまま原始的な生活を送っている。
物語を進めるなかで触れることになる彼らの生活や文化は,直接的な説明がなくとも,細かい部分まで作りこまれていることが感じられる描写となっており,プレイした人であればその奥深さに驚かされたことだろう。
そんな「ウタル」「テナークス」がどのようにデザインされたか。それぞれの特徴やインスピレーションの元ネタについてが語られた。
ウタル
赤い腐食が大地を侵食するなか,プレインソング一帯において歌を歌うことで治癒を目指す平和的な民族として描かれるウタル。鼻の先にある巨大なツノで地面をえぐって進む古代サイのような風貌の機械獣「プロウホーン」を利用する農耕民族で,彼らの生活する一帯では竹が産出される。
なんとこのウタルの人々とその文化は,サンフランシスコに緯度が近い地域で竹を利用する民族である日本を参考にして作られたという。
地表の毒気から逃れるよう,パラボラアンテナの上で生活しているウタルの人々。その家々は生け花に利用される「花籠」といった日本の伝統工芸品からインスパイアされており,竹を編んで作られた流線が美しい建築物群はもちろん,アンテナとアンテナを結ぶ橋,ところどころにある家具や壁掛けのアート,そしてウタルの人々の服装,武具といったそれらが,日本の竹編み工芸のデザインを元に生み出されたという。
また,プロウホーンの中に,緑色の翼のついたドクロのようなデカールを付けているものがいるが,これはウタルの人々が「農耕神への感謝のしるし」として施したものであることも紹介された。このあたりの信仰も,日本人にはなじみ深いものだろう。
テナークス
ウタルとは正反対に,非常に好戦的な印象を受けるのがテナークスの人々。その性格付けは,内陸の砂漠地帯などの資源の少ない地域に住んでいるため,略奪を行わなければ生存していけないと環境的な要素だけでなく,1000年前の人類(我々にとっては未来人)が残した戦没者慰霊施設“ザ・テン”を見つけたことも起因しているとIjzermans氏は語る。
まだ人類が機械獣たちと交戦していたころに命を落とした10人の戦士を讃えるこの施設では,壊れかけたホログラフ装置が,ようやく人だとわかるくらいの人物像を映し出している。テナークスの人々は,この不鮮明な映像に倣って,そのイガイガの美術や価値観を発展させていった。
また,テナークスは砂漠の民,ジャングルの民,山岳の民に分かれており,それぞれに異なる文化を育んでいる。砂漠の民の住居区であるスカルディングスピアは,ザ・テンの灯台のようなモニュメント以外には見るべきものもないような粗末な家屋が放射状に並んでいるが,その色彩はギリシャ時代の赤と黄色の装飾をモチーフとしたデザインとなっている。ギリシャの大理石像は,かつては色付けされていたことを知る人は少なくないだろう。それをイメージしたアートになっているというわけだ。
日本の伝統工芸やギリシャの彫刻といったインスパイアを受けた元になるテーマは,ただゲームをプレイしているだけでは気付くことのない“隠れ設定”とも言える。それだけにこだわりの深さには驚かされたが,そう感じた聴講者も少なくなかったようで,講義後のQ&Aでは「凄まじい設定の作り込みですが,自分でやり過ぎたと感じる瞬間は?」という質問があった。
これにIjzermans氏は,「もはや,何の役に立つのかわからないと感じたとき」と笑いを交えながら回答し,企画段階で「この部分のデザインの意味は?」などと聞かれることも多いために,事前に多くのリサーチを行って高解像度で細部まで描き込んだアートを提出していることを語った。
知れば知るほど,その世界観の深さや設定の緻密さに興味がわいてくる「Horizon Forbidden West」。こういった,“知らなきゃ気づかないような細かな裏設定”が好きな探求心ある人にとっても,たまらないものがある作品だろう。
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